エネルギー効率
エネルギー効率(エネルギーこうりつ)とは、広義には投入したエネルギーに対して回収(利用)できるエネルギーとの比をさす。狭義には、燃焼(反応)させるエネルギーのうちどれだけのエネルギーが回収できるかという比率のこと。
概要
求める出力とそれを得る為に消費した入力との割合である。熱機関におけるエネルギー効率は熱効率とも称され、高温熱源から入る熱量をQ 1 、低温熱源へ排出される熱量をQ 2 とすると、熱効率ηは
- η = (Q 1 - Q 2 ) ÷ Q 1 = 1 - (Q 2 ÷ Q 1 )
で与えられる。
必ずしも、投入したエネルギーと回収(利用)できるエネルギーの形態は、同一ではない。例えば、太陽電池の場合、受光エネルギーに対する、出力電気エネルギーの比で、エネルギー効率をさす場合もある。ただし、この場合においては変換効率と称することが多い。
エネルギー変換効率
エネルギーを他の形態に変換する場合は、その効率は入力エネルギーと出力エネルギーを同一のエネルギー単位に換算してもとめられる。火力発電の場合、燃料の保有発熱量が入力エネルギー、電気エネルギーが出力エネルギーであり、いずれもジュールに換算することで効率が得られる。なお、電気エネルギーに変換されなかった分が廃棄熱(エネルギー)に相当する。全世界の2008年度発電実績は消費エネルギーは石油換算トン(ktoe)4,398,768キロトンで生産電力はグロスで1,735,579ktoe相当の電力(20,185TWh)、最終消費に供給された電力は1,446,285ktoe相当の電力(16,430TWh)であった[1]。グロスの効率は39%、最終効率は33%となる。
エネルギー変換効率の一覧
下記の表はエネルギー変換効率(独版)より。
効率は前工程・機器等での消費や損失は考慮していない。エネルギー変換工程・機器への直近に投入されるエネルギーと出力との比較であり、総合効率より高い数値を示す。例えば電気機器の場合発電自体の効率が33%(2008年度実績)[注 1]なので総合効率は以下の数値の三分の一となる。
変換形態 | 入力 エネルギー |
有効出力 | 効率 % | 備考 |
火力発電 (石炭) | 化学 | 電力 | 40–43 | |
コンバインドサイクル発電 | 化学 | 電力 | 50–60 | 燃料が天然ガスの場合 |
CHPコージェネ | 化学 | 電力、熱 | 65-75, <98 | 発電効率15~33パーセント、総合効率で65~75パーセントが可能である。 |
原子力発電[注 2] | 原子力 | 電力 | 33 | 独版には「効率は10%」の注意書きがある。 |
水力発電 | 力学 | 電力 | 80–90 | |
風力発電 | 力学 | 電力 | < 59 | |
太陽光発電 | 電磁波(太陽光) | 電力 | 5–40 | 普及品12%~21%[2]、理論限界85-90% |
MHD発電 (電磁流体発電) | 熱源 | 電力 | <30 | |
全世界の発電効率 | すべて | 電力 | 39 | 総合効率は33%、電力の内部消費、送電ロスなどで減少。2008年度の実績[注 1] |
水の電気分解 | 電力 | 化学 | 70 | |
エネルギー変換機械・装置 | ||||
燃料電池 | 化学 | 電力 | 30–70 | |
熱電対 | 熱 | 電力 | 3–8 | |
蒸気機関 | 化学 | 動力 | 3–44 | |
スターリングエンジン | 化学 | 動力 | 10–66 | |
オットーサイクル | 化学 | 動力 | 10-37 | |
ガソリンエンジン (自動車) | 化学 | 動力 | 20-30 | |
ディーゼルエンジン | 化学 | 動力 | < 50 | |
2ストローク低速ディーゼル | 化学 | 動力 | 55 | 大型船舶用 |
電気モーター | 電力 | 動力 | 20–99.5 | 出力200W以上のモーターでは70%以上 |
自転車用ダイナモ | 力学 | 電力 | 20–65 | 高効率のハブダイナモもあるが、一般のタイヤ・リム式の効率は20%前後。 |
発電機 | 力学 | 電力 | 95–99.5 | |
白熱電球 | 電力 | 電磁波(可視光) | 3–5 | ハロゲンランプを除く |
蛍光灯 | 電力 | 電磁波(可視光) | 28 | 英版より |
LED | 電力 | 電磁波(可視光) | 5–25 | |
送信機 | 電力 | 電磁波(電波) | 30–80 | |
高電圧送電 | 電力 | 電力 | 95 | 送電ロスは含まず |
スイッチング電源 | 電力 | 電力 | 50–95 | |
