ウスターソース

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ファイル:IWorcestershire sauce・Tonkatsu sauce・Semi-thick sauce.jpg
ウスター・中濃・とんかつソース3本セット

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ファイル:Tonkatsu bento by jetalone.jpg
ソースが掛けられた「トンカツ弁当」。弁当には小分けのソースが添付されている事がある

ウスターソースウスターシャソース/ウースターソーステンプレート:Lang-en-short)は、野菜果実などのジュースピューレなどに食塩砂糖香辛料を加えて調整、熟成させた液体調味料

日本の行政上では、狭義の「ウスターソース」とともに「中濃ソース」や「濃厚ソース」(とんかつソースなどを含む)もまたウスターソース類として扱われており、それぞれ粘度が定められている[1]。日本語で単にソースと言った場合、一般にはウスターソース類のことを指し[2]、「ウスターソース」と言えば狭義のウスターソース、つまりウスターソース類の中でも粘度の低い製品を指すことがある[3]。日本のウスターソースはフランス料理に使われるブラウンソースがルーツであり、これを参考に日本にあわせて作り上げたものであるとも言われている[4]

歴史

前史

ルネサンス期、宮廷ではソース研究がされ、17世紀には、一般家庭でも独自のソースが作られるようになった。19世紀初頭に英国のウスターシャー州・ウスターの主婦が、食材の余りを調味料とともに入れ保存したままにしたところ、ソースができていた。このことがウスターソースの始まりとされている。

リーペリン・ソースの誕生

1835年頃、当地のサンズ卿が、イギリスの植民地であったインドからインド・ソースの作り方を持ち帰り、薬剤師であった二人の人物(ジョン・W・リーとウィリアム・ペリンズ)に依頼して作らせたことがきっかけで商品化され、後に世界初のソースメーカーであるリーペリン社(Lea & Perrins)が設立された。

世界への普及と展開

現在では、リーペリンブランドのウスターソース(リーペリン・ソース)が、イギリスのみならず世界各国で広く使われているとともに、日本や東南アジアでは独自の製法が生み出されている。ただし、リーペリン・ソースはその製法が現在でも社外秘とされている。もっとも、無数のソースを生み出した料理大国であるフランス人 は、ウスターソースを万能として使用するイギリス人を揶揄的に「百の宗教があるが、1つのソースしかない」と表現している[5]

利用法

イギリスのウスターソースは主原料に、モルトビネガーに漬け込んで発酵させたタマネギニンニクの他、アンチョビや多種のスパイスが使われているが、日本のウスターソースではアンチョビは使用されず、香辛料も辛味を抑えマイルドに仕上げられている。イギリスでは、シチュースープなどに数滴落として風味をつけるなど、料理の隠し味として使用されることが多いが、日本では揚げ物、お好み焼きキャベツの千切りなどにたっぷりとかける。

こうなった理由は、以下に見るようにウスターソースがたまたま日本の醤油に似ていたことから西洋風の「新味醤油」などとして一般化したためと考えられている。日本ではその後、このウスターソースに派生する形で、とんかつソースや中濃ソースが考案され、広く普及するようになった。

日本のウスターソース類

テンプレート:Sister 日本におけるウスターソースは細分化され各種が存在する。調味料としての消費量は大きく、主に飲食店や家庭で使用され、調理時のほか醤油差し(ソース差し)で食卓上に並べられていることも多い。日本の家庭や大衆食堂では、単に「ソース」と言えばウスターソースのことを指すほど定着した調味料となっている。

歴史

日本にウスターソース類が登場した時期は明治時代である。ヤマサ醤油の7代目濱口儀兵衛が米国遊学時代に独自のソース製造の構想が生まれ、8代目濱口儀兵衛が研究を重ね、1887年、米国で「ミカドソース」の名で販売を開始し、同時に、国内向けには「新味醤油」の名で発売された。しかし、味噌と醤油に慣れている一般の人びとには酸味と香辛料が強い味が馴染まず[6]1年ほどで製造は中止された。また、現存する最古のソースメーカーである神戸の阪神ソースは、創業者である安井敬七郎1885年に業務用として開発販売(一般ルートによる発売は1896年より)したソースを日本最初のものであるとしている[7]

時をほぼ同じくして、1894年に大阪では「三ツ矢ソース」が発売され、やはり「洋式醤油(洋醤)」と呼ばれた。また明治29年に山城屋は「イカリソース」を、明治30年には「矢車ソース」、明治31年には「白玉ソース」、そして明治33年には「日の出ソース」と、市場に出回るようになった[6]

1905年には関東地方で「犬印ソース」(現ブルドックソース)が、1908年には中部地方で「カゴメソース」が生まれ、明治後期になると全国的にソース製造業が勃興した。こうして、「ソースといえばウスターソース」という認識が日本において定着していくことになった。これらの初期のソースは、現在の狭義のウスターソース、つまり粘度の低い(さらっとした)ソースのみであった。

