半旗
半旗(はんき 英:Half-mast)は、弔意を表すために旗竿の最上位より下に掲げた旗のことである。
かつて船において弔意を表す方法であった国旗に喪章を付ける(弔旗)慣習が、洋上では視認しにくいとして国旗を半下する方法に変化したものである。現在は洋上に限らず実施されており、弔意を示すためには原則として半旗を掲げ、半旗の掲揚ができない場合は弔旗とするのが一般的である。
目次
掲揚方法
旗を旗竿の最上位まで掲げ、その後に旗竿の半旗の位置にまで降ろすことで行われる。半旗の位置とは、おおよそ旗の一辺から旗竿の2分の1の範囲であり、半旗であることが分かる位置であればよいとされる。逆に半旗としない場合は、旗竿の構造上可能な範囲において最上位に掲げて固定し、傍目に半旗であると誤解されないように掲揚するべきであるとされる。
半旗を降ろす場合には、再び旗を旗竿の最上位まで掲げ直してから降ろす。
上記の掲揚方法は慣習であり、国旗の取扱いに関する国際儀礼(プロトコル)の一部である。 ただし、国や組織によっては掲揚方法について明文化した法律、規定を定めている場合もある。
多くの場合国旗が用いられる。それ以外に、都道府県や市町村・州などの自治体の旗、海外領土・植民地など非独立地域の旗、校旗、党旗、社旗などその他団体の旗などが用いられる場合がある。また王室や貴族制度を維持している国では、王旗などのように固有の紋章をあしらった旗も半旗に用いられている。
日本
日本では、国家において半旗を掲げるべき期間を明文化した規定は存在しない。内閣の決定、あるいは各省庁の申し合わせによりその都度各省庁が通達などを発出し国の機関において実施、関係機関に協力を依頼することもある。政府機関に一斉に半旗が掲げられた例として以下のものがある。
- 3月11日、東日本大震災が発生した日
- 同日に国立劇場で挙行される東日本大震災追悼式に併せ、政府が半旗を掲揚するよう各官庁、学校、企業等に求めている。
- 8月15日、戦没者を追悼し平和を祈念する日(終戦の日)
- 同日に日本武道館で挙行される全国戦没者追悼式に併せ、政府が半旗を掲揚するよう各官庁、学校、企業等に求めている。
- 天皇・皇后、およびその他皇族の葬儀の日
- 近年では昭和天皇の大喪の礼、香淳皇后の斂葬の儀、高円宮憲仁親王の斂葬の儀の際に半旗が掲揚された。その都度、政府より各官庁、学校、企業等に対し協力を求める通知が出される。
- 内閣総理大臣経験者の葬儀の日
- 政府官庁が半旗を掲げた。
- 1995年(平成7年)阪神・淡路大震災
- 全省庁的に半旗を掲げた。
- 2011年(平成23年)東日本大震災
- 発災(3月11日)から1ヶ月間、全省庁的に半旗を掲げた。都内の小中学校などでは4月末まで掲げられていた。
- アルジェリア人質事件(2013年1月26日)
- 事件の犠牲となった日本人10名に対する弔意として、自由民主党本部及び各官公庁が半旗を掲げた。
- 海外の要人に対する弔意
- 英国国王ジョージ6世の崩御に弔意を表して、昭和27年2月7日と2月15日(訃報のあった日と葬儀の日)、衆参両院で半旗が掲げられた。
アメリカ合衆国
- 現職の大統領、元大統領の死亡時
- 死亡後30日間
- 現職の副大統領、元副大統領、連邦議会議長、連邦最高裁判所長の死亡時
- 死亡後10日間
- 連邦最高裁判所判事、国務長官・副長官、国防長官・副長官、州知事の死亡時
- 死亡時(各機関においてそれを知った時点)から埋葬の日まで
- 連邦議会議員の死亡時
- 死亡時(各機関においてそれを知った時点)から翌日にかけて
- 大統領令による
- 9.11テロ、教皇ヨハネ・パウロ2世の逝去など
- 連邦議会の定める法による
- 12月7日の大統領宣言、真珠湾攻撃の日、戦没者記念日など
イギリス
本来、イギリス王室には半旗の伝統は無い。これは、そもそも国王の旗であるテンプレート:仮リンクは国王が宮殿にいる事を示すものであり、国王が宮殿にいなければ下ろされ、国王が滞在中は掲げられるものであったこと、そして国王が崩御しても、即座に新たな君主が即位することになるため、“王位に空位はなく、常に国王は健在である”ということであるため、王室旗を半旗にして喪に服す必要はないという考え方であった。
しかし、ダイアナ元王太子妃が死去した際には、国民の間から「王室はバッキンガム宮殿に半旗を掲げるべきだ」との世論が起こった。世論の反発をやわらげるため、国王(エリザベス女王)がダイアナ元王太子妃の葬儀のために宮殿を出たところで、王室旗が下げられてユニオンジャックの半旗が掲げられた。この経緯については、映画「クィーン」の中で描かれている。
