教員の職階

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テンプレート:国際化 教員の職階(きょういんのしょっかい)とは、学校において教員が担当する具体的な役職の階級である。 テンプレート:Main2

日本

概要

学校教育法昭和22年法律第26号)7条は、「学校[1]には、校長及び相当数の教員を置かなければならない。」と定め、学校の職員に「校長」と「教員」の職階(職位)を設けている。さらに同法は、各条において「教員」の職階の詳細を定める。

教員の職階の体系は、大きく分けて、高等教育以外(就学前教育初等教育中等教育及び特別支援教育)を行う学校における体系と、高等教育を行う学校における体系の2種類がある。

さらに、学校の設置者の定めた規則等(国立大学法人公立大学法人の規程、地方公共団体条例教育委員会規則[2]、学校法人の就業規則など。)によって、学校教育法で定められた職階を細分化し、具体的な呼称を設けている学校もある。

なお、教員の職階と教員免許状の種類の相関関係はほとんどない。ただし、雇用者によっては、職階の上昇または変更のために、上級の教員免許状の取得が奨励・義務化されることもある。

高等教育以外

高等教育以外を行う学校には、就学前教育を行う「幼稚園」、初等教育を行う「小学校」、中等教育を行う「中学校」、「高等学校」、「中等教育学校」、特別支援教育を行う「特別支援学校」がある。これらの学校における主な職階は、校長(幼稚園では園長)、副校長(同じく副園長)、教頭主幹教諭指導教諭教諭講師である。他に、教諭の職務を助ける学校職員として、助教諭実習助手[3]も置かれる。また、教育以外の分野を担当する学校職員として、養護教諭養護助教諭栄養教諭司書教諭が置かれる。さらに、幼稚園には、学校教育法に定めのない職員として、教育補助員も置かれる[4]