粘度の高いとんかつソース(濃厚ソース)は、1948年に神戸の道満調味料研究所(現:オリバーソース)によって発明された。また、中濃ソースは1964年キッコーマンから発売されたものが最初である。この頃から、日本の家庭の食卓が洋風化したことにより、消費量が拡大し、多くの家庭に常備されるようになった(東日本では中濃ソースが、西日本ではとんかつソースとウスターソースの併用が普及した[8])。家庭だけでなく、大衆食堂では、醤油とともに食卓上に常備されていることが多い。

特徴

イギリスの元祖ウスターソースは、モルトビネガー等の食酢およびアンチョビ、タマリンドエシャロットクローブ、タマネギ、ニンニク、香辛料、糖類、塩などを材料にしている。同様に日本のウスターソース類も玉ねぎ、ニンニク、トマト、リンゴなどの野菜・果実類に、糖類、食酢食塩香辛料でん粉カラメルなどを加えて作る。両者は外観・風味ともによく似ているが、日本のもののほうが甘みが強く、辛みは抑えられ[9]、とろみが強いといった若干の違いがある。

ウスターソース類はJAS規格上、粘度の違いにより以下のように分類される。

ウスターソース
最もさらっとしている
粘度0.2Pa・s未満
中濃ソース
ややとろみがある
粘度0.2Pa・s以上2.0Pa・s未満
濃厚ソース(一般的に、とんかつソースと呼ばれている)
中濃ソースよりもさらに粘度が高い(粘度はでんぷんを加えて高められることが多い)
粘度2.0Pa・s以上
「特濃ソース」などの商品名を付けているものを含む。

また、とんかつソース(他に各種材料を配合して用途をフライ専用に特化している)以外にも、お好みソースやきそばソースたこやきソースどろソースなど、ウスターソースから派生し、商品名に用途を冠し、粘度や風味を調整したソースもある。多くは濃厚ソースに属する。 なお、商品名にソースと付いていても、必ずしもウスターソース類に入るとは限らない。例えば、オタフクソースは業務用のソースカツ丼ソース焼きうどんソースなども製造しているが、これらは醤油などを加えた合わせ調味料であって、ウスターソース類には当てはまらない。

地域性

調味料は、地域や個人により好みが分かれており、なかなか統一的ではない。ウスターソース類についても同様で、メーカーやタイプ(濃度や風味など)も、地域ごとに受け入れられ方が異なるため、各地域でメジャーに思われている商品のタイプやブランドも異なっている。

関東地方以北では中濃ソースが専ら好まれ、近畿地方以西ではウスターソースととんかつソースないしお好み焼きソースを分けて使うことが好まれる[8]。これは西日本では中濃ソースの存在そのものが近年までほとんど一般に知られていなかったという事情に由来するもので、近畿地方に本部があるメーカーが中濃ソースを販売するようになった現在においても、この傾向はあまり変化していない。

さらには、地方でのみ、あるいは個別のメーカーのみが作っている風味や用途の異なるウスターソース類もある。

中京圏では、こいくちソースと呼ばれる独特の濃厚ソースが好まれている。名古屋では、古くより八丁味噌溜り醤油のように、味の濃いものが好まれる傾向がある。そのためソースにおいても、ウスターソースをより濃くした「こいくちソース」が開発・販売されるようになった。現在では愛知県名古屋市に本社を置く食品会社のカゴメコーミからそれぞれ販売されている。中京圏のスーパーなどではよく見かけ、ソース売り場の大半を占めている。粘度は低めで、さらっとしている。

また、長崎県では皿うどんに金蝶ウスターソースを使用することが多い。戦後長らく米軍の施政下におかれた沖縄県においては、国産ソースはあまり普及せず、酸味が強くアメリカ人好みのA1ソースが今も多く使用されている。福井県福井市では薄く揚げたカツをソースにくぐらせ、飯にのせたソースカツ丼が普及している。使用されるソースは一般のウスターソースに似ているが、一般のウスターソースとは別の、カツ丼専用のものである。

主なソースメーカー

中国のウスターソース

中国には、19世紀以降、香港上海を通じて伝来し、春巻山竹牛肉球といった広東料理上海料理で使われるようになった。ただし、上海では、20世紀の後半より独自のウスターソースが生み出され、今日では、上海料理用に世界中に輸出されるようになっている。

脚注

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関連項目

外部リンク

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  • ウスターソース類品質表示基準 平成十二年十二月十九日 農林水産省告示第千六百六十六号
  • 仲尾 玲子、中川裕子『つくってみよう加工食品 第5版』(学文社、2008年)、61頁。
  • 例えば『ソースのおはなし http://www.bulldog.co.jp/bull_story.html 』(ブルドックソース)3頁 の説明など。
  • テンプレート:Cite web
  • 21世紀研究会・編『食の世界地図』文藝春秋・105P
  • 6.0 6.1 tokyo-sauce
  • 阪神ソース http://www.hanshinsauce.jp/
  • 8.0 8.1 テンプレート:PDFlink日本能率協会総合研究所
  • 彩流社『ニッポン定番メニュー事始め』澁川祐子 198頁