ドーベルマン刑事
『ドーベルマン刑事』(ドーベルマンでか)は、日本の劇画・日本映画・日本のテレビドラマ・オリジナルビデオ。
原作 : 武論尊、描画 : 平松伸二にて『週刊少年ジャンプ』(集英社)の1975年39号から1979年48号まで連載し、ジャンプコミックスの単行本は全29巻、後に愛蔵版や文庫版としていずれも全18巻で再刊。2012年には週刊漫画ゴラクの18号から続編『新ドーベルマン刑事』が開始されている。
映画は主演 : 千葉真一、監督 : 深作欣二で1977年7月2日に封切り公開された。1980年には『爆走! ドーベルマン刑事』(ばくそう! ドーベルマンでか)のタイトルでテレビドラマ化、1996年にギャガ・コミュニケーションズがオリジナルビデオ化した。
目次
劇画
解説
テンプレート:Infobox animanga/Header テンプレート:Infobox animanga/Manga テンプレート:Sidebar with collapsible lists 凶悪な犯罪者を許さない主人公の「ドーベルマン」こと加納錠治が愛銃のスタームルガー・ニュースーパーブラックホークで44マグナム弾をぶっ放し、事件を解決していくバイオレンスアクション漫画である。
ストーリー
凶悪犯罪専門の警視庁特別犯罪課、通称“特犯課”に所属する加納錠治。凶悪犯罪者を毎回のように射殺する加納をマスコミや世間は非難するが、本人はどこ吹く風。極悪犯罪者には非情な加納であるが、子供や老人、更生しようとする軽犯罪者はもちろん、殺人等過去に重い罪を背負う犯罪者でも事情によっては就職先などの面倒を見たりする優しい面がある。
当初は加納とその上司である特犯課長の西谷警視の2名だけだった特犯課も大阪府警から新宿署へ来たゲタばきの暴力団担当刑事・宮武、女刑事の三森、婦人警官の綾川沙樹、アメリカから来たキャティ・クラサワなどのメンバーが加わり(但し作中で絡むだけで、必ずしも特犯課配属ではない者も含む)、ハードな雰囲気だった作品も終盤はややマイルド化しつつ、4年余の長期連載となった。
特犯課とは凶悪犯罪専門であるが、特にその任務は危険かつ重大な責任をおうものであり、現存する各課が敬遠する事件を担当する。
登場人物
- 加納錠治(かのう じょうじ)
- 22歳。警視庁特別犯罪課(通称:特犯課、凶悪犯罪専門)所属。通称・ドーベルマン。柔道:無段。剣道:無段。空手:無段。拳銃:無段[1]。拳銃はニュースーパーブラックホークを使用。実弾は44マグナム弾使用。様々な銃器の扱いに優れており、射撃・狙撃技術は極めて高い。愛車はハーレーダビッドソン[2]だが、二輪だけではなく大型や特殊も含めて自動車の運転技術にも長けている。警察関係では機動隊員やSP、他にも自衛隊員や原子力発電所職員など、各部署・各方面に知人や友人を数多く持つ。
- 凶悪犯罪を犯した者が、たとえそれが名士や女性、未成年者、果ては社会的弱者や障害者であっても容赦はしない。ただし、犯罪を犯した者が更生を望んでいたり深く反省している場合などは、表だっては冷徹を装いつつも温情を見せることがあるように、基本的には人情に篤く男気が強い。社会に蔓延る建前論や欺瞞を憎むが、持ち前の「人情と男気」を貫き通した結果、犯人逮捕に直結する決定的な証拠を握り潰したり[3]、必要以上に被害を大きくすることもあった。
- 加納の犯罪捜査は「刑事の勘」や「読み」に頼るところが大きく、何の証拠もないまま犯人を拷問まがいの方法で追及し、事件解決に結びつけたことがある。物語の性質上、現行犯との銃撃戦や正当防衛での発砲が多いため、逮捕状を請求したり、提示するようなシーンは無い。故意に相手に先に発砲させてから射殺することもあった。一見すると激情でのみ動き無策と思われがちであるが、犯罪者に対して策を弄したり罠に陥れることに躊躇することはなく、事件解決のためには事件の関係者をも利用する狡猾さも持ち合わせている。
