キュベレイ

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キュベレイは、アニメ機動戦士Ζガンダム』『機動戦士ガンダムΖΖ』に登場する架空の兵器。

ネオ・ジオン軍のニュータイプ専用試作モビルスーツ (MS) である。

本項ではそのバリエーション機や派生機体についても記載する。

キュベレイ

テンプレート:機動兵器

アクシズにて設計・開発されたニュータイプ専用試作型MS。

一年戦争時に多大な戦果を挙げたニュータイプ専用モビルアーマー (MA)「エルメス」の後継機。キュベレイの開発はグリプス戦役以前より基礎研究が開始されていたとされ、サイコミュを搭載し、ビットを小型化した遠隔誘導攻撃端末「ファンネル」の運用を可能とした。また、機体制御そのものもサイコミュによって行うことができる。

スペック・ノート上のファンネル搭載数は10基とされているが、戦闘中にはそれを超える数のファンネルを使用しており、正確な搭載数は明らかになっていない。エルメスの持つ12機のビットはそれ自体がモノアイや核融合炉を搭載し継戦能力に富んでいたが、このファンネルは小型化と引き替えにそれらの能力が犠牲となっており、定期的に母機キュベレイへ帰還してエネルギーの再充填を行わなければならない。ただし、動作精度はサイコミュ技術の発展により向上している。

この他、ビームガン兼用のビームサーベルを腕部に内蔵している[1]

外観の大きな特徴である肩部に設置された2対のフレキシブル・バインダーは、各3基のメイン・バーニアを内蔵しており、姿勢制御と機体機動を同時に行う。キュベレイが実戦投入されたグリプス戦役期のMSには、これに類する機能を有するAMBAC装置と推進器を兼ねたスラスター・バインダーを装備した機体が多い。本機が装備するバインダーは「もう一対の腕」と形容できる広範な可動域と高い自由度を確保しており、曲芸的な空間機動力を機体に付与している。バーニアの推力自体は標準の域を出ないが、推力ベクトルを一方向に集中させ、高加速を得ることが可能。機体本来の腕部はバインダー内部に収納することができ、非戦闘時などは腕を収納した状態の形態で高速巡航する。また、肩部分には小型ミノフスキークラフトが内蔵されており、機動の補助に使われている[2]。 バインダーはシールドとしての機能も有しており[3]、その可動域を活かし機体を覆って防護姿勢を取ることもできる。しかしリック・ディアス百式などに見られるようなアタッチメント式ではなく、機体本体の延長であるためパイロットの操作で本体から任意に切り離す機能はない[4]

また、上半身と下半身でエネルギー系統が分かれており、下半身は上半身のものとは別にコ・ジェネレーターとプロペラントを持っている[5] 。このため、下半身のエネルギーを全て消費した場合でも戦闘継続が可能であり、また下半身そのものを破壊された場合でも上半身のみである程度の稼動が可能である。

キュベレイのサイコミュを稼動し最大限に運用させるためには高いニュータイプ能力が必要不可欠であった。このためオリジナルとなる白い本機は、ネオ・ジオン随一の戦闘性能を誇るハマーン・カーン専用機となり、軍を象徴するフラッグシップ機を務め、グリプス戦役~第一次ネオ・ジオン抗争を通してハマーンが運用し続けた。新機体が続々開発される中でも、最後までハマーンがこの機体を使い続けたのは、本機体のニュータイプ専用機としての圧倒的な性能ゆえであった[6]

型式番号はAMX-004。当初はMMS-3で、AMX-004は連邦内での識別番号という設定だった(機体種類が不明であるためXが含まれている)。

名前は大地母神キュベレーを原案としている。

劇中での活躍

TVアニメ版Ζガンダムでは第43話「ハマーンの嘲笑」にて初登場。
グリプス戦役末期にアクシズの指導者ハマーン・カーンの座乗する1機が、新興勢力アクシズのフラッグシップ機として実戦投入され、エゥーゴの百式やΖガンダムといったそれまでのトップクラスのMSを圧倒し、また本機と並ぶ当時最高峰のNT専用機であるティターンズジ・Oともニュータイプ・パイロット同士による超常的な戦闘を展開した。

