TIMS
TIMS(Train Information Management Systemの略、ティムスと読む)とは、列車情報管理システムのことで、東日本旅客鉄道(JR東日本)と三菱電機が共同で開発した、鉄道車両のモニタ装置の一つ。車両の力行やブレーキ、出区点検、車内空調管理、行先表示機、車内案内表示装置などの各種車載機器を一括して管理するコンピュータシステムである。
JR東日本以外でも、同社の車両をベースに設計・製造された東京都交通局(都営地下鉄新宿線)や相模鉄道の車両でも同一のシステムを搭載しており、名称も同じ「TIMS」である。
また、名古屋鉄道や西日本旅客鉄道(JR西日本)でもTIMSとほぼ同様のシステムを搭載した車両を導入しているが、名称はTICS(Train Information Control Systemの略、ティクスと読む)、小田急電鉄ではTIOS (Train Information Odakyu management Systemの略、ティオスと読む)と異なる。システムとしてはほぼ同じものである。
なお、気動車向けの類似システムであるDICSは別個に新潟トランシスが開発したものであり、TIMSとは直接の関係はない。
また、TIMSの後継システムとしてINTEROSがある。
目次
概要
TIMSの前身となるMONについて
1980年代後半に設計・製造された211系電車や205系電車などでは、ドア開閉の状況や制御装置の動作状況を表示する簡易なモニタ装置が付いていた。その後、コンピュータ技術の発展に伴い、JR東日本ではこのモニタ装置の機能を大幅に向上させ、時刻表(乗務行路表)のICカード化・マスコンのノッチ段数・ブレーキ圧力・空調装置など各サービス機器の動作状況を確認・設定できる「乗務員支援モニタ」をMON3型として651系電車などに導入した。この時点では力行・ブレーキ指令は組み込まれず、従来通り専用伝送線経由になっていた。
その後、動作状況の監視だけでなく、力行・ブレーキ指令などをシリアル伝送する「制御伝送システム」をMON8型として209系電車などに導入した。さらに同システムをループ型にして信頼性の向上・伝送速度向上を図ったものをMON11型としてE653系電車などに導入した。また新幹線車両にも一部仕様変更のうえ導入された。
MONからTIMSへ
各種機器の増加に伴い、ハードウェア構造が複雑化したほか、車両間の引き通し線も増加していった。引き通し線の増加は車輌製造・保守の面からも不利である。そこで、従来の配電盤機能をソフトウェア化してハードウェア構造を簡略化し、引き通し線の大幅削減を図ったTIMSが開発され、1998年に209系電車950番台(現 E231系900番台)に初めて導入され、翌年から量産化されたE231系電車から標準搭載された。
従来のループ型を発展させたラダー型で伝送し、自立分散型ノードを使用するため信頼性が向上された。車両間の伝送インターフェースにはRS-485を、車両内の伝送にはインターフェースユニットを採用するため、ハードウェアの影響を受けずに車両全体の管理が可能になった。
伝送には2本の伝送路を同時使用できるため、伝送速度はMON8型の38.4kbpsに対しTIMSは2.5Mbpsと飛躍的に向上し、2本の伝送路を同時使用すれば5Mbpsにのぼる。またE233系においては1本あたりの伝送速度が10Mbpsに向上されている。
その後、ACトレインでTIMSの後継となるAIMSが試作され、E331系電車に導入された。またAIMSと同様のシステムがJR西日本でも321系電車などに導入されている。
力行・ブレーキ指令はもちろん、車内放送・空調・ドア開閉やパンタグラフ昇降指令等、運転・サービスに係るほとんどの指令がTIMSを介して行われるようになった。これにより、機器毎に独立して車両間を配線していた信号線は数本のTIMSの信号線に置き換わり、前述した引き通し線の大幅削減による軽量化および製造・メンテナンスコスト削減に大きく寄与した。また、各機器の動作状況を運転台のモニターで集中監視できるようになり、各車両ごとのブレーキ圧・モーター電流・室温・湿度・空調動作、各ドアの動作状況などが確認できる。ただし非常ブレーキ・直通予備ブレーキ等重要な指令についてはTIMSを介さず直接指令している。在来線車両に限らず、E5系電車、E6系電車などの新幹線車両においても、TIMSの改良型(S-TIMS)が搭載されている。
