神権政治
神権政治(しんけんせいじ、テンプレート:Lang-el,テンプレート:Lang-en)または神政政治(しんせいせいじ)とは、国家の政体の1種で、特定宗教を統括する組織と、国家を統治する機構が実体的に同等な場合である。対比概念は世俗主義である。
語源は、古典ギリシア語で「神」を意味する、theos (θεος) と、「支配する」という意味の動詞 kratein (κρατειν) から派生した名詞 kratia (κρατια) との合成語で、「theokratia (テオクラティア) 」とは文字通りには「神による支配」である。フラウィウス・ヨセフスが初めて用いたとされる[1]。
神権政治という用語のもっとも普通の使用例は、国家の統治者(達)が、優勢な宗教の指導者(たち)と、実体的に同等な場合、つまり、国家元首なり執政官なりを宗教の指導者である教主や大神官などが兼任している場合の国家の政体である。政府の政治方針が大宗教等の教義原理と同等であるか、または非常に強く後者の影響を受けている場合、神権政体と言える。政府は、文字通り宗教統治の教庁と同じであり、最高神官あるいは教皇・教主が「神」に代わって国家を統治するのである。
神権政治の区分基準
神権政治を他の政体と明確に区別する特徴は、国家の支配機構における官僚組織の階層が、宗教における神官または聖職者の位階秩序と、その実質で同じであるかどうかというところにある。ある国家が国教を備えていても、国教における最高神官や聖職者の位階秩序が、政府内部の官僚組織とは別個にあって、政策決定が、政府官僚の意志や合意に従って成される場合、このような国家は神権政体ではない。あるいは、国家の長が、みずからの統治権能を、まさに「神」から委託されていると主張する場合でも、そのような神の元に組織された宗教機関の指導者や聖職者たちが、国家元首や国家官僚とは別のところで、世俗政治支配とは、あまり関係せずに機能する場合、このような国家も神権政体ではない。
神権政治ではない例
英国は、国家元首である王が、国教である英国国教会の首長を兼ねている。だが、英国国王のもとには、世俗政府の官僚筆頭である内閣首相と、宗教組織の筆頭祭司であるカンタベリー大主教が存在する。この二人が支配する組織は、首相は行政府の官僚組織であり、大主教は司教管区と司祭の位階秩序であって、両者は独立している。このため、英国の政体は神権政治ではない。
神権政治の例
しかし、古代ユダヤにおいては、王は油注がれた者として聖なる存在であり、行政と軍事の全権を掌握すると同時に、宗教上の最高司祭であることが理想とされた。このようなユダヤの祭司王においては、祭司の位階秩序が、すなわち世俗行政官の組織に取って代わり、「祭政一致」の統治機関では、祭司が宗教上の原理に従って、世俗政治の方針を決める。古代ユダヤにおいては、「律法(トーラー)」は本来、宗教上の戒律であるが、世俗的係争において、判断の基準となるものが、まさにトーラーしかなく、裁判官の職能を祭司が兼任していた。古代ユダヤの民や社会が理想として望んだのは、行政機構と宗教機構が同一のものとなる、神権政治であった。
現在においては、宗教団体エホバの証人が「神の王国」という神権政治体制の確立を支持している。神の王国とは教義上、「人間に苦難をもたらす状態をすべてこの地から除去し、永続的な平和と安全をもたらし得る唯一の政府」と定義されており、文字通りの神(エホバ)及びイエス・キリストが支配する政府であるとされている。(以下、続く)
en:Theocracy 04:03, 7 Jun 2005 http://en.wikipedia.org/wiki/Theocracy より敷衍翻訳
脚注
- ↑ English form the 17th century (OED). The Greek term is explicitly coined by Josephus and isn't attested elsewhere in Ancient Greek; Josephus marks it as a nonce coinage by calling it a "strained expression". W. Whiston tr. Josephus, Against Apion ii. §17 (1814) IV. 340: "He [Moses] ordained our government to be what, by a strained expression, may be termed a Theocracy", translating ὡς δ'ἄν τίς εἴποι, βιασάμενος τὸν λόγον, θεοκρατίαν