薬局

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薬局(やっきょく、英:pharmacy, chemist's, drug store)とは、薬剤師が販売又は授与の目的で調剤の業務を行う場所のことであり、医薬品の販売も行えるほか、医療機器や一般雑貨なども扱うこともある。以下、日本の薬局について述べる。

ファイル:ういろう.jpg
ういろう薬局
(小田原市内)

概要

薬局は必ず調剤室を有しており、薬剤師が常駐して医師等の処方箋に基づいた医薬品調剤することができる。平成18年の医療法改正により、『調剤を実施する薬局』は医療提供施設と位置づけられた。これにより薬局が単なる医薬品販売店舗でなく、調剤という医療を提供する場所でもあることが明文化された。

薬局の名称

名称使用制限及び販売・情報提供方法等

「薬局」という名称は、調剤を主に行ういわゆる調剤薬局だけを指すものではない。調剤室を備えるなどの施設基準を満たし、薬局開設許可を受けていれば、ドラッグストアも薬局である。薬剤師が不在の場合は薬局を閉めること。なお、薬剤師不在で登録販売者だけがいる状態の場合は一般用医薬品(第2類・第3類)を販売することもできない。また、一般従事者の場合、薬剤師(第1類・第2類・第3類医薬品)または登録販売者(第1類医薬品を除く、第2類・第3類医薬品)の管理・指導の下であれば対面で販売授与は可能である[1]

 第一類医薬品の情報提供について、省令(規則)で購入する者等から説明を要しない旨の意思表示があった場合においても薬剤師が必要と判断した場合には、積極的に情報提供を行わせる必要があること(平成21年厚生労働省令第10号)[2]。なお、この情報提供については、省令(規則)より上位に立つ法律の薬事法第36条6項4号で、医薬品を購入し又は譲り受ける者から説明を要しない旨の意思の表明があつた場合には適用しない。(なお、第一類医薬品は積極的に情報提供は必要、第二類・は努力義務・第三類は不要、なお相談があった場合は全ての医薬品について義務)、となっている。[3]


薬局業務運営ガイドラインでは、調剤だけではなく「一般用医薬品の供給に努めること」とされている。

また、薬局開設許可を受けていても、実際は調剤を行なわず保険薬局の指定も受けていない店舗も存在する。これは主に「薬局製剤」(都道府県知事の許可を受け、薬局が製造販売できる医薬品。「薬局製造医薬品」・「薬局製造販売医薬品」などと呼ぶ地域もある)の販売を目的としている場合である。

薬事法第6条により、原則として薬局の名称は、薬局開設許可を受けた店舗でしか使用できない。従って調剤室がない店舗(一般販売業の店舗)や薬剤師のいない店舗(登録販売者のみの店舗)では店舗名に薬局の名称が使用できない[4]

ファイル:Sugi Pharmacy Ayukawa.JPG
スギ薬局の店舗。「処方せん受付」を行うため、「薬局」と名乗ることができる。

一方で、薬局以外の店舗での医薬品販売形態として店舗販売業[5]があり、こうした店舗形態の1つに「ドラッグストア」がある。薬店ドラッグなどの名称は医薬品を扱っていない店舗でも、法令上は使用が許されるため、ドラッグストア・チェーンで「○○ドラッグ」「クスリの○○」「○○薬品」といった名称が採用されている。これらの店舗では薬剤師の配置義務がなく(2009年度以降)、調剤を行うことができないほか、販売できる医薬品に制限がある。また、登録販売者か薬剤師が店舗管理者となり、登録販売者か薬剤師が常駐して、消費者の相談などに常時対応できる体制が必要である。反対に、「ドラッグストア」形態であっても、薬剤師が常駐し処方箋を受けて調剤する薬局としての機能を有した店舗もあり、そのようなものは「調剤併設型ドラッグストア」と呼ばれる[6]

なお、後述する病院の薬局は薬局開設許可を受けないが、例外的に使用が認められている[7]

薬局の種類

薬局は薬事法に従って6年間の営業許可を受けることが求められる。経営に特別の資格は求められないが、管理者は薬剤師であることが求められる[6]

保険薬局

多くの薬局は、健康保険制度による保険調剤が可能な保険薬局である。この保険薬局は他の医療機関から発行された院外処方箋を受け付けて調剤を行う薬局である。 保険薬局は独立した医療機関であるため、一般道路に接続された独立の建物内に設けられ、その従事者と管理者といった人員や物品と会計処理が他の医療機関と明確に区別されていなければならない[6]医薬分業が推進されてからは、患者が複数の病院医院診療所)から処方された処方箋を、同じ薬局で一元管理することが可能になり、複数の病院にかかる場合でもかかりつけ薬局を決めれば、患者ごとに薬剤服用歴などを管理することが実現できる。また、2008年4月1日からは医師の許可がなくても「変更不可」でない限り、患者の求めに応じて処方薬を薬剤師が選んだ後発医薬品(ジェネリック医薬品)に変えることができるように処方箋様式が変更された。これにより、患者が先発品と後発品の選択がしやすくなっている。

基準薬局

日本薬剤師会では、かかりつけ薬局の選択基準となるように基準薬局制度を行っている。日本薬剤師会が定めた基準を満たして都道府県の薬剤師会の認定を受けた保険薬局は「基準薬局」を名乗ることができる。2007年より認定基準の変更が実施されているが、2015年3月31日で発展的解消される予定である[8]

病院の薬局

病院、診療所など医療施設内に設置された薬局と呼ばれる施設は、法的には調剤所といい、その施設の医師の処方せんに基づいた調剤をする施設である。これには薬局開設許可は不要であるので、他の医療施設からの処方箋を調剤することはできず、また一般用医薬品を販売することはできない。

近年では、厚生労働省の医薬分業推進もあり、入院患者を除き、外来患者に対しては一般薬局が営業していない夜間深夜のみ調剤する医療施設がほとんどである。

薬局距離制限違憲事件

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統計

  • 平成23年(2011年)度末現在の薬局数 54,780 [9]
  • 平成21年(2009年)度末現在の薬局数 53,304 [10]

シンボル

出典

  1. 「薬事法の一部を改正する法律等の施行等について」p3-13の薬局に関する事項 http://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/ippanyou/pdf/shikoutuuti_kaitei110331.pdf
  2. 一般用医薬品の情報提供の方法等(新施行規則第159条の15から第159条の17まで関係)[1]
  3. 薬事法(昭和三十五年八月十日法律第百四十五号)最終改正:平成一八年六月二一日法律第八四号[2]
  4. 例として、大賀薬局→大賀ファーマシー、示野薬局→シメノドラッグなどがある。ただし、スギ薬局は全店舗に調剤室を併設しているため、薬局の名称を使用できる。
  5. 店舗販売業は2008年度までは、一般販売業薬種商販売業特例販売業と呼ばれた。
  6. 6.0 6.1 6.2 井手口直子、木村憲洋著、『薬局のしくみ』、日本実業出版社、2006年2年10日初版発行、ISBN 453404027X
  7. テンプレート:Cite web
  8. テンプレート:Cite web
  9. [平成23年度衛生行政報告例の概況 | format=PDF]
  10. テンプレート:Cite web

関連項目

外部リンク


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