国鉄キハ31形気動車

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テンプレート:出典の明記 テンプレート:鉄道車両 キハ31形気動車(キハ31がたきどうしゃ)は、日本国有鉄道(国鉄)および九州旅客鉄道(JR九州)が製造した一般形気動車

概要

1987年昭和62年)の国鉄分割民営化に先立ち、九州地区の老朽車両の取替えを促進し、経営基盤の整備を図る目的で製造された。車体はメンテナンスフリーで軽量なオールステンレス車体とし、台車変速機・ブレーキ装置などの部品には廃車発生品を多用してコストダウンを図り、またドア冷房装置暖房装置等にはバス用汎用品を採用して、軽量化・コストダウンを進めている。さらにワンマン運転にも対応し、ワンマン運転用機器が容易に取り付けられるような構造としている。

1986年(昭和61年)末から1987年初頭にかけて、20両(1~20)が新潟鐵工所および富士重工業で製造された。全車がJR九州に承継された後、1988年(昭和63年)3月に3両(21~23)が追加製造されている。

車体

九州に多数存在する急勾配区間での使用を考慮して軽量化を図り、重量あたりの出力を高くとるという目的から、有限要素法による構造解析を行って設計された、軽量ステンレス車体を採用している。あわせて車体長さを従来車標準の20mから17mに短縮している。

側面窓は1段上昇式である。客用扉は幅900mmの2枚折戸で、ドアエンジンはバス用のものを改良して使用しており、自動・半自動の切り替えが可能である。半自動ドアはボタンで操作する方式である。先述のようにワンマン運転を考慮していることから、客用扉は車端部に配置している。

運転室は客室面積や前面展望の確保、ワンマン運転対応を考慮して長さ1440mm・幅980mmの半室構造とされたため、乗務員用扉は運転室側側面のみに設けている。また、運転台機器にもコストダウンのため流用品を多用している。側面の行先表示は行先票(サボ)によるもので、中央部窓下にサボ受けが設置されている。

前面はキハ54形とほぼ同じ様式で、中央に貫通扉を配した3枚窓である。貫通扉上に前照灯を設け、運転室窓上に種別・行先表示器を設置している。種別・行先表示器はバス用の手動式である。

車体は無塗装だが、前面と側面の裾部分および側面上部に青色の帯を配している。また、写真のようにスカートが追設された車両も存在する。

車内設備

テンプレート:Double image stack 座席は観光路線での旅客サービスも考慮し、新幹線0系電車の廃車発生品の転換クロスシートを改造してシートピッチ910mmで装備したが、一方を2人掛け、もう一方を1人掛けとした3列座席とし、通路幅を確保している。

ワンマン運転に対応するため、運賃箱運賃表示器整理券発行器を容易に設置できるような室内構成となっており、運転席も低い位置に設けられ、室内を広く見渡せる構造としている(のちに全車がワンマン運転対応化改造を受けた)。なお追加製造された21~23は座席が0系電車の発生品ではなく、新製のものとなっており、1~20と同一の座席配置・シートピッチだがその形状は全く異なる。また、かつて大分に配置されていた車両では、ドア付近の一部を除いてロングシートに改造されたものも存在する。

冷房装置は同時期に製造されたキハ38形と同様、バス用冷房装置を流用したサブエンジン式のAU34を装備しているが、冷房能力が弱いことから、補助送風機として扇風機も併設されている。また、暖房はエンジンの冷却水を使用する温水式で、座席下に温水を温風にする自動車用の暖房器を設置している。

トイレは設置されていないが、肥薩線など全区間を乗り通すと2時間を越える上に運行本数が少ない路線の運用にもついている。

主要機器

エンジン・変速機

エンジンキハ37形で採用された新潟鐵工所製の直噴式DMF13Sを横型に設計変更したDMF13HS形(250PS/1900rpm)を1基搭載している。液体変速機は従来車の廃車発生品のTC2AおよびDF115Aをはずみ車室およびクラッチを強化して再利用している。このように、エンジンの250PS化と車体の短縮やステンレス化などの軽量化により性能向上が図られており、キハ31形2両編成(編成500PS)でキハ58形+キハ28形の2両編成(編成540PS)とほぼ同等(低速時のみわずかに下回る)の加速性能を有している。

