パイ
パイ(テンプレート:Lang-en-short、テンプレート:Lang-de-short、テンプレート:Lang-fr-short)は、小麦粉とバターなどから作った生地(パイ生地)に、甘く煮た果実類や、ナッツ類、肉類その他を包み込むなどして、オーブンで焼き上げた料理あるいは菓子。バターの代わりにショートニングやラードを用いることもあり、卵や砂糖を入れる場合もある。
なお、パイ生地を用いないパイや、食品としての使用目的以外に作られるパイも存在する(後述)。
目次
由来
原型として、古代エジプトの「ウテン・ト」や中近東の「バクラバ」が挙げられ、現代のパイの発案者として、クロード・ロランとコンデ侯爵家のフィユ(Feuillet)の2説がある[1]。
基本的なパイ生地の作り方
パイ生地中には多量のバターが含まれる。加熱によりバターが溶け、沸騰する際に生地中に気泡を生じ、さっくりした独特の食感を生み出すことが出来る。パイ作りの作業中にパイ生地が温まると、焼く前にバターが溶けてしまい軽い口当たりが損なわれるため、上等な生地作りには多少の熟練を要する。冷凍のパイ生地も市販されており、家庭でも短時間で簡単にパイをつくることができるようになった。
折りパイ
- 折りパイ(フィユタージュ(仏)、パートフィエテ Pâte feuilletée (仏)、Blätterteig(独)、Puff Pastry(英))
- ふるった小麦粉に水と塩を加えて均一になるまで混ぜる。
- 溶かしバターを加えてさらに混ぜ、しばらく休ませる。
- 生地を四角く伸ばし、冷しておいたバターの塊を包む。
- バターを包んだ生地を麺棒などで平たく叩き伸ばす。
- 平らになった生地に打ち粉をし、麺棒で平らに伸ばす。
- 生地を三つ折にしてしばらく休ませる。
- 最初の伸ばしと直交する方向に再度伸ばし、三つ折にする。
- この工程を合計5-6回行い、最後に生地を数時間休ませて完成。
- これを適宜切って具材を包んだり、パイ皿に伸ばして具材を盛って焼きあげる。
練りパイ
- 練りパイ(パートブリゼ Pâte brisée(仏)、Flaky Pastry(英))(一般的にアメリカン・パイと呼ばれるタイプ)
- ふるった小麦粉に冷やしたバターを入れ、粉をまぶしながらバターを切り込む。
- 粉とバターが全体に薄黄色を帯びたさらさらの状態になるまで切り込む。
- 全体が細かい粒状になったら両手で軽くすり合わせて粉とバターを均一にする。
- 水に塩を溶かした仕込み水を加え、全体が均一になり生地がまとまるまで混ぜる。
- 台に軽く打ち粉をして生地をのせ、軽く麺棒を転がしながら生地を伸ばす。
- 折りパイ同様に調理する。
代表的なパイ
甘いパイ
- アップルパイ
- ピーチパイ
- バナナパイ
- パンプキンパイ:甘く煮たカボチャのペーストを包んだものやカボチャ味のフィリングを焼いたもの。秋から冬にかけてハロウィンなどによく作られる。
- チェリーパイ:生のサクランボまたはサクランボの砂糖煮を包んだもの。テレビドラマ『ツイン・ピークス』の登場人物の好物であったため、日本でも有名になった。
- ペカンパイ:ペカンとコーンシロップ、カスタードを用いたパイ。
- ミンスパイ:ブランデーなどに漬け込んだ、刻んだドライフルーツを包んだもの。この中身は「ミンス・ミート」と呼ばれるが、ミート(肉類)ではない。この呼称は昔、挽肉(mince)とドライフルーツ類を混ぜたものを詰めていたなごりで、現代では肉は入れない。
- ミルフィーユ:焼いたパイ生地とクリーム類やフルーツを層状に重ねたもの。肉類や魚類の料理で焼いたパイ生地と層を成すように重ねたものは「ミルフィーユ仕立て」と呼ばれることがある。ナポレオンパイとも呼ばれる。
以下は「パイ」とは呼ばれるものの、オーブンで焼いたものではなく、焼いたパイ生地や砕いたグラハム・クラッカーなどをバターと混ぜたものを敷き詰めたパイ皿にクリームなどを盛り付けた生菓子の仲間である。
- レモンパイ:レモンの果皮や果汁で味と香りをつけたメレンゲやクリームを用いる。トッピングにメレンゲを用いる場合はレモン・メレンゲパイとも呼ばれ、短時間オーブンで焼いてメレンゲに焼き色をつける。
- カスタードパイ:カスタードクリームを用いたもの。粉砂糖を振りかけて飾る。
- キーライムパイ:ライムの果汁を加えたフィリングとメレンゲを使ったアメリカでポピュラーなパイ。本物はキーライムを用いる。
- バナナクリームパイ:薄切りにしたバナナとカスタードクリームのパイ。
