煎餅

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日本の煎餅とその断面

煎餅(せんべい)とは、穀物の粉を使って作る食べ物の一つである。多くは薄い形状をしている。

種類

日本の煎餅は、米を原料とする事から『米菓煎餅(べいかせんべい)』ともいい、粳米(うるちまい)をつぶしたり搗(つ)いたりして延ばしたものを焼いてつくる米菓であり、これは「焼きせんべい」と「揚げせんべい」に分ける事ができる[1]醤油による味付けをしたものが多く、煎餅を焼いて売る『煎餅屋』もみられる[2]

歴史

日本で「煎餅」の記述が見られるのは正倉院所蔵の737年頃の文書であるが、ここに登場する「煎餅」は現在のものと違い、小麦粉で固めたいりもち(煎餅)であり、現在と同じ煎餅は草加せんべいが初であるとされている[3]

草加せんべい

現在の煎餅の一番古い物は、日光街道の2番目の宿場町だった草加宿(現在の埼玉県草加市)で団子屋を営んでいた「おせん」という老婆が、ある日、に「団子を平らにして焼いたらどうか」と言われて始めたのが名前の由来、というよく知られた話がある。

草加宿一帯の農家では、蒸した米をつぶして丸め、干したもの(「堅餅」という)に塩をまぶして焼き、間食として食べていた。草加宿が日光街道の宿場町として発展したことに伴い、この塩味の煎餅が旅人向けの商品として売り出され、各地に広まった。その後、利根川沿岸(千葉県野田市)で生産された醤油で味をつけるようになり、現在の草加煎餅の原型となったとされている。これは船によって江戸に伝えられ広く伝わっていった。

吉野ヶ里遺跡登呂遺跡の住居跡からも一口大程度に平たく潰し焼いた穀物製の餅が出土しており、既に弥生時代には煎餅に近い物が食されていたのではないかと考えられている。さらに時代を遡り、すりつぶした芋類サトイモヤマイモなど)などを同様に一口大程度に平たく押しつぶして焼いた物はさらに以前の縄文遺跡の住居跡からも出土している。また、台湾東南アジアでは同様のタロイモ煎餅が存在し、ミクロネシアポリネシアメラネシアといったヤムイモやタロイモを主食とする環太平洋諸島にはタロイモヤムイモを原料とする煎餅に近い食品が存在する。

別説で、日光街道草加松原の茶屋において売られていた団子を「焼き餅にして売ったらどうか」と提案され、それが名物となった、という話もあるが定かでは無い[4]

中国の煎餅

「餅」という字は、もともと中国では主に小麦緑豆などの粉を水で練って、平たく成形した食品全般を指す。そのため、煎餅は餅米を搗いて作る(もち)を基本的に使っていないが、「餅」という字が入っている。

また、「煎」も、中国では薬を煎じるという意味ではなく、鉄板で焼くことを指す。つまり、中国の「煎餅(ジエンピン jiānbǐng)」は小麦粉などの粉を水で練って、鉄板で焼いたものである。別名「薫火」とも呼ばれる。中国においては、現在も山東煎餅天津煎餅など、一銭洋食に似た作り方の軽食が作られている。日本のお好み焼きもこれらの「煎餅」の一種として「日式雜菜煎餅」などと呼ばれることがある。逆に、日本の揚げ煎餅の類を「仙貝 シエンベイ xiānbèi」と音訳で呼ぶ場合がある。中国の煎餅は、いずれも軟らかくて、巻いたり、曲げたりして食べることが可能なものであり、形状はクレープドーサに似ている。

主な煎餅

日本の煎餅

煎餅

米菓で煎餅類とされるもの[1]

  • 醤油煎餅
  • ぬれせんべい(千葉県銚子市銚子電気鉄道などが販売している)
  • 塩煎餅
  • 海苔煎餅 - 磯辺煎餅ともいう
  • 唐辛子煎餅
  • 砂糖煎餅・ザラメ煎餅
  • 薄焼煎餅
  • 揚げ煎餅 - ぼんち揚、歌舞伎揚の商標で知られるうるち米を用いた丸いもののほか、綱揚げなど、餅米を用いたり、形状が異なるものもある
    • ソフト煎餅・サラダ煎餅 - 塩味で餅米を用いた揚げ煎餅をこう呼ぶことがある。「サラダ」とは焼いたあとにサラダ油をからめている事から[5]
  • オランダせんべい山形県酒田市
  • おにぎりせんべいおにぎりのように三角形をした煎餅)
  • ソース煎餅
    • 小さいせんべいにソースで味付けをしたもの
    • 駄菓子の一つで、ソースやジャムなどを塗って食べるもの。露店で売られている事も多い。

甘味煎餅

でん粉煎餅

その他

宮崎県宮崎市の「青島せんべい」は、 せんべいと言う呼称であるものの「ゴーフレット」である。

地方差

餅米を利用した米菓は、小さい形状が多いあられ(粒状のもの)、あられより大きい位おかき、その他は揚げ餅と分けられる[1]関西ではおかきやあられ屋があり、それらの店で販売しているなど地域差がある。

小麦粉などを原料にするもの、馬鈴薯などのでん粉を用いるもの、別の材料を用いたり等の、類似の外観や食感を持つものも煎餅と呼ぶ場合がある。小麦粉を原料とするものは、主に関西で古くから作られている。材料は主に小麦粉、砂糖などで、カステラビスケットに近く、味は甘めのものが多い。そのため甘味煎餅(あまみせんべい)とも言う。瓦せんべいなどが代表的なものであり、八ツ橋のように米を材料とするものもある。甘味煎餅とも呼び、これは唐菓子の伝統を受け継いでおり(京都には「唐板」もしくは「唐板煎餅」といわれる、小麦粉・卵(後年に加わった?)砂糖から作られる煎餅がある)。また、北海道根室市や長崎県平戸市のオランダせんべいのように洋菓子であるワッフルの原料・製造法から創作された物もある。青森県南部地方発祥の南部せんべいは、基本は小麦粉と塩だけの素朴な煎餅である。馬鈴薯などのでん粉を用いるものとしては、愛知県知多半島の名物となっている海老煎餅などがある。これは、でん粉に魚や海老の乾燥品を混ぜて焼いたもの。塩辛い味が基本だが、現在ではわさび味、カレー味、キムチ味など、さまざまな味の物が作られている。

九州などでは煎餅を「せんべい」でなく「せんぺい」と半濁音で発音する人もいる。にわかせんぺい(二○加煎餅)、九十九島せんぺい湯せんぺいといった例がある。場合によっては醤油味・塩味を「せんべい」、甘いものを「せんぺい」と呼び分ける例もある。

中国の煎餅

文献

  1. 1.0 1.1 1.2 全国米菓工業組合
  2. 煎餅の歴史
  3. 草加せんべいの歴史と現在
  4. 草加せんべいの歴史
  5. 亀田製菓 | よくあるご質問 | Q18「サラダ味」の「サラダ」ってどんな味を言うのですか?」

関連項目

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