アフリカ文学
アフリカ文学とひとくくりにするのは難しいほど、アフリカ大陸は大きく、また文化も多様である。そのため、一般的に〈アフリカの文学〉といった場合には、サハラ以南の作家と作品をさし、アラブ地帯の作品(1988年のノーベル文学賞受賞のナギーブ・マフフーズなど)は含めないのが普通である。各地の民族語にくわえて、アラビア語、英語、フランス語、ポルトガル語などの作品が存在する。殊に1950年代以降は英語で書く作家たちの活躍がめざましく、植民地時代を経て、激動する政治背景を描いた良質の作品が数多く生み出されている。
文字によるブラックアフリカの文学は、ヨーロッパ由来の言語による文学以前にもハウサ諸王国の『カノ年代記』のようなアラビア語文学が存在した。また、アラビア文字によって書かれたバンバラ語、ウォロフ語、フルフルデ語などによるイスラーム文学や、ラテン文字によって書かれたコーサ語によるキリスト教文学が存在した[1]。
一方、ヨーロッパ由来の言語によってアフリカ人に書かれた最初期の作品としては、テンプレート:仮リンクの『テンプレート:仮リンク』(1789年)の名が挙げられ、現代のアフリカ文学は大きな影響をイクイアーノから受けている[2]。
南アフリカ共和国やナイジェリアのような、自国内での出版産業が成立し、文学市場が存在するごく一部の国を除いて、基本的にアフリカ諸国では自国内での文学の出版、消費が薄いため、現在も、アフリカ文学はパリやロンドンやニューヨークの出版社からヨーロッパ諸言語で出版され、北側先進国の人間を主な市場としている[3]。また、植民地時代と比較すればアフリカ諸国の識字率は向上したとはいえ、未だに言語の壁は厚く、1950年代から60年代にかけてフランス語で創作したセネガルのセンベーヌ・ウスマン(センベーヌが姓である)は、自国の人たちに理解してもらうにはフランス語では限界があると考えて、1970年代には映画監督に転身するという事件もあった。ケニアのグギ・ワ・ジオンゴはこのようなヨーロッパの言語で書かれるアフリカ文学を批判し、精神の非植民地化を図るために、自らの母語であるギクユ語のみでの創作活動を行うことを宣言した[4]。グギの姿勢はアフリカの知識人に影響を与え、スワヒリ語、ウォロフ語、ショナ語、バンバラ語、リンガラ語、ハウサ語、ヨルバ語、コーサ語などによる文学活動も、多くの困難を抱えながらも徐々に実践され始めている[5]。
目次
- 1 主な作家
- 1.1 ノーベル文学賞受賞者
- 1.2 国別作家一覧
- 1.2.1 アルジェリア
- 1.2.2 アンゴラ
- 1.2.3 ウガンダ
- 1.2.4 エジプト
- 1.2.5 エチオピア
- 1.2.6 カメルーン
- 1.2.7 ガーナ
- 1.2.8 ギニア
- 1.2.9 ギニアビサウ
- 1.2.10 ケニア
- 1.2.11 コートジボワール
- 1.2.12 コンゴ共和国
- 1.2.13 コンゴ民主共和国
- 1.2.14 ジンバブエ
- 1.2.15 スーダン
- 1.2.16 セネガル
- 1.2.17 ソマリア
- 1.2.18 タンザニア
- 1.2.19 ナイジェリア
- 1.2.20 ナミビア
- 1.2.21 ニジェール
- 1.2.22 ボツワナ
- 1.2.23 マリ
- 1.2.24 南アフリカ
- 1.2.25 モザンビーク
- 1.2.26 モロッコ
- 2 アフリカ文学の翻訳者
- 3 脚註
- 4 参考文献
- 5 関連項目
- 6 外部リンク
主な作家
ノーベル文学賞受賞者
アフリカ文学に関連するノーベル文学賞受賞者は、ウォーレ・ショインカ(1986年)、ナギーブ・マフフーズ(1988年)、ナディン・ゴーディマー (1991年)、J. M. クッツェー(2003年)、ドリス・レッシング(2007年)の5名(2009年6月現在)。
国別作家一覧
※「国名」(五十音順)>「生年」順で並べた。
アルジェリア
アンゴラ
- ジョゼ・ルアンディーノ・ヴィエイラ(1935年-) - 『ルーアンダ』(Luuanda,1963)
- ペペテラ(1941年-) - 『マヨンベ』(1980)
- ジョゼ・エドゥアルド・アグアルーザ(1960年-) - O Vendedor de Passados(2004)
ウガンダ
エジプト
- ナギーブ・マフフーズ(1911年–2006年)1988年ノーベル賞
- ユースフ・イドリース(1927年-1991年)
- アリーファ・リファアト(1930年-1996年)
- ナワール・エル=サァダーウィー(1931年-)
- タウフィーク・アル=ハキーム
エチオピア
- サーハレ・セラシェ - 『扇動者たち』(1979)
カメルーン
- フェルディナン・オヨノ(1929年-)
- モンゴ・ベティ(1932年-)
ガーナ
- アイ・クウェイ・アーマー(1939年-) - 『美しき者いまだ生まれず』(1968)
- アマ・アタ・アイドウ(1942年-)
ギニア
ギニアビサウ
ケニア
- グレイス・オゴト(1930年-)
- レベッカ・ンジャウ(1932年-)
- アセナス・ボレ・オダガ(1938年-)
- グギ・ワ・ジオンゴ(1938年-) - ングーギ・ワ・ジオンゴとも言う。ギクユ語での創作を宣言。アメリカ合衆国への亡命後もギクユ語で出版している。
- デイヴィッド・マイルー(1939年-)
