切る (フランス料理)
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テンプレート:出典の明記 切る(きる)では、フランス料理に使われる切りかた、特に野菜の切り方について説明する。
様々な切り方
「~ェ(仏:-é(e))」式の単語は、切り方そのものを表す動詞の過去分詞形に由来する(-é が男性形、-ée が女性形。発音は同じ)。
それ以外の単語は、切った後の食材の形状や状態、その切り方を用いる料理などに因む(tailler en ~「~状に/~用に切る/刻む」という風に用いる)。
- アッシェ(仏:haché(e))
- 非常に細かく切ったもの。ジェリエンヌ(後述)を切るとすぐにできる。日本ではみじん切りと呼ばれる。切断面が多いので水分が抜けやすい。
- 語源の アッシュ hache は斧/鉞のこと。
- アリュメット(allumette)
- マッチ棒の軸のように 5mm 角に切ったもの。なお allumette はマッチ棒のこと。 日本ではマッチ棒切りと呼ばれる。
- フィユタージュ(仏:Feuilletage)を細かく切って長方形に焼いたパイのことでもある。
- 使用している料理:アリュメット(ジャガイモをアリュメットに切り、油で揚げ塩で味付けした料理)
- エスカロップ(仏:escalope)
- 1cm前後の、やや厚めの薄切り肉。エマンセ(後述)よりも厚め。肉や魚、特に子牛の薄切りに使われる。
- エマンセ(仏:émincé(e))
- 薄く切ったもの。色々な食材、主に肉料理に使われる。日本では薄切りと呼ばれる。
- なお語根のマンス mince は「薄い」。
- エマンセ・ロン(仏:émincé(e) rond)
- 丸く薄く切ったもの。日本では薄切りと呼ばれる。ポテトチップに使われる。
- なお rond は輪切りにした食材のこと。
- オリーヴ(仏:olive)
- オリーヴの実のような形に切ったもの。シャトー(後述)に似るが面がない。
- ココット(仏:cocotte)
- 3cm 位に切り、フットボール状に面取りしたもの。日本ではココット切りと呼ばれる。
- なお cocotte は(蒸し焼き用の蓋付き)両手鍋のこと(「こっこちゃん」、つまり雌鶏を表す幼児語でもある)。
- ゴーフレット(仏:gaufrette)
- じゃがいもを薄い格子状(クリスカット)にしたもの。マンドリーヌ(スライサー)を使って90度ずつ回転させながら切る。ポテトチップに使われる。
- なお gaufrette にはウエハースの意味があるが、ここでは小型のワッフルのこと。
- コルレット(仏:collerette)
- 皮を剥いた後、そのまま切ったもの。日本では輪切りといわれる。なお collerette は子供服や中世服飾の飾り襟のこと。
- シズレ(仏:ciselé(e))
- 日本では千切りまたはみじん切りと呼ばれる。野菜に使われる。スィズレ ciseler (原形)は「(金石に)彫刻を施す」こと。
- ジュリエンヌ(仏:julienne)
- マッチ棒より細い糸状に切ったもの。日本では千切りといわれる。にんじんやじゃがいもが使われることが多い。これは Jean Julien というコックの名に因む。
- 使用している料理:コンソメジュリエンヌ(コンソメスープにジェリエンヌした野菜を浮かべた料理)
- シャトー(仏:château)
- ココットより少し大きく 5~6cm 位のフットボール状に切ったもの。日本ではシャトー切りと呼ばれる。
- なお château はシャトーブリアンの省略形で、その付け合わせのジャガイモの切り方に因む(単語そのものは城郭の意味もある)。
- ダルヌ(仏:darne)
- 日本では筒切りと呼ばれる。大きな魚などに使われる。なお darne とは(魚の)切り身のこと。
- トゥルネ(仏:tourné(e))
- 日本では面取りと呼ばれる。トゥルネ tourner (原形)は「旋盤やろくろで加工する、形を整える」こと。
- トロンソン(仏:tronçon)
- 日本では輪切りや筒切りと呼ばれる。こちらは木材に使われることもある。
- 語根のトロン tronc は(樹木の)幹、(動物の)躯幹および胴体のこと。
- ノワゼット(仏:noisette)
- 鹿や仔羊の背肉などを円形に切ったもの。なお noisette はセイヨウハシバミの実(ヘーゼルナッツ)のこと。
- パヴェ(仏:pavé)
- 舗石のように分厚く切ったもの。なお pavé は舗石(のように四角くて大きな塊)のこと。
- バトネ(仏:bâtonnet)
- 約 5mm 角、4~5cm の棒状に切ったもの。日本では棒切りと呼ばれる。なお bâttonnet は小さい棒(バトン)のこと。
- バルド(仏:barde)
- 豚の背脂の薄切り(ラードベーコン)。ラルドン(後述)とは違い、こちらは薄く切ったものに鳥肉など包んで焼くのに用いる。
- なお barde には(中世の)馬鎧の意味もある。
- ブリュノワーズ(仏:brunoise) ===
- 約 5mm の正方形に切ったもの。マセドワーヌ(後述)よりも細かいさいの目切り。
- ペイザンヌ(仏:paysanne)
- 1~2cm 角の薄切りにしたもの。日本では色紙切りと呼ばれる。なお paysanne は田舎風のこと。
- ポン・ヌフ(仏:pont neuf)
- 1cm 角、長さ 6~7cm ほどに切ったもの。日本では拍子木切りといわれる。ポン・ヌフはセーヌ川にかかる橋の名であり、その近くで売られていたフライドポテトの形が由来である。そのためジャガイモだけに使われる呼び方である。
- ブール(仏:boule)
- 球形に剥いたもの。もしくは刳り抜き型で刳り抜いたもの。バターソテーなどに使われる。なお boule はボールのこと。
- マセドワーヌ(仏:macédoine)
- 約 1cm 角の立方体に切ったもの。フルーツや野菜に使われる。日本ではさいの目切りと呼ばれる。ドミノ(仏:domino)とも呼ばれる。
- なお macédoine は数種類の野菜や果物を混ぜ合わせたサラダや温製料理のこと(語頭が大文字ならマケドニア)。
- ミニョネット(仏:mignonnette)
- 仔羊や羊の背肉から切り出した小円形の切り身。
- 可愛らしいという意味をもつ mignon は、ここではフィレ・ミニョン(ヒレ肉末端部の切り身)などにみられるように、肉の切り身のこと。それに指小辞 -ette (小さい~、~のようなもの)がついたのが mignonnette である(粗挽き胡椒の意味もある)。
- メダイヨン(仏:médaillon)
- 日本では輪切りと呼ばれる。肉や魚などに使われる。なお médaillon は肉、フォア・グラ、伊勢えびなどの輪切りを用いた料理のこと(元来の字義は「(裏に細工の無い)大型のメダル」)。
- ラルドン(仏:lardon)
- 脂肪分の少ない赤身肉に差し込む為に切り出した、ベーコンや豚の背脂のこと。日本では紐切りと呼ばれる。
- リュバン(仏:ruban)
- 帯状に薄く剥いたもの。日本では桂剥きと呼ばれる。皮むき機を使う方法もある。ruban はリボンのこと。
- ルウェル(仏:rouelle)
- 厚めに丸く切った、骨付きの子牛や豚のもも肉およびすね肉や魚肉、特に子牛のもも肉を指す。
- 日本の輪切りに対応させるには、古風あるいは方言的な言い回しである。
- ロンデル(仏:rondelle)
- にんじん、じゃがいも、ソーセージなどを 5mm 位の厚さに切ったもの。日本では輪切りと呼ばれる。