近鉄22000系電車

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テンプレート:鉄道車両 近鉄22000系電車(きんてつ22000けいでんしゃ)は、近畿日本鉄道標準軌仕様の特急形車両である。建造費は1両あたり1億7,500万円[1]

本項では、その狭軌仕様である16400系電車(16400けいでんしゃ)についても記述する。

解説の便宜上、本項では22000系の場合は、大阪上本町大阪難波向きの先頭車の車両番号+F(Formation=編成の略)を編成名として記述する(例:モ22101以下4両編成=22101F)。16400系では吉野向きの先頭車の車両番号+Fとして記述する。

概要

ファイル:KINTETSU22000 G MARK.JPG
グッドデザイン賞受賞プレート

22000系は、それまで汎用特急車両として使用されていた10400系11400系「エースカー」の老朽取替を目的に1992年に登場した。内装は21000系26000系の高品質デザインを引き継ぎつつ座席構造を25年ぶりに一新し[注釈 1]、バリアフリー対応設備を初めて導入、機器は21000系では採用し得なかったVVVFインバータ制御をはじめボルスタレス台車や交流誘導電動機を採用、乗降扉は1958年以来採用してきた折戸式からプラグ式に改めるなど、設計思想・デザイン・性能など全てにおいてそれまでの近鉄特急車両とは一線を画すものとなっている。

16400系は22000系の狭軌仕様で、南大阪線吉野線吉野特急に使用されている。竣工から30年以上が経過して老朽化が目立ち始めた16000系初期車4両の代替を目的に2両編成2本が1996年に製造された[2]

22000系は1992年度グッドデザイン賞を受賞した[3]テンプレート:-

愛称

車両愛称は「ACE」で、advanced(一歩進んだ)、comfort(快適な) または common(全線対応型の)、easy-operation(扱いやすい) または express(特急) の頭文字から与えられている[4]。その読み方には「エー・シー・イー」と「エース」の二つが混在している。

当初、近鉄では「エー・シー・イー」を公式の読みとして採用していたが、22000系が「エースカー」と呼ばれた10400・11400系の代替を目的として製造されたという経緯や、呼びやすさ(語呂の良さ)などから「エース」の読み方が部内でも発せられるようになった。近鉄が監修もしくは協力した書籍・DVDなどでも「エー・シー・イー」と「エース」の双方が混在している。なお、後継の22600系「Ace」の公式の読みが「エース」であるため、現在では区別を目的として22000系(および南大阪線用の16400系)を「エー・シー・イー」と呼び、22600系(同16600系)を「エース」と呼ぶことが一般的となっている。

開発コンセプト

開発コンセプトは以下の通りである[4]

  • 外観および居住性がいまの水準から一歩進んだ車両であること
  • 既存の特急車両と連結して運転が可能な車両であること
  • 最高130km/hまでの速度による運転が可能であること
  • 時代の要請に応じた、省エネルギー、省メンテナンスの車両であること
  • 乗務員にとって扱い易い車両であること

車両デザインは21000系「アーバンライナー」と同様の体制でデザインされた(外部デザイナーとして手銭正道と山内陸平が参加)[5]

外観・車体構造

ファイル:KINTETSU22000 2.JPG
フロントデザイン
車体断面形状はタマゴ形

車体断面は卵形で、車内の天井高さを充分に確保するべく屋根巻き上げ半径を小さくし、構体高さを高めている。構体の屋根巻き上げ部半径は300mm、レール上面から屋根(クーラーキセ取り付け部)までの高さは3,760mmで、21000系の半径600mmと高さ3,640mmと比較すると構体の上げ幅が大きいことが理解される[6]。床部分にはアルミ合金パネルを採用して工程の簡略化も行われている。12200系など既存特急車との併結を行うために、前面にはスイング式のカバーを装着した貫通式を採用、運転台に大型曲面ガラスを採り入れ、凹凸の少ない丸みを帯びた前頭形状とするなど車体デザインも一新している。標識灯、尾灯は21000系以来の車体埋込型であるが、素子の配列が大きく変更された。その結果、21000系の1ユニット16個の素子構成から、26000系の61個のタイプを経て、本系列では126個となり、これを縦2列×横8列に組んで左右に配置した[7]

