編み物
編み物(あみもの、英語:knitting)とは、狭義には、糸を素材として布や立体物を作る方法の一つであり、その行為、および、それによって作られた物のことを言い、作られた物はニット(英語:knit)とも呼ぶ。 また、最狭義では、毛糸を使って編み上げたり、編んだパーツ類を縫い合わせて衣類を作ることを指すことが多い。
しかしながら、広義では、編むことでできる素材で物を編むこと全般を指すのであり、例えば、ビーズで装身具等を編むこととそうして作られた物、竹や蔓、籐、芭蕉葉等々で生活用具や建築材を編むこととそうして作られた物全般(衣類、容器、家具、壁面材、屋根、その他)も例外としない。もっとも、編むことのどこまでを「編み物」と呼ぶかについて定義は存在しない[1][2]。
以下、本項では狭義の編み物(糸を素材とする編み物)について解説する。
目次
概要
織物が縦糸と横糸の2種類の糸を用いて「一段」ずつ布地を作り上げるのに対し、編み物は1本の糸から作りあげることができ、結び目を作る要領で「一目」ずつ形を作って行くことが特徴である。
方法としては手によるもの(手編み)と機械によるもの(機械編み)がある。編み物は衣類などの製作に用いる他、手芸関係の趣味として行われている。
種類
いずれの種類においても、最初に基準となる結び目を作り、その中に糸を通して輪を作ることの繰り返しが基本的な編み方の操作である。
棒針編み
先端がゆるやかに尖った棒針と呼ばれる棒状の用具を用いる方法が棒針編みである。基本技法として表編みと裏編みがあり、それらを組み合わせることによって複雑な形状や各種の模様を作り出す。
編み目が細かい、糸の隙間ができにくい、伸縮性がある、肌触りが良いなどの特徴があるため、マフラー、靴下、手袋、セーター等の衣類に一般的に用いられる方法である。
片面から見て全ての目が同じ形状になる編み方(メリヤス編み)にするには、一列おきに表編みと裏編みを繰り返す。また、表編みばかりを繰り返すことにより、一列おきに表編みと裏編みが交互に現れる編み目(ガーター編み)になる。応用として伸縮性を特に高めたゴム編みと呼ばれる編み方もある。
機械編みにおいても、完成品は手編みの棒針編みと同じような形状になるが、棒針とは全く違う形状の用具を用いている。
かぎ針編み
かぎ針と呼ばれる用具を用いる方法がかぎ針編みである。鎖編みと呼ばれる編み方を基準としている。独特の編み目模様ができ、デザインの自由度は高いが、編み目に隙間が多くなることから、帽子やマフラーなどの小物類、あみぐるみなどに用いられる。棒針編みの補助的な役割として使われることがある。
アフガン編み
かぎ針と同じような形状で、それよりも幾分細いアフガン針と呼ばれる用具を用いる方法がアフガン編み (Tunisian crochet, Afghan stitch) である。織物のような独特の編み目となり、伸縮性が少なく目の細かい編み方が特徴である。
レース編み
レースの製法のうち、編み物の技法を用いたもの。1本または何本かの細い糸を用いて、すかし模様にする技術の総称である。
用具
編み物は他の手芸と比較して、用具の種類が非常に少ないと言われている。
糸
毛糸が最も一般的である。他にはレース糸、絹糸、刺繍糸、リリアンなどもある。編物用の毛糸は、染色に用いる染料が同じであっても製造時のバラツキによって色調が異なることがあるため、同時に染色した製品にロット番号が付いており、多数の同色の毛糸を必要とする場合はロット番号の同じ物を用いる。
針
編物に用いる針を編み針と呼び、素材は、竹、金属、プラスチックなどがある。 針の太さは号数で表し、数字が大きいほど太い。
棒針は先端がゆるやかに尖った棒状の用具で、2本、4本、5本で一組である。また、2本の針をビニールなどの柔軟性のある素材でつないだ輪針もある。棒の一端は編んだ糸が抜け落ちることを防ぐためキャップなどが付けられることがある。
かぎ針、アフガン針は棒針より短く、先端に糸を引っ掛けるために鉤(かぎ)状になっている。
その他、糸の編み始めと編み終わりを処理するため、あるいは編んだものを縫い合わせるために、糸を通す穴の開いた金属製のとじ針も用いられる。裁縫用の針に似ているが、先端は鋭く尖っていない。
編み図
編み物を製作するにあたって必要なものに「編み図」がある。作品を編みすすめる為に完成までを設計した、手順図ともいえる。雑誌などの書籍を購入するほか、毛糸を販売する店で手に入れることができる。
編み図は一定のルールを持つ記号で編み方が表記されているほか、製作に必要な毛糸の量なども載っている。
その他
はさみ、各種の製図・計測用具、ほつれ止め(作業を休止する場合に編み目が解けないよう保持する器具)、編んだ目の数を数えるためのカウンターなどが用いられる。
歴史
織物などに比べて編み物の歴史についての資料は少なく、不明な点も多い。
石器時代には1本の連続した糸を使って作られる魚網が知られていた。伸縮性のある素材の編み方は「スプラング」や「ブレーディング」と呼ばれ、青銅器時代に知られていた。現在の編み物に近いもので、年代が確定された最古のものは、帝政ローマ時代のシリアのローマ植民都市ドゥラ・エウロポスから発見された3世紀のものとされる。古代の編み針は、現在のかぎ針に近い形状であったと考えられる。シリアおよびエジプトが起源となり、ムーア人やアラブ商人からフランスやスペインに伝えられたと推定されている。
産業としての編物はフランスで発展し、16世紀には職人によるギルドが作られた。18世紀にはイギリスにおける産業革命が発展した。
ギャラリー
- Caspar Netscher 003.jpg
カスパル・ネッチェル
『レースを編む女』
/1662年の作。 - Jan Vermeer van Delft 016.jpg
ヨハネス・フェルメール 『レースを編む女』/1669-1664年頃。
- Heinrich Maria von Hess - Portrait of Fanny Gail - WGA11384.jpg
テンプレート:仮リンク "Portrait of Fanny Gail"/1820-1821年頃。
- Albert Anker Die kleinen Strickerinnen.jpg
テンプレート:仮リンク "Die kleinen Strickerinnen (編み物をする二人の少女)"/1850-1900年頃。
- The Knitting Woman painting by William-Adolphe Bouguereau.jpg
ウィリアム・アドルフ・ブグロー "The Knitting Woman (編み物をする女)"/1869年。
- William-Adolphe Bouguereau (1825-1905) - Tricoteuse (1879).jpg
ウィリアム・アドルフ・ブグロー "Tricoteuse"/1879年。
脚注・出典
関連項目
oc:Tricot