ロジャー・ディーン
目次
概要
ヒプノシス、キーフと並び、多くのプログレッシブ・ロック・アルバムのアート・ワークを担当した事で、そのバンドのファンから親しまれているアート・デザイナー。幻想的な作風を用いて、色づかいや枠線の描き方に東洋絵画風の要素が見られる。
特にイエス関連の作品で知られ、ディーンのイラストがもつ透明で幻想的なグラフィック・イメージが、イエスの追求した音楽性をリスナーに喚起させる力が強く、イエスもそれを高く評価して、一時はイエスの第六のメンバーとも言われた。詳細はイエスとの出会いを参照。
略歴
1944年、4人兄弟(弟:マーティン、妹:ペニー、妹:フィリッパ)の長男として、イングランドのケント州・アシュフォードに生まれる。父親がイギリス軍のエンジニアであったため、キプロスや香港などを転々とする幼年期、少年時代を過ごした[2]。1959年になって一家がイギリスに戻ると、アシュフォード・グラマー・スクールを経て、母親が結婚前にカンタベリー州の芸術学校で服飾デザインを学んでいた影響からか、1961年、カンタベリー州の王立家具デザイン学校の3年コースに入り、そこで銀細工の加工と家具のデザインを学んだ[2]。1965年、ロンドンの英国王立芸術大学(ロイヤル・カレッジ・オブ・アート)に入学し、デザインの国家免許を取得。1968年、同校を卒業した後、工業デザイナーとして働き始める[2]。
1968年、テンプレート:仮リンクの改装に携わった関係で、テンプレート:仮リンクらのバンド テンプレート:仮リンクのアルバム『GUN(邦題『悪魔天国』)』のカバー・デザインを依頼され、それが好評であったため、以降、ジャケット・デザインの仕事も手がけるようになった[2][3]。『Us and Them: Symphonic Pink Floyd』におけるディーン自身のライナー・ノーツによれば、ピンク・フロイド在籍時のシド・バレットとアパートをシェアリングしていたという。
1971年、イエスの4作目のアルバム「こわれもの」のジャケット・デザインを担当すると、商業的にも成功するイエスのアルバム・ジャケットの多くを手がけるようになり、プログレッシブ・ロックのファンの間における知名度が上がって、イエスのほか、ユーライア・ヒープやジェントル・ジャイアントのジャケット・デザイン、或いはヴァージン・レコードのロゴやレーベルのデザインなどを次々と手がけていく[2][3]。
1970年代前半は、イエスのステージ・セットにも携わっており、その為ツアーにも帯同する事が多く[2]、1973年3月の来日公演におけるイエスの記者会見では、当初、イエスの専属カメラマンを装って会場に姿を現したが、目ざとい記者に見破られ、メンバーと一緒にインタビューを受けさせられるハプニングが起きた[4]。
1976年にリリースされたジョン・アンダーソンのソロ・アルバム『テンプレート:仮リンク』のジャケットは、ロジャー・ディーンがデザインを担当したイエスのこわれものに描かれた絵が元になっており[5]、実際にはサンヒローのオリアスのジャケットもロジャー・ディーンが手がける予定だったが、この時既にロジャー・ディーンは初の個人画集『Views』の作成に取り掛かっており、時間的な余裕が無かった為、知人のデイブ・ロウというイラストレイターに依頼したものである。
1975年、自身初の画集「Views」をイギリスで出版[2]。初のジャケット・デザインを担当したGUNのアルバムから、この時点での最新作であるスティーヴ・ハウのソロ・アルバム「ビギニングス」までを、その制作過程まで含めて収録している。
2009年に公開されたアメリカ映画『アバター』に登場する空中に浮かぶ岩、翼竜などの世界観がロジャー・ディーンの描いてきたものにそっくりであることを指摘する人が多いが、ロジャー・ディーンはこの映画には一切の関わりを持っていない。ロジャー・ディーン本人もそっくりであることを自身のホームページで言及している[6]。
イエスとの出会い
イエスのアルバムジャケットのデザインを担当した経緯は、2012年にリリースされたブルーレイ及びDVDビデオ『イエスソングス 40周年記念HDニューマスター版』に特典映像として収録されたインタビュー映像で、ロジャー・ディーン本人及びスティーヴ・ハウとクリス・スクワイアが説明している。最初はロジャー・ディーン自身がアトランティック・レコードのフィル・カーソンに自分の作品を売り込みに行き、フィル・カーソンがそれを気に入って、担当しているレッド・ツェッペリンとイエスのどちらかのアルバムに起用する事を考え、その時『こわれもの』を制作していたイエスに紹介した。クリス・スクワイアのコメントによれば、その売り込みの時点でこわれものに使用された絵は出来ており、厳密な意味でイエスとロジャー・ディーンが初めて行った共同作業は『危機』だった。また同インタビューに於けるロジャー・ディーンのコメントによれば、『究極』も『マグニフィケイション』も担当するつもりだったが、究極はメンバーと意見が合わず、マグニフィケイションはイエスのマネージメントサイドから別の人に頼むと告げられた。
音楽アルバムのジャケット
イエス・ファミリー
イエス
- こわれもの - Fragile 1972
- 危機 - Close To The Edge 1972
