モロッコ料理
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モロッコ料理(アラビア語:مطبخ المغرب)は、ベルベル人の料理が元になり、アッバース朝時代にアラブ人によってもたらされた、サーサーン朝ペルシア料理の影響を強く受けた中世アラブ料理、ムーア人と後にスペインを離れたモリスコ人によってもたらされたアラブ・アンダルシア料理に影響を受けている。トルコ領土であったアルジェリアからもたらされたトルコ料理の影響もいくぶん見られる。最も有名なモロッコ料理であるクスクスは、ベルベル人が食べ始めたと推測されているが、その歴史は大変古く誰が食べ始めたか確かではない。
概要
モロッコ料理では、クミン、パプリカ、シナモン、サフランがよく用いられ、ハリッサはあまり使わないためチュニジア料理ほど辛くない。よく使われるハーブにイタリアンパセリやコリアンダーリーフがある。料理に干しぶどう、デーツ、アーモンド、レモンの塩漬け、オリーブをよく用いるのも特徴的である。東地中海地方(マシュリク)のアラブ料理とは異なり、ヨーグルトの消費は少ない。主食はホブズまたはキスラと呼ばれるパンであり、円形で厚みがあり、しばしばアニスが入っている。
モロッコ料理では羊肉が最もよく用いられる肉である。北アフリカで育てられている羊の種類は、脂肪のほとんどを尻尾の近くに蓄える。そのため、羊肉特有の臭みはあまり強くない。鶏や鳩など家禽の肉もよく食べられる。ラクダやジャッカルを食用とする地方もある。
ミントと砂糖を入れた緑茶(アッツァイ)はとても人気があり、茶葉は中国緑茶の珠茶や珍眉茶が好まれる。
2010年、イタリア料理、ギリシア料理、スペイン料理と共に、モロッコ料理が、地中海の食事としてユネスコの無形文化遺産に登録された。
モロッコの有名な料理
- クスクス
- バスティラ(en:Pastilla بسطيلة) - ハトや鶏の肉を玉葱、卵、アーモンドなどと一緒にワルカで包んで焼いたパイ。粉砂糖とシナモンをふりかけて食べるものが有名。パスティラ、ブスティラ、ビスティーヤなどとも呼ばれる。
- タージーン(طاجين)- 円錐形の蓋のついた土鍋で蒸し煮にした煮込み料理。
- タンジア(ar:طنجية) - 口の狭い壷に牛や羊の肉と香辛料・塩漬けのレモン・バター・にんにくを入れて紙でふたをし、モスクのハンマームの炉の灰に埋めてゆっくりと蒸し煮にした料理。出勤前にタンジアを持ってモスクに行ってタンジアを灰に埋めれば、仕事が終わる頃にはタンジアがほどよく煮上がるため、独身男性向きの料理とされる。
モロッコ料理の食材
- ワルカ(ورقة)- 紙のように薄いパイ生地。バスティラやデザートに用いる。
- アルガン油(Argan oil) - アカテツ科アルガンノキ(Argania Spinosa)の種子から絞った油。クスクスやサラダに用いる他、パンにつけて食べる。
- スメン(سمن)- 澄ましバター。ハーブを練り込んだものや何年も醗酵させたものがある。
- ルアス=ル=ハーヌート(رأس الحانوت)(en:Ras el hanout)- カルダモン、メース、ナツメグ、シナモン、唐辛子などをブレンドした調味料。
- メルゲーズ(مرقاز)(en:Merguez)- 羊肉や牛肉の辛いソーセージ。
参考文献
- Wolfert, Paula. Couscous and Other Good Food from Morocco. Perennial Library, New York, 1973.