宇部興産

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宇部興産宇部本社1号館
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宇部興産専用道路を走行するトレーラー

宇部興産株式会社(うべこうさん、テンプレート:Lang-en-short)は日本の大手総合化学メーカー。日本5大化学メーカーの1つ。略称はUBE経済紙証券業界では宇部興、拠点がある山口県西部では単に興産と略される場合が多い。

概説

宇部地区の主要炭鉱であった沖ノ山炭鉱を起源とする複合企業体である。化学製品だけでなく、石灰石セメント類、石炭等も供給している。

社名にある「興産」には、「地域社会に有用な産業を次々に興す」という意味が込められており、宇部共同義会の長老であった紀藤閑之介(第3・6代宇部市長宇部時報創刊者)の案を俵田明が採用したものである[1]。社名から読み取れるとおり、同社は創業時より各々の事業だけでなく、教育機関港湾ダム上水道の整備等を通して、地域の社会資本整備に大きな役割を果たしてきた。

三和銀行(現・三菱東京UFJ銀行)をメインバンクとする企業から構成されるみどり会の主要構成企業であり、かつては日立造船帝人とともに三和御三家と呼ばれていた[注釈 1]。その関係上、宇部市には山口県内唯一[2]の旧UFJ銀行(現在は三菱東京UFJ銀行)の支店が存在している[3]

山口県での生産拠点が宇部地区と伊佐地区(美祢市)に分散している為、両工場を結ぶ全長28kmにも及ぶ企業専用道路(宇部興産専用道路)と宇部港に架かる1kmの橋梁(興産大橋)を所有しており、一企業の建造物としては異例の規模を誇っている。

経営機構と拠点

委員会等設置会社ではないものの、取締役会の内部委員会として指名委員会及び評価・報酬委員会が設置されている。また、執行役員制により、経営の意思決定、監督機関としての取締役会とその意思決定に基づく業務執行機能の分離が図られている。1999年よりカンパニー制を導入している。

組織

  • 経営管理室
  • 総務・人事室
  • 研究開発本部
  • 購買物流本部
  • 中央病院
    • 他本社部門
  • 化成品・樹脂カンパニー
  • 機能品・ファインカンパニー
  • 医薬事業部
  • 化学生産・技術本部
  • 建設資材カンパニー
  • 機械・金属成形カンパニー
  • エネルギー・環境事業部

事業拠点

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東京本社(シーバンスN館)

各拠点の所在地等の詳細については、公式サイトの国内事業拠点一覧および海外事業拠点一覧を参照。

生産拠点

テンプレート:Wide image 主な生産拠点とその所在地、主な生産品目を以下に示す。

生産拠点 所在地 主な生産品目
化学生産・技術本部
千葉石油化学工場 千葉県市原市 合成ゴム
堺工場 大阪府堺市 カプロラクタム、アンモニア、ポリイミド、電解液
宇部ケミカル工場 山口県宇部市 カプロラクタム、ナイロン、アンモニア、ポリイミド、医薬原体・中間体、セパレータ
建設資材カンパニー 生産技術本部
宇部セメント工場 山口県宇部市 クリンカー、セメント
伊佐セメント工場 山口県美祢市 石灰石、クリンカー
苅田セメント工場 福岡県苅田町 クリンカー、セメント
機械・金属成形カンパニー(連結子会社)
宇部興産機械 山口県宇部市 産業機械、射出成型機
エネルギー・環境事業部
電力ビジネスユニットIPP発電所 山口県宇部市 電力
石炭ビジネスユニット 沖ノ山コールセンター 山口県宇部市 石炭
海外生産拠点(連結子会社)
UBE Chemicals(Asia) タイラヨーン県 カプロラクタム、ナイロン
Thai Synthetic Rubbers タイ、ラヨーン県 合成ゴム
UBE Chemicals Europe
UBE Engineering Plastics
スペインカステリョン県 カプロラクタム、ナイロン