その後の第一次ネオ・ジオン抗争時には最終決戦時のみ出撃。ジュドー・アーシタΖΖガンダム相手に演じた一進一退の死闘も、ニュータイプ・パイロット同士の常識を超えた戦闘となった。ΖΖのハイメガキャノンの照射を受けてもなお、ハマーンのニュータイプ能力で展開されたサイコ・フィールドによるバリアーにより直撃に耐えたキュベレイであったが、出力の増大したハイメガキャノンの威力にコロニー壁面に叩き伏せられ、装甲を損傷する。それでもハマーンの戦意は失われず、戦闘の最後の局面においてファンネルを囮に使った不意打ちを仕掛け、ビームサーベル二刀流でΖΖのハイパー・サーベルと切り結んだ。結果、ΖΖの左腕・左足を切断するがキュベレイも胴を両断される。相打ちに近い形ながらも敗北を認めたハマーンは上半身のみとなったキュベレイをモウサの壁面に激突させ、機体はハマーンと共に爆散した。

デザイン

デザインを手がけたのは永野護。曲線を多用した形状と白の塗装を組み合わせた外観にはファンも多いが、「当時は全く支持されなかった」と永野は語っている[7]

永野の準備稿には「エルメスII」の記述が見られ、ガンプラや、本編でもTV版と劇場版の両方で左背中に「LMES2」の表記が確認できる。装甲を外すとシルエットはザクそのものと永野は幾度も解説し、彼曰くサイコミュ機の流れを引きつつ、スタンダードなジオン系もイメージさせるデザインになっているという。

イラストや劇中の作画によって、頭部のカメラアイが単数であったり複数認められたりと一定しない。

TV放映当時の設定ではバインダー内側が黒く塗りつぶされ、細部ディテールが明確でなかったが、1999年に1/144HGUCでプラモデルが発売される際、カトキハジメによってバインダーの内側のディテールが描き起こされた[8]。また、TV版のデザインではバインダーの前後で下部の突起状の部分の外形が異なるが、このプラモデルでは部品共通化のため、前後左右対称の形状になっている。

インタビューによると、永野が中学時代に描いたロボットがキュベレイの原点で、同じデザインから発展したものにリック・ディアスがあるとのこと。その2機とも、デザインラインは胸部や脚部が似通ったものとなっている。それに加え、月刊「ガンダムエース」増刊「Ζガンダムエース」(No.001)では「当初マラサイとしてデザインされていたものがクリンナップされてキュベレイとなった」と書かれている。また、同誌には現在とは微妙に違う「永野版キュベレイ」のポスターが付属していた。

永野の作品である『ファイブスター物語』には、キュベレイのデザインがそのまま流用されたキャラクター、メイザー・ブローズが登場する。装着した甲冑はキュベレイそのものだが中身は人間で、ファンネルに似た武器を使用し、腕に「Q」(キュベレイのアルファベットの頭文字)のマーキングがある。

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キュベレイMk-II

キュベレイMk-II(キュベレイ・マーク・ツー、QUBELEY Mk-II)は、アニメ『機動戦士ガンダムΖΖ』に登場するMS。劇中では2機が存在する。それぞれ型式番号はAMX-004-2エルピー・プル搭乗機)、AMX-004-3プルツー搭乗機)。

ハマーン・カーンが搭乗したオリジナルの試作1号機のマイナーチェンジ・バージョン。基本的な機体構成は同じだが、量産化計画を視野にいれて製作された。

オリジナルのキュベレイは同時代でトップクラスの戦闘能力を示したMSであったが、実質ハマーンにしか完全には乗りこなせないため、総司令官である彼女が最前線に出撃することが必須になってしまっていた。その問題を解消するため、オリジナルのキュベレイに近しい戦果を挙げられるMSの開発と、そのパイロットとなる高度なニュータイプ・パイロットを擁する目的が量産化計画にはあった。当時アクシズ内にて養成されていたクローン強化人間プルシリーズ)の実戦投入と、その強化人間らのニュータイプ能力を査定・覚醒を促す為に製造されたとも言われている。クローン強化人間の中でも優秀な能力を示したエルピー・プルやプルツーがパイロットを務めたが、ハマーンのニュータイプ能力には及ばなかったため、本機もそれにあわせてオリジナルの設計より多少デチューンされた。

しかしそうであっても本機はネオ・ジオンのMSの中でもトップクラスの性能を備えたMSであり、ビームサーベルの基部が3方向に展開可能など若干の武装の改修も施されている他、プルツー搭乗機ではヘッドセット型のサイコミュ・コントローラーによる外部遠隔制御が可能な仕様とされている。

AMX-004-2、エルピー・プル用の2号機(機体色は濃紺)はエゥーゴの巡洋艦アーガマに回収された後も使用されるが、修理のしようもないまま損傷が重なり、最終的には上半身のみの姿でサイコガンダムMk-IIと交戦、ジュドー・アーシタΖΖガンダムの盾になる形で破壊された。

