栄養ドリンク
栄養ドリンク(えいようドリンク、テンプレート:Lang-en-short)とは、肉体疲労時の栄養補給などを目的で販売されている飲料である。ドリンク剤とも呼ばれる。
この飲料は、ビタミン類・アミノ酸・滋養強壮に効果のある生薬・漢方薬由来成分のエキスなど、疲労回復や健康維持に効果が期待できるとされる成分を含み、含有成分によって以下のように分けられる:
これらのうち医薬品はOTC医薬品であり、医療用医薬品ではないため購入に医師の処方箋は必要ない。オロナミンCなど、従来より一般の小売店で売られていたドリンク類は清涼飲料水として扱われる。また薬事法により、医薬品、医薬部外品に該当しない清涼飲料水などの商品に関して「効能」、「効果」をうたう事は出来ない。
目次
日本における形態
販売当初はアンプルで流通していたが、各社製品共に徐々に薬臭さを除去し、容量を増やした。現在医薬品または医薬部外品として販売される商品は、おおよそ外見が茶色(少数は緑)のガラス瓶であり、栓がスクリューキャップ(テンプレート:Lang-en-short)である、という共通性が見られる。色付き瓶を用いているのは生薬成分の変質を防ぐという目的もあるが、「医薬品(アンプルなど)と同じ色の瓶を用いることで商品の効果をアピールする」という目的も含まれる。紙箱に収められた製品でも、中の容器にはやはり濃い色付きの瓶を採用しているものが多い。内容量は概ね100mlから150ml前後である。
一方清涼飲料水として売られているものについては、瓶入りのもの以外に缶入りやペットボトル入りのもの、また無色透明の瓶を用いたものなど、多種多様なパッケージングが見られる。こちらは内容量が200ml~500mlの製品も少なからず存在する。
効果・効能
各種ビタミンやタウリン(アミノエチルスルホン酸)などの有効成分、カフェイン、漢方生薬を複数配合し、肉体疲労・病中病後・食欲不振・栄養障害などの場合の栄養補給に適しているとされるものがある。但し、配合成分は薬理的に顕著な作用が見られるほどのものではなく、個人差が大きい。また、含有する成分を特定の効能向けに特化して差別化を図った商品も見られる。
服用上の注意
栄養成分の多いものは医薬品として長らく薬局やドラッグストアの店頭でのみ販売されていたが、1999年3月の医薬品販売の規制緩和により主力商品が医薬部外品に変更されてコンビニエンスストアやスーパーマーケット、駅売店、一部の自動販売機などでも販売されるようになった。
但し、栄養ドリンクは医薬品、ないしは医薬部外品であること(まれに清涼飲料水)を念頭に置き、一日の容量を厳守することが前提である。有効成分や添加物の中には、コーヒーの10倍以上の濃度のカフェインなど多量の摂取が好ましくない物質が含まれているものもある。また、生薬等の薬効成分抽出のためにエタノールを使用し、これに由来するアルコールが0.1〜1%程度含まれる場合や気分昂揚のためにアルコールを使用している場合もある。
アメリカでは2005年から2010年にかけて、カフェインやタウリンを含む炭酸アルコール飲料(フォー・ロコなど)が発売されていたが、これら成分が酔いを助長させたことによる急性アルコール中毒患者が続出したこともある[1]。アメリカ食品医薬品局は2012年秋、モンスターエナジーおよび5-hour Energyの飲用者に、死者を含む健康被害が出た件について因果関係の調査を進めている[2][3]。
なお、栄養ドリンクに含まれる成分のうち水溶性ビタミン類は過剰に摂取しても尿から排泄されるだけなのでただちに健康面での問題を引き起こすにはあたらないが、上述の通り過剰摂取によって健康を害する恐れがあるカフェイン、脂溶性ビタミン、鉄、銅、亜鉛などの成分が含まれた製品が多い。
カナダ保健省の科学者たちによる調査では、健康な大人の場合、1日400㎎以下のカフェイン摂取量であれば、カフェインによる心身への悪影響は出ないと結論付けている[4]。モンスターエナジーを飲んで死亡したアメリカの14歳の少女のケースでは、少女が死亡した際に摂取していたカフェインの量は480㎎であった[5]。いずれにせよ、栄養ドリンクの過剰摂取による悲惨な健康被害を防ぐには、製品に印字されているカフェイン含有量などの成分表示をよく確認し、適正な量を守って飲用するか、あるいはそもそも製品自体を飲用しないことである。
各国の事情
テンプレート:出典の明記 栄養ドリンクは、1990年代までは韓国やタイなどのアジア、および中東諸国で流通している以外は目立つほどの流通量はなかった。日本においてトップシェアを占める大正製薬などがアメリカ市場の開拓に乗り出したことがある。
