ディア・ハンター
テンプレート:Infobox Film 『ディア・ハンター』(The Deer Hunter)は、1978年公開のアメリカ映画。製作はユニバーサル映画、監督はマイケル・チミノ。脚本はデリック・ウォッシュバーン。主演はロバート・デ・ニーロ。
1960年代末期におけるベトナム戦争での過酷な体験が原因で心身共に深く傷を負った若き3人のベトナム帰還兵の生と死、そして3人とその仲間たちの友情を描いている。
第51回アカデミー賞並びに第44回ニューヨーク映画批評家協会賞作品賞受賞作品。ベトナム戦争を扱った映画であり、また1996年に米国連邦議会図書館がアメリカ国立フィルム登録簿に新規登録した作品の中の1本である。PG12指定。
ストーリー
ピッツバーグ郊外にあるロシア系移民の町クレアトンの製鉄所で働くマイケル、ニック、スティーブン、スタン、アクセル、ジョンは休日になれば全員で鹿狩りに赴くごく平凡で仲の良いグループである。そんな彼らにもベトナム戦争の影が迫っていた。
ある日、ベトナムに徴兵されるマイケル、ニック、スティーブンの壮行会がスティーブン、アンジェラ夫妻の結婚式も兼ねて行われた。式も終わりに近づく頃、突然ニックはリンダにプロポーズをする。「帰ったら結婚しよう」リンダは喜んでそれを受け入れた。
一夜明けて彼らは揃って鹿狩りに出かけ、マイケルは見事な鹿を仕留めた[1]。
ベトナムにおけるアメリカ軍は予想外の苦戦を強いられていた。マイケルは偶然にも戦場でニックとスティーブンに再会する。しかしベトナム軍の攻勢はとどまることがなく3人は捕虜となってしまう。
閉じ込められた小屋の中では世にも恐ろしい賭けが行われていた。ロシアンルーレットである。銃弾が放たれる音を聞いたスティーブンは発狂寸前となった。マイケルは意を決してリボルバーに込める弾を増やすことにした。それを面白がるベトナム兵の隙をついたマイケルは次々とベトナム兵を射殺しスティーブンとニックを連れて脱出。丸太にしがみついて濁流を下るところを自軍のヘリコプターに見つけられたが、マイケルとスティーブンは力尽き川へと落ちてしまい、ニックだけがヘリコプターで救出される。
落ちた場所に岩がありスティーブンは足を骨折したが、マイケルの助けにより辛うじて川岸にたどり着く。マイケルは川岸からスティーブンを担いで街道にでて、行きあった行軍中のジープにスティーブンだけを乗せて病院に運ぶように依頼し、自分は徒歩で町に向かう。
ヘリで救出され、病院にて回復したニックはサイゴンの町に繰り出し、そこでロシアン・ルーレットの賭けに興じる集団を目にする。観衆の中にはマイケルもいたが、ニックは彼に気づいていない。怪しげな男からプレーヤーになれば金を稼げるという誘いを受け、すぐに断ったニックだったが、実際に引き金が引かれるのを目にした彼は急に使われていた銃を奪い自らのこめかみに当てると、躊躇なくその引き金を引いた。弾は出ない。場が騒然となる中、呼び止めようとするマイケルの声も届かず、彼は誘いかけた男と夜の闇へ消えていった。
2年後、マイケルは帰還。故郷の仲間たちはマイケルを温かく迎えたがマイケルはどこかよそよそしく、ベトナムへ発つ前とは雰囲気が変わっていた。スタン達と久々の鹿狩りにでかけるマイケルだが、鹿を仕留めることはできなかった。そのころスティーブンは片腕と両脚を失い陸軍病院で治療の日々を送っていた。
スティーブンを尋ね、サイゴンから彼宛に謎の送金があることを聞いたマイケルは、ニックの生存を確信し陥落寸前のサイゴンへ飛んだ。
キャスト
役名 | 俳優 | 日本語吹替 |
---|---|---|
マイケル | ロバート・デ・ニーロ | 山本圭 |
ニック | クリストファー・ウォーケン | 羽佐間道夫 |
スティーヴン | ジョン・サヴェージ | 野沢那智 |
