ヒプノシス
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ヒプノシス (Hipgnosis) は、1968年に結成されたイギリスのデザイン・グループ。メンバーはストーム・ソーガソン、オーブリー・パウエル、ピーター・クリストファーソン。
概要
1970年代を中心にピンク・フロイド、ジェネシス、レッド・ツェッペリンと言った数々のアーティストのアルバム・ジャケットを手掛ける[1]。ロック界においては、イエスの一連の作品で知られるロジャー・ディーンと共に、音楽ファンから親しまれている存在である。
レコード・ジャケットを芸術作品としての表現の域にまで高めた先駆者。ただし、活動初期の頃はレコード会社側との軋轢もあったようで、1970年の『原子心母』の「牛」のジャケットを提示した際には難色を示された。特にアルバム・タイトルもアーティスト名も表記されていないことに反対の声が挙がったが、結果的に全英1位を記録したことで「その後の仕事がやりやすくなった」という。
イマジネーションに溢れた創造的な作風が特徴で、現実なのか非現実なのか解らないようなジャケットも多い。「見る者に考えさせる」ということも、ひとつのコンセプトであるという。また、矛盾や対比といった「二面性」も主要なテーマになっている。収録された音楽を聴かずにデザインをすることもあるという。
ヒプノシスは1983年に解散したが、ストーム・ソーガソンはその後もピンク・フロイドやドリーム・シアターを始めとした多くのアーティストのアルバム・ジャケットのデザインを手掛けていた。またピーター・クリストファーソンはディレクターとしてイエスやヴァン・ヘイレンのミュージック・ビデオをプロデュースしている。
ヒプノシスの代表作品
- ピンク・フロイド
- レッド・ツェッペリン
- 聖なる館 - Houses of the Holy (1973)
- プレゼンス - Presence (1976)
- イン・スルー・ジ・アウト・ドア - In Through the Out Door (1979)
- 最終楽章 - Coda (1982)
- ジェネシス
- 眩惑のブロードウェイ - The Lamb Lies on Broadway (1974)
- トリック・オブ・ザ・テイル - A Trick of the Tail (1976)
- 静寂の嵐 - Wind & Wuthering (1976)
- そして3人が残った - And Then There Were Three (1978)
- ピーター・ガブリエル
- ピーター・ガブリエル - I (1977)
- ピーター・ガブリエル II - II (1978)
- ピーター・ガブリエル III - III (1980)
- イエス
- ウイングス
- ヴィーナス・アンド・マース - Venus & Mars (1975)
- スピード・オブ・サウンド - Wings at the Speed of Sound (1976)
- エマーソン・レイク・アンド・パーマー
- トリロジー - Trilogy (1972)
- 10cc
- オリジナル・サウンドトラック - The Original Soundtrack (1975)
- びっくり電話 - How Dare You? (1976)
- 愛ゆえに - Deceptive Bends (1977)
- エレクトリック・ライト・オーケストラ
- エレクトリック・ライト・オーケストラ (1971)
- E.L.O. 2 (1973)
- ブラック・サバス
- テクニカル・エクスタシー - Technical Ecstasy (1976)
- ネヴァー・セイ・ダイ - Never Say Die! (1978)
- UFO
- 現象 - PHENOMENON (1974)
- フォース・イット - FORCE IT (1975)
- ノー・ヘヴィー・ペッティング - NO HEAVY PETTING (1976)
- 新たなる殺意 - LIGHTS OUT (1977)
- 宇宙征服 - OBSESSION (1978)
- UFOライヴ - STRANGERS IN THE NIGHT (1979)
- バッド・カンパニー
- バッド・カンパニー - BAD COMPANY (1974)
- クォーターマス
- クォーターマス - Quatermass (1970)
- ロジャー・テイラー
- グレイヴィー・トレイン
- グレイヴィー・トレイン - Gravy Train (1970)
- パナマ・リミテッド
- インディアン・サマー - INDIAN SUMMER (1970)
- スティーヴ・ヒレッジ
- ライヴ・ヘラルド - Live Herald (1979)
- 松任谷由実
- 昨晩お会いしましょう (1981)
- 夕闇をひとり (1981)
- VOYAGER (1983)
- コンパートメント TRAIN OF THOUGHT (1984, 2002)
- The Collar of the Dove -モロッコの夢- (1985)
- 雪月花 (2003)
- YUMING FANTASY (2012)
注
- ↑ ピンク・フロイドのアルバム『アニマルズ』(1977年)において、ロジャー・ウォーターズが“Sleeve design by Roger Waters Hipgnosis”と勝手に表記してしまい、それ以来ヒプノシスはピンク・フロイドのデザインをやめた。その後、ウォーターズ脱退後の新生フロイドによる1987年のアルバム『鬱』でピンク・フロイドのジャケット制作に復帰している。