わかち書き
わかち書き(わかちがき)とは、文章において語の区切りに空白を挟んで記述することである。分かち書き・分ち書き・別ち書きとも表記する。
日本語のわかち書き
日本語は西洋語と違って、通常の文章では、空白(スペース)によって語を区切ることはない。日本語の通常の文章は仮名漢字交じりなので、漢字、カタカナ、ひらがな等の文字種の違いや、句読点や中点によって、語や文章の区切りを識別する。しかし、句読点をこのような目的に使用するせいで、文構造や修飾関係、節の切れ目などを表わす機能があいまいなものになっている。句読点を付ける厳密な条件は決まっておらず、また一種類のみの文字種で構成された文章では、文章は語の区切りを誤りやすい。単語の区切りを誤って読むことは、「ぎなた読み」と呼ばれる。
例えば、
- こうしまるやさいいち
という文は、「講師丸谷才一」と「こう閉まる野菜市」に読める可能性がある。その場合、それぞれ、
- こうし まるやさいいち
- こう しまる やさいいち
とわかち書きをすれば誤読の可能性はなくなる。分かち書きをしないことにより、日本語はコンピュータによる検索や語数チェックなどのデータ処理が非常に難しくなっている。
日本語では、わかち書きは、漢字が制限されている小学校低学年や外国人初学者向けの教科書や、ROM容量が制限されたファミコンのゲームでの、ひらがな・カタカナのみからなる文によく使われる。カナタイプの文章などでは、文意を正確に伝えるために必須である。挟む空白は、全角(2バイト文字1個分)のこともあるが、その半分(半角)のこともある。
単語ごとに区切る方法もあるが、文節ごとに区切ることが多い。
- にほんご の ぶんしょう に おいて ご の くぎり に くうはく を はさんで きじゅつする こと。(単語ごとの区切り)
- にほんごの ぶんしょうに おいて ごの くぎりに くうはくを はさんで きじゅつする こと。(文節ごとの区切り)
日本語の点字のわかち書き
日本語の点字は、仮名文字体系で表記されるので、墨字から点訳する場合は、わかち書きをする必要がある。基本的に文節ごとに区切るが、サ変動詞「する」や複合名詞の対応などは点字独自のルールがある。たとえば先述の例文を点字式で表記する場合は以下のように「きじゅつ」と「する」を分けて書く。
- にほんごの ぶんしょうに おいて ごの くぎりに くうはくを はさんで きじゅつ する こと。(点字式)
朝鮮語のわかち書き
朝鮮語でも、日本統治時代に特に普及した漢字ハングル混じり文の場合は不要であったが、現在、一般に普及しているハングル専用表記の場合は、わかち書きを必要とする。そのため、日本語のわかち書きと同様、ほぼ文節に当たる単位(語節:助詞を語尾と見れば語ということになる)で分けるのが普通である。朝鮮語の正書法、ハングル専用文と漢字ハングル混じり文を参照。
ラテン文字を使用する言語のわかち書き
ラテン文字を使用する言語では、語と語の間にスペースを置くことが多く、日本ではこれを「わかち書き」と呼ぶことがある。
古典ラテン語ではわかち書きを行う習慣がなく(碑文で中黒<・>が使われることもあったが、多くの場合には単語の区切りが表されなかった)、中世に至ってわかち書きが普及した。分かち書きは6世紀の頃にアイルランドで発明されたとみられており、ヨーロッパ大陸で普及したのは8世紀から10世紀にかけてである[1]。