コンドル

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テンプレート:生物分類表 コンドル (学名:Vultur gryphus)は、タカ目コンドル科に分類される鳥類南アメリカ大陸アンデス山脈に生息する。 南米コンドルアンデスコンドルとも呼ばれる。

コンドルについて

おなじコンドル科の大形種としてアメリカ合衆国西海岸に生息するカリフォルニアコンドル (Gymnogyps californianus)がある。両種とも生きた獲物を狩るのではなく、主に大型動物の死体を漁って食物としている。

これらの大型の2種と何種かの中型種を含む新大陸におけるコンドル科の鳥はコウノトリに近い系統群(タクソン)であると思われていたが、現在では否定されている。[1]ちなみに、コンドルとよく似た外見を持つハゲワシ類タカ科であり、トビハヤブサなどといった通常の猛禽類と同様の、旧大陸における同じように死体食の生態の大型猛禽類である。

形態

コンドルの大きさは、クチバシから尾の先までがおよそ1.2m、両翼の端から端の長さがおよそ3mで、10kg以上になる。翼長ではもっと大きい鳥もあるが、翼の幅(前の縁から後ろの縁までの長さ)が極端に大きく、翼の面積がたいへん広くなっている。これは上昇気流に乗って空高く舞い上がるのに適している。

成鳥の羽は黒く、首の付け根にある帯状の白い羽毛と、特に雄鳥の羽の白い班または帯だけが例外である(この白い班または帯は、成熟してから初めての換羽を終えるまで現れない。)。

真ん中の指が大きく発達しており、後ろ指はわずかに現れている程度である。爪はまっすぐであまり鋭くない。すなわち、足はコウノトリのように歩く事に適していて、真のタカ目の猛禽である鷹や鷲などのように攻撃に用いたり餌をがっちり捕獲するのには適していない。他の猛禽類の例とは異なり、雌は雄よりも小さい。

無羽毛頭部の意味

衛生を保つ適応として、頭と首には羽毛が生えていない。これは大型動物の死体に頭を突っ込んで餌をとる際に、自己消化や腐敗で発生する浸出液や血液などが羽毛に染み込んで不衛生になるのを避けるためである。羽毛がなければ皮膚に付着した液の乾燥が容易であり、さらには高地の強い紫外線に当てる事で殺菌を行なうことも可能であると考えられている。さらに禿げている部分に血管が密集していることから体温の調節のためとする説、または、羽毛が無いことで見方によってはかなり目立つ存在となり、そのことが特別な意味を持つとする説がある。

頭の上は平たく、雄の場合イボ状かクシ状になっており、首の肉がたるんで肉垂になっているのと対照的である。顔と首の部分の皮膚は感情の起伏に応じて血流が変化し、よく赤くなる。これは個体間のコミュニケーションに役立っている。

分類

足や首の肉垂などの比較解剖学的特長によって、古くからコンドルの仲間は真の猛禽類であるタカ目なのではなく、コウノトリに近縁なのではないかという指摘がなされてきたが、全体的にはあまりにも猛禽類的な形態をしているため、定説の地位は獲得できなかった。20世紀末になって遺伝子解析によってやはりコウノトリに近縁なタクソンであることが確認されテンプレート:要出典、古い比較解剖学的研究でコウノトリとの縁の近さを指摘した研究があったことが再評価されるようになったのである。

生態

コンドルは5-6歳になるまで性的な成熟が見られず、繁殖行動がない。50年以上生き、一生涯連れ添う。南米コンドルは巣作りと繁殖を3,000mないし5,000mの標高の場所で行なう。人間などが近寄れない絶壁の岩陰で、巣には卵の回りに何本かの棒切れを置く。卵は1-2個で、青白く、280g位の重さと75-100mm位の長さを持ち、2年毎に2月から3月の間に生まれる。両親が守る中、54-58日で孵化する。ひな鳥または卵が失われると、新たな卵を産む。研究者が人工飼育をするときには、この習性を使って2倍の成果を得る事が出来る。すなわち、最初に生まれた卵を後ろに隠して2つめの卵を産ませるのである。