- ミシシッピーマッドパイ:チョコレートとアイスクリームを用いた冷たいパイ。
甘くないパイ
- ステーキ・アンド・キドニーパイ:細切りにした牛肉と牛の腎臓を包み込んだもの。イギリスでポピュラーなパイ。
- ポークパイ:味付けした豚肉の細切れを包み込んだもの。
- ハンギパイ:ロトルアにある蒸し焼きの牛肉入りのパイ。
- ミートパイ:味付けした肉類(ミートソースの場合もある)を包んだもの。
- キッシュ:型に合わせた練りパイ生地に肉や野菜などとカスタードを入れ、チーズを振掛けて焼き上げる。フランスのロレーヌ地方の郷土料理。
- シェパーズパイ:「羊飼いのパイ」という意味で、子羊の挽肉を塩・コショウ・ハーブ・タマネギ・羊の骨から抽出したスープと炒めてから耐熱容器に移し、野菜を加え、上にマッシュポテトを盛ってオーブンで焼いたもの。パイ生地は用いない。イギリス料理。別名コテージパイ。
- ピザパイ:ピザはパイではないが、20世紀半ばには英語でピッツァパイと呼ばれていた[2]。パイの一切れ「ピース・オブ・パイ」から、ピザ・パイと呼ばれるようになったともいう[3]。
パイ生地を利用した料理
- パイ包み焼き:肉類や魚類の香りを逃がさないように、全体をパイ生地で包み込んでオーブン焼きした料理。
- ポットパイ:シチューやスープを入れた耐熱容器の口に蓋をするようにパイ生地を貼り付け、容器ごとオーブンで焼いたもの。中のシチューやスープにパイを崩し入れながら食べる。パイ生地で具を包んで焼くこともある。
- アップルダンプリング:皮をむいたリンゴをパイ生地で包みこんでオーブンで焼いた菓子。果実を丸ごと包むブールドロ(これのリンゴを洋梨に変えるとドゥイヨン)という菓子もある。
食べにくさ
パイは、層になっているためフォークやスプーンでは切り取ることが難しい。中でもミルフィーユは食べにくいパイの代表格であり、美しく食べることが難しい。横に倒してからナイフで切ると、散らかさずに食べることができ、これはマナーにも適っている。
菓子パイ
上述の折込パイでの製造過程において、砂糖の粒(主にグラニュー糖)を練り込んだり表面にまぶした後、形を整えて焼き上げた菓子である。ただし、ケーゼシュタンゲンのように砂糖を用いない菓子パイも一部にはある。なお食品成分表での食品名はパフパイと表記されている。
焼き上げの時に溶けた砂糖が、出来上がった後に冷えて固まることから、他のパイよりも硬い食感がある。
- リーフパイ
- スティックパイ
- パルミエ
- ケーゼシュタンゲン
食品でないパイ
- パイ皿(厚手の紙やアルミ箔でつくられた深さのある皿)にホイップクリームや食品ではないシェービングクリームを盛ったものは、コメディやバラエティ番組において良く用いられるガジェットで、特にアメリカの映画やテレビドラマ、アニメによく登場する。他の登場人物の顔にぶつけるため、あるいは互いにぶつけ合うために用いられる。そういったシチュエーションは「パイ投げ」と呼ばれる。欧米では政治家や大企業の経営者の会見などで敵対意識を持った人に投げつけられることもある。
- 一般にパイは切り分けて食べられ、食べる人数によって1人あたりの量が変わることから、「複数者によって分け合われる収益や顧客などの総量」の比喩に使われ、「パイを奪い合う」「パイが大きくなる(=市場規模が大きくなる)」などと言う。ちなみに円グラフを英語でパイチャート(pie chart)と呼ぶ。
- 様々なスポーツ競技に使われるフリスビーは、もともとはパイ皿を使った射的遊技であった。
脚注
関連項目
- キッシュ
- パスタ、ペースト、パテ
- テリーヌ
- ケーキ
- トルテ、タルト
- パスティラ - モロッコの名物料理。また、同名の長崎市の郷土料理。
- ピロシキ
- サンブーサク
- うなぎパイ
- 三立製菓 - 源氏パイ
- 不二家 - ホームパイ
- ロッテ - パイの実
- 3月14日 - パイの日。「3.14≒π」ということから日本パイ協会が2002年に制定。
外部リンク
テンプレート:Food-stubce:Мерза хьокхум es:Pastel#El «pie» inglés et:Pirukas fi:Piirakka hr:Pita (hrana) lt:Pyragas pt:Torta ru:Пирог
vep:Pirg- ↑ 参考文献:猫井登『お菓子の由来物語』幻冬舎ルネッサンス
- ↑ 1957 broadcast
- ↑ 「ピッツァ」「ピザ・パイ」 小麦粉のおはなし 財団法人製粉振興会