- イエス・ソングス - Yessongs 1973
- 海洋地形学の物語 - Tales From Topographic Oceans 1973
- リレイヤー - Relayer 1974
- イエスタデイズ - Yesterdays 1975
- イエス・ショウズ - Yesshows 1980
- ドラマ - Drama 1980
- テンプレート:仮リンク - Classic Yes 1981
- 結晶 - Union 1991
- テンプレート:仮リンク - Yesstory 1992
- シンフォニック・イエス - Symphonic Music of Yes 1993
- キーズ・トゥ・アセンション - Keys To Ascention 1996
- キーズ・トゥ・アセンション2 - Keys To Ascention2 1997
- オープン・ユア・アイズ - Open Your Eyes 1997
- キーズ・トゥ・アセンション・ボリューム1&2 - Keys To Ascension, Volumes 1 & 2 1998
- ラダー - The Ladder 1999
- ハウス・オブ・イエス - House of Yes~Live from House of Blues 2000
- アルティメイト・イエス - The Ultimate Yes: 35th Anniversary Collection 2003
- フライ・フロム・ヒア - Fly From Here 2011
- イン・ザ・プレゼント〜ライヴ・フロム・リヨン - In The Present - Live From Lyon 2011
エイジア
- 詠時感〜時へのロマン - Asia 1982
- アルファ - Alpha 1983
- アストラ - Astra 1985
- ゼン・アンド・ナウ - Then & Now 1990
- 天空のアリア- Aria 1994
- オーラ - Aura 2001
- フェニックス - Phoenix 2008
- オメガ - Omega 2010
- XXX〜ロマンへの回帰 - XXX 2012
その他のイエス・メンバー関係
- テンプレート:仮リンク 『ワン・ライヴ・バジャー』
- スティーヴ・ハウ 『ビギニングス』
- スティーヴ・ハウ 『スティーヴ・ハウ・アルバム』
- アンダーソン・ブラッフォード・ウェイクマン・ハウ『閃光』
- アンダーソン・ブラッフォード・ウェイクマン・ハウ『イエス・ミュージックの夜 』
- トリビュート・アルバム『テイルズ・フロム・イエスタデイ』(イエスのメンバーも参加)
- リック・ウェイクマン『地底探検〜完結編』
その他のアーティスト
- アース・アンド・ファイア;Earth And Fire『Earth And Fire』UK Nepentha(1971)※変形穴あき隠し絵ジャケット
- アトミック・ルースター;Atomic Rooster『In Hearing Of Atomic Rooster』(1971)
- アレクシス・コーナー;Alexis Korner『Bootleg Him!』(1972)
- オシビサ『Osibisa』
- イット・バイツ 『Eat Me In St. Louis』(1989)
- オシビサ『Woyaya』
- ガン;Gun『Gun』(1968)
- キース・ティペット・グループ;Keith Tippett Group『Dedicated To You, But You Weren't Listening』;With Martyn Dean (1971)
- キャタピラー;Catapilla『Changes』;Designed By Martyn Dean(ロジャー・ディーンの弟)(1972)
- グラス・ハマー『The Inconsolable Secret (邦題:悲しみの淵に潜む秘密)』
- グラハム・コリアー;Graham Collier Music『Mosaics』(1971)
- クリアー・ブルー・スカイ 『Clear Blue Sky』
- グリーンスレイド『グリーンスレイド』
- グリーンスレイド 『ベッドサイド・マナーズ』
- グリーンスレイド 『タイム・アンド・タイド』
- デイヴ・グリーンスレイド;Dave Greenslade『Cactus Choir』(1976)
- グレイシャス;Gracious『This Is...Gracious!!』(1971)
- グレイヴィ・トレイン;Gravy Train『Staircase To The Day』(1974)
- サード・イヤー・バンド;Third Ear Band『Music From Macbeth』(1972)
- ジェントル・ジャイアント 『テンプレート:仮リンク』
- ジェントル・ジャイアント;Gentle Giant『In A Glass House』;Photography Martyn Dean(1973)
- ジャンコ・パートナーズ;Junco Partners『Junco Partners』(1970)
- ジョン・ダマー・バンド;John Dummer Band Featuring Nick Pickett『 "Blue" 』(1971、1972)※変形穴あきジャケット
