選挙区
テンプレート:選挙 選挙区(せんきょく)とは単数あるいは複数の議員を選出する選挙を行う上でその基盤となる区域。
目次
概要
単数の議員を選出する小選挙区制と、複数の議員を選出する大選挙区制がある(中選挙区制は大選挙区制の一種)。
普通は地域ごとに区切るが、遊牧民が主体の国では部族ごとに選挙区を設けるなど、地域では区切らないこともある。一般には、直接民主制の代替を担う比例代表を選出するため、その社会構造を反映させる形で大きく選挙区が区割りされることが多いが、決断力が求められる多数代表の選出が目的の場合、その社会構造を分断する形で小さく選挙区が区割りされる。
英語で"選挙区"を表す"Constituency"は、"結合して何かを構成する要素"といった意味をもつ幅広い言葉である。選挙区という用法についても同様で、必ずしも選挙のためだけの一時的な区割りというわけではなく、"意見を結合して議会の意志を決めるための、パズルのピース"というような意味をがある。多くの国の議員が平日は議会に出席し、週末は選挙区に戻り有権者との意見交流をはかるのもその一例である。また、イギリスで特に顕著なことであるが、議会の討論では、お互いを名前ではなく「~選挙区選出の議員の発言に反対します」などと選挙区名で呼ぶような慣行もある。
日本における選挙区の区割り
衆議院議員
- 「衆議院名簿届出政党等」(公職選挙法第86条の2第1項による届出をした政党その他の政治団体)の「衆議院名簿登載者」、すなわち衆議院議員への立候補者は、選挙区が重複している小選挙区制選挙と比例代表制選挙への重複立候補だけは例外的に認められている。これは、重複立候補を禁止する同法第87条第1項の規定にもかかわらず、同法第86条の2第4項の規定が優先されているためである。
小選挙区制
- 公職選挙法第12条第1項、第13条第1項・第3項・第4項、および、第13条第1項の「別表第一」により、各都道府県を区割りして全都道府県で300の小選挙区が衆議院小選挙区制の選挙区として設けられている。各々の小選挙区の議員定数はすべて等しく1名であり、総議員定数は300名である。小選挙区の詳細については、衆議院小選挙区一覧あるいは衆議院議員一覧を参照のこと。
比例代表制
- 公職選挙法第12条、第13条第2項および同項の「別表第二」により、各都道府県を構成単位としつつ全都道府県を11に区割りした比例代表制選挙区(比例代表ブロック、比例代表区、比例ブロック、比例区、地域ブロック、あるいは単にブロック)が衆議院比例代表制の選挙区として設けられている。これらの比例代表制選挙区ごとに各々の議員定数が定められており、総議員定数は180名である。詳しくは、衆議院比例代表制選挙区一覧、衆議院小選挙区一覧あるいは衆議院議員一覧を参照のこと。
参議院議員
- 「参議院名簿届出政党等」(公職選挙法第86条の3第1項による届出をした政党その他の政治団体)の「参議院名簿登載者」、すなわち参議院議員への立候補者は、選挙区制選挙と比例代表制選挙へのいかなる重複立候補も認められてはいない。これは、選挙区が明らかに重複しているにもかかわらず、衆議院議員への立候補者のように同法第86条の2第4項のような規定が適用されないためであり、重複立候補を禁止する公職選挙法第87条第1項の規定がそのまま適用されるためである。
選挙区制
- 地方の多くの選挙区(47選挙区のうち24選挙区)は、定数2名である。これらの選挙区は、その当選者2名が3年おきに1人ずつ交互に改選されるため、参議院一人区と呼ばれる。これらの選挙区における選挙には、3年ごとの小選挙区制選挙という性格がある。
- 上記以外の23選挙区は、中選挙区制選挙ないし大選挙区制選挙の性格を有している。ただし、中選挙区制選挙と大選挙区制選挙との違いは選挙区の大きさだけであり、その選挙原理からは、中選挙区制選挙は一般に大選挙区制選挙の一種と見なされている。
比例代表制
- 公職選挙法第12条第2項により、「全都道府県」が必然的にいわば1つの選挙区として扱われることになる。この場合、衆議院議員総選挙の比例代表制とも異なって「選挙区」の区割りをしているわけでは全くなく、「全都道府県を通じて」有権者たちと「参議院名簿届出政党等」所属の「参議院名簿登載者」たちとの間で、最も単純明快な比例代表制選挙が行なわれているに過ぎない。よって、通常、この公職選挙法の趣旨に則(のっと)って、参議院議員通常選挙の比例代表制選挙の場合は、「選挙区」「選挙区選出」という概念を当て嵌めず、選挙原理の違いに焦点を当てて単に「比例代表」「比例代表選出」と表現される。
- 参議院議員通常選挙の比例代表制選挙は、比例代表制という特性に100%重点を置いているものであり、「選挙区」の区割りは全く行なわれていない。しかしながら、衆議院議員総選挙の比例代表制選挙区を「比例代表区」「比例区」と称していることに倣(なら)って、選挙区域が「全都道府県」と最初から分かり切っている、この参議院議員通常選挙の比例代表制選挙の選挙区に対しても「比例代表区」「比例区」と表現されることがある。
- 一方、この参議院議員通常選挙の比例代表制選挙の、選挙区域が「全都道府県」である選挙区を具体的な選挙区として命名する場合、参議院議員通常選挙の選挙区制選挙の選挙区が公職選挙法的に「○○○選挙区」(○○○は都道府県名)と呼称されている方式に従えば、「比例代表全都道府県選挙区」ないし「比例全都道府県選挙区」となる。ところが、これらの言葉を省略すると、衆議院議員総選挙の比例代表制選挙区の場合と全く同様に、まことしやかに「比例代表区」ないし「比例区」という言葉になってしまう。