校長・園長
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副校長・副園長[5]
副校長(ふくこうちょう)とは、校長を助け、命を受けて校務をつかさどる学校職員のことである。幼稚園では、副園長という。
教頭
教頭(きょうとう)とは、校長[6]を助け、校務を整理し、および必要に応じ児童生徒の教育、または、幼児保育をつかさどる学校職員のことである。
主幹教諭[5]
主幹教諭(しゅかんきょうゆ)とは、校長[6]および教頭を助け、命を受けて校務の一部を整理し、並びに児童・生徒の教育または幼児の保育をつかさどる学校職員のことである。なお、学校の実情に照らし必要があると認めるときには、「養護をつかさどる主幹教諭」、「栄養の指導及び管理をつかさどる主幹教諭」なども置かれる。
指導教諭[5]
指導教諭(しどうきょうゆ)とは、児童・生徒の教育または幼児の保育をつかさどり、並びに教諭その他の職員に対して、教育指導の改善および充実、または、保育の改善及び充実のために必要な指導及び助言を行う学校職員のことである。
教諭
教諭(きょうゆ)とは、児童・生徒の教育または幼児の保育をつかさどる学校職員のことである。教諭は教員採用試験合格を経て採用された正規教員であり、各学校の種別に対応する教員免許状の普通免許状または特別免許状を有していなければならない。教育や保育をつかさどることを主たる職務とし、学校の管理運営上必要とされる校務の分掌も職務としている。
東京都では、「特に高度の知識又は経験を必要とする教諭の職」として「主任教諭」を制度化している。ただし、主任教諭導入時の労使交渉における都教委の見解では「主任教諭導入前の"教諭"に相当する地位が主任教諭」と説明されている。現在の「教諭」は「主任教諭の指導・監督をうける」立場である。教諭から主任教諭への昇任選考は、原則として教諭経験8年以上で受験資格が与えられる。
助教諭
助教諭(じょきょうゆ)とは、教諭の職務を助ける学校職員のことである。助教諭は臨時教員であり、教員免許状の臨時免許状を有していなければならない。第二次世界大戦後間もない時期は、教員の数が足りず積極的に用いられたが、その後教員を希望する人が増えたため、現代ではほとんど見られない職階になった。
講師
講師(こうし)とは、教諭又は助教諭に準ずる職務に従事する学校職員のことである。常時勤務に服する講師(常勤講師)と常時勤務に服さない講師(非常勤講師)に分けられ、講師は一般的に臨時教員であり、公立学校の講師なら1年を超えない期間の契約で勤務する(国家公務員法第60条、地方公務員法第22条第2項の規定による)。
養護教諭
養護教諭(ようごきょうゆ)とは、幼児・児童・生徒の養護をつかさどる学校職員のことである。学校の保健室などを担当する教員である。保健主事は教諭か、養護教諭をもって充てることになっている。養護教諭は、正規教員で、教員免許状の養護教諭の普通免許状を有していなければならない。養護を特に必要とする幼稚園においては、法律で専門職である養護教諭の積極的な配置を期待しているにもかかわらず、統計調査上、ほとんど存在しない。
東京都では、「特に高度の知識又は経験を必要とする養護教諭の職」として「主任養護教諭」を制度化している。
養護助教諭
養護助教諭(ようごじょきょうゆ)とは、養護教諭の職務を助ける学校職員のことである。養護助教諭は、臨時教員であり、教員免許状の養護教諭の臨時免許状を有していなければならない。これも、養護と言う専門職の配置が望ましい幼稚園において、養護助教諭制度の積極活用が望まれるが、自治体で養護助教諭を認めるところは、統計的にほとんどない。
栄養教諭
栄養教諭(えいようきょうゆ)とは、児童・生徒の栄養の指導及び管理をつかさどる学校職員のことである。栄養教諭は、正規教員であり、教員免許状の栄養教諭の普通免許状を有していなければならない。幼稚園への配置により良い教育的効果が得られると期待できる。
司書教諭
司書教諭(ししょきょうゆ)とは、学校図書館の専門的職務をつかさどる職のことである(学校図書館法第5条第1項)。司書教諭は、主幹教諭(「養護をつかさどる主幹教諭」および「栄養の指導及び管理をつかさどる主幹教諭」を除く)、指導教諭、または、教諭をもってあてられる(充て職)。この場合、あてられた者は、大学その他教育機関で開講される司書教諭の講習を修了した者でなければならない(学校図書館法第5条第2項)。近年、幼稚園でも、絵本図書館などを設置するところが一部にあるが、司書教諭の多くは、兼務として置かれ、学校図書館専属としての司書教諭の配置までは至っていない。
実習助手
実習助手(じっしゅうじょしゅ)とは、実験または実習について、教諭の職務を助けることを職務とする学校職員のことである。実習助手の配置については、学校教育法上は任意設置であるが、文部科学省令である高等学校設置基準によればこれを置かなければならないとされている。教員免許状は必要とされないが、学校の規模や事情によって、教諭、講師らと同じく教員の一人として数えられることもある。
大阪府では実習助手が職務を実施するに当たり、その連絡調整、指導及び助言に当たる「総括実習助手」を置くことができる。
教育補助員[4]
教育補助員(きょういくほじょいん)とは、幼稚園で、園長、副園長、教頭、主幹教諭、指導教諭、教諭、助教諭、講師、養護教諭、養護助教諭、栄養教諭以外で、教育活動の補助を行っている者のことである。教員免許状の有無は問わない
このため、当該教員免許を持った教員としての教育補助員と、免許を持たない学校職員としての教育補助員が存在する。
幼稚園の預かり保育の定着化に伴い、配置されることがある。ただし、認定こども園として認定を受けるには、認定こども園の設置基準に従い、必要な幼稚園の教員免許状もしくは保育士資格を持つものを配置しなくてはならない。現在は、行政が教育補助員を配置することを嫌うため、預かり保育など長時間勤務が常態となりながら、労働基準法との狭間で授業準備時間がほとんどゼロという異常な事態を招いている。

高等教育

高等教育を行う学校には、「大学」(大学院短期大学を含む)及び「高等専門学校」がある。この他に、大学共同利用機関法人の研究所や、学位を取得できる省庁大学校も該当する。

主な職階は、上から学長教授准教授[7]講師助教助手である[8]。また、大学によっては、「実験講師」[9]や、助手より下位に位置する補助員として「教務補佐員」、「技術補佐員」、「副手[10]、「教務助手」[11][12]、「実務助手」[13]といった名称の職員が置かれるが、いずれも学校教育法に定められた名称ではない。

