サーバ
サーバあるいはサーバー(テンプレート:Lang-en-short)は、コンピュータの分野では、本来はソフトウェアの用語であり、クライアントサーバモデルにおいてクライアントからの要求に対して何らかのサービスを提供する役割を果たす側のプログラムを指す言葉である。HTTP サーバ、IMAP サーバ、X-Window サーバなど規模や形態などは様々あり。
また、サーバーソフトウェアを稼動させているコンピュータ機器そのもののことも、サーバーと呼ぶ場合もある。
目次
概要
サーバとは、本来はコンピュータネットワークで使用される分散コンピューティング技術の1つであるクライアントサーバモデルでの用語である。サーバーはクライアントからの要求(リクエスト)に応じて、何らかのサービス(処理)を提供する側のソフトウェアである。提供するサービスはサーバの種類によって異なり、例えばファイルサーバであれば保管しているファイル(データ)の提供、プリントサーバであればプリンターへの印刷処理の提供、ウェブサーバであればウェブページを構成するHTMLファイルや画像ファイルなどのデータの提供をするなど、さまざまである。
物理的にひとつのホスト・コンピュータの中には、例えばFTPサーバとウェブサーバなど、複数のサーバーが並存することもあるし、サーバとクライアントとが並存することもありえる。しかし、業務用の比較的大型で信頼性を重視したシステムの場合、ひとつサーバを稼動させるのに、物理的にひとつのホスト・コンピューターを専用に割り当てる場合が多いため、ホスト・コンピュータそのものも「サーバ」と呼ぶこともある。当初は分散システム(日本ではオープンシステムとも呼ばれる)のUNIX搭載サーバーやPCサーバーが主に「サーバコンピュータ」(サーバマシン、サーバ機)と呼ばれたが、1990年代にはメインフレームなどもサーバ用のオープン標準対応が進み、大型のコンピュータ全般を「サーバ」と呼ぶ場合もある。
歴史
テンプレート:Main 1960年代まではメインフレームやオフィスコンピュータに代表される集中処理が行われていた。当時コンピュータは非常に高価で、研究機関や大企業の専門部署にごく限られた数しか存在しなかった。処理能力も(現在と比べれば)貧弱で、多数の利用者が1台のコンピュータの処理能力を分け合っていた。コンピュータ処理の大半は中央の「ホストコンピュータ」側で行われ、「端末」(ターミナル)側は最低限の画面制御(入力チェック、描画等)しか担当しなかった。
1970年代から1990年代にかけて、分散処理に移行していった。コンピュータの性能が向上する一方で価格は下がるダウンサイジングで、サーバ用ホストマシンを目的別に部課単位で手軽に用意できるようになった。同時にワークステーションやパーソナルコンピュータなど高機能な「クライアント」も身近になり、処理の多くを「クライアント」で行い、「サーバはクライアントからの要求を処理する(のみ)」というクライアントサーバモデルが普及した。
1990年代後半から2000年代、インターネットが普及すると、サーバはより身近な存在になった。素人でも自宅サーバやホスティングサーバを利用するようになった。企業のサーバ用ホストマシン利用も進んだ。2008年、世界で約810万台、日本で約60万台のサーバ用のホストマシンが出荷された[1]。しかし、サーバ用ホストマシンの乱立は管理上好ましくないため、サーバ機能をデータセンタなどに集約し、1台のホストマシンの中で複数のサーバプログラムを稼働させる仮想化など新しい形態の集中処理が普及した。
2010年代には、クラウドコンピューティングが普及すると言われている。サーバ用ホストマシンはサービス提供者に集約していく可能性がある。2008年には世界で出荷されたサーバ用ホストマシンの2割をマイクロソフト、グーグル、ヤフー、アマゾンの4社が購入したという説がある[1]。
事業者 | サーバ用ホストマシン保有台数 |
---|---|
アマゾン | 7万~10万台(推定) |
グーグル | 300万台(推定) |
フェイスブック | 3万台[2] |
表記
テンプレート:See also 「サーバ(ー)」の表記は、「コンピュータ(ー)」「プリンタ(ー)」などと同様に、表記揺れが発生している。2011年1月現在、主なメーカーなどは主に以下の表記を使用しているが、同一メーカー内でも混在や移行中もある。大まかな傾向として日本国内のメーカは「サーバ」、日本国外のメーカは「サーバー」を選択する傾向がある。また、近年は「サーバ」の表記から「サーバー」に変更するメーカが現れている。
名称 | 表記 | 使用例・備考 | |
---|---|---|---|
サーバ | サーバー | ||
