アンチョビ
アンチョビ(英語 anchovy)は、ニシン目カタクチイワシ科の小魚の総称である。イタリア語でアッチューガ acciuga (複数形はアッチューゲ acciughe)、フランス語でアンショワ anchois。日本では特に塩蔵品にした食品を指すことが多い。
漁獲されたアンチョビは、食用以外に肥料や飼料としても使用され、粉状に加工したものは魚粉やフィッシュミールとよばれる。煮干しや魚醤も生のアンチョビを使って作られることがある。
特徴
口が大きく、目より後方まで達する。これは、近縁のウルメイワシ科やニシン科(マイワシなど)との顕著な違いである。
背が青みがかった、いわゆる青魚である。腹側は銀色である。
カタクチイワシ亜科は体が細長い円筒形に近く、外見はイワシに似る。エツ亜科はそれほどイワシに似ておらず、高く立った特徴的な背びれを持つ。
漁獲
順位 | 和名 | 英名 | 学名 | 千トン |
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1 | アンチョベータ | anchoveta | テンプレート:Interlang | 10215 |
8 | カタクチイワシ | Japanese anchovy | テンプレート:Interlang | 1639 |
28 | ヨ-ロッパカタクチイワシ | European anchovy | テンプレート:Interlang | 381 |
46 | ミナミアフリカカタクチイワシ | southern African anchovy | Engraulis capensis | 286 |
世界的にはアンチョベータ(ペルーカタクチイワシ)が非常に多い。乱獲により減少しているが、それでも、種別の統計で2位のスケトウダラ (2790千トン) に数倍の差を空けて1位である。
日本で主に漁獲されるのはカタクチイワシである。
ミナミアフリカカタクチイワシはヨーロッパカタクチイワシと同種とされることが多い。
主な種類
2亜科、17属、約140種が属する。属は全て、種は主なもののみ記したが、カタクチイワシ属は全種を記した。
- エツ亜科 テンプレート:Interlang
- エツ属 テンプレート:Interlang
- エツ (Japanese grenadier anchovy) Coilia nasus
- テンプレート:Interlang
- テンプレート:Interlang
- ツマリエツ属 テンプレート:Interlang
- ツマリエツ (common hairfin anchovy) Setipinna tenuifilis
- オオイワシ属 テンプレート:Interlang
- エツ属 テンプレート:Interlang
- カタクチイワシ亜科 テンプレート:Interlang
- テンプレート:Interlang
- トガリイワシ属 テンプレート:Interlang
- ラプラタトガリイワシ (Marini's anchovy) Anchoa marinii
- シロカタクチイワシ (longnose anchovy) Anchoa nasus
- トガリイワシ (spicule anchovy) Anchoa spinifer
- アンチョビア属 Anchovia
- ギンオビイワシ属 Anchoviella
- ギンオビイワシ (broadband anchovy) Anchoviella lepidentostole
- テンプレート:Interlang
- タイワンアイノコイワシ属 テンプレート:Interlang
- ミズスルル (shorthead anchovy) Encrasicholina heteroloba
- タイワンアイノコイワシ (buccaneer anchovy) テンプレート:Interlang
- カタクチイワシ属 テンプレート:Interlang
- アンチョイタ (アルゼンチンカタクチイワシ、Argentine anchovy) テンプレート:Interlang
- オーストラリアカタクチイワシ (Australian anchovy) テンプレート:Interlang
- モトカタクチイワシ (ヨーロッパカタクチイワシ、European anchovy) テンプレート:Interlang
- ミナミアフリカカタクチイワシ Engraulis capenisis (モトカタクチイワシ Engraulis encrasicolus のシノニムとすることが多い。)
- ギンイロカタクチイワシ (silver anchovy) Engraulis eurystole
- カタクチイワシ (シコイワシ、Japanese anchovy) Engraulis japonicus
- カリフォルニアカタクチイワシ (Californian anchovy) Engraulis mordax
- アンチョベータ (ペルーカタクチイワシ、anchoveta) テンプレート:Interlang
- テンプレート:Interlang
- テンプレート:Interlang
- アルゼンチンイワシ (Atlantic sabretooth anchovy) Lycengraulis grossidens
- テンプレート:Interlang
- インドアイノコイワシ属 テンプレート:Interlang
- ヤエヤマアイノコイワシ (Commerson's anchovy) Stolephorus commersonnii
- インドアイノコイワシ (Hardenberg's anchovy) Stolephorus insularis
- 所属不明 テンプレート:Interlang
- Thryssa malabarica Day.png
オオイワシ属の1種 Thryssa malabarica
- Anchovy (PSF).png
モトカタクチイワシ Engraulis encrasicolus
- Engraulis australis (Australian Anchovy).gif
オーストラリアカタクチイワシ Engraulis australis
- Enrin u0.gif
アンチョベータ Engraulis ringens
利用
塩蔵アンチョビ
塩蔵品は、三枚におろして内臓を取り除いた小魚を塩漬けにして、冷暗所で熟成及び発酵させたものである。オリーブオイルを加え、缶詰や瓶詰にする。主にイタリアやスペイン、モロッコで生産されている。
缶詰には、三枚におろした身肉をそのまま平らに並べたフィレー・タイプのものと、その身肉をケッパーの実を芯にして渦巻状に巻いたロール・タイプのものがある。ペースト状にしてチューブに入れられた製品もある。
塩蔵アンチョビはヨーロッパの料理によく用いられる。そのまま、あるいはペースト状にして食べるほか、サンドイッチやカナッペの具としたり、ピザ、パスタ(プッタネスカなど)、サラダ(シーザーサラダなど)の味付けに用いたりもする。この他にも、アンチョビを用いる料理にはヤンソンの誘惑やバーニャ・カウダがある。欧米のウスターソースにもアンチョビが含まれている。
なお、アンチョビと似た加工食品に「オイルサーディン」があるが、アンチョビは 「塩漬けにしたカタクチイワシ」で非加熱であるのに対して、オイルサーディンは、「油漬けにしたサーディン(鰯)」で加熱したものである。アンチョビの方がはるかに塩辛く、オイルサーディンよりも小さな魚を用いて作られる。また、オイルサーディンは普通頭と内臓を除くだけで、三枚にはおろさない。
イカン・ビリス
マレーシアではインドアイノコイワシ属やタイワンアイノコイワシ属の小魚をゆでて塩漬けにしたあと、乾燥させた食品「イカン・ビリス(ikan bilis)」がサンバルの材料として、また、かりかりに揚げてナシ・ルマッのおかずやパンの具にして日常的に食べられている。同様のものをインドネシアでは「イカン・テリ(ikan teri)」という。
田作
日本ではカタクチイワシを塩ゆでした後、素干ししたもの(煮干し)を田作などと呼び、食用や出汁を取るためによく利用する。