客室側面窓はガラス外付けの連続窓を採用したが、21000系よりも簡略化した。これは、ペアガラスと一体になったアルミ製の窓枠に直接ねじで構体にビス止めし、ビス隠しのためにシール材でビス部分を覆う工法であり、21000系と異なって窓枠周りにビス隠し用のゴムは巻かれていない。このほか、窓柱もゴムを省略して黒色のシール材を入れて見付をすっきりさせた[8][注釈 2]。窓の上下寸法は825mmで、21000系よりも5mm縮小された[9]

乗降扉は従来の二枚折り戸からプラグ式に変更され、密閉性を高めると同時に前面貫通扉のスイング化ともあいまって、完全なフラッシュサーフェス化を実現してシンプルな外観となった[10]

外部塗装は10000系以来のオレンジとブルーを基本としているが、当系列より色味が若干変更され[10]、以後、在来特急車も順次当系列に準じた色味に塗り替えられた[注釈 3]。前面塗り分けは、時代を追うごとに紺色塗装の割合が減少する傾向にあったが、当系列ではついにオレンジ1色となった。側面はこれまでのように、紺色の帯が編成全体を取り巻く連続塗装ではなく、各車の連続窓部分のみに紺色塗装が施されるブロックパターンとなった。モ22200形とモ22400形車端部の窓のない部分には愛称名のイニシャル「A」を浮かび上がらせたブルーのストライプでアクセントをつけている[10]

前面から従来の汎用特急車のような特急標識はなくなり、向かって左側の窓内に行先表示器を設置している。22000系1次車の製造当初は黒地に白文字でローマ字表記もされていたが、まもなく赤地に白文字に変更された(16400系は製造当初から赤地白文字)。側面行先表示器は各乗降扉脇にあり、号車番号表示器も設置している[10]

先頭車の列車無線アンテナは、21000系と同様にクーラーキセで覆い目立たなくさせた[10]

22000系

テンプレート:鉄道車両

主要機器

制御装置

近鉄の特急車両では初めてVVVFインバータ制御三菱電機 MAP-148-15VD102A33)を採用し、モ22100形とモ22300形に各1台搭載している。通勤車と比べて減速機会の少ない特急車両において、VVVFインバータ制御を採用しても省エネルギー面でさほど有利にはならないが、今後の標準システムになりうる点や省メンテナンス性が高いことを考慮して採用に踏み切ったものである[4]。制御装置の半導体素子GTOサイリスタで、容量は4,500V 3,000Aである[11]

主電動機

主電動機は三菱電機製で、近鉄特急車では初のかご形三相交流誘導電動機MB-5040-A(端子電圧1,050V時1時間定格出力135kW)を採用し、各車に4台搭載する[11]歯車比は4.32である[11]。1台の制御装置で8台の主電動機を操作するオール電動車編成とし、最高速度130km/hを可能としている。大阪線西青山駅 - 東青山駅間の新青山トンネル内22.8上り勾配においても均衡速度130km/hでの走行を可能とし、33‰上り勾配区間においての均衡速度は118km/h、架線電圧10%減・定員乗車条件でも均衡速度115km/hを確保している。交流誘導電動機の採用によって直流電動機にあった整流子スペースが省略され、その分小型化されたことで後述のディスクブレーキ取り付けによる制動距離短縮が可能となった。

補助電源装置・空気圧縮機

補助電源装置は21000系・26000系「さくらライナー」で実績のある東芝DC - DCコンバータ (COV-022) を採用し、モ22200形・モ22400形に搭載する[11]。故障時には他車からのバックアップが可能である。空気圧縮機はモ22200形・モ22400形にC-1000LAないしHS-10[12]を1台ずつの搭載としている[11]

