二大政党制
テンプレート:政党政治 二大政党制(にだいせいとうせい、英:two‐party system)とは政党制の一つで、2つの主要な政党が最近の主な選挙で大きな得票や議席数を保っている状態や、それを前提とした政治体制である。
概要
二大政党制は通常、国家制度や政党制度としては複数政党制だが、二大政党が大半の集票・議席・影響力・政権担当実績などを保持している点で、多党制と対比される。しかし、どこからを二大政党制または多党制と呼ぶかは学者や時期や観点によっても異なり、明確な定義は存在しない。
二大政党制では、政権交代が比較的容易であり、多党制で多く見られる連立政権はまれにしか発生せず、発生した場合は大連立や挙国一致内閣などと呼ばれる。なお多党制も政党間のイデオロギーの差異によって穏健な多党制と分極的多党制とに分けられる。
ジョヴァンニ・サルトーリの指摘では、二大政党制はイギリスや、イギリスから独立したアメリカ合衆国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどのアングロサクソン諸国で多く見られる。
二大政党制の背景には、主要な二大政党以外からは大量当選が困難な選挙制度である小選挙区制や、国民のイデオロギーや支持層が「保守と革新(またはリベラル)」など2種類または2方向に大別できること、更に両政党が比較的穏健かつ民主的であり現実的な政権交代を相互に許容できること、などが挙げられる。
二大政党制の利点には、二大政党による政策論争が国民にわかりやすく、二大政党への参加や支持が容易で、現実的な政権交代が容易なため国民に実質的な選択の余地があり、長期政権に発生しがちな腐敗防止や、政権獲得時に国民の支持を背景にした大胆な政策転換を行いやすいこと、などが挙げられる。また、中間層の有権者の支持を得る為に二つの政党の政策が似たものとなる傾向があり、少数派の意見をくみ取る政党がなくなるという問題があるが、ジョヴァンニ・サルトーリの主張ではイデオロギーの差異が小さいことは良い政治であり、この点を利点とする立場もある。
二大政党制の欠点には、二大政党の思想や政策が離れている場合にはイデオロギー的あるいは感情的な対立になりやすく、政権交代の発生時には大幅な政策変更により政治の不安定化を招く場合があること、逆に二大政党の思想や政策が接近している場合には国民に選択の余地が狭く多様な意見や思想を反映しにくいこと、同じ政党・政策・支持勢力などが長期間存続しがちなため政党内の新陳代謝や政策転換が進みにくいこと、特に二大政党間で談合や汚職などが常態化した場合には致命的な政治不信を引き起こしやすいこと、あるいは二大政党制へ誘導するための小選挙区制では大量の死票が発生すること、などが挙げられる。アーレンド・レイプハルトの合意形成型民主主義の考え方に立てば、二大政党制を基盤とする多数決型民主主義においては多党制を基盤とする合意形成型民主主義より、少数意見の代表性が相対的に低いとされる[1]。
代表例
二大政党制と呼ばれる国と時期には以下があるが、その定義や範囲は学者によっても異なる。
- ジョヴァンニ・サルトーリの指摘するアングロサクソン諸国
- イギリス - 1800年代以降のトーリー党(後の保守党)とホイッグ党(後の自由党)。1920年代以降は保守党と労働党。第一次世界大戦、大恐慌、第二次世界大戦の際には大連立が行われた。1980年代以降は第3勢力の自由民主党や、地域政党のスコットランド国民党などの得票率が拡大しているが、議席数は二大政党と大差がある。2010年の総選挙でハング・パーラメント状態となり戦後初の連立政権が誕生し、自由民主党が政権参加した。
- アメリカ合衆国 - 共和党と民主党。他にアメリカ共産党などの少数政党や、ロス・ペローの大統領選挙立候補などの動きはあるが、議会や大統領選での当選例はほとんど無い。
- カナダ - 1993年まではカナダ進歩保守党とカナダ自由党の二大政党制。1993年の総選挙で進歩保守党が大敗したために二大政党制が崩れたが、その後カナダ保守党が政権に就いて自由党との二大政党制となった。2011年の総選挙ではそれまで第3党だった新民主党が第2党に浮上し、従来の保守・自由の二大政党制が崩れた。他にブロック・ケベコワなどが存在する。
- オーストラリア - 保守連合と労働党。保守連合は自由党とオーストラリア国民党の連合だが、選挙協力と連立協定が長期化しているため、二大政党制とも呼ばれる。なお、2010年の総選挙で、労働党も保守連合も、過半数を取れなかったが、労働党が、緑の党などの閣外協力を得て、政権続行をした。
- ニュージーランド - ニュージーランド国民党と労働党。ただし 1993年の選挙制度の小選挙区比例代表併用制への変更後は多党化した。
- その他
- ギリシャ - 2012年春まで新民主主義党と全ギリシャ社会主義運動による二大政党制が続いていた。2012年4月の総選挙で急進左派連合、独立ギリシャ人などが躍進し、多党化した。
- ポルトガル - 社会党と社会民主党。現在では二大政党制とはみなされない場合が多い。
- マルタ - 国民党と労働党
- コロンビア - コロンビア自由党とコロンビア保守党。
- 日本 - 戦前の立憲政友会と立憲民政党が保守二大政党と呼ばれる場合もある。55年体制以降は保革対立の日本社会党と自民党。また、1994年から1997年までの自民党と新進党、1998年から2013年までの自民党と民主党なども、二大政党制または二大政党制に近づいた状態と呼ばれる場合がある。
- 韓国 - 当初は与党の政府党と韓国民主党およびその後継政党。1987年の民主化宣言以降は、平和民主党や新民主共和党などの新党結成や離合集散が続いた。2000年の総選挙以降は中道右派のセヌリ党と中道左派である民主党_(韓国_2011-)による二大政党制が続いている。
- 中華民国(台湾)- 中国国民党と民主進歩党。民主進歩党は、2000年中華民国総統選挙で、台湾初の、政権交代を果たし、陳水扁が、中華民国総統に、就任した。
- タイ - タイ貢献党と民主党_(タイ)