ファミリー・一般向けアニメ

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ファミリー・一般向けアニメ(ファミリー・いっぱんむけアニメ)とは 、年代や男女を問わず家族全員で鑑賞して楽しめるアニメ作品のことである。

概要

日本国内の多くのテレビ視聴者において、「アニメ」と聞いて連想する作品はこのジャンルのどれかの作品に当てはまる事が多い。

テレビ作品の場合は子供を中心とした家族とそのコミュニケーションをテーマにした作品が多い。よって視聴者層が広く、長寿番組となり、ニュース等の作品紹介や解説において『国民的アニメ』や『長寿アニメ』[1]として取り上げられやすい。視聴率においてはテレビアニメ作品の中ではトップクラスであり、テレビアニメ視聴率ベスト10以内にランキングされる作品の割合が高く、子供向け商品を出している企業はもちろん、それ以外のスポンサーも付きやすいためテレビ局や広告代理店にとって利益率が高いのも特徴といえる。それゆえにNHKの『忍たま乱太郎』(1993年 - )を除くほとんどが民放の作品である。

主に18時 - 20時の時間帯に放送されるが、単発の作品をテレビで放映する場合は20時・21時 - 23時台の枠に放送する場合もある(『金曜ロードSHOW!』枠で放映される「スタジオジブリ作品」及び『名探偵コナン』(テレビ版:1996年 - 、映画版:1997年 - )の映画、『ルパン三世』(1971年 - )の映画や長編シリーズなど)。

アニメ映画(アニメーション映画)では1-2年おきに上映される「スタジオジブリ作品」は近年の宮崎駿監督作品[2]の場合、約150億円から300億円の興行収入を得ており、毎年上映される『ドラえもん』(テレビ版:1973年1979年 - 2005年2005年 - 映画版:1980年 - 2004年・2006年 - )、『名探偵コナン』、『ポケットモンスター』(テレビ版:1997年[3]・1998年 - 映画版:1998年 - )シリーズの映画版(劇場版)は3作品を足して年間100億円以上、更に『クレヨンしんちゃん』(テレビ版:1992年 - 、映画版:1993年 - )を足すと年間約120億円程度の安定した興行収入があり、邦画業界最大手である東宝の大黒柱であり同社の収益を支えている。また1990年代以降は同社がアニメのみならず、ファミリー向け映画全般に強い企業イメージを形成している。

作品の特徴

TVアニメ作品の場合は『名探偵コナン』や『ONE PIECE』(テレビ版:1999年 - 映画版:2000年 - )など少年漫画を単純にアニメ化した少年向けアニメもしくは男児向けアニメから発祥した作品を除いて比較的単純な作画であり、それに加えて制作予算が他の全日帯アニメ作品と比べて多いためか作画が崩れることが少ない。ほとんどの作品が比較的早い段階[4]からハイビジョン制作へと移行している。

原作はギャグ漫画4コマ漫画から発祥した作品が多く(ただし前述の『名探偵コナン』、『ONE PIECE』はストーリー漫画である)、アニメ化当初はファミリーを狙った作品ではなく、原作本来が持つ毒(ブラックユーモア)がきつかった作品が、長い放映期間の間に毒の部分が徐々に薄れ、丸くなり当たり障りの無い本来の持ち味から乖離した方向へ変わった作品が多い(『サザエさん』(1974年 - )・『クレヨンしんちゃん』・『あたしンち』(2002 - 2009年)など)。

また、『ドラえもん』、『名探偵コナン』、『ONE PIECE』などアニメ化当初は子供向けアニメまたは少年向けアニメとして製作されたものが、長い放映期間の間に視聴対象自体が成長することにより大人にも普遍化した作品も多い。一方で、少年誌で連載されながらもアニメ化された当時は連載が20年目を迎え、既に大人にも原作の知名度があった『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(1996年 - 2008年[5]、以下『こち亀』)は当初からファミリー向けを狙って制作された。

少女漫画を原作とした少女向けアニメもしくは女児向けアニメからファミリー向けに変容した作品は、サザエさんの直前番組である『ちびまる子ちゃん』(1990年 - 1992年、1995年 - )の他は『わがまま☆フェアリーミルモでポン!』シリーズ(2002年 - 2005年)の第3シリーズ『わがまま☆フェアリーミルモでポン! ごおるでん』以降などがあるが、少年漫画を原作としたアニメと比べるとかなり少ない。

