もしもボックス

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もしもボックス藤子・F・不二雄SF漫画ドラえもん』に登場するひみつ道具

「もしもボックス」(てんとう虫コミックス11巻)、「お金のいらない世界」(てんとう虫コミックス13巻)、「あやとり世界」(てんとう虫コミックス15巻)、「鏡のない世界」(てんとう虫コミックス27巻)、「ためしにさようなら」(てんとう虫コミックス31巻)、大長編『のび太の魔界大冒険』という作品などに登場する。

概要

ドラえもんの説明によれば「一種の実験装置」とのことで、「もしもこんなことがあったら、どんな世界になるか」を体験するためのものである。

外観は一昔前の公衆電話ボックス1954年から1969年まで使用されていた通称「丹頂形」)に酷似。中に入って電話(設置されている電話機も当時の青電話そのもの)をかけ、「もしも○○○だったら」「**な世界を」と申し出て受話器を戻し待つ。設定が完了すると電話機のベルが鳴るので、それを確かめてからボックスを出ると、外の世界は実際にその通りの世界に変化している。ただし、使用者の言外の意図を読み取る機能はないようで、後述の「お金のいらない世界」のように、使用者が思い描いた世界とは差異が生じることがある。シリーズ中にこれで実現させた世界は、音のない世界、皆があやとりに夢中な世界、鏡のない世界、物価が非常に安い世界、お金のいらない世界、魔法世界などがある。元に戻す場合は、もう一度もしもボックスに入って「元の世界に戻して」と言えば、元に戻る。

なお、ドラえもんだけではなく妹のドラミも持っていて、彼女のもしもボックスは花柄である。『のび太の魔界大冒険』でのドラミの説明によれば、この道具で実現される架空世界は、一種のパラレルワールドであるとされている。また、この道具自体が、「条件に合ったパラレルワールドを見つけ出して、そこへ連れて行く」 ものであると説明されることもある。しかし、登場話によっては「今いる世界を作り変える道具」もしくは「新しい世界を作り出す道具」のように描写されることもあり、この道具が作り出す架空世界の理論は一定していない。

中央公論社刊による『スーパー・メカノ・サイエンス ドラえもん道具カタログ 2112年版』によれば、宇宙には無数のパラレルワールドが存在しており、その中には望み通りの「IF世界」が存在しているはずだと仮定して、その「IF世界」へ行く道具だと解説されている。

『21世紀版ドラえもん ひみつ大百科』では、次元選択コンピューター平行次元移動ボードなどの機能があるため、上記の「IF世界(パラレルワールド)に移動する」解釈が公式設定になった可能性が高い。

ネーミングは電話をかけるときの「もしもし」と「もしも」をひっかけたもの。使い方の想像が容易く、応用が容易で、作中に繰り返し登場したこともあり、広い知名度を持つ。深夜ラジオ等で多数ネタにされたこともある。活用方法は無限大に広がる。

テレビアニメ第2作第2期では、ドラえもんが所持しているもしもボックスにはドアの内側下部に「立ち小便禁止」とかかれている。

世界が変化している間は未来の世界でも元に戻すまで影響を受けている。

ちなみに、大山版アニメでは携帯電話のように小型化された「もしもホーン」が登場した(アニメ「もしもホーン」)。

登場話(初出年代順)

「もしもボックス」(凧揚げと羽根つきのない世界) 初出:1975年度小学四年生1月号

てんとう虫コミックス11巻に収録された、「もしもボックス」が初登場する話。
お正月で凧揚げが揚げられず、羽根突きでボロ負けしたのび太は「こんな遊び無ければ良いのに」と考えたのが始まり。凧揚げと羽根つきの無い世界でのび太は「誰もやったことが無いなら、僕が一番上手に決まってる」と考え、意気揚々とみんなに自慢するが、結局みんなの方が上手く、自分だけが赤っ恥をかいてしまうことになる。

「もしもボックス」(てれびくん版)初出:1976年度てれびくん12月号

てれびくん』1976年12月号に付録、コミックス未収録。
夜更かしに憧れるのび太が、昼夜が逆の世界を出す。その世界では、人々が昼間眠って夜に生活する。のび太は昼でも学校に行かずに済むので、喜んで遊び回ろうとするが、結局、みんなの生活習慣が正確に12時間逆転しただけで、全く目的を果たせていない世界であった。なお、『ぼくドラえもん』の別冊付録及び藤子・F・不二雄大全集では、「もしもボックスで昼ふかし?」という題名になっている。

「お金のいらない世界」 初出:1976年度小学五年生1月号

てんとう虫コミックス13巻に収録。
プラモデルが欲しいがお金がないというのび太は「もし世界お金がなかったら…」という思いからこの道具を使用し「お金のいらない世界」にした。だがその世界はのび太が思い描いたであろう「物品の取引にお金を必要としない世界」ではなく、「お金はマイナスの価値を示す物であり、皆が欲しがらない世界」であった。そのため、色々なアクシデントのため莫大なお金を受け取ったのび太は懲り懲りな顏付きで元の世界に戻してしまう。