台車

台車は、高速運転のための走行性能の向上・軽量化・保守の軽減を目的として新しく設計されたボルスタレス式のKD-304形を採用した。車軸には主電動機の小型化によって電動車であるにもかかわらずディスクブレーキが装備され、踏面片押ブレーキとの併用によってブレーキ力の強化(制動距離の短縮)が図られ、130km/h運転を可能とした[注釈 4]。台車には振動防止のためヨーダンパが設置されている。

ブレーキシステム

ブレーキシステムは回生ブレーキ併用電気指令式電磁直通空気ブレーキ (KEBS-2) を採用した[11]。従来のHSC-D型電磁直通空気ブレーキ搭載車種と併結するため、ブレーキ読替装置を搭載する[11]抑速ブレーキも回生ブレーキとされているが、回生失効時は発生した電力を架線ではなく抵抗器に流す発電ブレーキに切り替えるシステムとなっており、そのための抑速用抵抗器を装備する。

集電装置

パンタグラフは下枠交差形のPT-4811-C-Mを採用。2両編成はモ22100形に2基装備している。4両編成はモ22100形とモ22300形に各1基ずつ装備しており、この2基を母線で引き通して瞬時のパンタグラフの離線に対応している。また、屋上のヒューズ箱は2両編成では4両編成と比較して1基少ない。また、4両編成は各パンタグラフ搭載車にもう1基追加装備ができるように準備工事がなされている[10]

その他機器

空調装置は、DC - DCコンバータから供給される直流330Vを電源とするのは21000系・26000系と同一であるが、21000系・26000系の冷暖房兼用インバータヒートポンプ式からインバータ冷房専用機に変更し、屋根上に冷凍能力14,000kcal/hの集約分散式冷房装置を2台と、冷凍能力3,800kcal/hの荷棚下スポット式吹き出し口用冷房装置を1台併設する[11]。暖房は一般的なシーズワイヤー式ヒーターを各座席下に設置している[11]

運転台は26000系から採用された2ハンドルディスクタイプである[13]。乗務員支援用モニタは運転台上面に設置された。また、車掌台側に手動式の小型ワイパーを取り付けている[14]

電算記号

電算記号(編成記号)は4両編成がAL、2両編成がASである[15]

編成

2両編成と4両編成が存在する。4両編成は難波寄りからモ22100形 - モ22200形 - モ22300形 - モ22400形と組成。2両編成は難波寄りからモ22100形 -モ22400形と組成。4両編成と2両編成が混在する中で車両番号の下2桁をそろえるため、中間車のモ22200・モ22300は欠番が発生している。なお22122F(第22編成)は2両編成であるため「モ22222」という番号の車両は存在しない。

大阪・京都発着編成
名古屋発着編成
テンプレート:TrainDirection
テンプレート:TrainDirection
4両固定編成 形式 モ22100形 (Mc) モ22200形 (M') モ22300形 (M) モ22400形 (M'c)
車両写真 130px 130px 130px 130px
搭載機器 VVVF,◇ SIV,CP,BT ◇,VVVF SIV,CP,BT
自重 44.0t 41.0t 43.0t 42.0t
定員 60 56+2(車椅子対応席) 60 56
車内設備 洗面室・トイレ
車椅子対応設備
車内販売準備室 洗面室・トイレ
2両固定編成 形式 モ22100形 (Mc) モ22400形 (M'c)  
車両写真 130px 130px
搭載機器 ◇,VVVF,◇ SIV,CP,BT
自重 44.0t 42.0t
定員 60 56
車内設備 洗面室・トイレ
  • 形式欄のMはMotorの略でモーター搭載車(電動車)、Mcのcはcontrollerの略で運転台装備車(制御車)。
  • 搭載機器欄のVVVFは制御装置、SIVは補助電源装置、CPは電動空気圧縮機、BTは蓄電池、◇はパンタグラフ。
  • 編成定員は4両編成が234名・2両編成が116名。
4両固定編成と2両固定編成の内訳[16]
編成内容 4両編成(15編成60両) 2両編成(13編成26両)
該当編成名 22101F・22102F・22105F - 22107F・22110F - 22112F・22114F - 22120F 22103F・22104F・22108F・22109F・22113F・22121F - 22128F

