妖狐

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妖狐(ようこ、テンプレート:ピン音)は、妖怪である。

概要

中国伝説小説では「狐狸精」(こりせい、テンプレート:En フーリーチン)、「狐妖」(こよう、テンプレート:En フーヤオ)、「狐仙」(こせん、テンプレート:En フーシエン)などとも称され、『封神演義』などで有名な妲己に化けた「千年狐狸精」も、この類とされる。中国においては、人に対する善悪で分類する概念はない。

日本各地に残る昔話においては、などと並んで、人間や他の動物に変身するなどして人を化かす。まれに助けてくれた人間に恩返しをしたりもする。

中国では鶏卵が好物とされることが多く、日本では油揚げが好物とされ、このことから油揚げを「きつね」とも称する。

中国の狐仙

中国の神話や伝説では、キツネは修行を積んだり、神や太陽などの力を得て「妖狐」や「狐仙」に変わるとされる。特になまめかしい女性に化けたものは「狐狸精」と呼ばれて、男をだますとされる。

中国の伝説では、五種の動物の化身が財産をもたらすとして「五大仙」、「五大家」、「五顕財神」などと称して信奉されるが、「狐仙」(キツネ)、「黄仙」(イタチ)、「白仙」(ハリネズミ)、「柳仙」(ヘビ)、「灰仙」(ネズミ)の総称である。「狐仙」は飢饉から守ってくれるとして信奉する地域もある。

また、「狐仙下馬」(狐憑き。きつねつき)と称して、人に乗り移ると吉凶を占ったり、妖怪を倒す能力を発現するとされる。

前漢の『淮南子』では、の化身、妻の女嬌は塗山の妖狐の氏族で、を産んだとしている。

中国で最もよく知られた狐狸精は、許仲琳の『封神演義』に登場する、の妲己に取り憑いた九尾の狐であろう。紂王を暴虐に変え、最後には商を滅亡させたとしている。代の『山海経』では九尾の狐は人を食うとするが、古くは優れた王の出現の予兆ともされた。

野狐と善狐

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野狐、佐脇嵩之『百怪図巻

日本においては、狐霊には、大きく野狐(やこ)という、いわゆる野良の狐と、善狐(ぜんこ)という善良(とされる)狐の二つの種類があるとされる。また、野狐で人に危害を加えないものもあれば、善狐で性質のよろしくないものもある。

玉藻前に化けた白面金毛九尾の狐は、野狐の中でも人に危害を与える妖狐として知られ、悪狐(あっこ)とも呼ばれる。それゆえ九尾の狐を悪狐と呼ぶ場合もあるが、善狐でも尻尾が9本あれば九尾の狐である。

狐霊の進化

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代の『山海経』に描かれている九尾の狐

妖狐は、初め尻尾が1本しかないが、長い年月(中国では50~100年ともいわれる)を掛けて妖力を増やし、最終的(1000年後)には9本の尻尾を持つ天狐(九尾の狐)となる[1]

様々な種類の妖狐

白狐(びゃっこ、はくこ)
白い毛色を持ち、人々に幸福をもたらすとされる、善狐の代表格。稲荷神社に祀られている狐も、ほとんどが白狐である。安倍晴明の母親とされている狐も白狐である。
黒狐(くろこ、こくこ)
黒い毛色を持つ。北斗七星の化身と呼ばれている。中国類書三才図会』では、北山に住む神獣であり、王者が太平をもたらしたときに姿を現すとされている[2]。古代日本においても、黒狐(玄狐)は、「平和の象徴」として扱われている記述が『続日本紀和銅5年(712年)の記事に見られ、朝廷に献上され、祥瑞を説いた書物に「王者の政治が世の中をよく治めて平和な時に現れる」と記されていたと報告し、万民の喜びとなるだろう旨の記述がある。
金狐銀狐(きんこ・ぎんこ)
天皇即位灌頂の際に、左右に安置したとされる金銀製の荼枳尼天(辰狐)の像。金胎両部陰陽日月、を象徴するといわれる。江戸時代の随筆にも善狐の一種として登場するが、名前が出てくるだけである[3][4]
九尾の狐(きゅうびのきつね)
尻尾が9本生えた狐。玉藻前の物語で有名である。
天狐(てんこ)
1000歳を超え強力な神通力を持ち神格化した狐。尾は9つである[1]千里眼を持ちさまざまな出来事を見透かす力がある。長崎県小値賀島では憑き物の一種とされ、これに憑かれた者には占いで何でも言い当てるなどの神通力が備わるという[5]
空狐(くうこ)
3000歳を超え神通力を自在に操れる大神狐。天狐からさらに2000年生きた善狐が成るとされている[2]
仙狐(せんこ)
善狐のなかで、1000年以上生きた狐。中国における狐の分類[1]
善狐(ぜんこ)
善良とされる狐の総称。
野狐(やこ)
皆川淇園による妖狐の階級の一つ。中国では仙狐を目指し修行するための試験に合格していない狐を指す場合もある[1]。九州では憑き物の一種とされ野狐持ちの人物と仲の悪い者について害をなすといわれる[6]。『絵本百物語』にも登場する。またではいまだ悟りを得たという確証がないのに、慢心から悟ったとする禅を野狐禅という。

皆川淇園による格付け

江戸末期の随筆『善庵随筆』などにある皆川淇園の説によると、上位から天狐、空狐、気狐、野狐の順とされる。これらの内、実体を視覚で捉えることができるのは野狐のみであり、気狐以上は姿形がなく、霊的な存在とされる[7]。最上位である天狐は神に等しく[8]天狗と同一とする説もある[7]

文献での記載

和名抄
和名抄』(平安時代中期成立)には、「狐はよく妖怪となり、百歳に至り、化して女となるなり」とある。この考えに従った場合、『日本霊異記』に登場する美濃狐(狐の直・アタイ)は、すでに百歳ということになる。
遠野物語
遠野物語』には、遠野六日町の大狐は、尾が2本に岐れ、いずれも半分以上白くなっている古狐であるという記述があり、白さで古狐かどうかをと認知していることが分かる。鍛冶職人の松本三右衛門の家に夜な夜な石を降らせたとされるが、捕えられたとある。なお、同書には、化け猫に化けた狐の話も含まれる。

女化神社

妖狐の物語に由来する地名と神社に「女化神社」(女化原の稲荷)がある[9]。『和名抄』に従うなら、『女化物語』に登場する狐も最低でも百歳ということになる。

脚注

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関連項目

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zh:狐狸精
  1. 1.0 1.1 1.2 1.3 草野巧 『幻想動物事典』 新紀元社
  2. 2.0 2.1 テンプレート:Cite book
  3. 藤巻一保 『妖怪の本』 「妖狐」 学研。
  4. 藤巻一保 『真言立川流』 74頁 学研。
  5. テンプレート:Cite book
  6. 村上健司編著 『日本妖怪大事典』 角川書店〈Kwai books〉、2005年、328-329頁。ISBN 978-4-04-883926-6。
  7. 7.0 7.1 テンプレート:Cite book
  8. テンプレート:Cite book
  9. 『茨城の史跡と伝説』 茨城新聞社編 1976年 pp.19–21