「あやとり世界」 初出:1977年度てれびくん4月号

てんとう虫コミックス15巻に収録。
この道具を使用し、あやとりの習得度により社会経済的な地位が決まる世界にした。のび太はこの世界で上手くやり抜いていたが、あやとりができないドラえもんがすっかり頭に来て元に戻してしまうことになる。作中でのび太によって実現された世界の中では珍しく彼にとって何のデメリットもない世界であった。

「音のない世界」 初出:1977年度小学三年生5月号

てんとう虫コミックス16巻に収録。
例によってジャイアンがまたしてもリサイタルを開く事になり、何とか聞かずにすむ方法を考えた末、のび太とドラえもんは世界からをなくすことを思いつく。音がなくなった世界ではコミュニケーションは全て筆談で行われるようになった。生活に不便さを感じたため、リサイタルが終われば元の世界に戻そうと考えていたのび太だったが、不思議なことに音痴な歌の文字はそれを見ただけで吐き気がしてしまうと、全く目的を成さず終いだった(世界を元に戻す描写はない)。なおこの話は一度もアニメ化されていない。

「かがみのない世界」 初出:1980年度てれびくん3月号

てんとう虫コミックス27巻に収録。
自分のパッとしない顔に自信が持てないのび太が「さえなければ誰も自分の顔を知らず、傷つくこともうぬぼれることもないはずだ」という思いからこの道具を使用し「誰も自分の顔を見たことがない世界」にした。のび太とドラえもんは、鏡を出して周りの反応を楽しんでいたが、それがとんでもない事件の引き金となったため、元の世界に戻すことになった。

「大富豪のび太」 初出:1981年度小学五年生7月号

てんとう虫コミックス32巻に収録。
デノミネーション実験がテーマ。貨幣の価値が現在よりもはるかに高い(物価が安い)世界。漫画が1冊350の世界から10冊で35になり、貨幣価値が10万倍(物価が10万分の1)になった。そこでのび太は金に不自由しない世界を満喫するが、身代金目当ての誘拐犯が現れ、結局元の世界に戻すことにした。

「ねむりの天才のび太」 初出:1982年度てれびくん4月号

てんとう虫コミックス30巻に収録。
居眠りしてばかりで叱られたりバカにされたりするのび太は、この道具を使って「眠る人ほど偉い世界」を作ってみることにした。のび太はその世界でテレビ出演を果たすほど地位を築くが、結局眠れば何もできない世界では、様々な問題が発生してしまい、居眠り運転のダンプが突撃したことがきっかけで元の世界に戻すことに。

「ためしにさようなら」 初出:1982年度てれびくん2月号

てんとう虫コミックス31巻に収録。
しずかが海外に引っ越す友人との別れを惜しんでいる様子を見たのび太が、自分が引っ越すことになったらしずかたちは悲しんでくれるか試したくなり、野比家がアメリカに引っ越す事を想定してこの道具を使用。ジャイアンやスネ夫も別れを惜しみ、彼らなりのやり方で今までの意地悪を詫びようとした。しかし、しずかがあまりに悲しみ嘆くため、残酷だと元の世界に戻そうとしたら、もしもボックスが故障して本当にアメリカ行きになる寸前、ドラえもんが何とか修理して戻した。その手法はのび助の会社の転勤自体が「2月バカの嘘」という、半ば強引なやり口だった。

『のび太の魔界大冒険』、『のび太の新魔界大冒険 〜7人の魔法使い〜』

大長編第5作目、リメイク大長編第2作目。
魔法が本当に使えたらいいな」と魔法にあこがれるのび太が作った、魔法が実在する世界。詳しくはのび太の魔界大冒険を参照。この物語の全てはのび太がこの道具を使ったことから始まった。
なお、リメイク版ではパラレルワールドの解釈が異なる。また、本作で『もしもボックス』を粗大ごみとして玉子が処分したため、それ以降に発表された短編には、同道具は一切登場していない。

『豪華!スネ夫の貧乏バースデー』

2010年2月5日放送。

『ひるね王選手権』

2011年12月9日放送。

『アリガトデスからの大脱走』

2012年9月7日放送。
夏休みの宿題を終えないまま始業式の朝を迎えたのび太は、先生に叱られるのを恐れて、スペアポケットからこの道具を拝借し、「叱っちゃいけない世界だったら」と、どんなことをしても誰からも叱られない世界へと変えてしまう。
大喜びののび太であったが、これが原因で22世紀の未来では人を叱ることが禁じられる法律が出来てしまい、未来に戻ったドラえもんは過去(始業式当日の朝)にのび太を叱った記憶から「叱り現行犯」によりロボット収容所・アリガトデスへと連行され、さらにもしもボックスは所長のマジメーによって没収されてしまった。その後、周りの人達が自分のことを考えて叱ってくれていることに気づいたのび太が考えを改め元の世界に戻すことを決める。そして、のび太は時間を始業式当日の朝にまで戻して玉子や先生達から一から叱ってもらうのだった[1]

脚注

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  1. その日行うことが出来なかったドラえもんの誕生日を祝うためでもあった。

関連項目

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