車内設備

客室

車内デザインはおおむね21000系を踏襲した。天井の形状や、荷棚形状に多少の差異はあっても基本的には同じである。当該系列は汎用型特急車両であるため、全車普通車デラックスカーの設定はない。

化粧板のカラーリングは明るいグレー系で、21000系で採用された色の模様は入っていない。客室仕切扉脇のLED式号車、禁煙、トイレ使用サインパネルは21000系と概ね同じ機能であるが、機器厚さを薄くしたほか、男性小便器ブースと洋式トイレ別に使用表示を分離、および一部サインパネルに座席転換用キースイッチを設けた点が異なる[17]。仕切り扉上にはLED式のフリーパターン車内案内表示器が設けられた。カーテンは当系列よりかさばらないプリーツカーテンが採用され[注釈 5]、以後の特急車もこのタイプとなった。カーテンタッセルは30000系「ビスタカーIII世」以来のU字状のアルミ鋳物に挟み込む方式から、帯によって束ねる方式に戻された(増備途中から鋳物タイプに変更)。

天井照明は21000系の天井中央から発光する方式を改め、左右両側から発光する方式となった。荷棚下部の照明も21000系と異なり、グローブの形状がU字状となって、冷風吹き出しスポットを挟んで2灯ずつ各座席ごとに配置された。荷棚先端には、荷物の確認がおこないやすいようにスリットが設けられた。

4両編成のモ22200形には、バリアフリー設備として近鉄車両としては初の車椅子対応座席と車椅子対応トイレが設置されている。この車両の乗降扉は車椅子の通行を考慮して他車よりも開口部が広い[注釈 6]。客室仕切扉も同様に広く、22200形のトイレ側のみ両開き式である。座席も1人掛け用が2脚配列された。この車椅子区画と一般客用の通路の幅が異なるため、段差吸収のためにテーブルを兼用した仕切りが左右両側に設けられた[18]

座席はバケット型シートが採用され、座席の転換も従来特急車の背起こし回転式からペダル回転式へ変更され、リクライニングの駆動方式もメカ式から油圧式とされた。テーブルはひじ掛けの蓋を開けて引き出す方式、足置き台は新幹線100系電車普通車で採用されたのと同様の形状である。また座席幅も従来車より広げられ、シートピッチ(座席前後の間隔)は1,000mmである。モケットはグレー系に緑がかったラインの入ったもので、グレー系の化粧板と併せて落ち着いた雰囲気を出している。この座席は23000系「伊勢志摩ライナー」にもモケット変更・シートピッチ拡大のうえ、採用されている。また、2006年以降の12200系B更新にも部分変更の上採用された。座席の枕カバーは当初は黄色であったが、後に白色とされた。座面高さは21000系より若干高めの410mm (+10mm) である。中肘掛は樹脂製で、背ずりに収納できる。座布団は、当系列よりウレタンを使用し、軽量化を図った。ほか、肘掛部分はこれまで塗装の剥がれを考慮して、21000系のデラックスシート以外では塗装されていなかったが、当系列より剥がれ落ちの少ない粉体焼付け塗装を施して、見付の向上を図った。座席は列車折り返し駅における座席転換作業を省力化するために、自動回転機構が設けられた[19]。後年、禁煙車の増加によりひじ掛けの灰皿を撤去の上、その部分の蓋をした座席も現れた。

化粧室

トイレは洋式と男性小便器ブースの組み合わせに統一され、和式はない。汚水処理方式は近鉄特急車として最後の採用例となる循環式である[20]。このため、洋式便器は新製車として最後の床据え付けタイプとなり、23000系以降の系列は全て壁掛けタイプに変更された。洗面所の鏡は円形となり、鏡の裏より光が漏れ出るバックライト方式である。トイレ内部の鏡も円形とされた[20][21]。また、前述通りモ22200形にバリアフリー対応のトイレが設けられた。23000系「伊勢志摩ライナー」と異なって洗面台とトイレの左右位置関係が逆で、バリアフリー対応トイレは山側に位置する。なお、洋式トイレは当初、便座にビニールカバーを巻きつけて、使用ごとに繰り出して送るタイプだったが[22]、後年は一般的な便座に交換のうえ、消毒液が壁に設置された。