幼鳥は親と同じくらいの大きさになるまで白っぽい産毛に覆われている。幼い幼鳥には半ば消化した餌が与えられ、この性質もタカ目よりコウノトリ類に縁の近い鳥であることを示している。このため、コンドル類の幼鳥を人工保育するときには、マウスの子供を消化酵素などと共にミキサーにかけてつくる、特別に調整した餌を与えなければならない。タカ目の幼い幼鳥を人工保育するときは、動物の新鮮な肉や、レバーのような内臓を与えれば済むのと対照的である。6ヶ月ほどで飛べるようになるが、2歳になるまで自分が生まれた巣で暮らし、親と共に餌探しを行なう。その後、自分の親が育てる新しいヒナに巣を譲りあける事になる。

コンドルの大きな集団の中には、よく整った社会構造が見られる。ボディーランゲージによる「つつきあい順」を決めるやり方であるとか、競技を催す習性であるとか、鳴声による交信は発達していないものの、多岐にわたるコミュニケーション能力が複雑な社会構造を持っていることを物語っている。

コンドルが羽を広げ、雄大な円を描くように飛ぶ様は、まさに優雅そのものである。コンドルの胸骨はその大きな羽の筋肉を支えるには不十分な大きさであることを見ると、生理学的に羽ばたき飛行ではなく、高空での滑空飛行に適応していることがわかる。コンドルも含め、鳥は地面から飛び立つ時に羽ばたかなければならないが、こうした滑空飛行に長けた鳥類は、適度な高さに達してしまえば上昇気流や風に乗るだけで十分になる。チャールズ・ダーウィンは、半時ほど観察をしている間に1度しか羽ばたかなかったと報告している。彼らが高所に巣作りをするのは、あまり羽ばたかなくても楽に飛びたてる適応の意味もあるのである。

野生のコンドルは巣やねぐらの周囲に広い行動圏を持ち、死肉を探して日に250kmも移動する事がしばしばある。彼らは鹿などの大きな死体を好む。これらの大型獣の皮膚は強靭で、喰い破るのがたいへんなので、小型の肉食、或いは死肉食の動物が利用するのは困難となり、また高空から餌を探すことによっていち早く死体を発見できることとも相まって、コンドルが独占できる食物となるのである。野生においては常時食物が得られるとは限らず、しばしば何も食べずに数日過ごす事もある。一方、食べる時には2-3kg位をガツガツと詰め込み、まれに体重が重くなりすぎ飛び立てなくなる事もある。こうした点はタカ目である旧大陸のハゲワシ類とよく似ている。

文化

コンドルは、ボリビアチリコロンビアおよびエクアドル国鳥であり、南米神話フォルクローレの中で重要な役割をはたしている(これはアメリカ合衆国に於けるハクトウワシと同じ位置づけである)。また、インカ帝国最後の皇帝トゥパク・アマルが死後、コンドルに生まれ変わったという伝説も残っている。

コンドルの図案

絶滅危惧

人類の活動はコンドルの生息数に致命的な危機を与えてしまっている。出生率の低さ、繁殖年齢の高さ、一生を1つがいで過ごす習性は、すべて生息数を減らしてしまう要因になっている。特に北米のカリフォルニアコンドルは絶滅が危惧されている。1986年にはわずか17羽が確認されただけであった。(2002年には約200羽の生息が確認されている。)コンドルの生息数を致命的に減らしてしまったのは、狩りによる毒害(の弾丸が打ち込まれた獣の肉を食べることによる中毒)、DDTなどの有機塩素系殺虫剤による環境汚染と、これの食物連鎖による生物濃縮、生息地の破壊である。


1980年代初頭に、捕獲したカリフォルニアコンドルによる人工繁殖により種を守ろうという計画が始まった。1991年1992年にはカリフォルニア州で、1996年にはアリゾナ州ユタ州の州境付近で、カリフォルニアコンドルが放たれた。しかし、電線との接触などで予期せず死亡した個体もいくつかあった。2003年になってようやく、1981年の計画開始以来はじめての野生で飛ぶ事が出来る鳥が誕生した。

コンドルとジョン・ミューアハーフドームヨセミテ国立公園)が描かれた25セント硬貨が、カリフォルニア州で2005年1月に発行された。

脚注

  1. コンドル科#系統と分類を参照

関連項目

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