共同募金
共同募金(きょうどうぼきん)とは日本の募金活動のひとつであり、社会福祉法(旧・社会福祉事業法)第113条に定義される第1種社会福祉事業である。
目次
概要
毎年10月1日 - 12月31日の間(都道府県により期間は前後する[1])、主に各市町村の共同募金支分会を経由して自治会や学校、企業で募金を募る。共同募金は都道府県ごとに行われ、都道府県を単位に社会福祉法人である共同募金会が組織されている。これら募金をとりまとめ、連絡調整をするのが社会福祉法人中央共同募金会である。この運動は1947年度にスタートした。呼びかけに応じて拠出をすると、協力者の証明として鶏の羽を赤く着色した物をもらえることから、「赤い羽根」「赤い羽根共同募金」とも呼ばれている。
この赤い羽根は、アメリカにおいて共同募金の象徴として使われていたものを日本でも戦後の混乱期に戦災者への募金の象徴として援用したのがはじまりである。アメリカの共同募金は自主的なものであるが、GHQの指示でそれを日本でも行う際、募金を自主的に行う団体が立ち上がるまでの暫定措置として自治体やその関係機関で募金を行っていたところ、占領が終わって自主団体が立ち上がらないまま現在に至っているものである。
赤い羽根は衣服に刺せるように針がついているものと、シールで衣服に貼るシール式と2種類ある。初日の10月1日(平日放送の帯番組で、同日が週末の場合は10月最初の放送日)のテレビニュース番組などで、アナウンサーが上着の襟に赤い羽根を付けて出演することが多い。
地域によって募金グッズとして募金バッジ、ハンカチや図書カードなどのプリペイドカードによる募金を行っているところもあり全国一斉ではあるが地域の実情に応じた募金活動がなされている。
各都道府県では12月1日から歳末たすけあい募金として各地域主体で募金活動を行っているが(行なわない所や共同募金と一本化している所もある)、中央共同募金会ではNHKと連携して歳末たすけあい募金を行っている。同時期にはNHKと日本赤十字社の共催による海外たすけあい募金も実施される。
集められた募金は多くが社会福祉協議会に配分され、国内の高齢者や障害者に対する福祉の充実、地域福祉活動の啓発や推進のために使われている。最近では災害支援準備金として、あるいは子育て支援活動に使われることも多くなってきた。ただし、各都道府県内で「共同募金」に寄付したお金は基本的に寄付した都道府県内の社会福祉に使われ、県外や国外に使うことはできない。
共同募金会に対する寄付金については株式会社等法人からの寄付金は「全額損金算入」、個人からの寄付金は所得税および住民税にかかる「寄付金控除の対象」となっている。
なお、共同募金会の事務局は社会福祉協議会の事務局が兼務することが多い。
強制的な動員・徴収への疑問
社会福祉法116条では「共同募金は、寄附者の自発的な協力を基礎とするものでなければならない」と定められ、共同募金会も「寄付する人も募る人もボランティア」とするビジョン[2]を掲げているように共同募金の募金活動や寄付は自発的なものであるべきとされている。
しかし現実には共同募金は行政・自治会組織を通して集める戸別募金の占める割合が高く、募金活動を行う募金ボランティアも事実上の強制動員になっている場合がある(自治会の持ち回り班長などが、「自治会の当番」として共同募金の戸別募金に回るよう強制されてしまう)。自治会の当番による戸別募金では断りにくい状況で強制感を伴う徴収となるケースが多発し、以前から自治会に集めさせる戸別募金は自発的な参加で行われるべき募金活動の精神に反するものとして問題視されてきた[3]。
また中には市区町村の事務局を通じ「一世帯○○○円を目安に」など、所得や世帯構成を考慮しない「目標額」を提示し募金を集めているケースも見られる[4]。
自治会によっては当番を戸別募金に回らせることが困難なため、予め自治会費に共同募金などへの寄付分を上乗せしている場合がある。しかし2007年8月にはこうした自治会費への寄付分上乗せは寄付を強制するもので違法とする判決[5]が出され、翌年確定した。
自治会を通して募金活動や寄付が事実上強制されている状況に対しては、2009年春に青森市内の自治会長らの団体が「寄付集めは自治会本来の業務ではない」として自治会に各種寄付を集めさせるやり方を見直すよう求める提言をまとめるなど自治会の側からも見直しを求める動きが出てきている[6]。また、強制性を弱めるために当番による戸別募金をやめて寄付したい人が役員の所に持参する方式や回覧と共に募金袋を回し寄付したい人が自ら入れる方式に改めた自治会もある。
募金額の減少
募金額は1995年度がピークで、以降、前年比3-4%程度の割合で減少する傾向にある[7][8][9]。
減少の原因としては半ば強制的な集金の手法に対する反感、集金した金の配分額や決定プロセスが不透明であることが指摘されている[10]。
歴代共同募金運動ポスター
- 1977年 草刈正雄
- 1978年 ピンクレディー
- 1979年 竹下景子
- 1980年 北の湖
- 1981年 金沢明子
- 1982年 伊藤つかさ
- 1983年 堀ちえみ
- 1984年 大原麗子
- 1998〜2000年 俵万智
- 2001年 成田真由美
- 2002年 柊瑠美
- 2003年 宮地真緒
- 2004〜2006年 石原さとみ
- 2007年 石橋杏奈
- 2008〜2009年 藤原紀香
- 2010年 ドラえもん(キャラクター)
- 2012〜2013年 初音ミク(キャラクター)
共同募金の歴代イメージソングを歌った歌手(主なもの)
- 葛城ユキ「RHAPSODY」(1986年、『夢に吹かれて』に収録)
- 村下孝蔵「風のたより」(1988年)
- THE BOOM「星のラブレター」(1989年)
- 和田アキ子「愛、とどきますか」(1992年)
- Le Couple「逢えてよかった」(1998年)
- KUMACHI「キミノアシタ」(2003年、『Good Bye! High School Days』に収録)
- 島谷ひとみ「綺羅星」(2004年、『追憶+LOVE LETTER』に収録)
- KOKIA「幸せの花束」(2005年、『time to say goodbye』に収録)
- 矢井田瞳「やさしい手」(2006年、『IT'S A NEW DAY』に収録)
- 矢井田瞳「靴音」(2007年、『colorhythm』に収録)
2010年からは近野陽瀬の「ココロの羽根」が使用され続けている。
共同基金の種類
- 現在行なっている共同基金
- 赤い羽根 - 中央共同募金会が主催
- 青い羽根 - 日本水難救済会が主催
- 黄色い羽根 - 石川県の腎友会が主催
- 水色の羽根 - 漁船海難遺児育英会が主催
- 緑の募金 - 緑の募金法に基づく、国土緑化の募金。担当は国土緑化推進機構
- 終了した共同基金
脚注
- ↑ 2011年(平成23年)9月1日厚生労働省告示第312号「平成二十三年度における共同募金の実施期間を定める件」(PDFファイル)
- ↑ 共同募金?
- ↑ 厚生白書(昭和36年度版)
- ↑ 赤い羽根共同募金の一戸あたりの目標額について - 島根県サイト
- ↑ 大阪高裁判決文(PDFファイル)
- ↑ 河北新報 2009年2月27日
- ↑ 募金額の推移(PDFファイル)
- ↑ 地域をつくる市民を応援する共同募金への転換、P58(PDFファイル) - 中央共同募金会企画・推進委員会,平成19年
- ↑ 地域をつくる市民を応援する共同募金への転換、P2((PDFファイル))
- ↑ 厚生労働省、第6回 社会的な援護を要する人々に対する社会福祉のあり方に関する検討会 議事概要