デッキ

デッキは概ね21000系と同じデザインである。しかし、乗降扉が2枚折戸式からプラグ式に変更されたため、床面の扉可動部の色分けが廃止された。ほか、車椅子対応設備を有するため、モ22200形のデッキに握り棒を設けた。貫通路は、従来の幌むき出しを改め、FRP製のカバーを設けて居住性に配慮した。モ22100形の連結面寄りデッキに公衆電話を設けたが、後年、利用減により撤去された。

増備車

2次車(22105F)以降は、正面排障器(スカート)の切り欠き部の形状および屋上クーラーキセの換気口の形状が変更された[注釈 7]

1994年までに86両[23]が製造されたが、その後は23000系の増備や30000系など既存車両の車体更新、特急利用客の減少などから増備は行われていない。

なお、1993年に竣工した22111Fは近鉄車両で在籍車両数(当時)2,000両を初めて突破した車両として車内デッキ部の車両番号銘板直下に記念プレートが取り付けられている。また同編成は同年12月に2,000両突破記念式典のイベント列車に充当された。

運用

ファイル:KINTETSU22000 SHIMA LINE.JPG
汎用型車両のため様々な系列と併結して運用される

1992年2月に4両編成2本、2両編成2本の12両が竣工し[24]、3月19日ダイヤ変更より運用を開始した。当初は名阪乙特急に限定して、1日4往復体制で投入された[注釈 10]。その後、増備が進むにつれ、他系統の特急運用にも充当範囲を拡大した。

登場時から2013年現在に至るまで、本系列単独の運用や、各汎用特急車と併結して4 - 10両編成の範囲で運用されている。

車椅子設備非対応の系列(12200系など)には、なるべく対応車両を含む当該系列(4連)を併結させることで、車椅子対応の特急運用を行なっている。また12200系や12600系等の4連単独運用の場合は、その前後の特急運用では22000系や22600系を充当する配慮を行なう[25]

12200系と同様に、4両編成は配置検車区によって主な運用線区が分けられており、西大寺検車区に配置されている編成は、阪伊乙特急・京都線系統を中心に運用され、明星検車区配置編成は、名伊・名阪乙特急を中心に、東花園検車区に配置されている編成は阪奈特急や阪伊・名阪乙特急を中心に運用されている。

2010年には臨時列車「納涼特急 湯の山温泉サマーライナー」にも充当された[26]

改造

現在までに主だった改造は行われていないが、工場入場時に順次板状の転落防止幌が設置されている。

その他

近鉄電車は1978年以来、下枠交差式のPT48系のパンタグラフを採用してきたが、90年代半ばから他鉄道会社にて採用例が増加しつつあった シングルアーム型パンタグラフを近鉄においても導入するべく、在来車両にシングルアーム型パンタグラフを搭載のうえ、採用のための試験を行うことになった。この試験に本系列の22110Fが起用され、2基の下枠交差式のパンタグラフとは別にシングルアーム型をモ22110とモ22310の準備工事箇所に2基増設[27]する形で、照射装置も取り付けて、都合4基のパンタグラフを上げて1998年9月に橿原線、大阪線、名古屋線にて試験運行された。この結果を基にシリーズ21において近鉄初のシングルアーム型パンタグラフが採用された[28]

16400系

テンプレート:鉄道車両

概要

老朽化の進んだ16000系2編成を置き換える目的で、1996年に2両編成2本が新造された[2]。営業運転開始後、16000系初期車の2編成を置き換えたが、その後の増備は16600系に移行したため、4両のみの小世帯となった。

電算記号

電算記号(編成記号)はYS を使用する[29]

車両性能

モ16400形に主制御器、制動装置、東洋電機製造PT-48下枠交差式パンタグラフを2基設置し、ク16500形に補助電源装置、空気圧縮機、汚物処理装置(真空式に変更)を設置している。

