宇治郡
テンプレート:Pathnav 宇治郡(うじぐん)は、山城国・京都府に存在した郡。郡域は現在の京都市南東部と宇治市東部に相当する。京都市の南東部では、伏見区醍醐と山科区全域に当てはまる。
豊臣秀吉の桜で有名な醍醐寺、浄土真宗の開祖である親鸞が誕生したとされる日野の里、坂上田村麻呂の墓等がある。また、京都府宇治市の東部とは琵琶湖より流れ出る宇治川の右岸地域のこと。このあたりには、禅宗の一派である黄檗宗の大本山、黄檗山万福寺等がある。万福寺は中国風の建築で有名な寺院。開祖は、インゲンマメや茶を日本に持ち込んだとされる隠元隆琦。
郡名の由来
『宇治市史』等では、「うじ」とは「うち」を意味するとする[1][2]。
一方、『山城国風土記』(逸文)では、応神天皇皇子・菟道稚郎子(うじのわきいらつこ)が、この地に宮「菟道宮(うじのみや)」を構えたことが地名の起源となったとする説話を伝える[3][4]。しかしながら地名としての「莵道」は以前からあったという説もあり[1]、『日本書紀』の垂仁3年3月および仲哀元年閏11月などに「莵道河」(現・宇治川)の記載があることから、「菟道稚郎子」の人名の方が地名を冠したという見方がある[4]。
歴史
古代
郷
- 大国郷
- 賀美郷
- 岡屋郷 (乎加乃也)
- 餘戸郷
- 小野郷 (乎乃)
- 山科郷 (也末之奈)
- 小栗郷 (乎久留須)
- 宇治郷
式内社
『延喜式』神名帳に記される郡内の式内社。 テンプレート:式内社一覧/header テンプレート:山城国宇治郡の式内社一覧 テンプレート:式内社一覧/footer
中世から近世
中世には、当地では治承・寿永の乱の宇治川の戦いや、足利尊氏による戦乱が行われた。
近現代
- 1879年(明治12年)4月10日 - 郡区町村編制法に基づき宇治郡宇治郷に宇治・久世両郡合同の郡役所を設置。(郡制下では久世郡宇治町に置かれる)
- 1889年(明治22年)4月1日 - 町村制が施行され、宇治郡に宇治村・笠取村・醍醐村・山科村の4村が成立する。(4村)
- 1926年(大正15年)10月16日 - 山科村が町制施行。(1町3村)
- 1931年(昭和6年)4月1日 - 山科町が京都市東山区に編入し、醍醐村が伏見市、紀伊郡深草町・上鳥羽村・吉祥院村・下鳥羽村・横大路村・納所村・堀内村・向島村・竹田村とともに京都市に編入し、伏見区が発足。(2村)
明治22年4月1日 | 明治22年 - 大正15年 | 昭和1年 - 昭和19年 | 昭和20年 - 昭和29年 | 昭和30年 - 昭和64年 | 平成1年 - 現在 | 現在 |
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宇治村 | 宇治村 | 昭和17年4月1日 東宇治町 |
昭和26年3月1日 宇治市 |
宇治市 | 宇治市 | 宇治市 |
笠取村 | 笠取村 | |||||
久世郡 宇治町 |
久世郡 宇治町 |
久世郡 宇治町 | ||||
久世郡 槇島村 |
久世郡 槇島村 |
久世郡 槇島村 | ||||
久世郡 小倉村 |
久世郡 小倉村 |
久世郡 小倉村 | ||||
久世郡 大久保村 |
久世郡 大久保村 |
久世郡 大久保村 | ||||
醍醐村 | 醍醐村 | 昭和6年4月1日 京都市に編入 |
京都市 伏見区 |
京都市 伏見区 |
京都市 伏見区 |
京都市 |
山科村 | 大正15年10月16日 山科町 |
昭和6年4月1日 京都市東山区に編入 |
京都市 東山区 |
昭和51年10月1日 京都市東山区より 山科区を分区 |
京都市 山科区 |
宇治郡と宇治郷
宇治郡は宇治川左岸にあった宇治郷に由来し、後に宇治郷を中心とする宇治川両岸を指す地域名としても「宇治」が用いられた。ところが、文禄年間に豊臣秀吉が行った宇治川の改修で宇治郷の中を宇治川が通るようになり、宇治川を境界としていた久世郡との境界も宇治郷を通るようになってしまったために「宇治郡宇治郷」と「久世郡宇治郷」が並立するようになってしまった(ちなみに『和名類聚抄』の最古の写本である高山寺本は宇治郷を宇治郡のみに、文禄の郡界変更後に校訂された慶長古活字本には変更を反映して宇治郷を両方の郡に記している)。更に江戸時代に入り、久世郡が宇治川左岸の一部を編入した際に宇治郡宇治郷の全域が同郡に編入されてしまったために「宇治に宇治なし、久世に宇治あり」と皮肉られたという。なお、現在の宇治市域には醍醐・山科を除いた宇治郡の大部分とともに久世郡に編入された宇治郷の全域が含まれている。[5]
脚注
- ↑ 1.0 1.1 宇治巡検(新歓巡検) - 奈良大学 地理学研究会
- ↑ 『角川日本地名大辞典 京都府 上巻』(1982年)「宇治市」項。
- ↑ 宇治市歴史的風致維持向上計画【本編】第1章 宇治市の歴史的風致形成の背景 P.14 - 宇治市
- ↑ 4.0 4.1 「古代地名大辞典」本編(角川書店 初版 1999年3月10日) - 角川学芸出版
- ↑ 藤本孝一「山城国宇治郡と久世郡境界考-二つの宇治郷を中心にして-」(初出:京都文化博物館研究紀要『朱雀』2集(1989年)/所収:藤本『中世史料学叢論』(思文閣出版、2009年) ISBN 978-4-7842-1455-6)P183-192)