台車

台車も廃車発生品の金属バネ台車を使用しているが、ブレーキシリンダを従来より車体中心寄りに配置しているため、台車枠と基礎ブレーキ装置に小改造を施した、DT22G(動台車)・TR51E(付随台車)を装着している。また、ブレーキ装置もキハ58系まで採用されていたものと同一仕様のDA1自動空気ブレーキを流用装備しており、最高速度は95km/hに制限されている。なお、勾配走行時の空転防止のために砂撒き装置を設置できるよう準備工事がされ、一部車両では本設とされている。

このように、変速機やブレーキ機器が旧型気動車の流用品であり、在来一般形気動車との併結運転が可能な構造となっている。

運用

当初は熊本運転所(現・熊本鉄道事業部熊本車両センター)に11両、唐津運転区(現・唐津鉄道事業部唐津運輸センター)に7両(諸事情により実際は7両全車が竹下気動車区(現・博多運転区)に配置された)、大分運転所(現・大分鉄道事業部大分車両センター)に2両が配置された。その後1988年3月13日のダイヤ改正により、香椎線三角線でのワンマン運転が開始されるのを前に、唐津配置の車両は竹下気動車区に4両、長崎運転所(現・長崎鉄道事業部長崎運輸センター)に3両が転出し、あわせて新製車3両が竹下に配置された。

その後、キハ200系の新製と、香椎線での車内収受方式によるワンマン運転の中止により、1995年平成7年)までに竹下と長崎からは撤退し、熊本鉄道事業部(人吉運用を含む)と大分鉄道事業部に集められた。その後2001年に4両が鹿児島運転所(現・鹿児島鉄道事業部鹿児島車両センター日南鉄道事業部運用)に転出した。

2004年(平成16年)3月13日のダイヤ改正で急行くまがわ」が廃止され、同列車用車両のくま川鉄道線への乗入れが廃止されたことから、同線の朝ラッシュ時の輸送力確保のために1両(20)がくま川鉄道へ譲渡された。同社での呼称はKT31形(311)であった。

2006年(平成18年)には大分、鹿児島(日南運用)所属車が筑豊篠栗鉄道事業部直方運輸センターに転出し、同年8月1日より使用されている。

現況

ファイル:Kiha31-18.jpg
「天草バイオディーゼルカー」として運行されたキハ31 18のサボ
中央部にくまモンがいる

2012年(平成24年)4月現在の配置と運用は以下のようになっている。

筑豊篠栗鉄道事業部直方運輸センター
14両が配置され、7両(8~10・15・21~23)が直方運用、7両(2・3・5~7・11・19)が日田彦山運用で、おもに筑豊本線直方 - 若松間(若松線)、同桂川 - 原田間(原田線)、後藤寺線(全線)、日田彦山線城野-彦山日豊本線小倉-城野(日田彦山線直通のみ)で使用されている。
なお、後藤寺線に関しては篠栗線との関連で新製当初から1995年まで運用されていたことがある。
熊本鉄道事業部熊本車両センター
8両(1・4・12~14・16~18)が配置され、三角線肥薩線のみで使用されている(2008年現在豊肥本線での運用は皆無となっている)。
かつて運行されていた肥薩線の観光列車「九千坊号」に使用される車両は一部座席の背もたれを向かい合わせに固定し、その座席の座布団を取り外して敷きの床板をはめ込んでいた。「九千坊号」に使用される以前は「いさぶろう・しんぺい」用として使用されていた。その後2008年にはドアチャイムが設置された。
18は2010年11月に、廃油から製造されたバイオディーゼル燃料を使用して運行する「天草バイオディーゼルカー」として運行された。
くま川鉄道
JR九州から譲渡された1両をKT-31形として配置。同鉄道の湯前線で運用されていたが、2013年に運用を離脱して廃車解体された。同系列では初の廃車となった。[1]

脚注

  1. 鉄道ピクトリアル2014年1月号の記事より

関連項目

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