ネモ (ガンダムシリーズ)
ネモは、テレビアニメ『機動戦士Ζガンダム』に登場する架空の兵器。エゥーゴの主力MS(モビルスーツ)。
本項目では、ゲームや雑誌などのメディアミックス企画で設定された派生機の解説も記述する。
機体解説
テンプレート:機動兵器 グリプス戦役当時においてすでに旧式化していたジムII、高性能と引き換えに生産性に難があったリック・ディアスに替わるエゥーゴの主力機。設計・製造はアナハイム・エレクトロニクス社が担当した。
ジム系で初めてムーバブルフレームを採用したMSであり、基本性能はハイザックやジム・クゥエルなどの外骨格機を上回るうえ、操縦特性は柔軟であるために実戦経験の少ない新兵でも簡単に操縦できるなど、量産機としてのパフォーマンスは要求水準をほぼクリアしていた。
ビームライフルはジムIIのBR-S-85系(AEボウワ社製:出力1.9MW)を使用するほか、リック・ディアスの武装も使用可能であった[1]。
型式番号はリック・ディアス、百式に続く機体として「MSA-003」が与えられた。
装甲材や基本骨格はジムIIから大幅に改良されており、特に装甲に関してはジム系としては異例のガンダリウム系装甲が採用されている。ただし、これについては資料によって内容の異なる記述がされている。テレビ放送当初の資料では大量生産のためにガンダリウムαを採用したとされているが[2]、後年の解説ではマラサイ同様のガンダリウムγとなっているものがある。また、γとしながらも最初期の機体のみαであるとの説もある[3]。
当初、エゥーゴではより高性能のマラサイを主力機として前線に、本機はその支援用として運用する戦術が思案されていたが、マラサイが政治的取引によってティターンズへ奪われる形となったため、エゥーゴは急遽ネモを主力機として運用せざるを得なかった[4]。
本機のために新規製造された装備は、連邦系量産機では初となるスライド式シールドのみで、ビームライフルは前述通りジムIIの物を、ビームサーベルはリック・ディアスや百式と同型の物(出力0.4MW)が流用された。ジムIIとは違いビームサーベルは1基のみの装備ではなく、腰部後方のラッチに2基装備する。なお、初期はジム系シールドを装備して出撃している機体も見られた。
エゥーゴ初の地球侵攻作戦であるジャブロー侵攻作戦において主力機として投入された。同作戦で生き残った機体は、ロベルト中尉らによって宇宙におけるエゥーゴの拠点データの消去が行われ、地球上における協力組織カラバへ譲渡された結果、同組織の主力機として活躍した。キリマンジャロ襲撃戦ではドダイ改に乗り、アムロ・レイのディジェやジムIIと共にアウドムラを母艦として戦った。
火力が低いことが問題とされた一方、専用のビームカノン[5]も開発され、一部の機体に装備された。このビームカノンは、奇襲用の長距離武装として運用効率の悪い百式のメガ・バズーカ・ランチャーに代わる武装として設計されている。兵装本体には照準カメラ・センサーや固定用ピックといった種々のオプションの装着が可能であり、射撃を行う本機は頭部カメラアイに専用ゴーグルを装備する。そのため、頭部の外観は通常のネモとは異なるものとなる(#劇中での活躍も参照)。なお、同兵装の運用データはΖガンダムのハイパー・メガ・ランチャーなどエゥーゴの長距離武装に活かされた。
緑と青を基調とする本来以外のカラーリングとして、第11話ではリック・ディアスと同じ色に塗られた本機がサラミスから発進する姿が一瞬だけ確認できるほか、第17話「ホンコン・シティ」の冒頭ではベン・ウッダー指揮下にあるスードリのMSデッキに、連邦軍カラーのジムIIと同じ赤と白に塗られた本機が置かれている。
また、劇場版『機動戦士Ζガンダム A New Translation 「星の鼓動は愛」』のラストではアーガマに集結しているMS群の中、左舷中央付近にジムIIのエゥーゴカラーに塗られた本機らしき機体が確認できる。
劇中での活躍
テレビ版『機動戦士Ζガンダム』では、ジムIIに代わるエゥーゴの主力MSとして登場。目立って戦果を挙げるシーンは少なく、ガンダムMk-IIやZガンダムなどのエース機と対比される一般の量産機である性質から、本機は交戦した敵に撃破されるケースが多い。しかし、強化人間のロザミア・バダムが搭乗した際にはロザミアのパイロットとしての腕と相俟って、カミーユ・ビダンのΖガンダムを追いかける機動性を発揮した。さらには、追従するクワトロ・バジーナの百式が放つビームライフルの射撃をかわしてハイザック1機を撃破するなど、例外的に活躍したエピソードもある。
