レディ・ジョーカー
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テンプレート:Portal 『レディ・ジョーカー』は、高村薫原作の小説。1995年から1997年にかけて週刊誌「サンデー毎日」に連載され、1997年に単行本化(毎日新聞社)された。グリコ・森永事件から着想を得て書かれた作品と見られている。
大手ビール会社で労働組合運動に関わった兄の死をきっかけとして、一人の薬局店主が営利誘拐を計画し、警視庁刑事、トラック運転手、旋盤工、在日朝鮮人の信用金庫職員と共に実行。さらに、営利誘拐事件の被害者となったビール会社の利益供与事件も絡み、複雑なストーリー構成になっている。
目次
登場人物
犯行グループ関連
- 岡村清二
- 元日之出麦酒社員。青森県戸来村(現在は青森県新郷村)出身。東北帝国大学(現在の東北大学)理学部を卒業して日之出麦酒に入社。労組運動に関わったとして解雇される。秋川市(現在の東京都あきる野市)郊外の老人ホームに入所していたが死亡。映画では「物井清二」のまま。
- 物井清三
- 物井薬局店主。岡村清二の弟。東京都大田区で小さな薬局を営む。兄・清二の死をきっかけに、日之出麦酒の社長を営利誘拐しようと計画。無類の競馬好きで競馬場に足繁く通う。
- 半田修平
- 警視庁巡査部長・蒲田警察署刑事課強行犯捜査係。物井の競馬仲間。蒲田警察署の部長刑事。品川警察署の刑事だった1990年に、秦野浩之が起こした日之出麦酒への業務妨害事件の応援捜査に携わった。最近刑事を続けることにストレスを感じる。
- 松戸陽吉
- 旋盤工。物井の競馬仲間。怪我で指を2本失っている。通称「ヨウちゃん」。
- 高克己
- 在日朝鮮人三世。物井の競馬仲間。慶應義塾大学卒の信用金庫職員。地下金融に通じている。
- 布川淳一
- トラック運転手。物井の競馬仲間。元自衛官、障害を持つ娘・さちと病弱な妻を抱える。「布川」は「ぬのかわ」と読む。
- レディ
- 布川の娘。障害を持つ。本名は「布川さち」。
日之出麦酒社内関連
- 城山恭介
- 日之出麦酒代表取締役社長。東京大学法学部を卒業後、日之出麦酒に入社。レディ・ジョーカーグループに誘拐され現金20億円を要求される。
- 白井誠一
- 日之出麦酒副社長。ビール事業本部長を兼任。
- 倉田誠吾
- 日之出麦酒副社長。事業開発本部長を兼任。
- 杉原武郎
- 日之出麦酒取締役。ビール事業本部副本部長を兼任。映画では「城山武郎」となっており、城山恭介とは兄弟との設定。
- 野崎孝子
- 日之出麦酒の社長秘書。
犯行グループの周辺関連
- 秦野浩之
- 歯科医。東京都世田谷区で歯科医院を開業。日之出麦酒に脅迫文書とテープを送りつけるが、小田急線の電車に飛び込み自殺。
- 秦野美津子
- 秦野浩之の妻で、物井清三の娘(亡くなった妻の連れ子)。映画では死亡したとの設定。
- 秦野孝之
- 秦野浩之の長男。東京大学薬学部の学生だったが、日之出麦酒の入社試験に不合格、その後首都高速で事故死。
- 杉原佳子
- 現在は糸井佳子。杉原武郎の娘。秦野孝之が東京大学に通っていた時に交際していた。結婚し一児をもうける。映画では役名が「城山佳子」。
- 西村真一
- 広域暴力団成和会系企業の舎弟。部落解放同盟の関係者と名乗り、秦野浩之とコンタクトを取る。映画では役名が「西村寛司」。
マスコミ関連
- 根来史彰
- 東邦新聞東京本社社会部・遊軍長。司法記者が長く、スクープ合戦よりも調査報道を得意とする。暴力団・総会屋・代議士などで構成されている地下金融グループを長年追及してきた。レディ・ジョーカー事件に便乗し、日之出麦酒への不当な利益供与を画策している地下金融グループの核心に迫っていたが行方不明に。
- 久保晴久
- 東邦新聞東京本社社会部・警視庁クラブ記者(捜査第一課担当)。典型的な事件記者で、スクープ合戦を得意とする。
- 菅野哲夫
- 東邦新聞東京本社社会部・警視庁クラブキャップ。公安警察の情報に通じている。
- 佐野純一
- 毎日スポーツ契約記者。根来と協力して地下金融グループを追及していたが、行方不明に。
- 菊池武史
- 投資顧問会社G・S・C代表。東邦新聞大阪本社社会部記者OB。東邦新聞を退社後投資顧問会社の代表に就任。実際には地下金融グループの一員として、根来史彰を遠まわしに脅迫するなど、ダーティーワークの一部をやらされている。
- 岡部智彦
- 大手証券会社の証券マン。根来史彰のネタ元。地下金融グループと近い。
地下金融グループ
- 田丸善三
- 総会屋グループ岡田経友会顧問。日之出麦酒を恐喝し利益供与を受けていた。
- 酒田泰一
- 民守党代議士。同じく、日之出麦酒利益供与事件に関わる。
