障害
障害(しょうがい)とは、以下のような様々な意味、あるいは訳語にあてられる用語である。
- 本来は「障碍」あるいは「障礙」と書いて、ものごとの達成や進行のさまたげとなること。また、さまたげとなるもののことである。当用漢字(現在の常用漢字)ではないことから「障害」と当て字されたもの。
※なお、「礙」は「碍」の本字であるが、煩雑を避けるため、以下「碍」で統一する。 - 本来は「障害」と書いて、なんらかの障碍によって発生するダメージやトラブル、問題が生じたという意味。また、支障をきたしている状態。
目次
障害と障碍(障礙)の違い
テンプレート:Sisterテンプレート:Sisterテンプレート:Sister 「障害」あるいは「障礙」は共に、同じ「さわり・妨げ」という意味の熟語として、当用漢字の制定以前から漢和辞典に掲載されている。当用漢字の制定によって、「障害」という表記は同音の字を単に置き換えて当て字したものである。後に造語されたということはない。なお「碍」は「礙」の俗字である。
「障碍」と「障害」を、いずれも「しょうがい」と発音するのは日本に特有である。中国語では前者は「チャンアイ」(zhàng'aì)、後者は「チャンハイ」(zhànghài)と、また朝鮮語ではそれぞれ「チャンエ」(장애; jang'ae)、「チャンヘ」(장해; janghae)と、発音上も区別する。
しかし、現在のような「身体の器官や能力に不十分な点があること」という特定の意味ができたのは後年であり、現在の障害者という使い方を考慮した上で置き換えているわけではない。
当用漢字(常用漢字)
日本では、1945年内閣告示の当用漢字表と、1956年の国語審議会報告「同音の漢字による書きかえ」によって「障碍」の表記が公的に否定され、「障害」に一本化された。
但し、1981年内閣告示の常用漢字表により旧当用漢字表における強制性が弱められたことに伴い、民間では意図的に「障碍」が用いられる場合もある[1]。
障碍の現在の用法
当用漢字以前には「障碍」と書いていたもの。障碍物など、明治時代から多用された語である。
- 東京都馬術連盟は現在も「障碍」を使用している。
- 陸上競技の障害走(Hurdling) - コース内にハードルを配置
- 運動会などの障害物競走(Obstacle course)
- 特別支援教育分野において、障害のある子どもにとっての学習阻害要因は、障害そのものを含め、「ノイズ」と呼称する事がある。
- 障碍者は、以降にも説明するように現行では障害者と表記されることが多いが、障がいと表記することもある。
定義
コンピュータ用語としての「障害(Failure)」
システムの構成要素であるハードウェアの故障、ソフトウェアのバグやその他の機能不全が原因となって、システムが本来の機能をユーザに対して提供できない状況を言う。構成要素が故障しても、多重化などによってシステム全体が機能を提供し続けることができれば、システム全体としての障害は発生しない。(フォールトトレラント[2])
医学用語の「障害(Lesion)」
機能的に問題が生じている状態。
- 機能不全(dysfunction)、障害とも。
- 嚥下障害(Dysphagia)
- 記憶障害(Memory impairment)とは、記憶に問題が生じている状態である。
なお、傷害(injury)は、物理的に損傷し、傷害を受けた状態である。
精神医学用語の「障害(Disorder)」
テンプレート:Main テンプレート:Main 一般的には「Mental Illness(心の病、精神疾患)」と呼ばれるが、専門的には「Mental Disorder(精神障害)」が使われ、アメリカ精神医学会が定めたマニュアルである「Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders」(通称DSM)において定義されている。世界保健機関による『疾病及び関連保健問題の国際統計分類』(ICD)においても相当するものは、「精神と行動の障害」(Mental and behavioural disorder)である。
「障害者」というときの「障害(Disability)」
1950年に施行された「身体障害者福祉法」において、「障害者(Disability)」および「障害」の語が用いられたことから、それまで用いられていた「不具者」「癈疾者」といった語に代わって、「障害者」という新しい単語と、「障害」という語の新たな用法が一般に定着したテンプレート:Refnest。また、その後、「知的障害(者)」、「精神障害(者)」の分野においてもこれらの語が使われるようになった。
近年はこれらの語に関して、人権を尊重して「害」の字を避け「障がい者」「障がい」と書くべきとする動きが、当事者およびその周辺から広まってきている。とくに、東京都多摩市が2000年に交ぜ書きの「障がい者」「障がい」を採用して以降は地方自治体を中心に交ぜ書きが広まりつつある[3]。しかしこれらに対して、本質的な差別の解消や待遇の改善に何らつながるものではないとして、当事者サイドの一部を含め、批判する向きもある[4]。また、せめて「障碍者」「障碍」を使うべきとして、佐賀県知事・古川康らによる交ぜ書きそのものが好ましくないとする批判もある[5]。
2010年6月7日に文化審議会国語分科会より文部科学大臣に答申された改定常用漢字表では、2009年3月と11月の2回にわたり実施されたパブリックコメントで「碍」の追加を要望する意見が多数にのぼったものの審議の結果「碍」の追加を拒否する方針が決定された[6]。但し、2009年12月に設置された内閣府の障がい者制度改革推進本部で公文書における「障害」の表記見直しについて議論されている為、同本部に設置されている障がい者制度改革推進会議より文化審議会に対して特に「碍」の追加を求められた場合は、11月に予定されている内閣告示の前に改めて議論するものとされている[7]。
障害の種類
なお、障害学上の障害については障害学を参照。