運賃箱

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レシップ製(入金ボタン付・日本初の液晶画面付)

運賃箱(うんちんばこ)とは、車掌が乗務しないワンマン運転を実施している路線バス旅客列車内での運賃収受を簡便かつ厳正に行うために設置されている機械装置である。事業者局によっては料金機・乗車料金収納機などと呼んでいるところもある。この記事内では、特に記載がない場合、日本の公共交通機関における設置と運用例を述べる。

概要

ワンマン運転を行う路線バスや列車において、乗車券を持っていない旅客からは、直接現金で運賃を収受する。また、きっぷや運賃の投入は、旅客自身で行うことが、多くの事業者で標準的な取り扱いとなっている。その取り扱いを、旅客・運転士ともに簡便に行うための装置である。

単なる箱形状のものから、盗難防止のため施錠機能がついたもの、旅客が投入した現金やきっぷが確認できるよう、投入後一旦内部の受け皿のような構造部に保留してから、運転士のレバー操作により、金庫に落として収納するようなものへと進化した。ただ、ワンマン運転における運転士の運賃横領は法的に罪に問われ、各事業者の規則でも懲戒処分相当の重要事項としてあげているものの、過去には横領がたえなかったという。そこで、運転士が現金を手で扱わなくても運行が可能なように、運賃箱に両替機能を持たせたものが広く普及しだした。これを発展させたものとして、回数券バスカード自動発行機と接続し、運賃箱のボタンを押してから紙幣を運賃箱に挿入すると、自動発行機に信号が送られ、バスカードや回数券が購入できる事例もあり、右に写真で示す八戸市営バスのほか、高槻市交通部などで見られる。

自動計数機能が普及した今日でも、旅客が運賃箱に投入した運賃額が正当かどうかを最終確認するのは運転士の業務であることが多く、運転席付近に設置されていることが多い。乗客が何を入れたのかが分かるように運賃箱の内側(運転手側)には透明なチェック窓がついており、運転士は運賃が正しく支払われたことを確認できる。近年、旅客側の不正対策防止と運転士の負担軽減策として、投入した硬貨を即座に計数し、運賃箱に表示する機能を有するものもある。これを応用し、都営バス大阪市営バスなど、大都市で均一料金で運行し、利用客も多い事業者を中心に、運賃を投入すれば、ちょうどであれば自動収納、不足であれば警告を発し、過剰な場合は自動的にお釣りが排出される機構としているものもある。

装置の下部には着脱可能な金庫が設けられており、乗務前に取り付け、乗務が終了すると現金箱を取り外す。金庫を取り付けないと構造的に機能しないものが多い。取り外すには、特殊な操作が必要で、利用者による金庫の横領を防いでいる。また、金庫を取り外すと、金庫は自動施錠され、営業所にある運賃収納機や特殊な開錠装置を使用しない限り、運転士や営業所所員自身も、金庫内の現金類を直接手で扱うことはできない。金庫は事務所に引き渡すことになるが、具体的な運用は、事業者による。 ある程度の規模のバスを保有するバス会社では、取り外した金庫を運転士自身が挿入すると、開錠され、自動的に大金庫に納金する装置が普及している。このとき、硬貨・紙幣を計数し、金庫内蔵のメモリーとの誤差がないことを確認する機能や、紙幣や紙回数券などを分離して回収する機能がついたもの、後述するICカード乗車券用用のデータを同時に更新する機能のついた専用機器が普及している。また、装備員と呼ばれる別の係員が運賃箱を取り扱う場合や、鍵が営業所で一括管理されていることが多い。ワンマン運転を行う鉄道で、運賃箱で運賃を収受する鉄道会社では、運転士は運賃箱の金庫自体を扱わず、車両の入庫時や終着駅到着時に保守担当員や駅係員が運賃箱を回収するケースも見られる。

最近の一部の金庫には、バスカードICカード乗車券用の利用実績データやネガティブデータ(ブラックリストカードデータ)や、収納金額を金庫内蔵のメモリーに記憶、納金機処理時に照合する機能がついているものもある。記憶されたデータは、納金機処理時に、自動的にダウンロードされ、精算データとして活用される。

運賃箱は、後述するメーカーから汎用品がラインアップされている。ただ、大規模事業者向けには汎用機を改造し、事業者のニーズを満たす特注品を納品している事例もある。

ギャラリー

機能

  • 運賃投入口より貨幣回数券整理券を受け入れる。会社によっては紙幣のみ両替機の紙幣投入口にそのまま受け入れできるものもある。
    • 鉄道の場合、有人駅もしくはワンマン運転可能車両を使用してのツーマン運転での運用時には投入口の部分に蓋をすることが出来るようになっている場合がある。切符もしくは運賃は有人駅の駅員もしくは車掌が回収・収受する。
  • 投入された貨幣の保管
  • 硬貨紙幣の両替。機種により対応する種類は異なる(例・紙幣は千円札のみ対応、紙幣の両替機能がないなど)
    • 運賃前払い方式を採用しているところでは、この両替機部分を「つり銭の必要な硬貨」「紙幣」の投入口としている場合もある。
  • 運賃投入口・紙幣投入口より投入された硬貨・紙幣の計数
    • 運賃前払い方式や後払い均一運賃制を採用しているところ(大阪市営バス)では投入された金額を計数して、つり銭が出てくるものもある。この場合、両替機部分の硬貨投入口をふさいで硬貨を投入できないようにしている。
    • 高速バスでは高額紙幣の読み取りが可能な紙幣投入口を装備する機種もある。一般路線では高額紙幣の両替やつり銭が必要な運賃の精算が不可能であり、高額紙幣が必要になるほど運賃が高額になることがあまりないためICカードの入金に利用されるのがほとんどである。また、二千円札の読み取りが可能かどうかは事業者によって異なる。
  • 整理券番号の読み取り。整理券に印刷されたバーコードを利用する。
  • プリペイドカードICカードなどの読み取り・書き込み
    • ICカードの入金(チャージ)
      • 入金時には乗務員に申告するタイプが多いが、遠州鉄道ナイスパス)や小田急バスPASMO)、多くの路面電車では「入金ボタン」(呼称は会社毎に異なる)を設置し申告無しに入金できる。
  • プリペイドカードの販売
    • 指定された紙幣を投入してボタンを押すと、カード取り出し口よりカードが出てくる。
  • 乗車券および領収証の発行(前払い乗車方式の高速バス高槻市営バス
  • 遅延証明書の発行(高槻市営バス)
  • 各種情報(運賃・投入金・カード残額など)の表示
  • 持っている機能は種類により異なる。
  • 海外では、運賃箱は単にお金を入れるだけの場合が多く、両替機能がついていないことが多い。この場合、バスカード読み取り機(ICカード含む)や、つり銭を出す専用の機械が別途設けられていることが多い(韓国や台湾のバス等)。

主なメーカー

関連項目

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