ツンデレ
ツンデレは、特定の人間関係において敵対的な態度(ツンツン)と過度に好意的な態度(デレデレ)の両面を持つ様子、又はそうした人物を指す。
概要
「初めはツンツンしている(敵対的)が、何かのきっかけでデレデレ(過度に好意的)状態に変化する」、「普段はツンと澄ました態度を取るが、ある条件下では特定の人物に対しデレデレといちゃつく」、「好意を持った人物に対し、デレッとした態度を取らないように自らを律し、ツンとした態度で天邪鬼として接する」ような態度である。
元々はギャルゲーの登場キャラクターの形容に用いられるおたく用語であったが、2005年頃からはおたく以外の人々の間でも使われるようになった[1]。
現在ではおたく用語を起源とするインターネットスラングであるとされ、そのため定義も多様で、確定していない。解釈は流動的かつ感覚的であり、用法の拡散・細分化も著しい。よって明確なツンデレ像があるわけではなく、用例も性別、人間・非人間(人外)の別に左右されず、関係や出来事に至るまで幅広い。男性オタクが好む「萌え要素」はツインテール・猫耳・アホ毛のように視覚的な記号であることが多いが、ツンデレは状況によって女性キャラクターの態度が変化するという「関係性」に根ざしたものであるという点で大きな違いがある[2]。
「ツンツンしている面」と「デレデレしている面」の二面性をあわせもつ人物がいて、その二面性のギャップが当人の魅力を効果的に引き立てている場合にツンデレと呼ぶと説明されることが多い[1]。しかし、もともとのおたく用語のツンデレは「もともと好意を持っているが照れ隠しとして冷たく接している女の子が、あるときを境にそれ以降は素直に甘えてくる」という設定をさすものであって、一般的に用いられている性格のギャップによる魅力を示す表現ではなかったとオタク側から指摘される場合がある[3]。例えば、アニメ『らき☆すた』の第10話では、ツンデレの用法が巷で適切に使われていない(時間経過による心境の変化ではなく性格の二面性を表す様に誤用されている)と登場キャラクターがぼやくシーンが存在する[4]。 もしくは、もともとおたく用語のツンデレとして、上の二つのような例ではなく、「もともとは(本当に)好意を持っていなかったが、時間経過により(何らかの理由で)対象の人物に惹かれていき、好きになる。 しかしそれまで冷たくしていた手前、素直になれない自分と嫌われたくない自分を天秤にかけて葛藤しつつもその後だんだんと素直になっていく」という、所謂シチュエーション萌えであると主張する指摘するおたくも存在する(詳しくは後述の歴史を参照)
ただし、「ツンデレ」なる用語が使われるようになる以前から、特に漫画やアニメにおいて本当は好意を持っているのに、それを素直に表現できないというキャラクター設定は定番であって、ツンデレという用語の出現によってそれが再認識された面もある[5]。
各文献における記載
用語辞典などに掲載された、「ツンデレ」の意味に関する記述を挙げる。
- 『イミダス2006』(2005年11月発売、集英社)
- 「日常ではツンとしているものの、思いを寄せた人と二人きりになると、デレっとする事[6]。」
- 『現代用語の基礎知識2007』(2006年11月発売、自由国民社)
- 「普段はツンツン、二人っきりの時は急にしおらしくなってデレデレといちゃついてくるようなタイプのヒロイン、あるいは、そのさまを指した言葉[7]。」
- 『知恵蔵2007』(2006年11月発売、朝日新聞社)
- 「オタク用語から一般に浸透しつつある言葉で、普段はツンツンとしているが、ある条件下になるとデレデレといちゃつく状態や人物を指す[8]。」
- 『ダ・ヴィンチ』2007年2月号(2007年1月発売、メディアファクトリー)
- 「もともと好きな異性の前でデレッとしてしまいがちな女性がそうならないように自分を律してツンツンしているというように、一つの性格の中で移行するのが、ツンデレ[9]。」
事例
用語辞典などに、ツンデレとして紹介・掲載されたキャラクターや人物を挙げる。
- 大空寺あゆ -(君が望む永遠[6])
- 柴咲コウ - ただし、本人がツンデレである、という意味ではなく、「役柄も含めて、もっともツンデレが様になるということで「ツンデレ女優」と呼ばれている。」との記述[8]。
- 釘宮理恵(声優) - ツンデレキャラの役を多く演じていることから、「ツンデレの女王」と表現されることがある[10]。
歴史
当初
- 最初期の用例として2002年8月29日の『あやしいわーるど@暫定』における投稿に、『君が望む永遠』の大空寺あゆについて「ツンツンデレデレが良い[11]、」またその後(2002年12月26日の『2ちゃんねる』)『秋桜の空に』の佐久間晴姫に対して「ツンデレ」とした記述が確認されており[12]、この時期すでに用いられていたことが窺われる。
