越後七不思議
越後七不思議(えちごななふしぎ)は、越後国(現在の新潟県)に伝わる珍しいことがらを七つ集めたもの。
様々な内容が語り継がれており、その総数は40あまりにもなるが、親鸞の伝説にかかわる次の七つが特に有名。越後国は親鸞の流刑地であり、浄土真宗が盛んであったため、動植物の珍種を親鸞の起こした奇瑞として伝えたものである。
目次
各々の詳細
逆さ竹(さかさダケ)
天然記念物指定名称は鳥屋野逆ダケの藪(とやのさかさだけのやぶ)。
枝が下向きに生える枝垂れタケ。親鸞が竹杖を逆さに土に挿したものに根が生えたと伝える。逆さ竹はハチクが枝垂れる変異種であるが、竹の枝垂れは他にほとんど例がなく、極めて珍しい奇形であることから1922年(大正)11年10月12日に国の天然記念物に指定された。しかし、近年ではほとんど見られなくなってしまい、西方寺に保存されている標本(右の画像)が確認できる現存する唯一のものである。
西方寺の境内は霊域として人の出入りが制限されており、かつては稀に発生した枝垂れ竹を切り取って檀家に分け与える風習があったともいわれ、こうしたことが激減の原因に挙げられている。また、珍品としての価値から昭和12年~13年頃、西方寺にある老人がやってきて、鳥屋野院と竹薮の看守をしてやろうと申し出があったので、寺では留守番を頼むことにした。ところがある檀家より「最近、寺では逆竹を売り出しているのか」と苦情が寄せられ、驚いてこの老人を問い詰めると、火で炙って折り曲げ、参拝に来た人に法外な値段で売りつけていた事が分かる、などという逸話が残っている[1]。竹が枝垂れる原因については、長期間にわたって狭い範囲に密生して生育することによる影響や、豪雪による積雪量の多い期間が長いことによる中空の竹枝の耐久性などの因果関係が議論されてきたが、未だに確定的なものはない。
焼鮒(やきフナ)
新潟市西区山田、山王神社。
体に黒い焦げ目模様のついているフナ。1211年(建暦元年)11月、親鸞が赦免され当地を去る際に催された酒宴の肴に、焼いたフナが用意されたが、親鸞が傍らの榎に纏っていた袈裟を掛け「わが真宗の御法、仏意にかない、念仏往生間違いなくんば、この鮒必ず生き返るべし」と唱えてから池に放したところ、生き返り泳ぎだしたと伝える。1796年(寛政8年)には親鸞が袈裟を掛けたとされる榎の枝が折れたため、その枝を挽くと切り口に親鸞の姿と鮒の形がくっきりと現れた。
神社近くを走っていた新潟交通電車線には、この伝説にちなみ名付けられた「焼鮒駅」があった。
八房の梅(やつふさのウメ)
阿賀野市小島、梅護寺。
ひとつの花に八つの実がなる八重咲きのウメ。親鸞が植えた梅干の種から育ったと伝える。
珠数掛桜(じゅずかけザクラ)
梅護寺。天然記念物。なお、「じゅず」は本来は「数珠」であるが、珠数掛桜においては「珠数」と表記される。
花が長く房のようにつながって咲くサクラ。親鸞がサクラの枝に数珠を掛けたためと伝える。
梅護寺の桜の花は紅色で約80枚の花びらで構成され、八重桜の中でも特に美しいことから、昭和2年4月8日に天然記念物に指定された。
三度栗(さんどグリ)
テンプレート:Main 阿賀野市保田、孝順寺。
一年に三度花が咲き、実がなるというクリ。親鸞が植えた焼栗から育ったと伝える。
繋ぎ榧(つなぎガヤ)
糸を通したような穴のある実のなるカヤの木。親鸞が植えた食膳のカヤの実から育ったと伝える。
片葉の芦(かたはのアシ)
葉が片側一方向にだけ伸びるアシ。親鸞が神社に参詣し念じたところ、池に生えるアシが一夜にして「片葉」になったと伝える。
八珍柿
八珍柿(はっちんがき)は渋柿の品種。正式名は平核無柿(ヒラタネナシガキ)。実の中に種のできないカキの変種。
越後七不思議の次に珍しい、の意から「八珍」と名づけられた。
原木は新潟市秋葉区古田にあり、樹齢約320年、高さ16m、幹周り203cmの巨木で県指定天然記念物。明治初期、庄内藩家老職の酒井調良が苗木を山形県庄内地方に持ち帰り産地化したものが庄内柿であり、昭和初期になって佐渡郡羽茂村(のちの羽茂町、現在の佐渡市)の農会技術員が庄内柿の穂木を佐渡島に持ち帰り産地化したものがおけさ柿である。
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八珍柿 表
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八珍柿 裏
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八珍柿 断面