学長
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教授
教授(きょうじゅ)とは、特に優れた知識、能力及び実績を有し、学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に従事することを職務とする教育職員のことである。大学の教授は、法令に規定されている3種の職務のうち、1つしか担当しない場合もあれば、複数を担当する場合もある。高等教育を受けていない層には、高校までの教員は教諭、大学の教員は教授もしくは助教授であると誤解されている場合があるが、教授は地位名称であり職種名称ではない。英文表記は「professor」。
准教授[14]
准教授(じゅんきょうじゅ)とは、優れた知識、能力及び実績を有し、学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に従事することを職務とする教育職員のことである。英文表記は「associate professor」。
講師
講師(こうし)とは、教授又は准教授に準ずる職務に従事する教育職員のことである。専任の講師と非常勤の講師の別がある。
  • 専任の講師:一般的に専任の講師(大学によっては職名「専任講師」が用いられる)は、教授、准教授に次ぐ職位であり、人事上は准教授と講師が同じカテゴリーに属する扱いとなる(職階上は差がある)。講師は、教育や研究の事情に応じて、直接、教授の職務を助ける場合もある[15][16]。講師の英文表記は「lecturer」[17]、「assistant professor」[18]、あるいは「associate professor」[19]など、大学により異なる。また国際教養大学(秋田市雄和椿川)のように3年契約で教員を採用している大学(任期付き専任講師)においては任期後、再任されず退職に追い込まれる教員がおり問題となっている。
  • 非常勤の講師:専任ではない講師は、「非常勤講師」や「兼任講師」等と呼ばれる。その授業のみを担当するパート・タイムで、基本的に年契約、賃金も専任の教員と比べると低賃金である。非常勤講師の英文表記は、「part-time lecturer」[17][18]専業非常勤講師の項も参照のこと。
助教[14]
助教(じょきょう)とは、学生を教授し、研究を指導し、または研究に従事する教育職員のことである。
基本的には、旧学校教育法[20]の「助手」[21](旧助手)の中から教育・研究を主たる職務とする者を弁別することを目的として、新たに設けられた職位である。一部の大学・学部では、助教または助手の採用段階で、博士の学位を取得していることを要件とすることもあるが、法律上の要件ではない。
多くの大学では、任期の定めのない助教は、業績を積むことにより、講師(講師を置かない大学では准教授)以上に昇格することが慣例化している。しかし、任期付きの助教の場合、業績を挙げることが必ずしも昇格につながらない。なお、助教は任期のあるケースが多い。また、実験をともなわない文系学部・文系研究科や、私立大学の理系学部・理系研究科では、助教が存在しない大学の方が多いテンプレート:要出典。英文表記は「research associate」[17]、「assistant professor」[22]など、大学により異なる。
改正教育法が施行された平成19年度以降、国立大学法人では、それまでの助手を助教に変更した事例が多い[23]。これに対し私立大学の中には、それまでの講師の職位を助教に変更した事例が見られる[24]。この場合、表面的な職位は講師より下でも、実際の待遇は専任講師に準じ、任期付であってもテニュアトラック(終身雇用候補者)として専任教員への昇格が予定されているものもある。
助教の導入に伴い、従来の助手のうち、資格審査の結果、助教への就任が認められないが、職務の性質や不利益変更防止の観点から新助手への移行も妥当でないとされた者について、移行ポストとして学校教育法上の根拠のない「准助教」を置いた大学もある[12]
助手
助手(じょしゅ)とは、所属組織の教育・研究の円滑な実施に必要な業務を行う学校職員のことである[21]。英文表記は「research associate」[22]、「research assistant」[17]、「assistant」[25]、あるいは「associate」テンプレート:要出典など、大学により異なる。

教員の職階制度の問題

高等教育以外

高等教育以外の学校では、公立の場合、教員のほとんどが「教諭」であったため、深刻な階級問題は存在しなかった。しかし、副校長、主幹教諭、指導教諭の職階が新設されたため、今後の学校運営については、未知な点がある。

高等教育

高等教育での職階制度は、教育研究機関の教育組織の中に強い階級制度をもたらす。学部長などの重要な役職に就くには、ほとんどの場合、教授でなければならない。

また、講座制をしいている場合は、それ以外に研究活動と教育活動の両面で教授が大きな権限を持ち、教授の能力や人格が講座の活動の成否や所属する教員と学生の人生までをも大きく左右する。教授は下位の教員に対して人事権を持つので、上司である教授との人間関係のトラブルが原因で、人事上の不当な扱いを受けるケースも数多く存在する[26]