またAMX-004-3、プルツー用の3号機(機体色は朱色)はハマーン・カーン暗殺任務の際に近衛部隊のゲーマルクガズアル、ガズエルと交戦した他、ΖΖガンダムとも交戦している。優れたサイコミュ兵装を有するキュベレイであったが、そのオールレンジ攻撃もΖΖには通用せず、ネェル・アーガマによるハイパー・メガ粒子砲の余波を受け、大破する。機体は失われたが、搭乗者のプルツーは脱出している。

なお、OVAGUNDAM EVOLVE../10』では、第一次ネオ・ジオン抗争後に要人Mという人物が木星圏へと向かうジュピトリスIIに亡命する事件がおこり、その際にファンネル風のシャトルに収納されたプル機に酷似したキュベレイが登場。ファンネルを使用して追跡してきたドーベン・ウルフ部隊と交戦し、最終的にジュピトリスII所属のジュドー駆るΖΖガンダムによって救助された。

プラモデル
プラモデル『MG キュベレイMk-II(プルツー専用機)』と『MG キュベレイMk-II(エルピー・プル専用機)』に同梱されているデカールは、ファンシーで少女趣味なものが追加デザインされている。

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量産型キュベレイ

テンプレート:機動兵器

アニメ『機動戦士ガンダムΖΖ』、小説およびOVA『機動戦士ガンダムUC』に登場するMS。

オリジナルのキュベレイの量産型であり、デチューンする設計により製作されている。しかし武装の面においては増設されており、新たに2基のアクティブカノンが背部に設置され、ファンネルは個々の機動力やビーム出力こそ低下しているもののキュベレイの3倍の量が搭載された。

本機のパイロットとなるべく生み出されたクローン強化人間ら(プルシリーズ)の中に、ハマーン・カーンほどにファンネルを操作できる者が存在しなかったため、機体の追従性とファンネルの制動能力には下方調整が施されている。武装の増設はそれを補う形での機体強化案によるものであり、オリジナルのキュべレイに近しい戦闘力を有する量産機を目指して設計された。

ネオ・ジオン内乱時にグレミー・トト率いる反乱軍・ニュータイプ部隊に編成され、クィン・マンサの随伴機として大量投入された。グレミーが養成したクローン強化人間らが操る本機は、ハマーン軍およびエゥーゴのガンダム・チームを相手に圧倒的な戦闘力を見せ付けた。だが、最終的にはグレミー戦死後にキャラ・スーン操るゲーマルクと交戦し、戦闘から離脱したプルトゥエルブ(マリーダ・クルス)機以外は、相打ちとなって全滅した[9]

OVA『機動戦士ガンダムUC』エピソード3ではバナージと感応したマリーダの回想シーンにて、前述のゲーマルクとの交戦シーンが描かれた。エピソード4ではオーガスタ研究所に保管された本機が中破した状態で登場し、その機体を見せられたかつてパイロットであったマリーダは激しく動揺する。機体は彼女が強化人間として再調整されることに利用された。

公式設定以外では、第一次ネオ・ジオン抗争終結後を舞台にしたゲームブック『機動戦士ガンダム シャアの帰還』において、グワダン級戦艦イン・エクセスの艦載機として登場している。特殊任務用の機体として改修が施されており、プロトタイプに近い頭部と肩のスパイク(突起)が特徴。ゲーム中の展開次第ではシャア・アズナブルが搭乗する機体となる。

デザイン
デザインの初出は、講談社の書籍『Ζガンダムを10倍楽しむ本』のピンナップに描かれた永野護デザインのMSであるとされている。ただし機体色は真紅であり、アクティブカノンも描かれてはいない。
初登場時のカラーリングはグレミー軍の識別用として多数の機体に施されたグレーだったが、反乱軍壊滅後はキュベレイMk-II(プル専用機の2号機)と同色に変更されている。
書籍『ガンダム FACT FILE』第126号(デアゴスティーニ・ジャパン)には量産型キュベレイのバリエーション機として、グレーのカラーリングで両肩のウイング・バインダーが前後左右とも同じ形状となっている機体(円形のパーツが2つ)のイラストがページのトップに掲載された。この劇中に登場していない機体について、同書籍の出版社であるデアゴスティーニ・ジャパンからは、「出典に関しましては現時点では不明のためご案内できかねる(2007年8月9日時点)」とのコメントがあった。また、同社はその翌日にも以下のように説明している。
「量産型キュベレイはアニメ本編では数話しか出ていない機体で、カラーリングの差異の理由づけなど、細かい部分は本編内で語られていません。そこで、本編で足りなかった部分を補う意味を含めて126号に提示したようなバリエーション機を登場させた次第です。本編ではこのような仕様の機体は登場していませんが、映像に登場していなかっただけで計画されていたかもしれません。そのような『IF』に近い設定遊びのひとつとしてお楽しみいただければ幸いです(2007年8月10日時点)」