富士通 | ○ | サーバ一覧 | |
NEC | ○ | △ | サーバ、ストレージ サーバー仮想化基礎 |
日立 | ○ | 日立のサーバー 製品ラインアップ | |
NTT東日本 | ○ | 安心サーバーホスティング | |
NTT西日本 | ○ | サーバーセキュリティーチェックサービス | |
Dell | ○ | サーバ一覧 | |
IBM | ○ | サーバー選定・構成ガイド (1980年代以前より「サーバー」) | |
HP | ○ | サーバー & システム(2008年~2009年に「サーバー」に変更) | |
インテル | ○ | インテルのサーバー製品(2000年代に「サーバー」に変更) | |
AMD | ○ | サーバー向け製品 | |
マイクロソフト | ○ | サーバー製品[3] | |
オラクル | ○ | Sunサーバーおよびストレージ・システム | |
UNISYS | ○ | △ | サーバES7000(混在) |
経済産業省 | ○ | △ | 平成22年度概算要求情報政策の重点(混在) |
ソフトウェア
特徴
サーバ・ソフトウェアは通常、下記のような点に重点を置いている。
- 多数のユーザーの同時アクセスに対応できる、性能とデータ整合性
- アカウント管理やポリシー管理やログ管理などの、セキュリティーや対監査性
- 連続稼働に耐える信頼性、可用性、保守容易性
- 将来の変更や拡張が容易な、拡張性
種類
サーバ機能を提供する主なソフトウェアの種類には以下がある。
サーバ | 機能 |
---|---|
データベースサーバ | データベース処理 |
トランザクションサーバ | トランザクション処理 |
アプリケーションサーバ | アプリケーション処理(特に Java アプリケーションサーバ) |
ウェブサーバ | ウェブアプリケーション処理(Apacheなど) |
メールサーバ | メールサービス(Sendmail など) |
FTPサーバ | ファイル転送 |
ファイルサーバ | ファイル共有 |
プリントサーバ | プリンター共有 |
DNSサーバ | |
DHCPサーバ | |
プロキシサーバ |
これらサーバ用ソフトウェアは、1台のコンピュータ(ハードウェアやオペレーティングシステム)で複数の種類を稼働させる場合や、ネットワーク上の複数のコンピュータ間で相互に連携する場合がある。また同じ種類のサーバーを複数のコンピュータで稼働させてコンピュータ・クラスター構成として、負荷分散やスケーラビリティや障害対策とする場合もある。
オペレーティングシステム
サーバ用に使用される主なオペレーティングシステムには以下がある。これらには現在は、上記サーバ機能のいくつかは標準で含まれている。
サーバ用ホストマシン
特徴
サーバソフトウェアを稼働させることに特化したホストマシンとして販売されているハードウェアは、機種やモデルにもよるが、個人向けコンピュータと比較して以下の特徴がある。
- 性能
- 連続稼働性
- 後述の可用性にも関連するが、業務により求められる24時間365日に近い連続稼働を実現するため、計画停止および計画外停止の時間を最小化するための各種設計が行われている。
- 信頼性・可用性・保守性(RAS)
- 個々の部品の信頼性(設計・製造・検査、誤り検出訂正機能付のメインメモリなど)に加え、特定の部品で故障が発生した場合の可用性(重要部品の冗長化、RAIDなど)や、部品の診断や交換が短時間または無停止で行える保守性(各種のログ機能、診断プログラム、ホットスワップなど)を備える。内部のハードウェアを完全に二重化した専用サーバ(フォールトトレラントコンピュータ、一部のハイエンドサーバ)の他、通常のサーバを複数使用してコンピュータ・クラスターを構成する場合も多い。またメーカー側は保守部品の長期保管や、保守契約に応じて24時間365日の緊急出荷体制などを行っている。
- 運用管理
- 多数のサーバの稼働状況を遠隔地からも集中管理できる機能が、ハードウェアおよびソフトウェアにて提供されている。管理はGUIツールの他、遠隔地でも軽くて履歴が残り手順書などに再利用が容易なキャラクタユーザインタフェースが組み合わされる場合も多い。またネットワークや電話回線経由でメーカーへ障害情報を自動通知できるものもある。
- 設備
- 特にデータセンタ用のモデルは、専用のラック、電源(200V、無停電電源装置など)、空調などを必要とするものが多い。集積度が高いものは、発熱やファンの騒音が大きいものも多く、空冷の他に水冷を採用したサーバやラックもある。
種類
サーバとして販売されるコンピュータ(ハードウェア)には、多種多様の物が存在する。
アーキテクチャ
