奈良文化財研究所
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奈良文化財研究所(ならぶんかざいけんきゅうしょ)は独立行政法人国立文化財機構の一部門。古都奈良の文化財、埋蔵文化財の研究や平城宮跡、藤原宮跡の発掘調査も手がける。また奈良市や明日香村に資料館などを公開している。略称、奈文研(なぶんけん)。現所長は松村恵司(元文化庁文化財鑑査官)。
沿革
- 1952年に平城宮跡が特別史跡に指定されたことにともない、同年4月奈良市春日野町で奈良文化財研究所として発足した。
- 1954年7月、奈良国立文化財研究所と改称、1960年所内に平城宮跡発掘調査事務所(後、調査部)を設置し、1968年、文化庁発足により文化庁付属機関となった。
- 1973年4月、飛鳥藤原宮跡発掘調査部を設置し、翌年4月には埋蔵文化財センターを開設した。
- 1975年3月、明日香村奥山に飛鳥資料館をオープン。
- 1980年4月、本庁舎を奈良市二条町に移転。
- 1986年から1989年にかけて長屋王邸宅の発掘を行った。
- 1998年には平城宮跡を含む古都奈良の文化財がユネスコ世界遺産に登録されている。
- 2001年4月、東京文化財研究所と統合され、独立行政法人文化財研究所の奈良文化財研究所となった。
- 2007年4月、独立行政法人文化財研究所は独立行政法人国立博物館と統合し、独立行政法人国立文化財機構が発足した。
組織
研究部門としての企画調整部(5室)、文化遺産部(4室)、都城発掘調査部(5室)、埋蔵文化財センター(4室)、事務局としての研究支援推進部(3課)、展示施設としての飛鳥資料館を設置している。
公開施設
- 平城宮跡資料館(奈良市) - 8世紀の日本の都城平城京の出土遺物や建物模型などを展示する。
- 都城発掘調査部(橿原市) - 飛鳥・藤原地域の古代遺跡の発掘調査や藤原京跡出土遺物の展示を行う。
- 飛鳥資料館(明日香村) - 6世紀から7世紀にかけての飛鳥時代の古代遺跡の出土品や模型を展示する。
- 平城宮跡に復元された朱雀門や遺構展示館、第一次大極殿は文化庁所有だが、管理・研究に協力する。
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都城発掘調査部
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飛鳥資料館
国際協力
大韓民国の国立文化財研究所や中華人民共和国の中国社会科学院考古研究所とも共同研究を行い、発展途上国の文化財担当者の研修を行う。今後は東アジア規模での研究テーマを設定する予定である。
その他
遺跡誤認問題
2010年7月に、同研究所は、天皇の即位儀礼が行われる「大嘗宮」の可能性がある建物跡などが発見されたと発表した。根拠としては、柱の跡が42本見つかり、これらが建物跡や塀跡、門跡であると確認され、これが「平城宮の大嘗宮跡と類似した構造」であるとされた。ところが、藤原宮があった時代には、実際には柱穴が1基しかなかったなど、矛盾点が多数見つかり、同研究所は11月18日に、調査結果を撤回する事態になった[1]。
被災史料の修復
東日本大震災の津波によって海水や泥で被害を受けた岩手県・宮城県の古文書や史料を真空凍結乾燥機(フリーズドライ)を用いて乾燥させた後、泥や異物を除去する作業をしている[2][3]。