- ジョン・ロッジ;John Lodge『Natural Avenue』(1977)
- スナッフ;Snafu『Snafu』(1973)
- デル・リチャードソン;Del Richardson『Pieces Of A Jigsaw』(1973)
- ドクター・ストランジェリー・ストレンジ;Dr. Strangely Strange『Heavy Petting』(1970)※変形穴あきジャケット
- ナイトウィング 『My Kingdom Come』(1984)
- ニトロ・ファンクション;Billy Cox's Nitro-Function『Nitro-Function』(1971)
- ニュークリアス;Nucleus『Elastic Rock』(1970)※変形穴あきジャケット
- ニュークリアス;Nucleus『We'll Talk About It Later』(1970)※変形穴あきジャケット
- バッジー;Budgie『Squawk』(1972)
- バッジー『テンプレート:仮リンク』
- パトゥ;Patto『Hold Your Fire』(1971)※百面相ジャケット
- パラディン;Paladin『Charge!』(1972)
- ピート・デロ・アンド・フレンズ;Pete Dello And Friends『Into Youe Ears』(1971)
- ベイブ・ルース;Babe Ruth『First Base』(1972)
- テンプレート:仮リンク『Lord Of The Ages』
- ミッドナイト・サン;Midnight San『Walking Circles』(1971)
- ミッドナイト・サン;Midnight San『Midnight San』(1972)
- ユーライア・ヒープ『テンプレート:仮リンク』
- ユーライア・ヒープ『テンプレート:仮リンク』
- ユーライア・ヒープ『テンプレート:仮リンク』
- ユーライア・ヒープ『Acoustically Driven』
- ライトハウス;Lighithouse『One Fine Morning』(1971)
- ライトハウス;Lighithouse『Thoughts Of Moving On』(1971)
- ラマセス;Ramases『Space Hymns』(1971)※6面ポスタージャケット
- ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団『テンプレート:仮リンク』
- マイク・アブサルム;Mike Absalom『Mike Absalom』(1971)※6面ポスタージャケット
- マシュー・スウィート『ブルー・スカイ・オン・マーズ』(ロゴデザインのみ)
- TM NETWORK『Major Turn-Round』
- エレクトリック・シープ『SWEEP』(日本のバンドである)
その他の作品
- HARVEST(EMI)、VERTIGO、NEPENTHA(VERTIGOの姉妹レーベル)、FLY(蠅のイラスト)、CARNABY(後期:蟹のイラスト)レコードなどのロゴとレーベル面のイラスト。
- ヴァージン・レコードの初期のロゴとレーベル面のイラスト。
- Yessongs (ビデオ・イエスのライブ・ビデオのアートワークを担当)
- イン・ザ・ビッグ・ドリーム (アンダーソン・ブラッフォード・ウェイクマン・ハウのプロモーション・ビデオのアート・ワークを担当)
- テトリス(TETRiS)のタイトルロゴ(特に2002年以降のガイドラインに対応した作品のほとんどで使用されている)。
- パソコン用画像処理ソフトウェア テンプレート:仮リンクの監修。開発者のテンプレート:仮リンクとロジャー・ディーンはイエスのスティーヴ・ハウのCDのジャケット作成に共同参加している。なお、日本において Kai's Power Tools の初めのバージョンを販売していたソフトウェア会社ビーピーエス(2001年に解散)の会社名ロゴ・マークのデザインもロジャー・ディーンの手によるものだった。同社の発売していたゲーム・ソフト『スーパー ブラック オニキス』のパッケージなどのイラストも担当していた。
- ABWHフォント
脚注
出典
参考文献
オリジナル
- Views(画集・1975 / 新版・2009)
- Album Cover Album(写真集・1976 / 新版・2008)※レコード・ジャケットの歴史を紹介
- Magnetic Storm(画集・1984 / 新版・2009)
- Views(DVDビデオ・2002)
- Dragon's Dream(画集・2009)
- YesSongs 40周年記念HDニューマスター版(ブルーレイ・ビデオ / 2012)
日本語
関連項目
外部リンク
テンプレート:イエス (バンド)- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ 2.0 2.1 2.2 2.3 2.4 2.5 2.6 テンプレート:Cite web
- ↑ 3.0 3.1 テンプレート:Cite web
- ↑ 黒田史朗著「イエス」p.165
- ↑ 黒田史朗著「イエス」p.252
- ↑ テンプレート:Cite web テンプレート:リンク切れ