- メジャ・ムワンギ(1948年-)
- トマス・アカレ(1950年-)
- ムトニ・リキマニ
コートジボワール
コンゴ共和国
- エマニュエル・ドンガラ - 『世界が生まれた朝に』(1987)
- ソニー・ラブ・タンシ(1947年-1995年) - 『一つ半の生命』(1979)
コンゴ民主共和国
ジンバブエ
- ドリス・レッシング(1919年-)2007年ノーベル賞
- チェンジェライ・ホーヴェ(1954年-)
- ダンブズオ・マレチェラ(1955年-1987年)
- J.ノジポ・マライレ
- チャールズ・ムンゴシ
スーダン
セネガル
- レオポール・セダール・サンゴール(1906年-2001年)
- センベーヌ・ウスマン(1923年-2007年)- 『帝国の最後の男』(1981)、『ニーワン』(1987)
- マリアマ・バー(1929年-1981年) - 『かくも長き手紙』(1979)
- アリュン・ジョップ
- ファトゥ・ジョム
- シェイ・アミドゥ・カヌ(シェク・ハミドゥ・カン) - 『曖昧な冒険』(1961)
ソマリア
タンザニア
ナイジェリア
- テンプレート:仮リンク(1745年-1797年) - ベニン帝国出身。奴隷として西インド諸島のバルバドスに連行された後、解放されて英語で創作活動を行った。
- エイモス・チュツオーラ(1920年-1997年)
- チヌア・アチェベ(1930年-)- 『テンプレート:仮リンク』(1958)、『もはや安楽なし』(1960)
- フローラ・ンパワ(1931年-1993年)
- ウォーレ・ショインカ(1934年-)1986年ノーベル賞
- ケン・サロ=ウィワ (1941年 - 1995年)
- イシドレ・オペウオ(1942年-)
- コレ・オモトショ(1943年-)
- ブチ・エメチェタ(1944年-)
- フェミ・オショフィーサン(1946年-)
- フェスタス・イヤーイ(1948年-)
- ボデ・ショワンデ(1948年-)
- ベン・オクリ(1959年-)
- チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ(1977年-)
- エレチ・アマディ
ナミビア
ニジェール
ボツワナ
マリ
南アフリカ
- オリーヴ・シュライナー(1855年-1920年)
- アラン・ペイトン(1903年-1988年)
- ハリー・ブルーム(1913年-1981年)
- エゼキエル・ムパシェーレ(1919年-)
- ピーター・エイブラハムズ(1919年-)
- ナディン・ゴーディマー (1923年-)1991年ノーベル賞
- アレックス・ラ・グーマ(1925年-1985年)
- ダン・ジェイコブソン(1929年-)
- ジェイムズ・マシューズ(1929年-)
- マジシ・クネーネ(1930年-)
- リチャード・リーヴ(1931年-1989年)
- アソル・フガード(1932年-)
- アンドレ・プリンク(1935年-)
- J. M. クッツェー(1940年-) 2003年ノーベル賞
- オズワルド・ムチャーリ(1940年-)
- モンガーン・セローテ(1944年-)
- ジャブロ・ンデベレ(1948年-)
- グシナ・ムショーペ
- ロレッタ ゴッボ
- マイク・ニコル
- ミリアム・トラーディ
- ティム・ジェンキン
- エレン・クズワヨ
- シンディウェ・マゴナ
モザンビーク
- ジョアン・ディアス - 『ゴディド』(1952)
- ルイス・ベルナルド・ホンワナ(1942年-) - 『僕たちは皮膚病にかかった犬を殺した』(1964)
- ミア・コウト(1955年-) -『テンプレート:仮リンク』(1992)
- ウングラニ・バ・カ・コーサ(1957年-) - 『ウアララピ』(1987)
モロッコ
アフリカ文学の翻訳者
脚註
参考文献
- 土屋哲『現代アフリカ文学案内』新潮社〈新潮選書〉、1994年。
- 砂野幸稔「アフリカの文化と精神の非植民地化」『「南」から見た世界03 アフリカ 国民国家の矛盾を超えて共生へ』北川 勝彦:編、大月書店、1999年3月。
- 砂野幸稔「アフリカ文化のダイナミズム」『ハンドブック現代アフリカ』岡倉登志:編、明石書店、2002年12月。
- 小林信次郎「アフリカ文学 黒人作家を中心として」『ハンドブック現代アフリカ』岡倉登志:編、明石書店、2002年12月。
関連項目
外部リンク
テンプレート:Asboxテンプレート:Africa-stub
sv:Lista över afrikanska författare- ↑ 砂野幸稔「アフリカ文化のダイナミズム」『ハンドブック現代アフリカ』岡倉登志:編、明石書店、2002年12月 p.52
- ↑ 小林信次郎「アフリカ文学 黒人作家を中心として」『ハンドブック現代アフリカ』岡倉登志:編、明石書店、2002年12月 pp.181-182
- ↑ 砂野幸稔「アフリカ文化のダイナミズム」『ハンドブック現代アフリカ』岡倉登志:編、明石書店、2002年12月 pp.56-57
- ↑ 砂野幸稔「アフリカ文化のダイナミズム」『ハンドブック現代アフリカ』岡倉登志:編、明石書店、2002年12月 p.57
- ↑ 砂野幸稔「アフリカの文化と精神の非植民地化」『「南」から見た世界03 アフリカ 国民国家の矛盾を超えて共生へ』北川 勝彦:編、大月書店、1999年3月 pp.226-227