- 青野昭二
- 酒田泰一秘書。代議士・酒田泰一の秘書。
警視庁・検察庁関連
- 神崎秀嗣
- 警視庁刑事部捜査第一課長。
- 平瀬悟
- 警視庁警部補・刑事部捜査第一課特殊犯捜査係主任。
- 土肥勝彦
- 警視庁警部・大森警察署刑事課長代理。自称「連絡調整役」。顔に似合わず達筆である。特捜本部の戒名は土肥が書いたもの。映画では役名が「土肥正行」。
- 合田雄一郎
- 警視庁警部補・大森警察署刑事課強行犯捜査係長。詳細はマークスの山を参照。
- 刑事部捜査第一課主任であったが、殺人事件の捜査中にトラブルを起こしてしまい、横滑りで所轄署に出された。レディ・ジョーカー事件の特捜本部では、特命を帯びて日之出麦酒に社長秘書として派遣された。
- 安西憲明
- 警視庁警部補・大森警察署刑事課知能犯捜査係長。税理士資格を有することを見込まれ、レディ・ジョーカー事件の特捜本部では、日之出麦酒の帳簿捜査をしていたが、地下金融グループの菊池武史に取り込まれてしまい、退職する。故郷の福島県に帰郷し、税理士となる。
- 加納祐介
- 東京地方検察庁検事。詳細はマークスの山を参照。
映画
2004年12月11日公開。映画化構想に5年かかったと言われる。被差別部落問題を取り扱う部分があることから、一部で上映自粛の動きも見られた。
キャスト
- 物井清三:渡哲也
- 合田雄一郎:徳重聡
- 半田修平:吉川晃司
- 平瀬悟:國村隼
- 布川淳一:大杉漣
- 高克己:吹越満
- 松戸陽吉:加藤晴彦
- 城山佳子:菅野美穂
- 白井誠一:岸部一徳
- 城山恭介:長塚京三
- 倉田誠吾:清水綋治
- 城山武郎:辰巳琢郎
- 土肥正行:外波山文明
- 神崎秀嗣:矢島健一
- 西村寛司:松重豊
- 物井清二:谷津勲
- 秦野浩之:綾田俊樹
- 秦野孝之:永岡佑
- レディ:斎藤千晃
- 城山玲子:島ひろ子
- 安西憲明:菅田俊
スタッフ
- 原作:高村薫
- 監督:平山秀幸
- 脚本:鄭義信
- 企画:近藤晋
- 総括プロデューサー:永江信昭、藤田裕一
- プロデューサー:横手実、藤田義則、福島聡司
- 撮影:柴崎幸三
- 照明:上田なりゆき
- 美術:中澤克巳
- 録音:宮本久幸
- 編集:川島章正
- 音楽:安川午朗
- 装飾:松本良二
- 衣裳:岩崎文男
- ヘアメイク:森田京子
- 視覚効果:橋本満明
- キャスティング:安藤実
- 助監督:蝶野博
- 製作担当:宿崎恵造
- 製作管理:安村重幸
- 公式サイト製作:デジタルハリウッド
- 企画・製作:日活
- 特別協力:石原プロモーション
- 製作:「レディ・ジョーカー」製作委員会(日活、東映、毎日新聞社、テレビ朝日、葵プロモーション、スポーツニッポン、日本出版販売)
- 配給:東映
- 上映時間:121分
テレビドラマ
2013年3月3日より4月14日までWOWOWの「連続ドラマW」枠で放送された。全7話。主人公が警察側の人物となったことで刑事ドラマとして制作されている。2010年に同枠で放送された『マークスの山』に引き続き、合田刑事役を上川隆也が演じる。石黒賢演じる加納検事も前作に引き続き登場している。
キャスト(テレビドラマ)
- 合田雄一郎 - 上川隆也: 大森中央署刑事課強行係警部補。
- 城山恭介 - 柴田恭兵: 日之出ビール代表取締役社長。
- 半田修平 - 豊原功補: 蒲田北署刑事課強行係巡査部長。
- 八代芳伸 - 山本耕史: 東邦新聞東京社会部記者。
- 野崎孝子 - 矢田亜希子: 日之出ビール社長秘書。
- 杉原佳子 - 本仮屋ユイカ: 城山の姪(妹の娘)。
- 布川淳一 - 板尾創路: トラック運転手。
- 平瀬悟 - 津田寛治: 警視庁捜査一課警部補。
- 杉原武郎 - 光石研: 日之出ビール ビール事業本部副部長 兼 取締役。城山の妹の夫。
- 杉原晴子 - 手塚理美: 城山の妹。佳子の母。杉原の妻。
- 松戸陽吉 - 金子ノブアキ: 旋盤工。
- 高克己 - 高橋努: 信用金庫職員。
- 田部 - 小市慢太郎: 東邦新聞東京社会部デスク。
- 三好賢治 - 中村育二:蒲田北署刑事課課長
- 吉原 - 南条弘二:大森中央署 警部
- 土肥 - モロ師岡:
- 安西 - 芦川誠:
- 加納祐介 - 石黒賢(特別出演): 東京地検特捜部検事。合田の元義兄。
- 田丸善三 - 中村嘉葎雄: 岡田経友会(総会屋)顧問。
- 神崎秀嗣 - 渡辺いっけい: 警視庁刑事部捜査第一課課長。
- 倉田誠吾 - 益岡徹: 日之出ビール ビール事業本部長 兼 取締役副社長。
- 物井清三 - 泉谷しげる: 薬店店主。
- 白井誠一 - 石橋凌: 日之出ビール 事業開発本部長 兼 取締役副社長。