パッケージ販売

DVDVHSビデオなどの映像商品化はエピソード数が膨大な作品が多いため、レンタル店の在庫の負担を減らすなどの為に傑作選という形で選り抜きされる場合が多く、完全にはなされていないケースが多い(『ドラえもん』(第1期・1787話、第2期・600話以上)など)。レンタルのみで一般販売されない作品もある。『サザエさん』は全く映像ソフト化がされていないが、これは原作者とその遺族の意向も関係している。

それでも『名探偵コナン』・『ポケットモンスター』・『ルパン三世』など1話完結ではないストーリーアニメであり、ファンが多く存在する作品は完全収録されている。また1話完結型の『こち亀』も大部分がソフト化されているが、スペシャル番組などで放送された、芸能人がゲストで多数出演するエピソードが権利関係の都合でカットされており、これは『クレヨンしんちゃん』でも同様である。

現状

アニメ番組の中ではバラエティ枠などへの転換の為に、地上波民放全国ネット(独立UHF局衛星放送を除く)のゴールデンタイムから次々と撤退[6]する現状においても、このジャンルのアニメは多くの作品がゴールデンタイムのまま温存されている。

ゴールデンタイムから外れている『サザエさん』(放送開始からゴールデンタイムでなかった。再放送はゴールデンタイム)と『ちびまる子ちゃん』(同上。再放送なし)も含め、ゴールデンタイムの多くの番組や全日帯アニメのほとんどの作品で見られる視聴率低下の波を同様に受けており、どの番組も1990年代前半の水準と比べると、視聴率が2/3〜半分程度に落ちている。特に「スタジオジブリ作品」・『サザエさん』と『ちびまる子ちゃん』を除く作品の視聴者はあくまで子供と若者が主体であることから、それらの年代を中心としたテレビ離れの影響も受けている。

その中にはゴールデンタイムの番組で他局のニュース番組やバラエティー番組などとの厳しい競争において、打ち切りや別時間への枠移動(=格下げ)を考慮する基準となる8 - 10%台を割る番組も目立っており、視聴率の算定で少しでも有利にするために2番組を1つの番組として放映する作戦も見られ[7]、2004年春にフジテレビ系の『こち亀』と『ONE PIECE』を合わせた「アニメ7」と、2005年春から2009年春にかけては日本テレビ・読売テレビ系の『ブラック・ジャック』(2004 - 2006年)→『ブラックジャック21』(2006年)→『結界師』(2006年 - 2008年)→『ヤッターマン (2008年版)』(2008 - 2009年)と『名探偵コナン』を合わせた「アニメ☆7」がそれに該当していた。しかしどちらも自局や他局のニュース番組やバラエティー番組に比べて視聴率の低下を抑えることができず、後番組はバラエティー番組へ転換する形で枠移動となり、2004年末の「アニメ7」終了と同時に『こち亀』は2005年から2008年まで不定期放送となり、『ONE PIECE』は「アニメ7」終了から『こち亀』を放送していた枠での単独放映になり、2006年秋から日曜朝へ枠移動した。この枠移動によって30年以上前[8]から続いたゴールデンタイムのアニメ枠がバラエティー枠に変更する形で消滅した。また2009年春の『アニメ☆7』終了と同時に『ヤッターマン (2008年版)』は日曜朝へ枠移動し同年秋に終了、『名探偵コナン』も土曜夕方へ枠移動した。

『ドラえもん』・『クレヨンしんちゃん』などでも1時間スペシャルにしたところ、レギュラー放送時(30分枠)と比べて視聴率が伸びる傾向にあったため、一時はスペシャルを行う頻度が高くなっていた。この2作品は2014年現在もゴールデン枠を維持し続けている。その一方で『クレヨンしんちゃん』が2002年春に金曜19:30枠から土曜19:00枠に枠移動した時に新設され、2004年秋に再び金曜19:30枠に戻るときにゴールデンタイムから追い出される形でローカルセールス枠へ移動した『あたしンち』(2002 - 2009年)は2009年に終了した。