スタンリー | ジョン・カザール | 青野武 |
リンダ | メリル・ストリープ | 池田昌子 |
ジョン | ジョージ・ズンザ | 池田勝 |
スティーヴンの母 | シャーリー・ストーラー | |
アクセル | チャック・アスペグレン | 仲村秀生 |
ジュリアン | ピエール・セグイ | 藤本譲 |
アンジェラ | ルターニャ・アルダ | 高島雅羅 |
プリースト | ステファン・コペストンスキー | 峰恵研 |
バンドリーダー | ジョー・グリファシ | 鈴置洋孝 |
アクセルの女性 | メイディ・カプラン | 滝沢久美子 |
スーパー店員 | シャーリーン・ダロウ | 巴菁子 |
スーパーレジ係 | ジェーン=コレット・ディスコ | 藤夏子 |
医師 | トム・ベッカー | 島香裕 |
作品解説
主人公たちの故郷であるペンシルベニア州の田舎町におけるゆったりと流れるようなタッチから一転して、戦場における壮絶な心理描写に切り替わる、183分の長尺を存分に生かした手法が特徴的である。
ベトナム市街地のシーンは、タイで撮影された。ベトナムは右側通行/左ハンドルであるにも関わらず、劇中にタイ仕様の右ハンドル車が登場する。
配役・演出
クリストファー・ウォーケンは、ベトナム戦争の後遺症から心身ともに疲弊し痩せ切った青年を演じるため、1週間米とバナナと水だけを食し続けた。
ジョン・カザールは撮影前に癌を患い製作会社は彼に降板を催促したが、チミノやデ・ニーロが「カザールが降板するなら自分も降板する」と主張したことで降板は免れた。結果的にカザールは収録こそ完遂したものの、公開を待たずに夭折。遺作となった本作品がアカデミー賞の作品賞を受賞した[2]。
音楽
テーマ音楽はスタンリー・マイヤーズ作曲の「カヴァティーナ」で、ギターはジョン・ウィリアムズによる。副テーマソングとして、フランキー・ヴァリ(Frankie Valli)が歌う「君の瞳に恋してる」が3回程歌われる。同曲は映画の時代設定に近い1967年にヒットした曲でもある。
前半の結婚式と披露宴で、ロシア正教会聖歌「スラーヴァ」、ロシア民謡「コロブチカ」、「カチューシャ」などが流れる。
評価
受賞・ノミネート
- 第51回アカデミー賞
- 受賞・・・作品賞/監督賞/助演男優賞/音響賞/編集賞
- ノミネート・・・主演男優賞/助演女優賞/脚本賞/撮影賞
- 第33回英国アカデミー賞
- 受賞・・・撮影賞/編集賞
- ノミネート・・・作品賞/監督賞/脚本賞/主演男優賞/助演男優賞/助演女優賞
- 第36回ゴールデングローブ賞 監督賞
- 第44回ニューヨーク映画批評家協会賞 作品賞/助演男優賞
- 第13回全米映画批評家協会賞 助演女優賞
- 第4回ロサンゼルス映画批評家協会賞 監督賞
- 第53回キネマ旬報ベスト・テン 委員選出外国語映画部門第3位/読者選出外国語映画部門第1位
- 第22回ブルーリボン賞 外国作品賞
- 第3回日本アカデミー賞 最優秀外国作品賞
影響
ジャン・スクラグズは『ディア・ハンター』に感銘を受け、ワシントンモールにベトナム戦没者記念碑建設運動を起こした。また、中華系アメリカ人のマヤ・リンによる黒いV型の記念碑は1986年に完成した。
脚注
外部リンク
テンプレート:アカデミー賞作品賞 1961-1980- ↑ “One shot is what its all about. A deer has to be taken with one shot.” 「一発がすべてだ。鹿は一発でしとめなければならない」が有名なセリフ。
- ↑ カザールが生涯出演した5本の映画すべてがアカデミー賞にノミネートされ、そのうち3本が作品賞を受賞したこととなった。
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