変圧器 | 電力 | 電力 | 50–99.8 | |
インバータ | 電力 | 電力 | 93–98 | |
スピーカー | 電力 | 音波 | 0.1–40 | 一般にハイファイスピーカーでは 0.3 |
パルスジェット | 化学 | 動力 | ? | |
タービンエンジン (航空機) | 化学 | 動力 | 40 | |
歯車ポンプ | 力学 | 動力 | < 90 | |
熱源 | ||||
キャンプファイヤー/囲炉裏/火鉢 | 化学 | 熱 | < 15 | 裸火であり調理の為の熱源とだけみれば効率は良くないが、同時に照明、暖房効果もある。 |
かまど/七輪 | 化学 | 熱 | ? | 調理に特化しており裸火より効率は良い。 |
ガスコンロ[注 3] | 化学 | 熱 | 60–70 | |
電気コンロ[注 3] | 電力 | 熱 | 50–60 | 総合変換効率を考えると17-20% |
電磁調理器[注 3] | 電力 | 熱 | 83 | 総合変換効率を考えると28% |
オンドル | 化学 | 熱 | ? | 暖房に特化しており、また調理の排熱を利用するなど裸火より効率は良い。 |
暖炉 | 化学 | 熱 | 10–30 | |
ガスヒーター | 化学 | 熱 | 80–90 | |
石炭ストーブ (家庭用) | 化学 | 熱 | 30–50 | |
石炭ストーブ (工業用) | 化学 | 熱 | 80–90 | |
冷蔵庫 | 電力 | 熱(冷却) | 20–50 | |
太陽熱パネル | 電磁波(太陽光) | 熱 | < 85 | |
投げ込みヒーター | 電力 | 熱 | < 98 | |
自然界 | ||||
光合成 | 電磁波(太陽光) | 化学 | 35 | |
蛍 | 化学 | 電磁波(可視光) | < 95 | |
デンキウナギ | 化学 | 電力 | ? | |
人間の骨格筋 | 化学 | 動力 | 20–30 | |
その他 | ||||
採炭から燃焼まで[注 4] | 化学 | 熱 | 30–60 | |
光合成によるバイオマスの生産からその燃焼まで[注 5] | 電磁波(太陽光) | 化学 | 0.1–2.5 |
脚注
- ↑ 1.0 1.1 IEA/OECDの資料より。詳細は発電を参照。
- ↑ The efficiency of nuclear power plants, according to official methods (IEA, EUROSTAT: efficiency approach) with 33% (= efficiency of an average thermal power plant) is fictitious, because the nuclear fuel (eg uranium) is not a simple way a kind of energy value (as with fossil fuels) is assigned can be, ie there is physical / chemical no clearly defined primary energy. Based on the total energy gap of U235, the efficiency of a nuclear power plant in nearly 10%. this approach, but additional costs of reprocessing the fuel rods to be factored in the case.
- ↑ 3.0 3.1 3.2 燃料を燃焼させ熱源として利用する機器のエネルギー変換効率は電熱機器の数値より見かけ低くなっているが、電力は発電時の効率が33%であり、総合変換効率を考えると、直接燃焼のほうが効率は良い。
- ↑ Wirkungsgrad der Kohleförderung: Wie viele Tonnen Braun- bzw. Steinkohle muss ich fördern und für die Produktionsanlagen verstromen, um eine Tonne verkaufen zu können?
- ↑ Gesamtwirkungsgrad, d. h. auch einschließlich Energie, die zur Bereitstellung der Reaktionsmoleküle erforderlich ist.
参考文献
- ↑ IEC/OECDの2008年度エネルギー収支より、2011年6月閲覧
- ↑ 2013年10月現在太陽光発電の効率