- ほどなく恋愛シミュレーションゲームのマニア用語として、登場人物との関係が当初は険悪だが、良好な状態に変わっていく攻略過程を楽しめる人物の事を指し始めた。テンプレート:要出典これら人物は、険悪な状態からストーリーが始まるため、攻略過程が他の人物に比べて難しいケースが多々あり、ストーリーや演出によりプレイヤーもが思い入れを深くする事ができる。恋愛シミュレーションゲームにおいてはいわば定番キャラであり、多くのこれらゲームでツンデレキャラが採用されている。
- ほどなくして恋愛シミュレーションのみならず他のジャンル作品においても、時間経過によりツンからデレ状態に変わる人物をツンデレと称し始めた。この時間経過説が現在でも用いられている狭義説である。
広がり
2ちゃんねる内においてエロゲー板を中心に露出を重ね、ほどなくして2005年のニュー速VIP板での流行などを経て既成事実的に定着していった。さらに、単純な四文字言葉であるための用便の気軽さと「か、勘違いしないでよね!」などのわかりやすいフレーズとともに各方面に広まり、それに従って「ツンデレ」という言葉を用いる対象(範囲)も以下のように広義に拡大していった。
- 個人の性格や恋愛関係そのもの、それらを含む場面や出来事全体をも指して言うようになった。
- ツンデレ=二次元女性キャラであったものが、実在の女性のみならず、男性[13]や動物以外に対しても使用されることが多くなった。エッセイストの杉浦由美子は、男性のツンデレキャラクターの増加について、それは女性キャラクターが男性キャラクターを好きになる理由付けとして効果的であるからだと述べている[14]。つまり、男性は恋愛のパートナーを選ぶ際に容姿を重視するので男性キャラクターが女性キャラクターを好きになる理由付けをするのは簡単であるが、女性は恋愛のパートナーを選ぶ際に内面性を重視する傾向にあるため、ツンデレという「外見と中身のギャップ」をあらわす特徴を持たせることが有効なのだという。
- 更に範囲を動物・事物の振る舞いまで拡げ、猫が勝手気ままに行動する、機械が大事なところで故障するといった場合の猫や機械をツンデレと評するなどが挙げられる。アニメ・ゲーム制作者側がツンデレを積極的にアピールする事例も増え、映画『クレヨンしんちゃん 伝説を呼ぶ 踊れ!アミーゴ!』(2006年)ではツンデレがギャグとして用いられている。
流行とその後
2006年にかけて、週刊誌などマスメディア上で「ツンデレ」の語が用いられた[15]。これは例えばティーン向けファッション雑誌で理想の恋愛像や魅力的な女性像などとして紹介するものであった。
ツンデレキャラにはまっている人たちを「ツンデレラ(ツンデレラー)」または「ツンデラー[8]」と呼ぶことがあるが、「ツンデレ」ほどは浸透(普及)していない。「ツンデレラ」は2006年の新語・流行語大賞にノミネートされたが入賞はしなかった。
2007年1月末に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開かれた新作おもちゃの流通関係者向け展示会「トイフォーラム2007」で、使い込むにつれ音声ガイダンスの態度が軟化するという「ツンデレ」ナビゲーションモードを搭載したワンセグ携帯テレビがタカラトミーから発表された。これは同年、関連会社のイー・レヴォリューションより発売された。
また、2007年から2009年にかけて、DEARSからツンデレカルタ・ツンデレ百人一首・ツンデレタロットといった商品が発売されている。
2012年現在、単純に気性が激しい・強い女性を示す言葉として使われる事が多くなった[16]。
関連・派生用語
- ヤンデレ
- 精神的に病んだ状態で愛情を表現する様子。まれに「ヤンキーのツンデレ」とされることもある。
- 素直クール(クーデレ)
- 『現代用語の基礎知識2007』では 「素直クールはツンデレと正反対の属性として命名された。しかしながら、ツンデレ同様、完全な定義というものは存在しない。」とされている[17]。
- オラニャン
- ツンデレの男版、普段は強気な態度を見せているが(オラオラ)、恋人と二人きりになると甘えてくる(ニャンニャン)ような男性のこと。同人業界、サー人(イベサー・ギャルサーの構成員)の間で主に使われている[18]。
- ツンデレの同意語と考えられる[19]。
- クールビューティー
- 特殊な女性への特定方面(クール=冷静な性格をした美人)からの賛辞。
関連項目
脚注
文献情報
- 「ツンデレ属性と言語表現の関係―ツンデレ表現ケーススタディ―」 冨樫純一(大東文化大学専任講師)シンポジウム「役割・キャラクター・言語」(2009/03/28,29 神戸大学百年記念館)