台地
テンプレート:複数の問題 台地(だいち)とは、地形学用語の plateau や tableland 、あるいは地質学用語の platforme に対応する訳語である。山や丘陵より高度や起伏が小さいものを指す。
目次
地形学における台地
地形学においては平坦な頂上面を持つ卓状の高地という意味合いで用いられている。テーブル・トップ・マウンテンや南米ギアナ高地ではテプイとも言われる。
地質学における台地
一方、地質学では水平またはわずかな傾きをもった岩盤が大陸の広大な地域を占めているものを指している。
日本語に訳せばColorado Plateau はコロラド台地もしくはコロラド高原であるし、Deccan Plateauはデカン高原 であって、海抜高度や周辺地域との高度差(比高)だけから見れば山地に分類されてもおかしくない。
しかし日本の台地は主に洪積台地と呼ばれるもので規模が小さいため、標高はあまり高くなく、平野の要素として考えられることもある。
台地の成立
台地の成立には、二つの大きな成因が考えられる。
火山地形
火山で、多数の火口から流動性の高い溶岩が大量に噴出し、分厚い溶岩台地(ペジオニーテ)を形成した場合。
隆起地形
地面が大規模に隆起し、かつそれが侵食に抵抗力のある岩盤である場合。
- チベット高原、コロラド高原など
世界の台地
- ギアナ高地
- 蓋馬(ケマ)高原
- コーラート台地
- コロラド高原
- コロンビア高原(コロンビア川溶岩台地)
- シベリア高原
- チベット高原
- 中央ロシア台地
- デカン高原(デカン溶岩台地):洪水玄武岩(台地玄武岩)による。
- バークリー台地
- プリボルガ台地
- マットグロッソ台地
日本の台地
日本の台地は海外で定義される台地とは大きく異なる「洪積台地」と呼ばれるものである。その形成要因は主に以下のとおりであるが、実際にはこれらの複合作用によって形成されている。他に特殊な例としてカルスト台地がある。
海水準の相対的低下
扇状地起源の平坦地や波食台といった元々が平らな1枚の面だった場所において、間氷期から氷河期に至る海面の低下(氷河性海面変動)に伴う侵食基準面の相対的低下が起こると、河川や波浪の侵食力が大きくなる。すると、平坦地上を流れていた河川や海岸に寄せる波浪によって平坦地や側壁の彫り込みが行われるようになる。こうして河岸段丘や海成段丘が形成されてゆくが、その際に削り残されたかつての平坦地が、削られた跡である周辺の低地よりも相対的に高くなるために台地となる。
地殻変動に伴う相対的隆起
台地となる平坦地の背後に位置する山地側に隆起運動がおこると、それに伴って引きずられるように平坦地にも隆起がおこる。その結果、平坦地が侵食基準面から相対的に高くなり、河川・波浪の侵食作用が大きくなり平坦面の彫り込みが行われる。その際に削り残された場所が周辺の低地よりも相対的に高くなるために台地となる。「隆起扇状地性台地」・「隆起海岸台地」などととも呼ばれる。
石灰岩地帯では地表流による侵食が広く進まず、主河川沿いのみが下刻作用を受けるために、結果として石灰岩地が高く残る。原地形に平坦性が存在した場合にいわゆるカルスト台地が形成される。
火砕流・溶岩流などの堆積
火山が大規模に噴火すると火砕流や溶岩流が流れ出し、火山起源の噴出物が火山麓や低地に厚く堆積することがある。こうしてできた平坦地が、その後の河川侵食によって谷を刻みつつも低地と明瞭な比高を保ったことで台地となる。「溶岩台地」などとも呼ばれる。
日本の台地を構成する地層
地層は、地殻変動による地層の逆転現象などが無い限り、古い地層から新しい地層が深部から順番に重なって形成される(地層累重の法則)ため、どこからどこまでをもって台地の構成層とするかは議論する内容により異なるが、台地を構成する層としては、「基盤となる層」・「台地面形成層」・「被覆層」とに分けて考えると理解しやすい。中でも「台地面形成層」の土質・堆積環境によって台地の分類が可能となる。
武蔵野台地を例とすると、「基盤となる層」は鮮新世~更新世前期に堆積した上総層群~東京層まで。これは「台地面形成層」を堆積させる土台となった地層である。
「台地面形成層」は更新世(洪積世)に多摩川が扇状地を形成した際に堆積させた武蔵野礫層である。よって武蔵野台地も「洪積台地」であり「扇状地性台地」に分類される。
「被覆層」は関東ローム層である。主に関東地方から東(静岡県東部から東北地方太平洋側および北海道にかけての東日本)に位置する台地上には火山フロント上に連なる火山から飛んできた火山灰が風化して形成された主に黄色~赤褐色をした地層であるローム層が「被覆層」として台地面形成層の上位に堆積している。また九州地方の多くや中国地方の一部にも火山より東側の地域に位置する台地上にローム層が堆積している。これら「被覆層」は、台地の平らさを形成するものではなく、平らさを形成するのは、あくまでも下位にある「台地面形成層」である。よって、地表面は同じ関東ローム層が堆積している複数の台地でもその形成年代は「台地面形成層」を調べることにより異なっていることが分かる場合がある(ローム層の年代測定結果と合わせて把握される場合もある)。
「台地」の用語について
地形学で台地を表す用語に plateau がある。「比較的高度が高く面積の広い平坦な表面を有し、側面が急に低地へ下っている地形」と定義されるが、地形学ではウィリアム・モーリス・デービスなどの海外の学者によって提唱された、本来は海外の地形にあてはまる用語を輸入したものが多い。plateau もインドのデカン高原やアメリカのアパラチア高原などを含む概念である。
日本の台地とはスケールが異なり、かつ日本の地形の形成要因は大陸の構造地形などとは異なるため、単純に日本の「台地」と同じ意味で plateau を使うと弊害が生じる可能性がある。日本の地形を論じる際に海外の用語を採用する場合には注意を要する。
主な日本の台地のリスト
- 日本の台地一覧も参照。
台地の利用
日本の台地は扇状地性平坦面が元となっている場合が多く、水はけの良い土壌の特徴を活かして畑作地や果樹園として利用されていることが多い。また平坦な土地であることから都市近郊では都市化が進められ、工場や住宅地として開発が進められている。 戦前は、平坦な土地が広く得られることから、広大な湿地と共に、飛行場として利用された場所もある(陸軍各務原飛行場・海軍厚木飛行場など)。陸軍の演習場として利用された場所も多い。
また日本の台地の特徴として河岸段丘となっている場合が多く、段丘面を画する崖線下で湧水による水利が得られることがある。そのようなところでは古くから稲作が行われてきた。また、古墳が造営されてきた。
江戸時代の新田開発により用水路が整備されるまでは、台地の高位面は近隣の村々の入会地である秣場(まぐさば)として利用されることが多かった。