モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル

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テンプレート:Infobox Filmモンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』(Monty Python and the Holy Grail)は、1974年に公開されたモンティ・パイソンによる低予算で作られたコメディ映画イギリスアーサー王伝説をもとにしたパロディ作品である。

作品概要

制作費がとても少なく(229,575ポンド)、城のセットに本物の城跡(Doune CastleCastle Stalkerなど)を使用したり、実写の代わりにアニメを用いたり、役者やセットを何度も使い回しているが、完成度は高い。モンティ・パイソンのメンバーの1人であるテリー・ジョーンズ中世の歴史学研究家であるため、アーサー王伝説を扱った映画の中で最も時代考証が正しい映画だと言われている。なお、ジョーンズによれば「アーサー王は10世紀頃の人物と言うことになっているけれど、『アーサー王物語』が成立したのは14世紀頃のため、その時代の服装を採用した」と語っている。

本人たちの予想以上のヒットとなってメンバーは胸をなで下ろした、この作品の直後に公開されたまじめなアーサー王映画で大爆笑が起きた、という逸話もある。

2005年には、エリック・アイドルが本作を元にミュージカルコメディ劇『スパマロット』を作り、トニー賞を受賞した。

あらすじ

932年のイングランド、アーサー王(グレアム・チャップマン)と従者パッツィー(テリー・ギリアム)は旅を続けていた。最初に訪れた城でココナッツの議論に振り回された後、疫病に苦しむ村や、やたらと政治を批判する農民、腕や足を切られても「痛くない」と言い張る黒騎士などに出会う。その後、魔女の正体を見抜いたベディヴィア卿(テリー・ジョーンズ)の腕を認め、円卓の騎士にする。それから、ガラハッド卿(マイケル・ペイリン)、ランスロット卿(ジョン・クリーズ)、ロビン卿(エリック・アイドル)などがアーサー王に忠誠を誓い、円卓の騎士が揃う。

あまりにバカらしいキャメロット城には行かなかった後、彼らは神の命を受けて聖杯を探すことになるが、最初に出会ったフランス人の城からは侮辱の言葉を浴びせられ、「トロイの木馬」を真似た木ウサギの作戦も失敗する。そこでいきなり現代の映像が入り、歴史学者がアーサー王について語るが、突然騎士に切り殺される。

手分けをして聖杯を探すことにしたアーサー王一行。ロビン卿は、三頭の騎士に出会うが、すぐに逃げた。ガラハッド卿は、若い美女(キャロル・クリーヴランド等)ばかりが暮らす「アンスラックス城」で誘惑を受けた。ランスロット卿は、無理やり結婚させられる王子のSOSの手紙を女性のものと勘違いし、城に飛び込んで大殺戮をした。アーサー王とベディヴィア卿は聖杯のありかの手掛かりをつかむが、森の中で「Niの騎士」に出会い、盆栽を持ってくるように命令される。盆栽を持って行った後も無茶な命令をされるが、「it」という言葉が弱点のNiの騎士を「it」だらけの会話で撃退した。

合流したアーサー王一行は、妖術師ティムに会う。ティムと共に聖杯の手掛かりのある「カルバノグの洞窟」へ行くが、洞窟の入り口を護る白ウサギが実は凶暴な殺人ウサギで、何人もの騎士が命を落とす。「聖なる手榴弾」でどうにか殺人ウサギを撃退し、洞窟の中に入ると、壁には「ア゛ア゛-」なる謎の言葉が。その直後、魔獣ア゛ア゛-が出現、追いまくられるが、アニメ作家が心臓発作を起こし、アニメの魔獣も消えた。アーサー王たちは、最後の試練である「死の橋」へ向かう。これは老人の出す3つの質問に答えないと渡れない橋で、ランスロット卿は渡った(直後に警察に逮捕される)が、ロビン卿とガラハッド卿は命を落とす。

橋を渡ることができたアーサー王とベディヴィア卿は、ついに聖杯のある「ア゛ア゛ーの城」にたどり着くが、なんとそこには前に出会ったフランス人が。またも侮辱を受けたアーサー王は、聖杯を奪還せんと兵を集め、城に突撃しようとするが、パトカーがやってきて、歴史学者の殺人容疑で逮捕されてしまう。

制作の背景

台本の作成

モンティ・パイソン・アンド・ナウ』を制作したパイソンズだったが、単なるスケッチの寄せ集めであるその作品には満足していなかった。次に書き始めた台本のテーマは「アーサー王と円卓の騎士」であった。もともと最初の台本では時代設定は中世と現代の2つにまたがっており、アーサー王はロンドンの高級デパートハロッズで聖杯を見つけるというストーリーだったが、オックスフォード大学で共に歴史学を学んでいたジョーンズペイリンの希望で初めから終わりまですべて中世の話に書き直された。その中には、低予算を逆手にとった秀逸なギャグ、「馬の足音の代わりに2つに割ったココナッツを打ち鳴らし、馬に乗っているかのようなパントマイムをする」ものや、衛兵とのツバメを巡る不毛な議論、王に対して口答えをする民衆のスケッチなどが含まれていた。