- 「外道に人権などない」と断言し、必要とあらば(その必要性が薄いと思われる場面ですら)射殺も厭わない[4]加納であるが、元からそのような刑事だったわけではなく、特犯課に配属された直後は長髪でスーツを身につけた一介の新人刑事であり、どんな凶悪犯であっても射殺すべきではないと考えていた(「刑事の人間愛!!の巻」)。
- 孤児院で育ったという過去を持つためか、親子の絆や家族愛に憧れを持つと同時に、それを踏みにじったり蔑ろにする者には容赦しない。「警察官・刑事」という職業に対しても非常に強い思い入れと責任感を持っているため、身内である警察関係者の裏切りや非道な行いに対しては極めて激しい怒りを見せる。世間では「狂犬」「ドーベルマン」として畏怖される加納であるが、なぜか子供には非常に良く好かれる。
- 連載開始以来、冗談や軽口をほとんど言うこともなく無愛想な加納であったが、連載後期には多少くだけた態度を見せるようになり、冗談を言ったり時には滑稽な表情を見せるようになった。
- 西谷博(にしたに ひろし)
- 警視庁特別犯罪課主任。東京大学卒。階級は警視。妻・純子と一人息子の鉄男(てつお)を家族に持つ。年齢は30代半ば。
- 温厚かつ冷静な性格。部下である加納や宮武が型破りな刑事なため、その陰になって気が弱く真面目さだけが取り柄のように思われがちだが、時に加納らが驚くほどの熱い刑事魂を見せることがあり、緊急時には発砲し、犯人を射殺するに及んだこともあった。なお、初めて犯人を射殺したのは刑事になるための研修時に留置場の看守をしていた際にである(「警視庁移転の日!!の巻」)[5]。
- 加納らに指示を出す一方で自らも現場に立つことも多く、そのためか生死の境をさまよう大怪我を何度も負っている。高い実力を持つ加納や宮武からは「年寄りの冷や水」「弱いけど」などと茶化されるようなシーンもあったが、加納が唯一認める上司であり、上司・部下の関係を越えた堅固な信頼関係で結ばれていた。
- 真面目で家族思いであるが、仕事も家庭も捨てて知り合った女性と駆け落ちする寸前の暴挙に出たことがある(「蛇の目傘の女の巻」)。
- 三森竜子(みもり りゅうこ)
- 警視庁特別犯罪課 - 警視庁新宿署少年係 - 神奈川県警所属。当初は特犯課に異動させられてきたが、西谷と加納の意向により、再び別部署に異動になった。
- 宮武鉄二(みやたけ てつじ)
- 警視庁新宿署四課所属。大阪府警マル暴担当であったが、加納と刑事として勝負をするために希望異動。拳銃は特別製のオートマグを使用。
- 綾川沙樹(あやかわ さき)
- 警視庁特別犯罪課婦警。都内でも有数の勢力を誇る広域暴力団・竜神会会長・綾川雄三の一人娘。祖父は警察官で長野県南佐久郡で駐在所勤務。身長:155cm スリーサイズ:B:80cm、W:56cm、H:82cm。
- 特犯課のお茶汲み担当で、とても警官とは思えない普通の女の子。しかし初登場時には、その「女の勘」が捜査に役立った。マスコミからの非難を受ける加納を擁護するなど、作品のマイルド化路線を担う存在。
- キャティ・クラサワ
- 警視庁特別犯罪課所属。ハワイ生まれの日系二世だが、国籍は日本である。
エピソード一覧
映画
解説(映画)
1977年の日本映画。カラー・シネマスコープ、90分。英語タイトルは『Doberman Cop 』。
“ドーベルマン”の異名、凶悪な犯罪者を許さない、オートバイとマグナム44を使用[6]。以上は原作通りに描かれているが、そのほかは異なるキャラクターに設定されており、製作側は劇画になる以前の主人公のプロローグ篇としている[7]。
千葉真一は空手・拳法アクションから卒業しようとして、深作欣二は実録ヤクザ映画から脱皮を計り、1966年の日本・台湾合作映画である『カミカゼ野郎 真昼の決斗』以来、11年ぶりに二人はタッグを組んで新しいアクション映画に挑んだ[8]。
ストーリー(映画)
新宿で女性の焼死体が出てきた。新宿警察署は連続殺人放火魔の仕業で、被害者を沖縄県石垣島出身の玉城まゆみと断定して、元暴走族の三迫長栄を逮捕する。しかし、まゆみの母親からの捜索願で、東京にやって来た沖縄県警の刑事で加納錠治は、新宿警察署捜査陣の考えに疑問を抱いていた。“病める”大都会・東京に、芸能界で成功を夢見る新人歌手とその背後にいるヤクザたちが事件に絡み、加納は大胆な捜査で犯人を追い詰めていく。