日本国外での評価

これらのアニメや原作漫画は日本と比較的文化が近い韓国中国台湾などの東アジアの国々で多くの作品が支持されており、人気を反映するかのように海賊版も多くが出回っている[9]。『クレヨンしんちゃん』のように中国企業が先に商標を取得するケースもある[10]

しかし文化や習慣が異なる欧米では一部の作品が青少年に有害とみなされて放映が制限されているケースがある。例えばアメリカ合衆国では日本の小学生に人気が高い『ドラえもん』や『名探偵コナン』は一部の有識者からは青少年に有害な番組と見なされがちである。殺人・暴力などのシーンが入っている『名探偵コナン』は現地の放送局では大人向けアニメ扱いで放映は深夜である。レイティングはPGとされており、子供の視聴に対しては親の同席が求められている。『ドラえもん』も現地在住の邦人向け日本語版を除いて[11]未放映であったが、2014年夏からウォルト・ディズニーが配給し、アメリカ人の嗜好に合わせてキャラクターの設定や脚本の一部を手直しすることで放送される予定である[12]。 なお、『サザエさん』に至っては世界一放送が長いアニメにも関わらず、海外ではほとんど放送されてなく日本ローカルの作品といえる。ただし、それは原作者とその遺族等の意向でもある。

脚注

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出典・参考文献

関連項目


  1. ただし『長寿アニメ』とされる作品の中には、対象が一部の子供やその親世代に限られ、必ずしも全てのファミリーを対象としない作品も含まれることがある。長寿アニメではあるが作品の性質上、視聴者が乳幼児とその親に限られる『それいけ!アンパンマン』(1988年 - )及び『しまじろうシリーズ』(1993年 - )や、視聴者が幼稚園児から小学校低学年までの女の子とその親と一部のおたくに限られる『プリキュアシリーズ』(2004年 - )などが代表例。
  2. もののけ姫』(1997年)、『千と千尋の神隠し』(2001年)、『ハウルの動く城』(2004年)、『崖の上のポニョ』(2008年)
  3. 1997年12月16日に起きたポケモンショックで約3ヶ月半に亘って放送中断。
  4. 主に2000年代後半頃。例として『名探偵コナン』は2006年10月よりハイビジョン制作となっている。
  5. レギュラー放送は2004年12月まで、それ以降は不定期に放送された。
  6. 現在ゴールデンタイムにアニメ枠を持つのはテレビ朝日(ドラえもんとクレヨンしんちゃん)とテレビ東京のみ。アニメを主力とする後者も一時期ゴールデンタイムのアニメが減少していた時期があった。
  7. どちらも当時の視聴率でより有利だった方(『こち亀』と『名探偵コナン』)の数字を使用し、もう一方(『ONE PIECE』と『ブラック・ジャック(21)』・『結界師』・『ヤッターマン (2008年版)』)の不利をカバーする狙いであった。しかし、「アニメ7」の『こち亀』と『ONE PIECE』のケースでは『ONE PIECE』は『こち亀』より視聴率で劣っていても、原作の単行本やアニメグッズなどの商業的な面で大幅に優れていたため、枠移動されながらも生き残り、2010年頃に再ブームが起きフジテレビの主力キャラクターへと返り咲いている。また、「アニメ☆7」においては2007年10月から12月の3ヶ月間のみ『名探偵コナン』もしくは『金田一少年の事件簿』(1997 - 2000年・2007年)の1時間枠であった。
  8. フジテレビ系日曜19時台の19:00枠は『マジンガーZ』(1972年 - 1974年)、19:30枠は「カルピスまんが劇場→世界名作劇場」の『どろろと百鬼丸』(1969年 - 1970年)から『ONE PIECE』・『こち亀』までアニメ番組が途切れることなく続いていた。
  9. 韓国、中国など300サイトに削除を要請 海賊版被害580作品 アニメ、出版15社連携 - MSN産経ニュース 2014年7月30日
  10. クレヨンしんちゃん訴訟、中国企業に100万元の賠償請求―中国 - Record China 2012年2月18日
  11. NHKコスモメディアアメリカがアメリカ合衆国・カナダで運営する日本人向け日本語チャンネル「テレビジャパン」では『名探偵コナン』も含め、日本国内と同様に子供向け番組として、番組購入という形で放映されている。
  12. 「ドラえもん」全米デビュー!ディズニーとタッグでアメリカンテイストに - スポーツ報知 2014年5月10日