南大阪線・吉野線では2両編成での単独運用が多いため、インバータ装置1基で主電動機2基ずつを制御する1C2M制御回路の2群構成とし、一方の回路が故障した場合でも自力走行を継続可能として保安度の向上を図っている。特急専用車ではあるが、運用線区である南大阪線・吉野線の設計最高速度が120km/h、実際の運転最高速度は110km/hと大阪線と比較して低く設定されているため、22000系の全電動車編成に対し、本系列は新設計の大容量電動機(三菱電機MB-5071A 1時間定格出力160kW)を搭載するMT比1:1の経済的な編成とされている。さらに、歯車比も初期のVVVFインバータ制御の一般車やシリーズ21と同一の、16:101 (6.31) に設定され、同時期の南大阪線系統向け一般車である6000系と共通の電動機・歯数比とした16000系の設計コンセプトが踏襲されている。

制御装置については近鉄では初めてIGBT素子によるVVVFインバータ制御(日立製作所製 VFI-HD)を採用している。IGBT素子は従来のGTOサイリスタ素子と比較して素子の高速スイッチングが可能であり、この特性を生かして中低速で走行時のインバータ制御特有の電動機のうなり音の低減を実現、さらに主回路全体の小型軽量化を図っている[2]

台車は、22000系用KD-304を基本に狭軌用に設計変更したボルスタレス形積層ゴム支持台車である近畿車輛KD-310を装着する[2]。竣工当初はヨーダンパが装備されていたが、後に撤去されている。また基礎ブレーキ装置は踏面片押ブレーキのみとなっており、当初はク16500形のみ制輪子鋳鉄制輪子となっていたが、後に合成制輪子に交換されている。

ブレーキは22000系と同様に回生ブレーキ併用のKEBS-2電気指令式電磁直通空気ブレーキを採用し、HSC-D型電磁直通ブレーキを搭載する16000・16010系と併結運用を実施するため、空気圧指令と電気信号指令を相互変換するブレーキ読替装置を搭載する点でも22000系と共通する。ただし、営業運転での最高速度が110km/hに抑えられていることや、主電動機が大型であること、それに車輪間のバックゲージが狭い狭軌用であることなどから、電動車にディスクブレーキは装備されていない。

勾配の多い吉野線で運用されることから、22000系と同様に抑速回生ブレーキの失効対策として電動車の床下に抵抗器を搭載、回生ブレーキの失効時には即座に架線から抵抗器へ回生電力の送り込み先を変更し、発電ブレーキとして機能するように設計されている。

車内設備

基本的には22000系と共通であるが、本系列は中間車を組入れることを前提としないため、車椅子対応設備は制御車両に設けられた。車椅子用座席は22000系と異なって1脚のみである[2]。このため片側は通常の2人掛け席となったが、その分ドア側に飛び出し、出入を妨げるためにドア位置が1人掛け席側にオフセットされた。また、22000系には車内販売準備室を設置しているが、吉野特急では本系列の竣工時点で車内販売は廃止されていたことから省略されている。

トイレは男性用と車椅子対応の多目的型をク16500形に設置した。汚物処理装置は23000系に引き続いて真空式となった[2]

編成

項目\運転区間 テンプレート:TrainDirection
形式 ク16500形(Tc) モ16400形(Mc)
搭載機器 SIV,CP,BT ◇,VVVF,◇
自重 38.0t 43.0t
定員 46+1(車椅子対応席) 64
車内設備 洗面室・トイレ
車椅子用設備

運用

1996年3月に2編成が竣功、4月16日より試運転を開始した[30]

同年6月1日より営業運転を開始した[2]