2000年代に入ると、若者のアンダーグラウンド文化を背景に、欧米においてレッドブルが大きく売上を伸ばした。他にもフィンランドの「BATTERY」、アメリカの「ROCKSTAR」などのブランドが現れ、徐々に栄養ドリンクが欧米において定着しつつある。またアメリカではアスピリンのガブ飲みや、精神科医の診察をステイタスと感じるような世代も出現している。
なおレッドブルは、世界165カ国以上で販売され、2011年販売実績は46億本以上を記録しており、リポビタンDなどの売上を上回ったが、同社では「レッドブルは『栄養ドリンク』ではなく『エナジードリンク』である」と主張している。これは、国によっては「栄養ドリンク」と名乗ると医薬品としての規制を受け自由な販売活動が行えなくなる場合があるため、それを避ける狙いがある。同商品を栄養ドリンク市場のトップブランドと位置づけるかどうかについては、見解が分かれる。
日本においては、2012年に炭酸飲料の範疇に入るエナジードリンクの売り上げが前年比217%増となり、エナジードリンクが日本国民に急速に普及し始めている[6]。
主な栄養ドリンクのブランド
薬事法の規制を受けるもの
- 医薬品(第2類もしくは第3類医薬品)・医薬部外品(指定医薬部外品)の指定を受けているものである。これらの商品の中には、自社に製造設備が無いことから、同業他社からOEM供給を受けているものがあり、その場合、当該他社も類似品を販売していることが多い。
- 現行製品
- アスパラシリーズ(田辺製薬→田辺三菱製薬)
- アリナミンドリンクシリーズ (武田薬品工業)
- エスカップ(エスエス製薬)
- グロンサン・新グロモント(中外製薬→ライオン)
- グロンビターシリーズ・ビタシーシリーズ(常盤薬品工業)
- チオビタシリーズ(大鵬薬品工業)
- チョコラBBドリンクシリーズ・ユベラ贅沢ローヤル(エーザイ)
- ユンケルシリーズ(佐藤製薬)
- リゲインシリーズ(三共→第一三共ヘルスケア)
- リポビタンDシリーズ・ゼナシリーズ・アルフェシリーズ(大正製薬)
- ミオDコーワシリーズ・キューピーコーワ液シリーズ(興和)
- ローヤルスターシリーズ(LIFIX(日本たばこ産業・吉富製薬合弁)→日本たばこ産業)
- マムシホルモシリーズ・マムシグロンシリーズ(阪本漢法製薬)
- ヘルサンシリーズ・ハイゼリーシリーズ・ヘパリーゼシリーズ(ゼリア新薬工業)
- リコリスシリーズ(全薬工業)
- ツービードリンク(クラシエ薬品)
- ピップ内服液シリーズ・ダダンII(ピップ)
- ビタノーゼV1・バロネスシリーズ・ストルピンシリーズ(メイクトモロー)
- 若甦シリーズ・レバコールシリーズ(日邦薬品工業)
- スカールシリーズ(大和合同製薬)
- ユニーシリーズ(小林薬品工業)
- 新カークD2000(富士薬品)
- ビタロークシリーズ(皇漢堂製薬)
- リポレビンシリーズ(栄新薬)
- ファイトシリーズ、サンリキソシリーズ(広貫堂)
- スペーシアシリーズ(日本薬剤)
- 十王精シリーズ(十王薬品)
- イソビタンシリーズ、力精シリーズ、りき精(田村薬品工業)
- イソビタンAII(タムラ活性)
- モアクロンD3000(大同薬品工業)
- ローヤルハイゼリンシリーズ(ローヤル薬品工業)
- サロンパス内服液(久光製薬)
- ケンラク(テイコクファルマケア)
- ビタモエム(森田薬品工業)
- 過去の製品
- ギネスゴールド(山之内製薬(現:アステラス製薬))
- リュウコ100・昂(藤沢薬品工業(現:アステラス製薬))
- ゴルフシリーズ・ツデイL(三共(現:第一三共))
- オルパD・グロンサンバーモント(中外製薬)
- ローゼリーシリーズ(中外製薬→ライオン)
- サモン内服液(大正製薬) - ゼナの前身的存在。
- 与滋元(大正製薬)
- ヘルタスバーモント(大日本製薬(現:大日本住友製薬))
- ユベロンゴールド(エーザイ)
- ゼリアスシリーズ(ゼリア新薬工業)
- マミアン(第一製薬(現:第一三共))
- サンリラックスシリーズ・セパホルンシリーズ・ドリンク金太郎シリーズ(カネボウ薬品→クラシエ薬品)
- トクホン内服液・トクホンリキ(トクホン)
- サロンカップ(久光製薬)
- ベッセンシリーズ(LIFIX(日本たばこ産業・吉富製薬合弁)→日本医薬品工業→日医工→新新薬品工業)
- ハイパーゴールド(LIFIX(日本たばこ産業・吉富製薬合弁)→日本たばこ産業)
- ポリタンシリーズ(日本製薬)
- ラブビタンシリーズ(常盤薬品工業)
- ドリスタン滋養液(ロート製薬)
- エスエス滋養内服液(エスエス製薬)
- ドリンクシンセン(アラクス)
飲み物として売られているもの
- 清涼飲料水・炭酸飲料として売られているものである。清涼飲料水のカテゴリには一部の製品で「栄養機能食品」の表記が付けられている。