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G-3

テンプレート:機動兵器

近藤和久の漫画『機動戦士Ζガンダム』に登場するMAまたはMS。

ネオ・ジオンが開発したニュータイプ専用機で、ハマーン・カーンが搭乗している。同作者の漫画『機動戦士ガンダム ジオンの再興』『新MS戦記 機動戦士ガンダム短編集』でも、形状の差異はあるが登場している。

同じ名称で複数の姿形が提示されているが、共通点はエルメス直系の後継機で、脚部と肩のバインダーをたたむことでステルス性と機動性を備えたMA形態を取れるNT専用可変機である事。

模型情報』に掲載された近藤のメカニックページ(バンダイ版『機動戦士ガンダム MS戦記』に再録[10])においては、名前のGは、ニュータイプ部隊の呼称がゲスペンステル・クルツベ(ドイツ語で亡霊部隊の意)だからであり、エルメスをコンパクトにしたのがゲイツバインで、さらにそれを重武装にしたのがゲイドライとされている。一方『ジオンの再興』では、ゲイ・ツバイは大きさが問題となり計画段階でキャンセルされた、とされている。

機体各所に備えられた多数の球状メガ粒子砲(12門)、両肩のメガ粒子砲(2門)、そして多数のファンネルを搭載する。なお『ジオンの再興』における設定としてファンネルをミサイルのような誘導兵器として使える事(ファンネルミサイル)と一般兵向けにファンネルを撤廃したボマータイプの存在が追記されていた。

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クィンテット・キュベレイ

クインテット・キュベレイ (QUINTET QUBELEY) は、ゲームブック『機動戦士ガンダムΖΖ vol.3「エニグマ始動」』に登場するMS。

ネオ・ジオンのニュータイプ専用試作MS。量産型キュベレイを改修し、シュペール・サイコミュ・システム(1人のパイロットで複数のMSを制御するシステム)を搭載した機体である。パイロットは本機をマスターMSとして、サブユニットを積んだ4機の量産型キュベレイをファンネルに見立て思念誘導する。しかし、パイロットには異常な負担がかかるため再三にわたって暴走事故を起こし、パイロットが廃人となったため計画は放棄された。そして、唯一の試作機と随伴機はネオ・ジオン崩壊と掃討戦、そして本作オリジナル展開であるティターンズ残党のクーデターの混乱の中で行方不明となった。

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プロトタイプ・キュベレイ

プロトタイプ・キュベレイ (PROTO TYPE QUBELEY) は、ゲーム『SDガンダム GGENERATION-F』に登場するMS(型式番号: AMX-001/MSN-08)。

アクシズの試作MS。エルメスのMS化を目指したが、サイコミュの小型化に成功せず、全高25mもの大型MSとなった。カラーリングは水色で、エルメスに四肢がついたようなデザインになっている。武装としてファンネルの他にビームサーベル2基、両腕部にメガビーム砲、胸部にバルカン砲2門を装備している。デザインは近藤和久

近藤による漫画『機動戦士ガンダム バニシングマシン』にも登場している。同作ではジオン軍によって一年戦争時に計画されたものの、終戦に伴い開発中止となった機体とされており、MA形態への変形が可能な可変MSである、ファンネルではなくビットを搭載しているなどの変更が加えられている。

脚注

テンプレート:Reflist

関連項目

テンプレート:宇宙世紀
  1. 劇場版アニメ機動戦士ΖガンダムIII A New Translation -星の鼓動は愛-』における追加設定として、追加兵装の大型ビームサーベルがある(玩具「HCM-pro」では両肩のバインダー内に装備されている)。
  2. 「TVシリーズ機動戦士Ζガンダム フィルムブックパート2」旭屋出版刊より。
  3. アニメ『機動戦士ガンダムΖΖ』で、キュベレイMk-IIが大気圏突入しても燃え尽きないなど、高い耐久力を持っている。
  4. 先述の大気圏突入の際に、突入姿勢を安定させるために基部をファンネルで破壊し、放棄するシーンが存在する。
  5. プラモデル『MG キュベレイ』の説明書より。
  6. 『大人の機動戦士ガンダム大図鑑』 66ページ。
  7. 月刊「ガンダムエース」増刊「Ζガンダムエース」(No.001)より
  8. ボークスウェーブによるガレージキット発売時にも、バインダー内部にはそれぞれの原型師の解釈によるディテールが造形されてはいた。
  9. 『機動戦士ガンダムUC』での設定。『機動戦士ガンダムΖΖ』本編では全機破壊されている。
  10. バンダイ版『機動戦士ガンダム MS戦記』170ページ。メディアワークス版には収録されていない