劇場版『機動戦士Ζガンダム A New Translation』では、エゥーゴがガンダムMk-IIを奪取した時点ですでに本機が配備されていたため、テレビ版でのガンダムMk-IIのムーバブルフレームの技術が取り入れられたとする設定とは矛盾が生じている。
雑誌企画『ADVANCE OF Ζ ティターンズの旗のもとに』では、専用ビームカノンを装備した本機が登場。カール・マツバラの乗るガンダムTR-1[アドバンスド・ヘイズル]を撃墜した。ロング・シールドブースターを3枚装備したマキシム・グナーの専用機はウェス・マーフィーの乗るギャプランTR-5[フライルー]1号機と相打ちになり、両機共に大破した。
漫画『機動戦士ガンダム エコール・デュ・シエル』では、データ収集用の複座型が登場。これに乗ったアスナ・エルマリートが、ティターンズから奪取したガンダムMk-IIとの模擬戦闘をおこなった。
『機動戦士ガンダムZZ』では、第12話のラビアンローズで修理中か解体中の本機が確認できる。
小説およびOVA『機動戦士ガンダムUC』では、旧式化により一線から退いた機体としてトリントン基地に配備されており、さらに旧式のMSで構成されたネオ・ジオン軍残党の襲撃に翻弄されている。OVA版では言及されていないものの『ZZ』当時より高頭身に再デザインされ、ダカールにも配備されていた2機が登場する(1機はジム・ライフルを装備)が、ジュアッグに2機とも撃破されている。ダカールの機体は薄いブルーとダークブルーの2色、トリントン基地配備の機体は青とセールホワイトのデザートカラー。90mmブルパップマシンガンを装備した機体や、170mmキャノン砲[6]を装備した機体も登場した。
バリエーション
- ネモ・カノン
- 型式番号MSA-003。ネモの装備換装機体であるため型式番号に変化はない。
- 雑誌企画『ADVANCE OF Ζ ティターンズの旗のもとに』に登場。頭部カメラアイ保護用のフェイスカバーの装着により、フェイス・エクステリアがデュアルアイを模したものとなる。実際にカメラアイが新規設計されたわけではないが、ネモ系では珍しいガンダムタイプの頭部を備えた機体である。
- 従来のバックパックは取り外され、ガンダムTR-1[ヘイズル]が使用した「シールドブースター」を参考にエゥーゴが独自開発した「ロング・シールドブースター」と、これを最大2基装備可能な新型バックパックを装備する。単なるロケットブースターとしての機能だけが付与されたガンダムTR-1[ヘイズル]のシールドブースターとは違い、それ自体にメガ粒子砲と稼働用ジェネレーターを内蔵し、MS側のジェネレーターに依存することなく射撃できる。
- ロング・シールドブースターはバックパックの他、両腕部にも2基装備され、最大4基を装備可能。フル装備時の本機はガンダムTR-1[アドバンスド・ヘイズル]にも似た姿となり、宇宙世紀0086年当時の量産機の中では屈指の加速性能を発揮する。
- 武装は従来のジムII共用のBR-S-85系ビームライフルも装備。機体の塗装は黒を基調として赤が要所に用いられる。またロング・シールドブースターはエゥーゴの全てのモビルスーツと同じ規格で設計されているため、リック・ディアスにも装備することができる。ただし同装備はコストが高く、さらに製造開始がグリプス戦役終盤であったことから極少数しか製造されていない。
- マキシム・グナーやエゥーゴ一般兵が搭乗。グナー機やゾラ隊所属機は一般機とカラーリングが異なる。
- ネモ・ディフェンサー
- 型式番号MSA-003+FXA-05D。 雑誌企画『ADVANCE OF Ζ 刻に抗いし者』に登場する、ガンダム[ケストレル]の随伴機。
- ネモ本体はガンダムMk-IIのバックパックとオリジナルの頭部に換装されている。バックパックの換装は「ジムIII計画」に関連してネモ後継機の量産化をAE社が目論んでいるためである。また、後々地球連邦軍と特許問題が発生するのではないかとの推測描写もある。
- Gディフェンサーのコクピットは早期警戒ユニットに換装されており、最初からドッキングされた状態で運用される。
- ダニカ・マクガイアが搭乗する。
- ネモ改
- ネモの発展型。雑誌「B-CLUB」の連載企画『Z-MSV』において百式改と共にラフ画で描かれたのが初出である。ビームガンとビームランチャーをバックパックに装備し、左肩側に砲身を配置し背部にはウィングを装備している以外はノーマルのネモと同等。