- また、衆議院議員総選挙の比例代表制選挙の各選挙区を、比例代表制選挙という人為的な工夫が施されている特殊な選挙の選挙区という意味合いで別格的に「比例代表○○○ブロック」「比例○○○ブロック」「○○○ブロック」と表現されている方式に従えば、参議院議員通常選挙の比例代表制選挙の選挙区なるものは、「比例代表全都道府県ブロック」「比例全都道府県ブロック」「全都道府県ブロック」と表現されざるを得ない。この場合も、省略すると、衆議院比例代表制選挙区の場合と全く同様に、「比例代表ブロック」「比例ブロック]「ブロック」という全く同じまことしやかな言葉になる。
- しかしながら、参議院比例代表制選挙区の場合は、1980年まで施行されていた全国区制選挙と同様にやはり「選挙区」の区割りは全く行なわれておらず、その意味では「選挙区」が区割りされていない選挙と言っても何ら過言ではない。全有権者および全候補者が「全都道府県」という全く同一の区域を自己のフィールドとして当然の如く共有している上での比例代表制選挙に過ぎない。つまり、「全都道府県」といういわば唯一の「比例代表制選挙区」のほかには「比例代表制選挙区」「比例代表区」「比例区」「比例代表ブロック」「比例ブロック」「ブロック」とわざわざ表現しなければならないものがそもそも存在していない。このため、参議院比例代表制選挙の場合には、明らかに、「選挙区」的なものについて殊更に述べる必要性が全くない。「比例代表区」「比例区」「比例代表ブロック」「比例ブロック」「ブロック」という言葉そのものがどこか空疎ないし無意味に響く。
- にもかかわらず、「比例代表区」「比例区」「比例代表ブロック」「比例ブロック」「ブロック」のような言葉に意味があるとすれば、それは「比例代表区」「比例区」「比例代表ブロック」「比例ブロック」「ブロック」という言葉が、「選挙区」の一類型を示す言葉であるにもかかわらず、「小選挙区」や「選挙区」の対語ないし反意語のように存在してしまっているからに過ぎない。どこか本質的に焦点の合っていないものに無理やり焦点を合わせようとしているかのような強引さ、無意味さがこれらの言葉からどことなく漂って来るのは、「選挙区」の種類と「選挙制度」の種類とを無理やり同列に置いて対比させようとしているためであることは余りにも明らかであろう。
4つの選挙制度の呼称について
日本国の国政選挙には、衆議院小選挙区制選挙と衆議院比例代表制選挙、参議院選挙区制選挙と参議院比例代表制選挙という相異なる4つの選挙制度がある。
- 語尾の最後を「選挙区」の「区」で統一したい場合、略称を除くと、
- 一般的な呼称は、衆議院議員総選挙のほうが「小選挙区制選挙区」と「比例代表制地域選挙区」、参議院議員通常選挙のほうが「選挙区制選挙区」と「比例代表制全都道府県選挙区」となる。
- 各々の選挙区の呼称は、衆議院議員総選挙のほうが「○○○第x区」と「比例代表◇◇◇選挙区」、参議院議員通常選挙のほうが「○○○選挙区」と「比例代表制全都道府県選挙区」となる。
- 語尾の最後を「選挙制度」の「制」で統一したい場合は、略称を除くと、衆議院議員総選挙のほうが「小選挙区制」と「地域比例代表制」、参議院議員通常選挙のほうが「選挙区制」と「全都道府県比例代表制」となる。
- 各々の選挙区の呼称を、語尾を「制」で揃えて表現することは無理である。
- 比例代表制選挙の選挙区をブロックで表現したい場合は、略称を除くと、
都道府県議会議員
市町村議会議員
- 市町村は、通常、その行政区画全域がいわばそのまま1つの選挙区であるが、公職選挙法第12条第4項および同法第15条第6項により、必要があると認められる場合は、選挙区を設けることができる。また、政令指定都市の場合は、区単位で選挙区が設置される。
逆転現象とゲリマンダー
選挙区を区切る制度では、選挙区間で票の移動を行うことは出来ない。このため、議席を得るのに必要な票数が選挙区間で異なっても是正されず、選挙区単位で死票になった票は全体の議席配分に対しても死票になる。従って、必要票数が多い選挙区ばかりで議席を得たり圧勝・惜敗の選挙区が多い政党は、得票数当たりの議席数が少なくなる。逆に、必要票数が少ない選挙区ばかりで議席を得たり辛勝・惨敗の選挙区が多い政党は、得票数当たりの議席数が多くなる。
この効果が分かりやすい形で現れたのが、「総得票数の多い政党の議席数が、総得票数の少ない政党の議席数を下回る逆転現象」である。また、この効果を人為的に利用したモノは(狭義の)ゲリマンダーと呼ばれる。
例外はドイツの国政選挙の比例区で、選挙区単位で開票された票は、一旦全て中央で合算し各党の議席数に変換してから、得票数割合に応じて各選挙区に議席配分される。つまり、各党の議席数は全国での総得票数のみで決定され、区割りの影響を受けない。
選挙区の俗称等
詳細については各項目も参照のこと。
日本
- 無風区
- 選挙前から候補者間の支持率等に圧倒的な開きがあり、当選者と落選者が投票前からほぼ確定しているような選挙区。「無投票」とは異なる。
- 接戦区
- 選挙前から当落選上に複数の候補者が拮抗していると見られている選挙区。政党においては他党の候補者と支持率が拮抗していたり、他党大物政治家の選挙区を注目にさせるなどして、接戦に持ち込んで全国的な注目区にする目的で、重点区として選挙戦に力が注がれることがある。
- 与党空白区
- 与党が立候補者を擁立しない選挙区。