阿里山森林鉄路
阿里山森林鉄路(ありさんしんりんてつろ、中国語繁体字:阿里山森林鐵路)は、台湾に現存する森林鉄道である。阿里山や玉山観光の足としても利用されている。阿里山登山鉄道とも呼ばれる。
概要
日本統治時代に阿里山のタイワンベニヒノキなどの豊富な森林資源輸送を目的に藤田組(藤田平太郎)により1906年から建設を開始し[1]、1908年に平地部分である嘉義 - 竹頭崎(現・竹崎)間が完成、1912年に二萬平まで67.1kmが完成した。1914年には沼の平(ぬまのひら、現・沼平)まで延伸工事が完成し、現在の本線部分が全線開通した。その後も多くの支線が建設され、日本の神社建築などに用いる巨木も、少なからずこの鉄道を用いて運び出された。
1907年にアメリカライマ社から導入された蒸気機関車はシェイ式と呼ばれる特殊な片側縦置きのシリンダを持ち、傘型ギヤで動力を伝える間接駆動方式となっていた。現在は通常運転には使用されていないが、阿里山駅や奮起湖駅に動態保存されている。阿里山森林鉄路の蒸気機関車を参照。
本線は嘉義〜沼平間72.7kmの区間で、2,250m以上の高さを登るため、急峻な区間が続き、ループ線やスイッチバックを組み合わせている。なお、軌間は、762mmである。また、渓谷を見下ろす雄大な景色も魅力で、沿線の植物は平地から海抜800m以下の部分が熱帯林、800mから1,600mまでが亜熱帯林、1,600m以上が温帯林となっており、垂直分布の違いによる車窓の変化も楽しむことができる。
2003年3月、阿里山駅付近で脱線事故が発生し、17人が死亡する惨事となった[2]。
2011年4月27日にも倒木に伴う脱線事故が発生。6人が死亡、60人が負傷した[3]。以後、線路の点検や危険な樹木の伐採、防護柵等の設置等の安全対策のため全線運休していたが、祝山線は10月27日から運行を再開した。神木線(嘉義線の阿里山~神木間の通称)は2011年中に施設を整備し、交通部の同意を得た後運行再開の運びである[4]。 なお、嘉義線嘉義~奮起湖間は、2008年台風13号により被災した施設が2011年9月までに修復されたが、運行再開時期は未定。また、奮起湖~神木間は2箇所で大きな土砂崩壊があり、トンネルを掘って迂回する必要があるため運行再開は早くて2014年と見込まれている。
運営組織
中華民国行政院の管理下にある国有鉄道の一つであり、交通部台湾鉄路管理局の所属ではなく、農業委員会林務局嘉義林区管理処の所属となっている。2008年6月19日より宏都建設(台湾のデベロッパー)を母体とする「宏都阿里山国際開発公司」によって、BOT方式(Build-Operate-Transferの略で、民間事業者が自ら資金を調達して施設を建設(Build)し、一定期間管理・運営(Operate)を行い資金を回収した後、将来的には公共に施設を移管(Transfer)する方式)で民営化された[5]が、2010年3月22日をもって契約を解除し、同年5月8日より林務局の管理下に戻った[6]。
運行形態
1982年の台18線・阿里山公路開通に伴う、バスや自家用車との競合がある中、現在、本線には毎日一往復の全席指定特急列車阿里山号が運行されているほか、日曜日などに普通列車が一往復運行されている。特急列車の指定席は阿里山森林鉄路の北門駅のほか、台鉄の嘉義駅でも販売されている。途中、停車する奮起湖駅には駅弁がある。
また、祝山線は、ご来光の時間に合わせて未明に阿里山駅を出発する列車が毎日1便運行されており、ご来光の30分ほど前に祝山駅に到着、すぐ前にある展望台から、玉山方向から昇る朝日を拝めるように考えられている。また、日の出の40分後ぐらいには、帰りの阿里山行き列車が運転される。
2007年7月より、嘉義〜竹崎間で蒸気機関車と檜木車両の観光列車を休日に一日二復休運転開始した。途中、日本統治時代に建設され復活した廃駅鹿麻産駅に停車する。
阿里山〜神木間にも檜木車両の区間列車(神木線)を運行する。桜の咲く頃には臨時列車を増発する。[7]
阿里山〜奮起湖間にも区間列車を運行する。
現在、早朝は祝山線(阿里山~祝山)、日中は沼平線(阿里山~沼平)神木線(阿里山~神木)が運行している。
- 沼平線(所要時間約5分)片道50元 往復80元
- 阿里山発 10:00/10:30/11:00/11:30/13:00/13:30/14:00/14:30/15:00/15:30
- 沼平発 10:15/10:45/11:15/11:45/13:15/13:45/14:15/14:45/15:15/15:45
- 神木線(所要時間約7分)片道50元 往復80元
- 阿里山発 10:15/10:45/11:15/11:45/13:15/13:45/14:15/14:45/15:15/15:45
- 神木発 10:30/11:00/11:30/12:00/13:30/14:00/14:30/15:00/15:30/16:00
特徴
- 塔山駅は戦前の日本最高地点の鉄道駅(標高2,346m)であり、当時には「我國鐵道最高地点 海拔二三四六米」の標柱があった。
- 祝山駅は現在の台湾最高地点の鉄道駅(標高2,451m)である。
路線一覧
- 嘉義線(阿里山線):嘉義〜沼平(元の阿里山駅)
- 2008年夏の台風によって大きな被害を受け、懸命の復旧工事にもかかわらず樟腦寮駅(zh:樟腦寮車站)付近が500mほど寸断されたままになっている。2009年3月30日現在でもこの区間だけは徒歩で移動する必要がある。
- 祝山線:阿里山〜祝山(御来光に合わせて早朝に運転)
- 眠月線(旧称:塔山線):阿里山〜眠月(台湾大地震後運休、復旧工事中)
- 水山線:沼平〜水山 - 元林場線で、観光客向け運転の予定
関連項目
出典
外部リンク
- 阿里山森林鐵路 公式サイト 中文、英語、日本語
- 阿里山森林鉄路(宏都阿里山) 公式サイト 中文、英語、日本語
- 宏都阿里山網路訂票オンライン切符予約 中文
- 阿里山森林小火車線上訂票系統 オンライン切符予約 中文
- 宏都建設 中文
- 阿里山国家風景区 中文、英語、日本語 森林鉄道に解説
- 嘉義林區管理處 中文、英語
- 旅々台北 阿里山鉄道の旅 日本語 2007年10月の情報
- ↑ 「藤田組の阿里山経営 四十五哩の鉄道敷設」中外商業新報 明治39年8月31日『新聞集成明治編年史第十三巻』(国立国会図書館近代デジタルライブラリー)
- ↑ Taiwan's Alpine Rail
- ↑ [http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/accidents/2797408/7140758 台湾・阿里山で列車脱線、6人死亡 (AFP.BB.NEWS)2011年04月28日07:37]
- ↑ 2011年10月26日發布嘉義林區管理處最新消息「阿里山森林鐵路復駛,祝山線10月27日清晨5時首發」
- ↑ 阿里山森林鐵路移交民營 航向新紀元
- ↑ 嘉義林管處進行嘉義車庫園區、周邊景觀改善
- ↑ 阿里山森林鐵路與嘉義名產雪花方塊酥合作