脚注

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  1. 学校教育法7条にいう「学校」とは、同法1条に定める「幼稚園小学校中学校高等学校中等教育学校特別支援学校大学及び高等専門学校」を指す。いわゆる一条校である。
  2. この場合の教育委員会規則の具体的な名称例は、「学校管理規則」等である。
  3. 実験助手は、他の職階と異なり、授業を単独で行うことはない。
  4. 4.0 4.1 学校基本調査 - 用語の解説」によれば、教育補助員とは「幼稚園で、園長、副園長、教頭、主幹教諭、指導教諭、教諭、助教諭、講師、養護教諭、養護助教諭、栄養教諭以外で、教育活動の補助を行っている者。」を指し、教員免許状の有無は問わない。参照:学校基本調査 - 用語の解説
  5. 5.0 5.1 5.2 副校長・副園長、主幹教諭、指導教諭の名称は、2008年(平成20年)4月1日施行の改正学校教育法によって新設された。
  6. 6.0 6.1 副校長・副園長を置く幼稚園、小学校、中学校、中等教育学校、高等学校または特別支援学校にあっては、校長・園長および副校長・副園長。
  7. 2007年(平成19年)4月、学校教育法改正により「助教授」が廃止され、「准教授」が設置された。
  8. かつては国立学校設置法施行規則に職員の種類として教務職員が規定されていた。しかし、同法は2004年(平成16年)4月1日廃止され、国立大学の設置者として国立大学法人が設立されたため、教務職員の設置の法的根拠は失われている。
  9. 例えば同志社大学中央大学日本工業大学龍谷大学等に置かれる。
  10. 例えば実践女子大学学習院大学多摩美術大学東北芸術工科大学フェリス女学院大学九州産業大学等に置かれる。
  11. 例えば九州大学福井大学信州大学徳島大学等に置かれる。
  12. 12.0 12.1 九州大学では、学校教育法の定める「助手」を「教務助手」と呼称し、学校教育法に定めのない「准助教」を置いている(参照:各職種の新制度への移行スキーム九州大学の新しい教員組織の在り方に関するQ and A。2009年10月1日現在、准助教が26名、教務助手が1名在職している(教員の部局別在職者状況)(九州大学)。
  13. 金城学院大学に置かれる。
  14. 14.0 14.1 准教授、助教の名称は、2007年(平成19年)4月1日に施行された改正学校教育法(平成18年6月21日法律第80号)により新設された。
  15. 講座制を採る大学が少なくなった今日では表向きは稀である。
  16. 2007年(平成19年)4月1日に施行された学校教育法の一部改正の審議過程では、将来的に講師という職階は段階的に廃止されるべきものと位置づけられた。
  17. 17.0 17.1 17.2 17.3 講師の英称をlecturer、助教の英称をresearch associate、助手の英称をresearch assistantとする例(東京大学)
  18. 18.0 18.1 講師の英称をassistant proffessorとする例(一橋大学留学生センター)
  19. 講師の英称をassociate professorとする例(長岡技術科学大学国際センター)
  20. ここでいう旧学校教育法とは、2007年(平成19年)3月31日まで適用されていた学校教育法を指す。同年4月1日に施行された改正学校教育法(平成18年6月21日法律第80号)の前の学校教育法である。
  21. 21.0 21.1 旧学校教育法が適用されていた2007年(平成19年)3月31日までは、助手は、同法上「教授及び助教授の職務を助ける」ことが職務であり、暗黙の了解として所属組織の運営が円滑に行われることを補佐することも業務としていた。しかし、同年4月1日に改正学校教育法(平成18年6月21日法律第80号)が施行されたことにより、新たに助教が置かれ、助手の職務内容の明確化が図られた。このため、旧法による助手を「旧助手」、新法による助手を「新助手」として区別することもある。
  22. 22.0 22.1 助教の英称をassistant professor、助手の英称をresearch associateとする例(名古屋大学)
  23. 例えば東京外国語大学
  24. 例えば城西国際大学拓殖大学
  25. 助手の英称をassistantとする例(桐蔭横浜大学)
  26. 小説『白い巨塔』はそれを描いた小説として有名である。

関連項目