キャスト
- 千葉真一 : 加納錠治
- 英森芸能
- スターミュージック
- 新宿警察署
- 暴走族・風魔団
- その他
- 配役不明 - 諏訪圭一・吉沢高明・松本泰郎・大矢敬典・寺内文夫・波多野博・司裕介・白井孝史・鳥巣哲生・三谷真理子
スタッフ
主題歌・挿入歌
- 主題歌
- 挿入歌
- 弘田三枝子 : 「マイメモリィ」、「ドーベルマン刑事のテーマ」(共に作詞・作曲 : 弘田美枝子)
テレビドラマ
タイトルを『爆走! ドーベルマン刑事』(ばくそう! ドーベルマンでか)とし、主要キャラクターの名前を引き継ぐのみで、まったく異なる設定の作品。オートバイの刑事部隊・警視庁晴海分署黒バイ隊と3匹の警察犬の活躍を描く。
主要キャスト
- 黒バイ隊・加納隊長:黒沢年男
- 黒バイ隊・矢部刑事:名高達郎
- 黒バイ隊・酒井刑事:星正人
- 黒バイ隊・加山刑事:新井康弘
- 黒バイ隊・白鳥刑事:神保美喜
- 黒バイ隊・平田刑事:矢吹二朗
- 晴海分署・森警部:荒井注
- 晴海分署・西谷署長:夏木陽介
- 警視庁・五十嵐刑事:志穂美悦子
サブタイトル
スタッフ(テレビドラマ)
- プロデューサー:和佐英彦、福湯通夫
- 脚本:四十物光男、田波靖男、安斉あゆ子、阿井文瓶、杉村のぼる、長谷川公之、押川国秋、大野武雄、植木幹雄、和久田正明、竹山洋
- 監督:小西通雄、小平裕、松島稔、小山幹夫
- 音楽:鏑木創
- ナレーション:神太郎
- EDソング:黒沢年男「アスファルト・ジャングル」
- 技斗:斎藤一之(ジャパンアクションクラブ)
- カースタント:武士レーシング
オリジナルビデオ
1996年にギャガ・コミュニケーションズで製作された。
ストーリー(オリジナルビデオ)
加納(竹内力)がかつて逮捕した暴力団員水木が巡査を殺し、人質を取ってたてこもった。加納はなんとか人質を救出したが、水木は精神に異常をきたしていた。加納は水木が高純度の覚醒剤を服用していたのが気になり、同僚の春日井(宮坂ひろし)とともに事件の捜査に乗り出す。同じ頃、銀座のクラブが強盗に遭い、客とホステスが全員殺害された。唯一被害を免れたのは友子(吉野真弓)だった。
キャスト(オリジナルビデオ)
スタッフ(オリジナルビデオ)
- 製作:ギャガ・コミュニケーションズ、円谷映像
- 監督:後藤大輔
- 脚本:森岡利行
- 音楽:村山竜二
- カースタント:カースタントTAKA
- ガンエフェクト:今関謙一 (BIGSHOT)
- 技斗:東郷秀信(斬心塾)
- プロデュース:千葉善紀、長澤克明、岡川晃基
- 製作者:山地浩、円谷粲
パチンコ
脚注
関連項目
- 千葉真一主演の刑事を題材とした作品
外部リンク
テンプレート:深作欣二テンプレート:リダイレクトの所属カテゴリ- ↑ 第1話、加納が初登場するシーンでこのように人物紹介されている。
- ↑ 特徴的な形状のフェアリングやサイドボックスが取り付けられているため、ツーリング(エレクトラグライド)系だと思われる。中盤以降はフェアリングが取り外されたタイプ(ロードキング)を使用。
- ↑ 「まぶたの父!!の巻」では(不本意ながら)家族を捨ててヤクザの手駒となった男を独断で逃走させたばかりか、男が殺人に使用したであろう銃を「証拠がなければ逮捕できない」と言って川に捨てた。
- ↑ マスコミからは「犯人を殺すのを楽しんでいるように見える」とすら言われた。また犯人が対峙している相手が「ドーベルマン刑事」であることを知ると、投げやりになったり死を覚悟する描写も多い。
- ↑ この時、西谷は油断と同情から被勾留者に拳銃を奪われた挙げ句、その拳銃で同僚を撃たれるという、現実ならば重い処分を科されるであろう致命的な失態を犯している。
- ↑ 拳銃を予告編ではニュースーパーブラックホークと謳っているが、実際にはS&W M29が使われている。
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