これ以後は、国王不在の際は王室旗の代わりにユニオンジャックを掲揚し、必要に応じてそれを半旗にするという慣習が誕生し、実際にエリザベス女王の母であるエリザベス皇太后と妹のマーガレット王女の葬儀の際、さらにロンドン同時爆破事件の際にユニオンジャックの半旗が掲げられた。王室旗による半旗は今のところない。
政府機関等においては、国王の命令に基づき出される文化・メディア・スポーツ省の通知により、旗竿の長さの3分の2のところに掲げるのが正式な半旗の方法である。政府の建物に半旗が出される条件と期間は以下の通りである。
- 国王の崩御が発表されてから葬儀までの期間。ただし新国王の即位の日には午前11時から日没までは半旗にしない
- 王族の葬儀の日
- 外国の君主の葬儀の日
- 首相あるいは元首相の葬儀の日
- その他、特別に国王が命令を出した場合。
この際、王室関連の休日(イギリスの場合は、王族の誕生日などでも政府機関が休みになる)などの国旗を掲揚するべき日と、半旗にすべき日が重なった場合は、国王から特別に命令がない限りは半旗にしない。
カナダ
次の場合に半旗を掲揚している。
- イギリス国王=カナダ国王・現カナダ総督・現カナダ首相の死去時
- 死亡時から葬儀日の日没にかけて
- イギリス国王の配偶者・イギリス皇太子・イギリス王子・元カナダ総督・元カナダ首相・カナダ最高裁判所長官・カナダ国務大臣の死去時
- 死亡時から翌日の日没にかけて
- 4月28日、労働災害などにより亡くなった人を追悼する日
- 9月の警察官などの殉職者追悼記念日
- 11月11日、休戦記念日
- 12月6日、女性への暴力を記憶する日
サウジアラビア
サウジアラビアの国旗にはイスラム教の信条“アラーの他に神はなし。ムハンマドはアラーの使徒である”の一文がアラビア語で記載されており、これを汚さないためにも半旗にしてはならないと統治基本法第3条で定められている[1]
大韓民国
- 6月6日の顕忠節(殉国者追悼の日)と国葬の際に半旗を掲げる。
中華人民共和国
中華人民共和国国旗法第14条の規定により、以下の人物が死去した場合半旗を掲げることとされる。
- 国家主席
- 全国人民代表大会常務委員会委員長
- 国務院総理(首相)
- 国家中央軍事委員会主席
- 中国人民政治協商会議全国委員会主席
- 中華人民共和国に対して顕著な貢献をした(と国務院が認めた)人物
- 世界平和あるいは人類の進歩に傑出した貢献をした(と国務院が認めた)人物
このほか、不幸な事件、多数の死傷者が出た重大な自然災害があった場合、国務院の判断により、半旗を掲げることができる。2008年5月の四川大地震の際の例がある。半旗を掲げる期日と場所は、国務院または国が組織する葬儀を司る機構が指定する。
香港
香港特別行政区では、上記に加え、区旗区章条例(區旗及區徽條例)により、以下の人物が死去した場合、区旗を半旗にする。
- 香港特別行政区に対して顕著な貢献をしたと行政長官が認めた人物
- 行政長官が半旗により弔意を表すにふさわしいと認めた人物
重大な事件・自然災害についても、行政長官の判断で区旗を半旗にすることができる。
中華民国(台湾)
- 正副総統が死去した場合、全国の機関団体は、出棺まで半旗を掲げなければならない。
- 国交を有する国の現職の元首が崩御した場合、外交部領事館は1日半旗を掲げることができる。
- 重大な事件により死傷者の発生した場合、総統は全国あるいは一部の機関に半旗を掲げるよう告示することができる。
その他
企業やスポーツ界などでは国家的な弔意以外では、代表や貢献者の死去の際に独自の判断で半旗る場合がある。
- 2008年(平成20年)6月8日 - 日本サッカー協会最高顧問の長沼健元日本サッカー協会会長の死去により、全競技場で半旗が掲げられた[2]。
- 2010年(平成22年)4月7日 - 読売巨人軍のコーチであった、木村拓也元巨人一軍コーチの死去により、当日の全球場では半旗が掲げられ、巨人応援団もしばらく球団旗の半旗を掲げた[3]。また一周忌でも半旗が掲げられた[4]。
- 2011年(平成23年)8月5~7日 - 松本山雅FCに所属していた、元サッカー日本代表松田直樹選手の死去により、所属リーグのJFLと、かつて所属していた横浜F・マリノスをはじめとしたJリーグの全試合で半旗を掲げた[5]。
- 2011年10月5日 - Appleの創設者で同社に貢献したスティーブ・ジョブズの死去により、Apple本社には半旗が掲げられた[6]。
- 2013年(平成25年)1月23日 - アルジェリア人質事件で最高顧問を含む社員10名を亡くした日揮本社は国旗と社旗を半旗とした。
注釈
- ↑ サウジアラビアの統治基本法 日本貿易振興機構(ジェトロ) リヤド事務所
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ テンプレート:Cite web