ワープロソフト
ワープロソフトとは、コンピュータ上で動作するワードプロセッサの機能を実現したソフトウェア(プログラム)である。
名称
世界的には「ワープロ専用機」も「ワープロソフト」も、タイプライターとの対比として、「ワードプロセッサ」(Word processor)と呼ばれる事が多い。しかし日本ではワープロ専用機と区別して「ワープロソフト」と呼ばれる場合が多い。
ワープロソフトや表計算ソフトなどは「オフィスソフト」とも呼ばれる。また、これらをセットにした商品パッケージはオフィススイートと呼ばれる。
なお、文章の装飾機能を持たないテキスト編集機能中心のソフトウェアはテキストエディタと呼ぶ。
歴史
英文ワープロソフトでは、1978年にはCP/M上で動くWordStar、1986年にはMS-DOS上で動くWordPerfectが登場し、それぞれベストセラーとなった。
日本では1979年に、Apple IIに九十九電機が独自のカナROMを搭載させたローマ字カナ変換ソフト(カセットテープ媒体)付きのモデルが発売された(なお、ソフトとROMの単独販売もApple IIユーザー向けに、この時行われている)。
1983年にはPC-9801用の松や、一太郎の前身であるPC-100用のJS-WORDが登場した。松と一太郎はそれぞれベストセラーとなった。また同名のワープロ専用機の操作性を引き継いで親指シフトキーボードもサポートしたOASYSも根強い支持があった。
1990年代にはMicrosoft Windowsが普及し、ワープロソフトもWindows版が主力となった。海外ではWordPerfect(Windows版)、Lotus WordPro、Microsoft Wordが、それぞれ単体およびオフィススイートの形で、激しく競争した。
日本でも1995年よりWindows 95が普及すると、専用ワープロやMS-DOS版から、Windows版の日本語ワープロソフトが主力となり、一太郎(Windows版)、Microsoft Word、WordPro、OASYS(Windows版)などが競った。なお日本では「一太郎 + Lotus 1-2-3」など、メーカー間で提携したパッケージも販売された。
2009年現在では、英文も日本語も、Windows上で動くWordがほぼ事実上の標準となっている。一方では、オープンフォーマットなどの動きも進み、これを採用したOpenOffice.org Writerなどや、インターネット上のサービスであるGoogle Appsなども使われている。近年では各国の官公庁や企業において、オープンフォーマットを採用する事例が増加傾向にある。
機能
ワープロソフトは、手書きやタイプライタと異なり、文書をコンピュータ上で作成してデータの形で保存するため、後からの修正や再利用、電子メールなどでの添付、文書内の文字検索などが容易であり、印刷せずに画面で表示すればペーパーレス化も可能である。
また、文字の装飾や文字間隔の調整、図表の挿入などの編集機能を備えている。主流といわれるワープロソフトには、DTPで使用できるほどの高度な編集機能や、グループで使う事を考慮した世代管理機能や校正機能を持つものもある。
日本語ワープロソフトの場合は、専用の日本語入力システム(漢字変換ソフト、FEP、IMEとも呼ばれる)を含むものもあり、この性能(操作性、変換効率など)も差別化要因となる。松に含まれる松茸、一太郎に含まれるATOK、OASYSに含まれるOAK(オアシスかな漢字変換)などがあり、単体販売されるものもある。
主なワープロソフト
現役のワープロソフト
- Microsoft Word(マイクロソフト)
- 英文ワープロソフトをベースに、日本語対応もされた。Microsoft Officeにも含まれている。現在のワープロソフトの事実上の標準となっている。
- 一太郎(ジャストシステム)
- 当時の日本語ワープロ専用機の操作性がベースになっている。日本ではかつてはワープロソフトの定番であった。
- KWord(KDE)
- ワードパッド(マイクロソフト)
- Windowsに標準で搭載されているワープロソフト。
- Nisus Writer(マーキュリー・ソフトウェア・ジャパン)
- Mac OS用ワープロソフト。発売当時は多機能ワープロとして有名だったが、近年ではむしろ軽快さを売りにしている。多段階アンドゥやオートセーブを初めて搭載したソフトウェアである。
- OASYS(富士通)
- 独特の操作性が特徴だった同名の日本語ワープロ専用機の機能がベースになっている。
- Pages(アップル)
- WordPro(ロータス)
- Lotus SuperOfficeにも含まれている。ロータス、IBMを経て、現在日本ではソースネクスト社が販売している。
- OpenOffice.org Writer(OpenOffice.org)
- オープンソースのワープロソフト。Microsoft Wordと互換性があり、無料で使用できる。
- StarSuite Writer(サン・マイクロシステムズ)
- OpenOffice.orgをベースとしたワープロソフト。Microsoft Wordと互換性がある。
- LibreOffice Writer(The Document Foundation)
- OpenOffice.orgから派生したオープンソースのワープロソフト。Microsoft Wordと互換性があり、無料で使用できる。
- WordPerfect(Corel)
- 米国でのかつてのベストセラー・ワープロソフト。WordPerfect社、Novell社を経て、現在はCorel社が販売している。決まった形式に即して文書を作成することが可能なことから、法律家などに愛用されている。
- Kingsoft Writer(キングソフト)
過去に販売されていたワープロソフト
- EGWORD(エルゴソフト)
- 松(管理工学研究所)
- アシストワード(アシスト)
- AmiPro(ロータス)
- P1.EXE(または ARUGA P1.EXE、デービーソフト)
- WX-Word for Windows(エー・アイ・ソフト)
- マックライトII(クラリス)
- 文書プログラム(日本IBM)
- DOS文書プログラム(日本IBM)
- 織姫Lite(日本IBM)
- オーロラエース(大塚商会)
- WordStar
- 1980年代のアメリカの代表的なワープロソフトの1つ。
- スーパー春望(デービーソフト)
- VJE-Pen (VACS) - 比較的軽量・軽快なワープロソフト。PC-9801版とDOS/V版があり。価格は35000円[1]。
- Akane for Windows (Xerox)
脚注
参考文献
関連項目
- エディタ
- オフィススイート
- オフィススイートの比較
- DTP
- Rich Text Format - 簡易的なワープロ用データフォーマット
- OpenDocument
- ↑ 『徹底評価』p.50