美人
美人(びじん)とは、容貌の美しい人物をさす言葉。麗人と言う場合もある。
概要
元々は「人」と言う漢語が、主に男性を社会的に指す言葉であった[注 1]ので、古語では、「美人」は美しい男性を指した。女性を指す場合は「美女(びじょ)」という言葉を用いた。
文化や時代によって美人ないし美女の基準は異なる。同じ地域でも時代により美人の定義は変化し、同時代であっても地域・文化圏の違いによって基準は異なる。さらに、ある共同体での一般的な美人像がその共同体内の全ての個人に共通している訳ではない。価値観の多様化が進んだ社会であれば美人に対する基準にも個人差が大きくなる。日本ではかつて、銀幕女優(山本富士子など)が美人(美女)の代名詞的存在として扱われたことがあった。
美人という言葉は内面を指すこともあるが、テンプレート:独自研究範囲ミス・コンテストなど、美人を基準にした社会での女性の扱いについては、フェミニストなどから問題提起されることもある。
日本の美しい女性像
平安時代の美人像は、肌理(きめ)の細かい色白の肌、小太りで、顔形はしもぶくれ気味であご先は丸く、引目と呼ばれる細い象眼が尊ばれた。頭髪は長くしかも水分の多いしなやかな髪の毛が美人の条件とされているが、これは成熟した女性の証でもあった。胸の大きさは、当時の女性の成年年齢が12歳程度が初めであったことから、むしろ妊婦などの中年的な象徴であった。
江戸時代以来、日本では色白できめ細かい肌、細面、小ぶりな口、富士額、涼しい目元、鼻筋が通り、豊かな黒髪が美人の条件とされた(浮世絵で見られる小さな目で描かれた女性は、当時の理想的な美人を様式化した作品である。詳しくは美人画を参照)。こうした美意識は、明治時代から大正時代に至るまで日本の美人像の基調となった。井原西鶴の作品テンプレート:要出典には、低い鼻を高くしてほしいと神社で無理な願いことをする、との記述があり、当時鼻の高さを好んだ傾向が伺える。また朝鮮通信使の記録には、「沿道の女性の肌はお白いをせずとも白く、若い女性の笑い声は小鳥のようである」と国王に報告している。
関東大震災後から、パーマネントや断髪、口紅を唇全体に塗るなど、欧米の影響を受けて従来の美意識と相容れないような美容が広まった。戦後の日本では、西洋の影響を受けて、白人に近い顔立ちが美人とされた。
また、20世紀には映画・テレビをはじめとする動画が一般化日常化するなかで、静止画的な美しさだけでなく、動的な美しさも評価されるようになった。美人の基準も多様化しているため、美人の代名詞と言えるような女性はいなくなった。上記の美人像とはかなり異なる顔立ちの女性であっても、美しいと見なされることがままある。
美人の比喩
日本では木花咲耶姫以来、神代から、正真正銘の美人を指すのに花の比喩をよくつかう。
ただし、これは飽くまでも日本の文化(大和民族の文化)における伝統的美意識による発想である。たとえば金田一京助は、アイヌに「お前、桜の花きれいだと思わないか」と訊いたところ「きれいだ」との返答だったので、「じゃ美人のときに、花のようだと言ったら」と重ねて問うと、そのアイヌから「だって全然違うじゃないか。花はこんな形をしているし、顔とは全然違う」と笑われたと伝えられる[1]。
平均美人説
Judith LangloisとLori Roggmanは、無作為に抽出した顔写真の合成写真を被験者に示した時に、その写真が魅力的であると判断されることが多いとする研究結果を発表した(Psychological Science 1990)。この事から、美人とはそのコミュニティにおいて最も平均的な容姿を持つものであるという仮説が提唱された。この説によると、美人像の変遷は、そのコミュニティの構成員の変化を背景としているものと考えられる(鼻が高い人が多くなれば、鼻が高いことが美人の要素となる)。このように平均的な女性が美しいと感じられる理由としては、平均的であるということが、当該コミュニティで失敗のない生殖を行う可能性が高いことを示している(繁殖実績が多い)と考えられるためと説明されている。
黄金比率美人説
カナダのトロント大学のカン・リー(Kang Lee)が視覚研究の専門誌「Vision Research」で白人女性のみを対象にした研究結果を発表した。そこで女性の見た目の美しさは両目の間隔や目鼻と口の距離が顔全体に占める割合によって決まるという研究結果が発表されている。その研究結果は目と口の距離は顔の長さの36%の時に一番美しいと感じられ、両目の間隔は顔の幅の46%の時に一番美しいと感じられることが分かった。http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2814183/
美人に関する諺
日本や中国では、美人(の意味)を比喩したことわざが存在している。
その他の美人
脚注
- 注
- ↑ 例えば、美しい少年は「美少人」と呼ばれた
- 出典
参考文献
- 井上章一 『美人論』 朝日新聞社<朝日文芸文庫>、1995年。ISBN 4022640952
- 井上章一 『美人コンテスト百年史-―芸妓の時代から美少女まで』 朝日新聞社<朝日文芸文庫>、1997年。ISBN 4022641452
- 山本桂子 『お化粧しないは不良のはじまり』講談社 2006年。 ISBN 4-06-213311-3