- また、従来のネモのビームライフルよりも大型のビームライフルを携行している。型式番号はMSA-003Nであり、バックパックにリック・ディアス系のバインダーを装備し、ジェネレーター出力が5%程向上したため、より高出力のビームライフルの装備が可能となったとの設定もある[7]。
- ネモキャノン
- 型式番号MSA-003C。書籍『機動戦士ガンダム 新MS大全集』(改訂増補版)に掲載。バックパックに2連装のキャノンを装備している(これが実体弾かビームかは不明)。
- ネモII
- 型式番号はMSA-004。当初は『Z-MSV』[8]におけるネモIIIに付随する設定として文字でのみ記されていた機体であり、画稿・模型等の実像は存在しなかった。そこでは、ティターンズの新鋭機に対抗するためエゥーゴがアナハイム社にネモの改良型を発注したが、開発が難航したため、火力支援型であるネモIIIが代替として提案された、という設定となっている。
- また「外見はネモと変わらない」[9]とも記述されているが、ゲーム『機動戦士ガンダム ギレンの野望 アクシズの脅威V』において、ネモIIIを元にした新規デザインで登場している。
- ゲームでのネモIIは、ジェネレーターの安定化によって火力強化を図った機体とされた。
- テンプレート:Visible anchor
- 『Ζ-MSV』[8]において設定された機体。
- 当初の設定ではネモIIとは別開発の新規機体であり、左肩側にビームキャノンを一門装備する火力支援型の機体とされ、ネモIIに代わり配備されたこととなっている。また、ロールアウトは宇宙世紀0088年の1月18日であり、ブレックス・フォーラの暗殺によるアナハイム社とエゥーゴ間の疎通混乱で本機の完成はグリプス戦役末期まで遅れた、とも記述されている。
- 漫画『ダブルフェイク アンダー・ザ・ガンダム』にも登場しており、宇宙世紀0090年にガンキャノン・ディテクター、バージムと共にコロニー防衛のために出撃した。
- OVA『機動戦士ガンダムUC』においては、連邦軍トリントン基地所属の本機が出撃せんとする中、ジオン残党軍のザクI・スナイパータイプの狙撃により撃破されている。
- ゲーム『機動戦士ガンダム ギレンの野望 アクシズの脅威V』の設定では、対艦・対MA(モビルアーマー)戦に臨める高火力を発揮するとされる。
- なお、右の諸元は『Ζ-MSV』のものである。同設定によると、ビームキャノンの出力は5.4MWとなっている。
- ネモ・ハイマニューバー
- 月刊「モデルグラフィックス」別冊『GUNDAM WARS PROJECT Z』での模型作例。バックパックを百式の物に換装し、バインダーも同型のものを装備した機体となっている。作例では脚部のスラスター部がノズルタイプのバーニアとなっている様子も見られる。また同書籍では型式番号は従来のネモと変わらないMSA-003となっているが、他ではMSA-004[10]とも表記されている。
- 早期警戒型ネモ
- 型式番号:MSA-003E。パソコンゲーム『機動戦士ガンダム アドバンスド・オペレーション』に登場。
- ネモを早期警戒型に改修した機体。高出力センサーやレドームなど強力な索敵システムを搭載したバックパックが特徴。
脚注
関連項目
テンプレート:Gundam-stub- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ プラモデル1/144ネモの解説書。
- ↑ ガンダムパーフェクトファイル13より。初期型にαを使用した理由は未記載。ガンダリウムα、γの設定についてはガンダリウム合金の記事も参照。
- ↑ 詳細はマラサイ#機体解説を参照。
- ↑ 外観上のデザインはテレビ版『機動戦士Ζガンダム』劇中においてプチモビルスーツが使用したものをベースとしている。
- ↑ 陸戦型ガンダムの180mmキャノン砲とは別物。
- ↑ 『RPGマガジン』1999年1月号(No.105)より 実際にラフ画ではリック・ディアスIIのものと酷似したバインダーを装備している
- ↑ 8.0 8.1 掲載は「B-CLUB」6号および22号。
- ↑ 『SDガンダム ガシャポンオマケシール MSV-56』ではネモのマイナーチェンジ版とされている。
- ↑ ツクダホビー『OPERATION』17号