核の冬

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核の冬(かくのふゆ、テンプレート:Lang-en-short)は、カール・セーガンらにより提唱された現象で、核戦争により地球上に大規模環境変動が起き、人為的に氷河期が発生する、というもの。

概要

この現象は、核兵器の使用に伴う爆発そのものや広範囲の延焼(火災)によって巻き上げられたなどの浮遊する微粒子(数時間から数年に渡って大気中を浮遊する)により、日光が遮られた結果発生するとされる。

太陽光が大気透明度の低下で極端に遮断される事から、海洋植物プランクトンを含む植物光合成を行えずに枯れ、それを食糧とする動物が飢えて死に、また気温も急激に下がる事が予想されるなど、人間が生存できない程の地球環境の悪化を招くとされている。

ちなみに、放射能を帯びた死の灰が降り注ぐ事による催畸性の問題もあり、一度核戦争が勃発すれば、国家間の報復合戦から地域限定戦争によっても世界規模の被害が懸念され、核兵器の危険性を説明する上で、本項で述べる現象は度々引用される概念である。

出典

この現象は宇宙物理学者のカール・セーガン(Carl Sagan)博士ら共著者の頭文字(Turco・Toon・Ackerman・Pollaok・Sagan)を取り、TTAPS理論TTAPS研究とも)と名付けられたレポート(1983年発表)の中で提唱された。

理論では全面核戦争が引き起こされた場合、世界各地で熱核爆発により大規模火災が発生、この火災により数百万トン規模のエアロゾル(浮遊粉塵)が大気中に放出され、これが太陽光線を遮る事により数ヶ月に渡って暗雲が地球規模で垂れ込める。その間に植物の死滅・気候の急激な変化が起き、地球全域に渡る生物層(生態系)の壊滅的な破壊や文明の崩壊を予測している。

同理論は当時の世論において、都市火災における煤煙の量を悲観的に見積もるなど、核による被害の過大評価だとはされながらも、核兵器による大規模破壊や大量虐殺は避け得ないものと考えられたこともあり、のちに度々引用されることとなった。

被害予測・実際の現象

核戦争の規模によるが、核爆発による浮遊微粒子は、大規模な都市火災によって発生する上昇気流に乗って成層圏にまで到達、ジェット気流によって世界規模に拡散する。例えばヨーロッパで限定核戦争が勃発しても、その被害は日本を含むアジア米国を巻き込むとされ、まして同理論が提唱された冷戦末期の中で米国・ソビエト連邦が核兵器で攻撃しあう事態となれば、間違いなく地球規模の環境破壊が起こると考えられた。

実際には2011年現在、核兵器が飛び交うような戦争は幸いにして起きていないため、この理論が真実かどうかはコンピュータシミュレーション上の予測値を見るしかない。しかしチェルノブイリ原子力発電所で発生した爆発事故(1986年)では、当時のソビエト連邦における事故であるにもかかわらずヨーロッパの農産物より放射性降下物のものと思われる放射線が検出されるなどの影響があり、また広域にわたって放射性物質が降り注ぐ被害が観測されている。これに倣い、核兵器による被害では、より大規模な上昇気流の発生も予測され、同事故以上に広域の汚染が発生し得ると予想される。

その一方、大規模な火山の爆発によって大気中に放出された火山灰が、やはりジェット気流に乗って広い範囲で極端な夕焼けなどの現象として観測された事例もあり、これらの観測結果を含めて、核兵器の使用に伴う核の冬の発生は、様々な方面から強く警戒されている。この火山噴火に伴う広域の現象では、近年ではフィリピンピナトゥボ山1991年に噴火した事例が有名。

空中の塵による日光遮蔽とそれに伴う危機というほぼ同様の発想としてK-T境界説(約6500万年前の恐竜を始めとした大量絶滅シナリオ)が挙げられる。

これを扱った作品

関連項目

外部リンク

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