- 現行製品
- オロナミンCドリンク(大塚製薬 / 大塚化学)
- マッチ(大塚食品)
- タフマンシリーズ(ヤクルト本社)
- リアルゴールド・バーンテンプレート:Enlink(日本コカ・コーラ)
- デカビタ・リゲインエナジードリンク(サントリー食品インターナショナル)
- ウコンの力・ニンニクの力・メガシャキ(ハウス食品)
- C1000シリーズ・プラスタミン・サムライド(ハウスウェルネスフーズ)
- アニエルショット10(大正製薬)
- チョコラBBスパークリング・チョコラBB Feチャージ・美チョコラコラーゲンジュレ・ジョマ(エーザイ)
- スパークリングユンケル(佐藤製薬)
- ドデカミン・パワーゴールド・パワービタ11(アサヒ飲料)
- アサイーチャージ(カルピス)
- メガエキサイト液(マルマン)
- ヘパリーゼW・ヘパカン(ゼリア新薬工業)
- 純製赤まむしドリンク(日興薬品工業)
- 眠眠打破(常盤薬品工業)
- マカ液(メイクトモロー)
- ローヤルエナジーV(日本たばこ産業)
- ビンビタC(UCC上島珈琲)
- ミンナミンCドリンク(タムラ活性)
- ライフガード(チェリオコーポレーション)
- ミラクルボディ(サンガリア)
- キビアミノドリンク(ホクガン)
- ビタモ液(森田薬品工業)
- リフレッシュ(日本生活協同組合連合会)
- ハッコ(マルコメ)
- コーワ パワードコーヒー(興和)
- グッスミン(ライオン)
- レッドブル
- ロックスター
- モンスターエナジー(en)(アサヒ飲料/米モンスターエナジー社)
- マッドクロック
- シャーク エナジードリンクテンプレート:Enlink
- ビーストアイ
- XLエナジードリンク
- X-PLOSION(エクスプロージョン合同会社)
- Go-Go Drink
- パンクラスエナジー(パンクラスエナジードリンク株式会社)
- 過去の製品
- バイオミンC・バイオミンX・キャラカーン(サントリーフーズ)
- ハイクロンCドリンク・ハイクロンAドリンク・ハイクミンCドリンク(ダイドードリンコ) - ともに大同薬品工業が製造
- アルギンZ・アミノバイタル2000・アミノバイタルゴールドゼリー(味の素)
- アルギンV・アルギンVタンク(カルピス)
- リフレパワー(麒麟麦酒) - 三共(現:第一三共)との共同開発品。自社開発ビール酵母利用食品
- オズモ・ゲット(キリンビバレッジ)
- ブリザード(山崎製パン)
- ガンバレ肝太郎!・帰ってきた肝太郎・Dristanのどスッキリ液・Dristan滋養ゼリー・ドリカップ(ロート製薬)
- ターボC(ペプシコ・インク日本支社)
- ビタカップシリーズ(エスエス製薬) - エスカップの技術を生かしたCVS向け・食品タイプの栄養ドリンク。1999年の薬事法改正により「エスカップ」が医薬部外品に移行した為、それと入れ替わる形で終売。「モカ」を除き、わずか6ヶ月程しか販売されなかった。(「モカ」は後に、「モカビタミン」としてシリーズより独立したが、他社より類似商品が発売された為、医薬品の「エスタロンモカ内服液」に機能統合する形で終売となった。)
- とんがらC(大塚食品)
- 源滋・サプリメントドリンクシリーズ・ミニドリンクシリーズ(武田食品工業(現:ハウスウェルネスフーズ))
- スーパーガーリック21(山之内製薬(現:アステラス製薬))
- ローヤルスターシリーズ・パワフルシリーズ・ローヤルエナジーLIGHT・かき麻呂(LIFIX(日本たばこ産業・吉富製薬合弁)→日本たばこ産業)
- ブラックリゲイン(第一三共ヘルスケア)
- PF21・うるる(アサヒ飲料)
- グロンサントマトの赤酢ドリンク(ライオン)
- ジンセンアップ(一和)
- ビタホット(味の素ゼネラルフーヅ)
- Cポッカエース・維力源(ポッカレモン→ポッカコーポレーション)
- まむしファイト(大正製薬)
- きゃらか~ん(バンダイ)
- ストーンズバー ローリングゴールド(サントリー酒類)
出典
- ↑ 23人病院送りの缶飲料「Four Loko」に禁止令、米大学が学生に通達(グリー・ニュース2010年10月19日)2012年5月19日閲覧
- ↑ テンプレート:Cite news
- ↑ テンプレート:Cite news
- ↑ レッドブルは健康や心臓に悪い? :: エナジードリンク :: レッドブル・ジャパンレッドブル公式サイト
- ↑ カフェイン過剰摂取で少女死亡、遺族が栄養飲料製造会社を提訴AFPBB news 2012年10月22日
- ↑ Amazon.co.jpにあるエナジードリンク「Realpower」の説明文より