空飛ぶモンティ・パイソン』でカルト的な成功をおさめていたパイソンズであったが、映画会社からの資金の援助はほとんどなく、映画製作の予算はパイソン・ファンであるピンク・フロイドレッド・ツェッペリンなどの音楽業界の事務所からかき集められた。

多難な撮影

ファイル:Scotlandcastlestalker.jpg
「ア゛ア゛-の城」ことストーカー城。個人の住宅のため、中で撮影はしていない。

監督はパイソンズの中で最も演出、編集に興味を持っていたテリー・ジョーンズテリー・ギリアムの2人の共同監督に決定した。しかし、コメディーとしての役者の演技に重点をおくジョーンズと、画面のビジュアル的要素に重点をおくギリアムとでは、意見がぶつかり合うこともしばしばであった。演出は2人の交代制であったが、お互いのカメラ位置をいちいち直しあったりするため、現場では口論が絶えなかったという。また、他の役者たちと監督の間の空気も険悪なものであった。

『ホーリー・グレイル』は、5週間という短期間で撮らなければならなかった。2人の監督はスコットランドロケハンをし、撮影に使う城を決定していた。しかし、収録が始まる直前に、突然環境局から「城を撮影に使用してはいけない」という通達が送られ、急きょ個人所有の城を探すことになる。それで見つけたのがスターリングにあるドゥーン城(建物のシーンのほとんどがここで撮影された)とラストシーンのみ撮影に使用されたストーカー城であった。

撮影初日の峡谷を歩くシーンでは、登山家のはずのグレアム・チャップマンが震えて歩けなくなるという事態が起こった。原因は当時彼が行っていた断酒にあり、その影響でセリフを忘ることも多かった。また、撮影初日にはカメラも故障、映像と音声が合わないインサート・カット専用のカメラで撮影された。予算が少ないため、照明の量が十分ではなく、一部のシーンではたいまつを照明代わりにして撮影している。

パイソンズは何度も試写会をし、その都度修正を入れて観客の手ごたえを見た。パイソンズはプリントをアメリカに持ち込み、映画会社と契約、ニューヨークを中心に大ヒットをとばした。その後イギリス、その他各国でも上映され、大きな利益を出した。

スタッフ・キャスト

日本版DVD

2枚組のDVDユニバーサルより2002年3月21日に発売されている。山田康雄らによる日本語吹き替えも収録されている。さらにその日本語台本を元にした直訳英語字幕が世界共通で収録されている。字幕は、日本語と英語の他にはフランス語スペイン語、更には進行台本字幕と、「本作が嫌いな人用」と称してウィリアム・シェイクスピアの『ヘンリー四世:第二部』の英語字幕が流れるバージョンがある(全く無関係な作品だが、稀に本編とシンクロする箇所があり、また格調高い字幕とコメディの台詞のギャップが笑いを誘うようになっている)。

かつてレーザーディスクで発売された当時に、既に物故していたチャップマンを除くメンバー全員の映画にまつわるコメンタリー音声が収録されたが、DVD化に際してはこれに加えて「世界共通特典」が大量に盛り込まれた(盛り込みすぎで発売が半年以上遅れたというエピソードまであるテンプレート:要出典)。

特典ページのメニューは、ギリアムがストックから新しいアニメーションを作成して提供している。内容もジョーンズとペイリンが撮影地巡りをしながら当時の思い出話を語ったりする50分ものコーナー、当時のポスターや予告編、メイキングドキュメント等々に加え、ペイリンが劇中のネタを元にした新作スケッチを披露したりという熱の入れぶりである。

2004年には新規特典を追加した再発DVDが発売され、日本版は2008年ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントより発売された。初版DVDにあったオリジナルのモノラル音声が除かれ、日本語吹き替えの一部が欠損している。なお、このDVDでのナレーションが、広川太一郎の最後の仕事となった。

2012年にはBlu-ray Discが発売された。これには、DVD版の特典に加え、未収録アニメーション集(ギリアムの解説付き)、未公開シーン及びNGシーン(ジョーンズの解説付き)、iPad限定特典として「The Holy Book of Daysセカンド・スクリーン」が新規に収録される。

ゲーム

発売:1996年 制作:7th LEVEL 日本語版発売:ポニーキャニオン CDのレーベルにBEST CD-ROM GAME of 932 A.D.?の記載がある。

関連項目

外部リンク

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