改造

2008年に16401Fが新型ATS設置・デッドマン装置更新工事を受けている。

2012年末に各編成の妻面に転落防止幌が設置されている。

脚注

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注釈

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出典

テンプレート:Reflist

参考文献

書籍

雑誌

関連項目

外部リンク

テンプレート:Sister テンプレート:近畿日本鉄道の車両

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  1. 読売新聞(中部)1992年1月11日朝刊
  2. 2.0 2.1 2.2 2.3 2.4 2.5 2.6 『鉄道ファン』1996年8月(第424号)、交友社、49頁 - 52頁
  3. 『信頼のネットワーク 楽しい仲間たち きんてつの電車』近畿日本鉄道技術室車両部 14頁
  4. 4.0 4.1 4.2 鉄道ジャーナル』1992年5月号(第307号)、鉄道ジャーナル社、72頁 - 75頁 引用エラー: 無効な <ref> タグ; name "RJ9205"が異なる内容で複数回定義されています
  5. 近鉄22000系カタログ『標準軌特急車両 KINTETSU22000』9頁
  6. 近鉄22000系カタログ「TECHNICAL NOTES KINTETSU22000」3頁と近鉄21000系カタログ「TECHNICAL NOTES KINTETSU21000」7頁との比較。
  7. 近鉄22000系カタログ「TECHNICAL NOTES KINTETSU22000」20頁と近鉄21000系カタログ「TECHNICAL NOTES KINTETSU21000」19頁と近鉄26000系カタログ「TECHNICAL NOTES KINTETSU26000」19頁との比較
  8. 近鉄22000系カタログ「TECHNICAL NOTES KINTETSU22000」3頁
  9. 近鉄22000系カタログ「TECHNICAL NOTES KINTETSU22000」11頁と近鉄21000系カタログ「TECHNICAL NOTES KINTETSU21000」7頁との比較。
  10. 10.0 10.1 10.2 10.3 10.4 10.5 『とれいん』1992年4月(第307号)、エリエイ出版部 プレスアイゼンバーン、62-71頁
  11. 11.0 11.1 11.2 11.3 11.4 11.5 11.6 11.7 11.8 三木理史「特急車両のあゆみ 補遺と21000系以後」『鉄道ピクトリアル』1992年12月臨時増刊号(第569号)、電気車研究会、272頁 - 274頁
  12. 『鉄道ピクトリアル』2003年1月臨時増刊号(第727号)、電気車研究会、292頁
  13. 特急車として初採用されたのは26000系であるが、近鉄電車として初採用されたのは3000系である。『鉄道ファン』1979年6月号(第218号)、交友社、47頁 - 53頁
  14. 近鉄22000系カタログ「TECHNICAL NOTES KINTETSU22000」17頁
  15. 『鉄道ファン』(第473号)2000年9月号、55頁
  16. 『鉄道ピクトリアル』2003年1月臨時増刊号(第727号)、電気車研究会、308頁
  17. 近鉄22000系カタログ「TECHNICAL NOTES KINTETSU22000」21頁
  18. 近鉄22000系カタログ「TECHNICAL NOTES KINTETSU22000」13頁
  19. 近鉄22000系カタログ「TECHNICAL NOTES KINTETSU22000」9頁
  20. 20.0 20.1 『鉄道ファン』1992年5月号(第373号)、 交友社 18頁 - 23頁
  21. 21.0 21.1 近鉄22000系カタログ「TECHNICAL NOTES KINTETSU22000」12頁
  22. 22.0 22.1 近鉄22000系カタログ「TECHNICAL NOTES KINTETSU22000」14頁
  23. 田淵仁『近鉄特急 下』JTB 59頁、167頁
  24. 『鉄道ファン』1992年5月号(第373号)、交友社、18頁。
  25. 『鉄道ジャーナル』2008年11月号(第505号)、鉄道ジャーナル社、55頁
  26. 2004年3月の湯の山特急廃止以降約6年ぶりに湯の山線への入線。2008年と2009年は12200系での充当となっていた。
  27. 後に登場した22600系と同様、シリーズ21とは逆向きに取り付けられていた。
  28. 『鉄道ファン』1998年12月号(第452号)、交友社、125頁
  29. 『鉄道ファン』(第473号)2000年9月号、55頁
  30. 『鉄道ファン』1996年7月号(第451号)、交友社、165頁


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