イヌワシ
イヌワシ(犬鷲[1]、狗鷲[1]、Aquila chrysaetos)は、鳥綱タカ目タカ科イヌワシ属に分類される鳥類。イヌワシ属の模式種。
分布
アフリカ大陸北部、北アメリカ大陸北部、ユーラシア大陸[2][3][4]
- A. c. japonica イヌワシ
冬季に南下することもある[4]。日本では亜種イヌワシが周年生息する(留鳥)[2][5][6][7][8]。
形態
全長75-95センチメートル[2][4]。翼開張168-220センチメートル[6][7][a 1]。全身の羽衣は黒褐色や暗褐色[2][4][5][7][a 1]。後頭の羽衣は光沢のある黄色で[2][4][5][7][a 1]、英名(golden=金色の)の由来になっている[6]。尾羽基部を被う羽毛(上尾筒、下尾筒)は淡褐色。中雨覆や風切羽基部の色彩は淡褐色。
虹彩は黄褐色や淡橙色[2][7]。嘴基部や嘴基部を覆う肉質(ろう膜)、後肢は黄色で、嘴の先端は黒い[5]。
幼鳥は後頭から後頸にかけて淡褐色の縦縞が入る[7]。尾羽の基部や初列風切、外側次列風切基部の色彩が白い[2][5][7]。虹彩は暗褐色[2][7]。
分類
5亜種に分かれる[4]。
- Aquila chrysaetos chrysaetos (Linnaeus, 1758)
- Aquila chrysaetos japonica Severtzov, 1888 イヌワシ - など
生態
食性は動物食で、哺乳類、鳥類、爬虫類、動物の死骸などを食べる[3][4][7][8]。上空から獲物を発見すると、翼をすぼめ急降下して捕らえる[3][5]。通常は単独で獲物を捕らえるが、1羽が獲物の注意を引きつけもう1羽が獲物の後方から襲い掛かる事もある[6]。
繁殖期対は卵生。断崖や大木の樹上に木の枝や枯草などを組み合わせた巣を作る[3][4][5][8]。営巣場所が限られるため毎年同じ巣を使うことが多い[3][4][6]。日本では2-3月に1回に1-2個の卵を産む[3][4]。主にメスが抱卵を行い、抱卵日数は43-47日[4]。育雛も主にメスが行い、育雛期間は70-94日で通常は1羽のみ育つ[a 1]。雛は孵化してから65-80日で飛翔できるようになり、3か月で独立する[4]。生後3-4年で性成熟し[4]、生後5年で成鳥羽に生え換わる[6]。
人間との関係
和名のイヌは「劣っている、下級の」の意で、クマタカなどにくらべ本種の尾羽が矢羽としての価値が低かった事に由来する[1]。漢字表記の狗は本種が天狗を連想させることに由来する[1]。
開発による生息地の破壊、害鳥としての駆除[4]、人間による繁殖の妨害などにより生息数は減少し、農薬汚染も懸念されている[a 1]。 日本では1965年(昭和40年)に種として国の天然記念物、1976年(昭和51年)に岩泉町と北上町が「イヌワシ繁殖地」として国の天然記念物に指定されている[3]。 1993年(平成5年)に種の保存法施行に伴い国内希少野生動植物種に指定されている[a 2]。
- 石川県の県鳥に1965年1月1日選定[9]された。そのため、石川県警察のマスコットや金沢工業大学の学園シンボルとなっている。
- 東北地方にも生息することから宮城県のサッカークラブのベガルタ仙台は球団のマークと旗にイヌワシを用いている。また、同じく宮城県のプロ野球チームである東北楽天ゴールデンイーグルスはチーム名にイヌワシの英名である「ゴールデンイーグル」を用い、マスコットのクラッチとクラッチーナもイヌワシをモチーフとしている。
- 1973年(昭和48年)11月19日発売の90円普通切手の意匠になった。
- モンゴルでは鷹狩に使われることがある[10][11][12][13][14][15]。
- メキシコの国鳥に指定されている。
画像
- Steinadler Baby vierzehn Tage alt 12052007 01.jpg
卵と雛
- Steinadler Aquila chrysaetos closeup2 Richard Bartz.jpg
横顔
- Aquila chrysaetos USFWS.jpg
飛翔
- Aquila chrysaetos.jpg
イラスト
参考文献
関連項目
外部リンク
- ↑ 1.0 1.1 1.2 1.3 安部直哉 『山溪名前図鑑 野鳥の名前』、山と溪谷社、2008年、48頁。
- ↑ 2.0 2.1 2.2 2.3 2.4 2.5 2.6 2.7 五百沢日丸 『日本の鳥550 山野の鳥 増補改訂版』、文一総合出版、2004年、42頁。
- ↑ 3.0 3.1 3.2 3.3 3.4 3.5 3.6 加藤陸奥雄、沼田眞、渡辺景隆、畑正憲監修 『日本の天然記念物』、講談社、1995年、650-652、732頁。
- ↑ 4.00 4.01 4.02 4.03 4.04 4.05 4.06 4.07 4.08 4.09 4.10 4.11 4.12 4.13 4.14 4.15 黒田長久監修 C.M.ペリンズ、A.L.A.ミドルトン編 『動物大百科7 鳥I』、平凡社、1986年、118、130、183頁。
- ↑ 5.0 5.1 5.2 5.3 5.4 5.5 5.6 高野伸二 『フィールドガイド 日本の野鳥 増補改訂版』、日本野鳥の会、2007年、168-169頁。
- ↑ 6.0 6.1 6.2 6.3 6.4 6.5 中村登流監修 『原色ワイド図鑑4 鳥』、学習研究社、1984年、109、174頁。
- ↑ 7.0 7.1 7.2 7.3 7.4 7.5 7.6 7.7 7.8 真木広造、大西敏一 『日本の野鳥590』、平凡社、2000年、164-165頁。
- ↑ 8.0 8.1 8.2 『小学館の図鑑NEO 鳥』、小学館、2002年、41頁。
- ↑ 都道府県の鳥について (日本鳥類保護連盟)
- ↑ Soma, Takuya. 2012. ‘The Art of Horse-Riding Falconry by Altai-Kazakh Falconers’. In HERITAGE 2012 (vol.2) - Proceedings of the 3rd International Conference on Heritage and Sustainable Development, edited by Rogério Amoêda, Sérgio Lira, & Cristina Pinheiro, 1499-1506. Porto (Portugal): Green Line Institute for Sustainable Development <E-Book ISBN: 978-989-95671-8-4>.
- ↑ Soma, Takuya. 2012. ‘Contemporary Falconry in Altai-Kazakh in Western Mongolia’, The International Journal of Intangible Heritage (vol.7), pp. 103–111 [1]
- ↑ 相馬拓也2012「アルタイ=カザフ鷹匠による騎馬鷹狩猟: イヌワシと鷹匠の夏季生活誌についての基礎調査」『ヒトと動物の関係学会誌(vol. 32)』: pp. 38–47
- ↑ 相馬拓也2013「アルタイ=カザフ鷹匠たちの狩猟誌: モンゴル西部サグサイ村における騎馬鷹狩猟の実践と技法の現在」『ヒトと動物の関係学会誌(vol.35)』: pp. 58–66. 2013.
- ↑ Soma, Takuya. 2013. ‘Ethnographic Study of Altaic Kazakh Falconers’. Falco: The Newsletter of the Middle East Falcon Research Group 41: 10-14 [2]
- ↑ http://discover-bayanolgii.com/eagle-hunters/
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