事業概要

同社は、証券コード上では化学工業に分類されているが、実際の事業内容は多岐に渡っている。現在、同社グループでは各事業活動を以下の部門で行っている。

化成品・樹脂カンパニー
主にラクタムやナイロン樹脂、硫安アンモニア合成ゴムポリエチレンABS樹脂等を扱う。ナイロン6原料であるカプロラクタムにおいてはBASFDSMとともに業界の主導的地位を占めるアジア地域のトップメーカーである。また、ナイロン6やポリブタジエンゴムで世界4位(アジア首位)のシェアを持つほか[4][5]。アンモニアのシェアが国内首位である。
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ポリイミド関連製品(UPILEX)の用途例(はやぶさの本体を覆う金色のサーマルブランケット)
機能品・ファインカンパニー
主にデジタル家電低環境負荷製品等の先端技術産業向けに多様な材料、原料を扱う。リチウムイオン電池電解液で世界2位のシェアを持つほか、リチウムイオン電池用のセパレータ、炭酸ジメチルや、ジオール類、薄型ディスプレイ回路基板や航空宇宙材料向けにモノマーBPDA)から一貫生産するポリイミド等も高いシェアである。
2009年1月6日には米国ボーイングと航空機用材料技術の共同開発を行うことで合意し、第一段階として、航空機のエンジン付近の機体構造軽量化およびコスト削減を目的とした耐熱性高分子マトリクス複合材料の開発に取り組んでいる[6]
医薬事業部
医薬原体・中間体の受託製造及び創薬事業として製薬会社へのライセンスアウトを行う。宇部興産により発見され、上市されている薬剤としては、テンプレート:仮リンクテンプレート:仮リンクテンプレート:仮リンク等。なお、宇部興産では臨床開発および販売業務は行っていない[7]
建設資材カンパニー
主にセメントや石灰石水酸化マグネシウム、各種建材等を扱う。セメントの販売機能は、三菱マテリアルと共同で設立した宇部三菱セメントに移管されている。伊佐セメント工場に単一キルンとしては世界最大のNSPキルン(年産300万トン)を擁し、販売会社である宇部三菱セメントのセメント出荷量は国内2位である。また、国内では最初にばら積みセメントタンカーによるセメント輸送を行っている。
機械・金属成形カンパニー
機械事業としては、分社した宇部興産機械が射出成型機やダイカストマシン等の各種産業機械を扱うほか、セメントプラント、橋梁鋼橋)の建設等を行う。金属成型事業としては、子会社において電炉ビレット等を扱うほか、分社した宇部興産ホイールがアルミホイールを扱ってきたが、分社化以降も損失計上が続いたことから、2011年(平成23年)3月14日に宇部興産ホイール株式会社の解散およびアルミホイール事業からの撤退が発表された[8]
ファイル:UBE Power Center Power Plant.jpg
電力ビジネスユニットIPP発電所
エネルギー・環境事業部
エネルギー事業としては、電力の卸売事業及び海外炭の販売並びに預り炭事業を行う。
電力の卸売事業には2004年に参入しており、子会社の株式会社ユービーイーパワーセンターが建設した電力ビジネスユニットIPP発電所(出力21万6千kW)で中国電力への電力供給を行っている[9]。なお、株式会社ユービーイーパワーセンターは2005年1月に宇部興産に吸収合併されたため、現在は宇部興産の電力ビジネスユニットがIPP発電所を運営している。
同社は創業時より石炭事業を営んでおり、特に同社の山陽無煙鉱業所で採掘された無煙炭練炭豆炭原料用としては国内髄一のものと言われ、昭和30年代には内地需要の半ばを供給していた[10]。その後、エネルギー革命によりエネルギー資源の転換が図られる中で採炭活動からは撤退したものの、昭和49年に海外一般炭輸入許可第1号(豪州炭)を国内で最初に取得し、石炭事業を復活させている。現在の取り扱い数量は年間約600万トン。石炭の販売について豪州テンプレート:仮リンク社と提携している。

歴代社長

歴代の宇部興産社長(含・沖ノ山炭鉱頭取・社長)
代数 氏名 在任期間 出身校
沖ノ山炭鉱頭取・社長
初代 渡辺祐策 1897.6 - 1934.8 沢瀉塾
第2代 渡辺剛二 1934.8 - 1942.3 京都帝國大学医学部
宇部興産社長
第3代 俵田明 1942.3 - 1958.3 工手学校(現・工学院大学)
第4代 中安閑一 1958.3 - 1977.12 東京高等工業学校(現・東京工業大学)
第5代 水野一夫 1977.12 - 1983.6 東京帝國大学法学部
第6代 清水保夫 1983.6 - 1991.3 浜松高等工業学校(現・静岡大学工学部
第7代 中東素男 1991.3 - 1995.7 大阪大学工学部
第8代 長広真臣 1995.7 - 1999.6 京都大学法学部
第9代 常見和正 1999.6 - 2005.6 京都大学工学部
第10代 田村浩章 2005.6 - 2010.3 京都大学工学部
第11代 竹下道夫 2010.4 - 九州大学工学部

