被選挙権
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被選挙権(ひせんきょけん)とは、参政権のうちの1つであり、当選人の資格すなわち選挙を経て公職に就任する資格もしくは地位を指す。被選資格(ひせんしかく)とも称する。なお、選挙権と被選挙権が同じ要件の選挙を互選(ごせん)と呼ぶ。
被選挙権の本質
被選挙権を選挙権によって認められた選挙に参加する権利の一環である「立候補の自由」とみなす見解がある一方で、選挙を通じて当該公職に相応しい人物を選び出すのが選挙の目的であるとして、被選挙権を権利そのものではなくて権利能力とする見方を採用して、選挙で選ばれた場合に公職に就くことを許される資格と捉える見解もある。そのため、選挙権と異なる要件を付される場合があり、その場合には選挙権よりも要件が狭くとらえられることとなる。
日本の法令上の被選挙権の規定
選挙の種類と被選挙権
- 衆議院議員総選挙:日本国民で年齢満25年以上の者(公職選挙法10条1項1号)
- 参議院議員通常選挙:日本国民で年齢満30年以上の者(公職選挙法10条1項2号)
- 都道府県議会議員:その選挙権を有する者で年齢満25年以上の者(公職選挙法10条1項3号)
- 都道府県知事:年齢満30年以上の者(公職選挙法10条1項4号)
- 市区町村議会議員:その選挙権を有する者で年齢満25年以上の者(公職選挙法10条1項5号)
- 市区町村長:年齢満25年以上の者(公職選挙法10条1項6号)
※それぞれの年齢は選挙の期日により算定する(公職選挙法10条2項)。
被選挙権を有しない者
例外的に選挙権を有しない者については、公職選挙法第11条1項・第252条、政治資金規正法第28条、電磁記録投票法第17条に規定がある。
- 具体的には、以下の何れも成立してない者
- 公職[1]にある間に犯した収賄罪または斡旋利得罪により刑期満了になっていない者
- 公職[1]にある間に犯した収賄罪または斡旋利得罪の実刑の刑期満了から10年間を経過しない者
- 選挙に関する犯罪[2]により禁錮以上の刑に処せられ、刑が執行猶予中の者
- 選挙に関する犯罪[2]により実刑の刑期満了から5年間を経過しない者
- 政治資金規正法に定める犯罪[3]により禁錮以上の刑に処せられ、刑が執行猶予中[4]の者
- 政治資金規正法に定める犯罪[3]により実刑の刑期満了から5年間[4]を経過しない者
被選挙権に関する資格
- 地方首長臨時代理者については地方自治法第252条の17の8により「普通地方公共団体の長の被選挙権を有する者」であることを要件としている。
- 新村長職務執行者については大規模な公有水面の埋立てに伴う村の設置に係る地方自治法等の特例に関する法律第4条により「市町村長の被選挙権を有する者」であることを要件としている。
- 中央選挙管理会委員については、公職選挙法第5条の2第2項により「参議院議員の被選挙権を有する者」であることを要件としている。
- 都道府県公安委員会委員については、警察法第39条で「当該都道府県の議会の議員の被選挙権を有する者」又は「当該道、府又は県が包括する指定市の議会の議員の被選挙権を有する者」であることを要件としている。
- 教育委員会委員については、地方教育行政法第4条で「当該地方公共団体の長の被選挙権を有する者」であることを要件としている。
- 水防事務組合議会議員については水防法第3条の4により「関係市町村の議会において、当該市町村の議会の議員の被選挙権を有する者」であることを要件としている。
選挙の争点と被選挙権
被選挙権の要件が不適切だと、幾つかの政治課題が選挙の争点として有権者に提示されず、それらの政治課題について有権者の総意とは異なる選挙結果が生じる場合がある。
- 多くのスターリン主義的国家などでは、被選挙権の要件に現政権政党への支持が含まれているため、他の政党が進出することがない。
- 民主制を敷いている国でも(中選挙区制・小選挙区制などの)小さな定数の選挙区での単記非移譲式投票を選挙方法に選ぶと、デュヴェルジェの法則により「投票前の得票率予測で上位何位以内にいること」が被選挙権を行使して当選できる要件に暗黙で含まれる。すると、実質的な候補者=選択肢の数が限られる。一回の選挙では(選択肢の数-1)個の争点しか提示出来ないから、政治課題が多いと、他の課題と抱き合わされたりして曖昧になったり、切り捨てられてしまう。
脚注
- ↑ 1.0 1.1 過去には公職ではない人物が収賄罪の執行猶予付き有罪確定になった際に、誤って執行猶予中に公民権が停止された例が存在する。例として公職でない元輪之内町農業委員、元鹿町町建設課長、元瑞穂郵便局保険課長、元建設省酒田工事事務所副所長が収賄罪で執行猶予付き有罪確定になった際に誤って執行猶予中に公民権が停止されたことがある。
- ↑ 2.0 2.1 選挙人名簿の抄本等の閲覧に係る報告義務違反・選挙事務所、休憩所等の制限違反・選挙事務所の設置届出及び表示違反・選挙気勢を張る行為の禁止違反・自動車、船舶及び拡声機の使用表示違反・ポスター掲示違反・文書図画の撤去処分拒否・街頭演説の標旗提示拒否・夜間街頭演説禁止違反・選挙運動のための通常葉書等の返還拒否及び譲渡禁止違反人名簿の抄本等の閲覧に係る報告義務違反・選挙事務所、休憩所等の制限違反・選挙事務所の設置届出及び表示違反・選挙期日後のあいさつ行為の制限違反・推薦団体の選挙運動の規制違反・政党その他の政治活動を行う団体の政治活動の規制の違反・選挙人等の偽証罪を除く。
- ↑ 3.0 3.1 政治資金監査報告書の虚偽記載・政治資金監査の業務等で知りえた秘密保持義務違反や除く
- ↑ 4.0 4.1 裁判所によって情状により選挙権停止を適用しなかったり、停止期間を短縮したりすることもできる。