アーキテクチャによるサーバの分類には以下がある。
- PCサーバ(x86サーバ、IAサーバ)
- UNIXサーバ - ハードウェアの分類上は、CPUにRISCまたはIA-64を搭載したUNIX専用サーバを指す場合が多い
- ミッドレンジサーバ(フォールトトレラントコンピュータ、オフィスコンピュータなど)
- メインフレームサーバ
上記の分類の他に「大規模な企業向けのサーバ」との意味で「エンタープライズサーバ」との呼称も使われるが、実際のアーキテクチャはメーカーにより異なり、ハイエンドのPCサーバーを指す場合、メインフレームやフォールトトレラントコンピュータなど専用のコンピュータを指す場合、それらを総称する場合など、さまざまである。
また以上の他、NASなどのネットワーク・アプライアンスもサーバの分類に含まれる場合がある。
筐体の形状
筐体の形状による分類には以下がある。
- ラックマウント型
- インターネットデータセンター等に設置されているサーバ用のラック(19インチラック)にマウントするのに適した形状のサーバである。ラックサーバとも呼ばれる。詳細はラックマウント型サーバを参照。
- タワー型(ペディスタル型)
- 床置きするタイプのサーバで、タワー型PCと同様な形をしている。大きさはPC/AT互換機のミニタワーサイズから冷蔵庫大サイズまで様々ある。
- ブレード型
- シャーシと呼ばれる筐体にブレードと呼ばれる薄いサーバを複数差し込む形態のサーバである。詳しくはブレードサーバを参照。
市場シェア
2008年[4] | 2009年[5] | 2010年[6] | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
メーカー | % | メーカー | % | メーカー | % | |
1 | IBM | 31.9 | IBM | 32.9 | IBM | 32.7 |
2 | HP | 29.5 | HP | 29.9 | HP | 29.8 |
3 | Dell | 11.6 | Dell | 12.1 | Dell | 12.1 |
4 | Sun | 10.1 | Sun | 8.9 | Oracle(Sun) | 8.8 |
5 | 富士通/FSC | 3.5 | 富士通 | 5.1 | 富士通 | 5.1 |
その他 | - | 12.1 | - | 11.2 | - | 5.1 |
2010年[7] | ||
---|---|---|
メーカー | % | |
1 | 富士通 | 24.5 |
2 | IBM | 19.7 |
3 | NEC | 16.7 |
4 | HP | 16.4 |
5 | 日立 | 9.4 |
その他 | - | 13.3 |
脚注
関連項目
外部リンク
テンプレート:Computer sizes- ↑ 1.0 1.1 1.2 テンプレート:Cite web
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ 少なくとも1997年より「サーバー」表記。例:Windows NT(R) Server 4.0対応 高機能WWWサーバーシステム 「Microsoft(R) Internet Information Server 3.0」日本語版、4月2日(水)にインターネットにて無償配布開始。なお2008年のマイクロソフト製品ならびにサービスにおける外来語カタカナ用語末尾の長音表記の変更について ~ 新しい長音表記ルールに順次移行 ~では、従来の表記ルールは「2音の用語は長音符号を付け、3音以上の用語の場合は(長音符号を)省く」ことを原則と記載。
- ↑ Worldwide Server Market Contracts Sharply in Fourth Quarter as Market Revenues Decline to $53.3 Billion in 2008, According to IDC
- ↑ Worldwide Server Market Rebounds Sharply in Fourth Quarter as Demand for Blades and x86 Systems Leads the Way, According to IDC - 24 Feb 2010
- ↑ Worldwide Server Market Accelerates Sharply in Fourth Quarter as Demand for Heterogeneous Platforms Leads the Way, According to IDC - 28 Feb 2011
- ↑ 2010年国内サーバー市場動向を発表 - IDC Japan