香水

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香水(こうすい)は、体や衣服に付け、香りを楽しむための化粧品の一種。

概説

もともと宗教的な用途や薬用として使われていたが、近代以降、楽しみやたしなみとしての香水が生まれた。香料アルコールなどの溶剤に溶かして作られるものが多いが、他にもワックスに練り込まれた固形状の物などもある。現在では数多くのブランドが生まれている。

装飾品同様、定番のブランドがある一方で、新商品、季節限定商品が市場で注目されることも多い。女優などが自分の名前を冠した商品やブランドを立ち上げることもある。

香水は付けた人間の体臭と混ざり合って香りを演出するので、液体の香りそのものからは身に付けた際の香りを知ることはできない。肌の酸性度(pH - ペーハー)、水分量、皮脂量が各人異なるうえ、皮膚を構成するタンパク質の末端のアミノ酸の違いで飛ばされる香料と残される香料に個人差がある。また、香りは時間がたつにつれて変化する。香水をつけて10分くらいの香りをトップ・ノート、少し時間が経って20分から30分ぐらいの香りをミドル・ノート、大分時間が経って消えてしまうまでの香りをラスト・ノートという。変化のしかたや早さは、濃度や商品によってさまざまである。

揮発性を利用することから、一般的には体温の高い脈打つ場所につける。特にひじの内側につけると皮膚温が高く、動作のある為、効率よく揮発する。同じ静脈でも手首は衣服や物に触れる事が多く、案外消えが早くなる。また香りの変化や持ち・目的に合わせてつける場所も変える。しかし香水の成分には光毒性(光感作)のあるものも多く、シミの原因にもなるので直射日光の当たる場所につけるのは勧められない。特に鼻と両肩を結ぶトライアングルを形作る部分はタブー。香りは体の位置の低い部分から高い部分へ立ちのぼるのでつける部位と分量は十分な配慮が必要である。自分でも香りが分かるようではつけ過ぎのことが多い。またハンカチやスカートのすそなど、衣服につける場合もある。この場合は香水によるシミができることがあるので、使用後の衣服の取扱いに注意が必要となる。皮膚の敏感な人は直接皮膚につけずコットンなどにしみ込ませて下着の間、ポケットなどに忍ばせると良い。

香水の調合を職業とする者を調香師(パフューマー、perfumer)と言う。フランスでは、極めて評価の高い調香師をさす「ネ」(:nez; 「鼻」の意)という称号がある。石鹸、シャンプー、洗剤等の日用品や、清涼飲料水等の食品に添加する香料を調合する人はパフューマーではなくフレーヴァリスト(flavorist)と言う。

日本でも香水は化粧品の一種として広まってはいるが、欧米ほど使用が一般的になってはいない。これは、食生活や入浴頻度などの文化的経緯から臭い味覚に敏感で、無臭が好まれているためである。またそもそも欧米人と比較して、日本人の多くを占めるモンゴロイド(特に弥生人にあたる新モンゴロイド)には腋臭が少ない人が多いためとも考えられる。その結果、香水そのものの認知やにおいに対するマナーの違いなどにも影響を与え、香水の普及に歯止めをかけていると言える。日本の化粧品会社の製品もあるが、人気商品の多くは代理店などによって海外から輸入されたものである。

歴史

紀元前1850年頃に香水を製造していたという最古の工場跡地はギリシアで発掘された[1]

アルコールに溶かす香水が作られるようになったのは、イスラム社会でアルコールの製造法がヨーロッパに伝えられてからである。それまでは油脂に香りを吸着させた香油やポマードが使用されていた。14世紀にハンガリー王室で使用された、ローズマリーを原料としたもの(ハンガリアンウォーター)がそれである。その後、ルネサンス期のイタリアで発展し、ヨーロッパ各地に広まっていった。

16世紀から19世紀までのヨーロッパ(特にフランス)では、風呂に入ると梅毒などの病気になりやすいと信じられたため、入浴という行為が一般的でなく、国王ですら一生に3回しか入浴しなかったという記録があるほど。そのため香水は体臭消しとして発達していった。またなめし革の臭いを取るためにも使われた。

