コロッケ
コロッケ(Korokke)は、西洋のコロッケ(テンプレート:Lang-fr-short、テンプレート:Lang-nl-short)を模倣した、日本の洋食の一つ。近年に海外に逆輸出された日本式コロッケは日本語をそのままに'Korokke'と呼ばれている。
概要
茹でたジャガイモを潰したものに具を混ぜ、これを俵型や小判型に丸めたものに、小麦粉、とき卵、パン粉の順で衣をつけ、食用油で揚げたもの。具は挽肉や蟹肉などの魚介類やタマネギのみじん切りなどの野菜が多い。
豚カツ、カレーライスと共に大正の三大洋食の一つとなっており、大正時代に普及して以来、今日では家庭でも調理されるほか、精肉店などでお惣菜としても販売されており、非常にメジャーな洋食となっている。蕎麦・うどん・カレーライスなどの上に乗せたり、サンドイッチに挟んだりと、その応用例も多い。
洋食の例に漏れず日本独自の進化を遂げたコロッケ(Korokke)は、海外でも日本の料理の一つとして紹介されてきている。特にパン粉(やはりそのまま'PANKO'と呼ばれる)を使う日本式揚げ物の衣は、西洋のフライとはまた違った食感を持つということで区別される傾向がある。
歴史
明治後期には青森駅の食堂メニューになっており、日本各地に広がっていた。1917年(大正6年)当時、洋食の豚カツは13銭、ビーフステーキは15銭だったのに比べ、コロッケは25銭と高価な料理だったが、昭和に入り徐々に安価なものとなっていった[1]。
文献に、ジャガイモで作った一見がんもどきのような料理が登場するのは1872年(明治5年)のことである。「コロツケ製法」が登場するのが1887年(明治20年)である。1888年(明治21年)『軽便西洋料理法指南』にはじめて「コロツケ」という名前が登場した[1]。
一説に起源はフランス料理のクロケット (テンプレート:Fr) にあるという。クロケットは、ホワイトソースのアパレイユ(ミンチにした魚肉やとり肉などとベシャメルソースを混ぜたもの)にパン粉をつけて調理したもので、ほとんど日本のクリームコロッケと同じである[2]。1895年(明治28年)になると女性誌『女鑑』には、このクロケット(「仏蘭西コロツケ」と表現)をジャガイモを使ったコロッケと対比して、それぞれはもはや「別の料理」と書かれている[1]。
また、オランダにはクロケット (テンプレート:Nl) と呼ばれる料理があり、こちらはホワイトソースでできたもののほか、ジャガイモで作られたものもあり、ジャガイモコロッケの起源と考えられている。
さらに、ポルトガルからもたらされたともいわれる。パン粉の衣で揚げたものではなく素揚げで、干し鱈とじゃがいもを使ったコロッケが国民食となっており、現在のコロッケに近い[3]。
「肉屋のコロッケは旨い」との世評は、揚げるために使用されている新鮮なラードに由来する、との通説がある[4]。安価な惣菜としてのコロッケは1917年(大正6年)の東京「長楽軒」のメニューに端を発し、ここのコックが関東大震災後の1927年(昭和2年)に立ち上げた精肉店「チョウシ屋」での商品化により、肉屋の惣菜としてのコロッケの地位は揺るぎないものとなった[5]。
調理が手軽で安価なことから、昭和後期頃からは日本各地で町おこしのためのご当地グルメとしても販売され、手軽な「おやつ」としても販売されるようになった。
バリエーション
主となる具材や、混ぜる材料によってさまざまな種類がある。
- ポテトコロッケ - じゃがいもを主なる具としたもの
- ミートコロッケ - 挽肉を混ぜて使用したもの
- メンチコロッケ - 挽肉を主なる具としたもの
- ツナコロッケ - ツナ入り
- 野菜コロッケ - ミックスベジタブル(グリーンピース、ニンジン、コーン等)など野菜入り
- カレーコロッケ - カレー粉で味付けをする
- 肉じゃがコロッケ - 形状が残ったジャガイモに醤油と味醂の下味が付いている
- ポテトサラダコロッケ - ポテトサラダを具にしたもの
- カボチャコロッケ - カボチャを主なる具としたもの
- サツマイモコロッケ - サツマイモを主なる具としたもの
- おからコロッケ - おからを主なる具としたもの
- クリームコロッケ - ホワイトソースを使ったもので、製品によってはカニ・エビ・コーンなどの具も使う
- グラタンコロッケ(グラコロ) - 上記に加えマカロニも使用
- ライスコロッケ - 炊いた米飯を用いたもので、アランチーニなどの種類がある
冷凍食品
コロッケは日本で売られている冷凍食品の中では最も多く生産されている[6]。油揚げのみで簡単に調理可能な、下ごしらえ済みのコロッケを冷凍したもの。解凍せずに油揚げ調理するが、表面と深部の温度差により具が噴出する場合があるので要注意。
近年では揚げ物の健康面を考慮する消費者が多くなったことから、揚げずにオイルスプレーで油をかけオーブントースターやオーブンで焼き上げたり電子レンジで温めて調理が完了する冷凍コロッケも開発されている。
コロッケに関する文化
- 『食道樂』秋の巻[7] - 小説家、村井弦斎が1903年(明治36年)に発表した当時の大ベストセラー。コロッケのレシピが掲載されている[8]。
- 『コロッケの唄』 - 1917年(大正6年)に大流行した、益田太郎冠者[9]作詞の楽曲。大正当時の世相を風刺したコミックソングであり、この時代のコロッケの普及が窺われる。
- 『コロッケの唄』 - 1962年(昭和37年)に作詞作曲: 浜口庫之助、歌: 五月みどりで発売されたが、歌詞の一部に差別的表現を含むとクレームがついて発売禁止となった。その後2003年(平成15年)に歌詞の一部を書き換え、宮本光雄編曲により再発売された。
- お料理行進曲 - アニメ『キテレツ大百科』のオープニングソング。歌詞の1番の内容がコロッケの調理方法である。
脚注
- ↑ 1.0 1.1 1.2 『おいしいコロッケ大百科』アイフォレスト出版
- ↑ Georges Auguste Escoffier著 / 角田明訳『エスコフィエフランス料理』柴田書店、p.305
- ↑ 食の研究所>食の源流探訪「謎に包まれた日本のコロッケのルーツ」2011年12月9日(澁川祐子)
- ↑ 自宅で肉屋のコロッケを作る方法Daily Portal Z(2013年6月9号)
- ↑ 菊地武顕『あのメニューが生まれた店』平凡社124頁~127頁
- ↑ テンプレート:Cite report
- ↑ 食道樂 秋の巻テンプレート:近代デジタルライブラリー書誌情報
- ↑ 食道樂 秋の巻154ページテンプレート:近代デジタルライブラリー書誌情報
- ↑ 松岡正剛の千夜千冊