沿革

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渡辺翁記念公園内に建立されている渡辺祐策翁像
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右端の建物がかつて東京本社として使用していた旧UBEビル(現JTBビル)

宇部興産の創業年は沖ノ山炭鉱設立の1897年(明治30年)とされているが、沖ノ山炭鉱をはじめとする宇部村の炭鉱群の起源は江戸期の元禄時代の頃よりはじまった製塩用の採炭事業まで遡る。これらの炭鉱群は明治期に入り山口藩石炭局による統制の下で、同藩軍艦用の燃料に供され。西洋からの最新技術が導入されるようになると急速に発展するが、1872年に石炭局が廃止されて以後は石炭局の主任者であった福井忠次郎が合資会社を作り、一時鉱区権を独占していた。

これを旧宇部領主福原家第24代の福原芳山判事、後に大審院詰)が私財を投げ打って買い戻し、芳山の死後には宇部共同義会(石炭鉱区の統一管理並びに地元公共事業を推進する目的で渡辺祐策等の福原家士族により設立された機関)に無償譲渡、管理され、その中から沖ノ山炭鉱が誕生した。このような公益目的による設立の経緯から沖ノ山炭鉱は当初、宇部式匿名組合と言われる独特の組織形態を採用していた[13][14][15][16]。また、1974年商法改正により多くの国内企業が年2回決算から年1回決算へ移行する中、宇部興産は株主総会の回数が減ることにより地元株主の楽しみを奪うことを避けるために1982年まで年2回決算を続けていた[17]

関連企業群

2013年3月末現在の子会社および関連会社数は149社[18]

(五十音順)

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連結子会社 


持分法適用会社 


主な出資会社 



広報活動

1971年(昭和46年)2月の日経サイエンス創刊以来、同誌に「超の世界」と題したシリーズ広告を掲載している[19]。この広告は、科学ジャーナリストの餌取章男が科学者へのインタビューを行い、最先端の科学情報をクロイワ・カズのイラストとともに紹介するものである[19]1978年(昭和53年)1月からは社員の海外滞在体験を記した記事広告「とぴっくす・てれっくす」(2000年4月号から「とぴっくす・ぐろーばる」に改題)を文芸春秋に掲載している[19]

また、かつて日本テレビ系列で放送されていた『大蔵大臣アワー』やテレビ東京系列『出没!アド街ック天国』等の番組提供を行っていたほか、水着キャンペーンガールを採用し宣伝活動を行ったこともある。

UBE DOG

企業CMに登場するキャラクターとして「UBE DOG」がある。全身が宇部興産の素材でできた犬型ロボットとの設定で、「ロボくん」の愛称が付けられている。UBE DOG登場以後の宇部興産の企業CMはすべてCGで描かれており、UBE DOGもCGのキャラクターである。キャラクターデザインは大友克洋。制作されたCMは公式サイトのCMライブラリで公開されている。

UBE DOGと渡辺翁記念会館をモチーフにした「記念館の見える街 with UBE DOG ロボくん」という洋菓子を宇部市内の創作洋菓子店である「創作洋菓子のロイヤル」が発売している[20]。これは地産地消の推進を目的に山口県内の食材を使用して作られたもので、パッケージにはUBE DOGが使用されている[20]

産業観光

宇部興産の宇部地区工場群は窯業石油化学といった幅広い産業の巨大装置だけでなく、国内最大の貯炭場や大型タンカーが寄港する企業専用岸壁企業専用道路、大規模な露天掘りが行われている石灰石鉱山(伊佐鉱山)等も擁しており、後述するUBE i-Plazaや鉄道貨物等とともに産業観光の対象となっている。

UBE i-Plaza

宇部興産創業110周年を記念し、2007年平成19年)11月27日に宇部本社1号館の1階にUBEグループの歴史や事業内容、先端技術の紹介を行う総合案内施設として開設された[21]。主に地元学校の社会科見学や、産業観光ツアー等で活用される。開館時間は9:00から17:00までで、土曜日日曜日祝日、会社休業日は閉館しており、見学には事前の予約が必要である[21]

施設内容
  • 企業史紹介ゾーン - 渡辺祐策俵田明中安閑一の胸像が展示されているほか、企業史に関連する写真がタッチパネルで検索できる。
  • 製品・技術紹介ゾーン - 「情報・電子産業とUBE」「自動車産業とUBE」「生活とUBE」「社会インフラとUBE」の4つのコーナーで、それぞれ原料や製品等についての紹介を行っている。
  • 組織・活動紹介ゾーン - 同社のCSR活動、環境事業、サービス事業、陸上物流、海上物流、グループ企業、広報について、模型やタッチパネルでの紹介を行っている。
  • 先端技術紹介ゾーン - 実験と情報キーシステムにより同社の先端技術の紹介を行っている。
  • 未来ゾーン - 同社のポリイミドフィルムや炭化ケイ素繊維等の宇宙開発関連技術の展示を行っている。