分類

香料による分類

ひとつの香水には平均して50~200種類もの香料が含まれている。更に、それらの香料はまた何百という香りを構成する成分からなっている。莫大な種類の成分が複雑に組み合わされることで香りが出来上がるため、その成り立ちの面から見ると、似た香りはないといえる。

基本的に天然の香料はその希少性から高価なため、化学的な調香もよく行われる。

香調による分類

香水はその香りのタイプ(香調)によっていくつかに分類される。複数の香調を組み合わせて作られた香水も多い。

濃度による分類

  • パルファン (parfum(s)) またはエクストレ (extrait(s))
    • 狭義の「香水」。parfumは英語のパフューム (perfume) と同語源だが、英語ではperfume extractまたはextraitという。
    • 濃度15 - 20%、アルコール75 - 80%、蒸留水0 - 5%、持続時間およそ5 - 7時間
  • オードパルファン (eaux de parfum, EdP)
    • ブランドによりパルファンドトワレとも言う
    • 濃度10 - 15%、アルコール80%、蒸留水5 - 10%、持続時間およそ5時間
  • オードトワレ (eaux de toilette, EdT)
    • 濃度5 - 10%、アルコール80%、蒸留水14 - 15%、持続時間およそ3 - 4時間
  • オーデコロン (eaux de Cologne, EdC)
    • 濃度2 - 5%、アルコール90%以上、蒸留水5% - 10%、持続時間およそ1 - 2時間
  • 練り香水
    • 濃度による分類とは言いがたいが、パルファンやコロンと同様に香料の種類を示す。液体ではなく、蜜蝋などに香を混ぜた固形物であるのが大きな特徴。

商品により「オードトワレ・レジェール」「オードレジェール」と呼ばれる分類のものもあるが、濃度上では上記のオーデコロンに相当する。 (レジェールはフランス語で「軽い」「優しい」「穏やかな」等の意)

使用者の性別による分類

大きく男性用と女性用に別れるが、共用(ユニセックス)の商品も多い。異性向けの香水を身につけることも、現代では決してタブーとはみなされない。ただ、この感覚は国によって異なる傾向がある。例えば、現代の日本では比較的タブー意識が薄いが、アメリカ合衆国では特に男性が女性用香水をつけるとゲイと受け取られるケースがある。その一方で、イギリスでは老舗のヤードリーやクリード、フローリスペンハリガンなどが男性が付けるためのフローラルノートを発表している。

日本ではユニセックスのものが比較的良く売れる傾向があるが、フランスでは男性用か女性用にきっちり分けられ、共用を謳ったものはほとんど発表されていない。

また、フランスやイタリアではトップノート ~ ミドルノート ~ ラストノートと変化が明確なものが好まれるが、アメリカ合衆国では逆にほとんど変化のしないものが好まれる傾向にある。

フレグランスホイール

1983年にマイケルエドワーズによって考案された香りの分類方法である。[2]

香水入れなど

香水は通常、瓶に入っているが、携帯するためや香水を出しやすくするために別の容器を使用することがある。主にアトマイザーが多い。

  • ボトルタイプ
    • 小瓶の香水入れ。
  • ロールタイプ
    • 香水を直接塗る。量を調節しやすいが香水の匂いが変わりやすい。
  • スプレータイプ
    • 口の部分がスプレーになっている。8分目くらいが目安。

香水が登場する映画

逸話

マリリン・モンローがあるインタビューで「寝るときは何を身に付けているのですか?」という下世話な質問に「シャネルNo.5[3]」と返して質問者を煙に巻いたというのは有名なエピソード。英語では衣服を「着る」、帽子を「被る」、靴を「履く」、香水を「付ける」、など「身に付ける」ことを表す動詞はすべて「wear」となる。

出典

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関連項目

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  1. John Roach, (2007) Oldest Perfumes Found on "Aphrodite's Island, National Geographic News"[1]
  2. Osborne, Grant (2001-05-01)."Interview with Michael Edwards". Basenotes. Retrieved 2006-12-17.
  3. Ageless Marketing – Marilyn Monroe & Chanel No. 5、2012年9月10日閲覧。