また車両の駆動方法についても改良が加えられた。これまでの車両では、力行は数両の電動車を1つの群として、ブレーキは遅れ込め制御を考慮し電動車と隣接する数両の付随車を1つの群としてそれぞれ制御する「ユニット方式」を採用してきた。これらに対しTIMSでは、ユニット単位ではなく編成全体として必要な減速力を満たすようブレーキを編成内で最適化調整する考え方を導入した。制御単位が従来の車両毎から台車毎に細分化されたり、他の車両よりも混雑している車両には他の車両よりもブレーキ力を強めるなどの高度な制御が実現したため、ブレーキ制輪子の偏摩耗抑制や、回生ブレーキの効率向上などの省エネにも寄与している。
なお、TIMSの心臓部にあたる装置は、車両の床下に設置してあるTIMS機器箱や乗務員室内の分電盤などに設置されており、乗務員室にある「TIMS」と書かれたモニタは表示・設定器である。
TIMS経由になった指令
運転台関連
- 運転台の起動(前部・中間・後部の選択)
- 前後進、運転指令論理作成、制御電源入り指令、高加速・定速制御・リセット・故障車開放、耐雪ブレーキ、EB装置
- 速度計・高圧/低圧電圧計・元溜め/ブレーキシリンダ圧力計(TIMSからの情報を元にメータ表示)
- 運転台各種表示灯(運用・保安)
- キロ程演算・運転操作ナビゲーション機能
- 各種機器の動作記録(非接触型ICカードで読み出し)
- システムの異なる車種への読替装置の起動(他形式車と連結できる車種に搭載)
- 使用すると一部の機能に制限がある。(例: 連結相手の状態が非表示や操作不可・旧型車に合わせて走行特性が変わる等)
※一部のE231系とE531系、及びE233系では速度計・高圧/低圧電圧計・元溜め/ブレーキシリンダ圧力計の表示が液晶ディスプレイ式(グラスコックピット)になっている。
主回路関連
- パンタグラフ昇降指令(E531系ではTIMSを経由しない直接指令)
- 高速度遮断器 (HB) 入り許可制御
- 車上試験安全インターロック
- 力行・ブレーキ制御、回生バランス制御
補助回路機器
ブレーキ関連
サービス機器関連
- ドア開閉指令
- バックアップ回路切替・半自動・一部車両を締め切ってのドア開閉。各ドアの動作状況も表示できる。ホームドア制御器との通信も可能。
- 冷暖房送風一括制御、空調基準温度設定(外気温、各車両の室温・湿度表示が可能)
- 室内灯制御
- 車内放送/乗務員連絡/車内非常通報装置音声データのデジタル伝送、自動放送制御
- 行先・車内案内・運行番号設定(TIMSの設定画面による)
- 車内案内表示装置への運行状況表示(VIS経由による)
- グリーン車Suicaシステムの座席管理装置の制御
- 便所内非常スイッチ操作の表示
- 各車の乗車率演算・表示
- 座席収納指令(6扉車)
検修関連
- 出区(出庫)前点検機能
- 車上試験機能
- 試運転操作記録、試運転情報表示機能
- 故障記録機能
搭載車種
TIMS
- JR東日本E231系電車
- JR東日本E233系電車(3000番代のみE231系への読替装置あり)
- JR東日本E257系電車
- JR東日本E259系電車
- JR東日本E531系電車
- JR東日本E655系電車
- JR東日本E657系電車
- 相鉄10000系電車
- 相鉄11000系電車
- 東京都交通局10-300形電車
S-TIMS
AIMS
TICS
- JR西日本125系電車
- JR西日本521系電車
- 名鉄300系電車・名古屋市交通局7000形電車(共通設計)
- 名鉄3300・3150系電車(読替装置使用で3500系・3700系・3100系電車と併結可)
- 名鉄2000系電車(他形式車と連結すると車体傾斜機能は停止(回送のみ))
- 名鉄2200系・2300系電車(2300系は読替装置使用で1700系電車と組成・読替装置使用で3100系・3150系と併結可)
- 名鉄4000系電車
- 名古屋市交通局6050形電車(ATO対応)
- 名古屋市交通局N3000形電車
TIOS
- 小田急新3000形電車(3次車以降・6両編成は読替装置使用で電磁直通ブレーキの通勤車と併結可)
- 小田急新4000形電車
- 小田急50000形電車
- 小田急60000形電車
関連項目
外部リンク
- 三菱交通システムトップページ - TIMSの開発を担当。