宇部興産と鉄道貨物

宇部興産は自社の専用道路である宇部興産専用道路の使用を開始するまでは、宇部地区と伊佐地区との間の物資輸送に鉄道貨物を多用していた。両地区を結ぶ美祢線宇部線には石灰石を満載した石炭車を長く連ねた専用貨物列車が昼夜を問わず多数運転されており、宇部本社前には事実上自社専用の貨物駅となっていた宇部港駅が設けられていた。宇部線・美祢線の両線が地方交通線ではなく幹線扱いとなっていたのは宇部興産による貨物輸送によるところが大きかった。

現在は、宇部興産伊佐セメント工場から中国電力三隅発電所島根県浜田市)の間を往復する貨物列車が運行されており、岡見貨物と呼ばれ、写真撮影等に訪れる鉄道ファンも多い。国鉄DD51形ディーゼル機関車が重連で炭酸カルシウム(火力発電所向け脱硫触媒)あるいはフライアッシュ(セメント工場向けセメント原料)を積んだ薄青色の貨車(宇部興産セメントサービス株式会社所有)を牽引している。

なお、宇部線・小野田線の一部の前身である「宇部電気鉄道」は、沖ノ山炭鉱の子会社であった。また、宇部興産伊佐セメント工場専用線は、前身である「伊佐軌道」を買収し敷設し直したものである。

関連項目

人物
過去のグループ企業
  • ウベハウス - 宇部興産の住宅事業部門が起源。事業移管によりグループ離脱。
  • 富士車輌 - 三和銀行の要請を受け経営支援のため1965年にグループ入り。2001年民事再生法申請による減増資によりグループ離脱。
  • 新笠戸ドック - 経営支援のため1959年にグループ入りした笠戸船渠が起源。2005年に株式を今治造船に売却しグループ離脱。
ファイル:KosanOhashi Bridge.JPG
興産大橋(宇部興産専用道路)
関連施設
宇部興産が設立に携わった組織・施設(宇部市内)
加盟団体
その他

脚注

テンプレート:脚注ヘルプ

注釈

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出典

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参考文献

書籍

雑誌記事

外部リンク

テンプレート:宇部興産 テンプレート:みどり会 テンプレート:セメント協会 テンプレート:石油化学工業協会

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  1. 中安閑一傳編纂委員会 (1984) P.167
  2. かつて、旧三和銀行は下関支店(下関市)も有していたが、同支店は1969年(昭和44年)11月15日を以て閉鎖され、現在の宇部支店に統合された。尚、旧東海銀行に関しては山口県内への進出実績自体がない。
  3. 但し、旧東京三菱銀行店である徳山支店が周南市にあるため、三菱東京UFJ銀行としては山口県に宇部支店を含め2つの支店を有している。
  4. 富士経済東京マーケティング本部第3事業部 (2008)
  5. テンプレート:Cite
  6. 6.0 6.1 テンプレート:Cite press release
  7. 宇部興産の医薬品事業
  8. テンプレート:Cite press release
  9. テンプレート:Cite press release
  10. 国史大辞典編集委員会 (1980)
  11. 11.00 11.01 11.02 11.03 11.04 11.05 11.06 11.07 11.08 11.09 11.10 11.11 11.12 沿革|宇部興産株式会社
  12. テンプレート:Cite press release
  13. 京都大学文学部国史研究室 (1968) P.39
  14. ダイヤモンド社 (1965) P.27
  15. 安場 (1979) P.42
  16. 宇部市史編纂委員会 (1966) P.397
  17. 日経BP社 (1989) P.57
  18. 宇部興産 第107期有価証券報告書
  19. 19.0 19.1 19.2 CMライブラリ|宇部興産株式会社
  20. 20.0 20.1 創作洋菓子のロイヤル 山口県宇部市のケーキショップ コラボレーション商品
  21. 21.0 21.1 テンプレート:Cite press release
  22. 宇部商工会議所 会議所概要
  23. 九州経済連合会 役員名簿
  24. 中国経済連合会 役員名簿
  25. テンプレート:PDFlink
  26. 日本化学工業協会 役員名簿
  27. テンプレート:PDFlink
  28. みどり会 会社概要


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